清水集落から「刃物ヶ崎山」に登る
                                        登山日2015年5月2日〜3日



「刃物ヶ崎山」から「家ノ串ま」での岩稜、後方は「至仏山」(左)」と「上州武尊(右)」


刃物ヶ崎山(はもんがさきやま)標高1607m 群馬県利根郡



自分にとって刃物ヶ崎山は特別な山だった。
それは、何度かの偵察と挑戦の連続だったからだ。
とにかく、その名前の特異さからどうしても登って、見たいと思った。

2007/5/2 家ノ串に登り、刃物ヶ崎山の絶壁に恐れを感じた。
2010/3/14 雨ヶ立山に登り、大烏帽子経由で登ることを検討した。
2011/4/29 柄沢山経由で目指したが、痛恨のルートミスで断念。 
2013/4/29 柄沢山経由で目指したが、気象条件悪化で断念。
2014/5/2 檜倉山経由で目指すが、増水した沢の徒渉と薮漕ぎで断念

その間にもすかいさんが到達 2010/5/3 
もっとも参考にさせていただいたのが、旧知のS・Kさんの「激藪の狭間より」だった 2013/4/29。

これだけ挑戦していながら、到達できない「刃物ヶ崎山」は毎年の恒例となってしまっていた。

5月2日(土)
今年の清水集落の除雪最終地点は意外とすいていた。いつもなら柄沢山のスキーや登川の釣り、あるいは猟師の車で賑わうところだ。ともかく、いつものように橋の手前に駐車して準備を始める。装備を減らそうとしたが、単独行だとどうしても不安感があり、余分な装備も持ってしまうことになる。そんなわけで、23キロの重量となり、去年よりも年齢を重ねているので、この重さは老体には堪える。
6時44分、除雪地点から廃国道291号を峠に向かって歩き始める。去年は咲き誇っていたサクラだが、今年はすでに散ってしまい新緑が風に揺れていた。今年は気温が高い日が続いた影響が出ているようだ。しかし、積雪はそれほど変わっていないように思える。雪に埋もれた廃国道を歩き始めるとまず驚いたのは、倒木の多さだ。ブナの巨木が道を塞ぎ、木の枝の上をまたいだり、潜ったりしなくてはならないので、そこを通過するだけでヘトヘトなってしまった。やはり23キロのザックを背負っての行動は、体力を消耗してしまう。この道の難関はこれだけではない、道が沢をトラバースして通過するときの緊張感は半端ではない。雪渓の端のシュルントの隙間、スノーブリッジの上で足元を見ると沢の水がゴーゴーと流れている。上部からのブロック状のデブリ乗り越え、スリップしたらそのまま谷底に一直線で滑落するのは間違いない。そんな場所がこの廃国道にはいくつかある。完全開通に至らなかった幻の国道は、この状況では納得できる。
歩き始めて約1時間で因縁の「東屋沢」に到着。去年は雨で増水したこの沢の渡渉に戸惑って、沢の上部に進んだのが間違いの始まりだった。今年の増水はそれほどでもないが、流れに足元をすくわれるかもしれないほどの勢いがある。今回はそれを想定して、45リットルのビニル袋を持ってきている。これを靴の上からかぶせて渡るのだ。これはかなりの効果があり、全く靴の中を濡らさずに渡りきることが出来た。第一の難関を過ぎたことでちょっとだけ安心する。

雪と舗装された部分が交互に現れる。雪は塊となっているのでそれを乗り越えるだけでも大変なことだ。やがて、林道の最終地点で鉄塔が建ち、その手前は広くなっている。そのまま道を左に回り込むと、間伐材で作ったベンチが置いてある。ここでひとまず休憩だ。それと言うのは、これから渡渉する「檜倉沢」で苦労することが予想できたからだ。このベンチから見る上越国境の残雪は去年と同じように見える。菓子パンを食べながらそんなことを考えて過ごす。



除雪終点に駐車

今年は葉桜だ

デブリが道を覆う

倒木が道を遮る

これも倒木

これは通過に苦労した

東屋沢の徒渉

舗装路の終点

終点にあるベンチ

檜倉沢の堰堤を渡る

檜倉沢の上流に柄沢山の一角を見る



さて「檜倉沢」に向かって下降していく。すると、目の前に現れた風景にびっくりした。それは去年まで堰堤の上まであった土砂が無くなり、水の流れは堰堤の下を潜り抜けていたのだ。したがって渡渉の心配はなく、堰堤の上を渡ることで難なく対岸に渡ることが出来てしまった。対岸に渡ってから再び斜面を登ることになる。ここはカタクリ、イワウチワ、ショウジョウバカマの花が咲きとても気持ちの良いところだ。登りあげると、再び鉄塔があり、ここでザックを下ろして休憩となった。それは、ここを流れる沢で水を補給するのと、アイゼンを装着するのが目的だ。ハイドレーションに水を入れ、粉末のポカリスエットを入れて溶かした。去年はここから尾根を辿ったところ、とんでもない藪漕ぎで苦労している。そこでそれを回避するために、下山時に見つけたルートを今度は登ることにした。送電線の下を進み対岸に渡るところにある鉄塔のところから急斜面を登るのだ。木の周りの雪が溶けた「根開き」の進んだブナ林の中を登っていく。急斜面だが、藪漕ぎよりはずっとマシだ。アイゼンも小気味よく利き高度をどんどん上げて行く。ほどなく清水峠の赤い三角屋根のJR送電線監視小屋が見えるようになってきた。それにしてもブナの林の中は気持ちよく、太陽の光が新緑を受けて和らぎ優しい光が降り注いだ。

旧(廃)道のある場所は、雪に埋もれていてはっきりとしなかった。雪はここで切れるので休憩を行うことにした。ザックを下ろしてその上に腰を下ろすと、何とも言えない解放感に浸れる。しかしザックを持ち上げるのに23キロの重量は、気合を入れないと持ち上げることが出来ない。よくもこんなものを担げるものだと自分で感心してしまう。
旧(廃)道から先は雪もなくなり、藪の中の急登となる。しかし、先が見えているだけに安心感があるところが去年と違うところだ。標高1370mで一気に展望が開けた。目の前の朝日岳ジャンクションピークが大きい。テントを張った場所も鮮明に記憶から蘇った。あの時は17時半に、この場所に到着したが、今日は12時41分なので余裕がある。もちろんここではテントは張らずに、檜倉山まで行くことにする。



カタクリ

イワウチワ

ここで水を補給した

清水峠のJR監視小屋が見える

気持ちの良いブナ林を登る

旧(廃)道を越えると藪になる

1370m付近で雪原に出る

去年はここで幕営

柄沢山が見えてきた



雪面からの照り返しが眩しいので、サングラスをかけて、タオル地の帽子を頭にかぶって後頭部への日差しを防いだ。雪原はどこを歩いてもいい感じだ。それにどこもかしこも幕営適地に見えてくる。やがて左手に柄沢山が現れ、右手には谷川岳東面がせりあがってくる。まさに残雪の山の醍醐味だ。前方には檜倉山の藪が見えている。去年は、あんなところをよく登ったものだと感心する、今日はあの藪を回避して、右側の斜面を残雪を拾いながら登ることにする。この斜面は雪庇が頭上に張り出す部分もあり、クラックもあちこちにある。しかし、藪漕ぎをするよりもずっとマシだ。

上越国境稜線に何とか到着し、左に折れて山頂付近を目指す。湿原の中を歩いていくと、見慣れた池塘の水面が風で波紋を作っていた。その近くで、単独行の男性がテント設営の真最中だった。簡単に挨拶をしてこちらもテントの設営に取り掛かった。テントの設営を終わったのが15時半なのでゆっくりと展望を楽しむ。気になるのは刃物が崎山の雪庇の状況だ。去年と同じような場所の雪庇が崩れて、藪がむき出しになっている。持参したS・Kさんの記録を読んで、ルートを頭の中に入れる。ネックは岩場の通過らしいことがわかる。

先着していた男性と少しばかり話をする。私よりも30歳も若く、同じ県内から来ていた。なんでもこれから巻機山まで縦走するようで、気が向けばもう一泊と言うことらしい。ヤマレコユーザーと言うことで、後日確認するととんでもないハードな山歩きをしている「bicycle」さんであることが分かった。檜倉山は限られた一区画で携帯が通じる場所があるので、家族に連絡をしてから夕食に取り掛かった。
展望を見ながらコーヒーを飲み、餅ラーメンを主食にラジオを聞きながら焼酎を楽しむ。その間に、明日に備えて雪を溶かして水を3リットル確保しておいた。風もなく穏やかなテント場は充分な睡眠をとることが出来た。



65リットルザックは、はち切れそうだ

上部が密藪の檜倉山

密藪を避けて右に迂回

ジャンクションピークが大きい

地塘のほとりにテントを設営

夕日が沈む

明日挑戦する刃物ヶ崎山



5月3日(祝)
朝、3時半に目が覚めると、テントの中は暖かく13℃だった。これほど暖かいと、雪が緩む可能性が高くなるので不安は残る。朝食も餅ラーメンで代わり映えしないワンパターンだ。テントの外を見ると、今日も快晴は約束されたような天気だ。しかし、思うように作業が進まず、支度を整え終わったのは5時少し前だった。「bicycle」さんも出発準備を済ませてテントを畳んでいるようだった。お互いの無事を祈って、私はテントを張ったままデポして檜倉山山頂を発った。

国境稜線を柄沢山方面に北上する。稜線上は藪が出ていて歩きにくいので、稜線の右(東)の斜面にへばりついた残雪を辿ってトラバースしていく。アイゼンが利いているが、スリップしたら停止しないまま滑落するに違いない。刃物が崎山への分岐には笹薮があり、これをかき分けて下降する。この笹薮は登るのは無理があるから、帰りは笹薮の縁を柄沢山方面に残雪をつないで一旦向かってから戻るしかなさそうだ。笹薮を抜けると快適な雪原の下降だ。思わず鼻歌が出そうな雰囲気だ。やがて灌木が多くなり、南側は雪庇にクラックが入り、今にも崩れそうだ。そこで尾根の北側を歩くが、こちらは藪がひどくなかなか進むことが出来ない。

時折、南側の雪庇の上を歩くがあまり気持ちの良いものではない。いますぐに崩れ落ちても不思議はないと思われる、北側に回ればネマガリタケとシャクナゲの密藪だ。何とか進んでいくが、不安は増してくる。それは、1512m峰の手前の岩壁で、どんな場所なのか期待と不安が入り混じっているのだ。



朝日が昇る

刃物ヶ崎山に向かう

国境稜線から笹薮を抜けて進む

笹薮を抜けると気持ちの良い雪原


振り返ると檜倉山が大きい



そして藪をかき分けて、その岩壁の基部に到着した。なるほど、登れそうな雰囲気は無い。途中までは雪がへばりつき、その先は灌木の藪があり、さらにその上は露岩がむき出しになっている。S・Kさんの記録によれば、難易度は高くないとのことなので、それを信じて登り始める。雪のへばりついた縁を灌木に掴まって登り、藪を数メートルかき分ける。そして露岩に取りつくことになる。右の溝のようなところをルートと定めて、足がかりを探して灌木に掴まって体を持ち上げる。灌木の根が引き抜けないように徐々に体重をかけて登っていく。たしかに無雪状態なら難易度は高くない。凍結でもしていたら、難易度はとてつもなく上がると思う。なんとか、露岩の上に立ち、下を見下ろすと、高度感は半端じゃなかった。

露岩の先は1512m峰まで、南側が絶壁で切れておりとても通過できそうにない。北側の斜面を選択することになるが、そこはとんでもない密藪となった。シャクナゲの藪は潜り抜けることも、上を歩くこともできないような状態だった。あちこちを鞭で叩かれるように藪を抜けていくとやっと雪原に出ることが出来た。ここから、尾根の南側に回るがここはクラックが尾根に沿って走っているのでどうも気持ちが悪い。最初は恐る恐る歩いていたが、だんだんと大胆になりクラックとクラックの間も平気で歩いてしまうようになった。慣れとは恐ろしいものだと思う。獣の毛が散乱しているところもあり、厳しい自然を感じるところもある。カタクリの咲く藪を抜けると、気持ちの良いなだらかな雪原の登りとなった。もう、危険な場所は無い、山頂はあとわずかだ。



クラック

崩れそうな雪庇

密藪

こんな所もある

危ない雪庇

岩峰が見えてきた

岩峰

上部は岩、その下は藪と残雪

密藪に踏み込む

この岩を登る

岩峰から下を見る

シャクナゲ

1512m峰の先はこうなっている

シャクナゲの密藪



8時30分、ついに念願の「刃物ヶ崎山」山頂に到着した。意識して挑戦してから4回目でやっと立った山頂であるだけに、感慨深いものがある。

山頂の標高は1607m、周囲に高い山があるにもかかわらず、360度の展望が得られる。上越国境の山々はもちろん、眼を転じると山腹に縞模様がある上州武尊、尾瀬の至仏山、奥利根の山々から巻機山までの稜線はこれまた憧れの山域だ。初めて刃物が崎山を意識した「家の串」は秀麗な三角形の山容で眼下に見えており、そこからここまでに至る稜線は狭い岩稜の連続で、名前の通り刃物のような鋭さを持っている。ここを登ることは、一般人では不可能であろう。その岩稜に向かう足元の雪庇を見て足がすくんだ。雪庇が空洞になり、穴が開いて下方が見えているのだ。いつ崩れてもおかしくない状態だった。山頂部分は苔むした三等三角点が設置されている。そして枯れ木につけられた「すかいさん」の山頂標識は、塗料がほとんど剥げてしまっていた。このような天候に恵まれて山頂に立つことが出来たのは、本当に幸せだと思った。山頂に30分ほど滞在してから、名残尽きない山頂を辞することにした。



クラックの先に山頂が見える

もう少し

あそこが山頂だ

すかいさんの標識

三等三角点

家ノ串の向こうに上州武尊そして右に赤城山

家ノ串の向こうに至仏山

足元の雪庇は穴が開いている



刃物ヶ崎山からのパノラマ



不安だった岩場の下降も、用意してきたシュリンゲを使うこともなく、無事に基部まで降りることが出来たので一安心だ、その先はまた藪の中をひたすら進むことになる。フト気が付くと左手に持っていたはずのストックが無くなっている。探すにしても、この藪の中で見つけることが出来るだろうか?ほとんど不可能かと思われるが、ストックはいままでいろんなところと歩いてきたということで、道具としては思い入れがある。とりあえず探しに戻ってみようということで、ザックを置いてGPSだけを持って歩いてきた道を辿ることにした。

15分ほど戻ったが見つからない。あきらめて戻ることにした、GPSの軌跡には若干の誤差があるから、それも考慮しながらザックのところまで戻ることにした。これで見つからなければ諦めるしかない。すると、笹薮の中に立った状態で置かれているストックを発見した、「よかった!!」ともかく回収できた相棒を愛おしむようにして回収した。

ストックを回収して、笹薮が少なくなったところで雪の斜面に差し掛かると。なんとなく違和感を覚えた。足元を見ると、アイゼンが無くなっている。思わず、その場に座り込んでしまった。もう、開き直るしかない。ふたたびGPSを持ってアイゼンを回収するために戻ることにした。再び藪の中に突入、ホトホト運の無さに嘆きながら探しまわる。これまたどこまで戻ったらよいものか全く見当がつかない。これまた諦めかけた時に、笹藪の中に落ちているアイゼンを発見!よく見つかったものだと今度は運の良さに喜んだ。

結局、ストックとアイゼンを探すだけで藪の中を1時間もウロウロしてしまったことになる。もう、これだけで精根尽き果てたという感じだ。こうなってくると、帰る時間が気になってくる。山頂から清水集落まで5時間と仮定すると、13時には檜倉山を発たなければならない。いまは11時半、テントの撤収と昼食で1時間はかか。逆算すると、あと30分で檜倉山まで達しなくてはならないが、それは不可能だ。燃料も食料の問題ないのでもう一泊するという選択肢もある。しかし家人が心配するので、それは避けたい。ヨシ、頑張ってみよう!ザックを背負い、アイゼンを装着して雪の斜面を歩き出した。
刃物が崎山に向かうときは快適な雪の斜面の下降だったが、登るとなるととてつもない体力が必要だ。直線的に続いている自分のトレースを辿って、ジグザグに登っていく。やがて国境稜線の笹薮に到達した。そのまま登るのは不可能なので、右の柄沢山方面に残雪を拾ってトラバースした。しかし、余分なアルバイトで笹薮を回避したことで、距離は延びてしまった。

檜倉山山頂に着いたのは13時なので、本来ならここを出発しなければならない時間だ。もう一泊するか、下山するかは?この時点ではまだ決心がつかない。その状態のままでテントの撤収を開始した。水もなくなったので、雪を溶かして水を1リットル作り、焼きそばパンを味噌汁で流し込んだ。ザックをまとめて、携帯の通じる一角に移動して家人に連絡、「ひょっとしたらもう一泊になる」ことを伝えた。時刻は14時になっているので、リミットを一時間も超過してしまっている。

そこで時間を短縮するために、山頂から直線的に進めばよいだろうと藪の中に突入した。下降だからたいしたことは無いと考えていたのだが、これは大間違いだった。なんと、藪に自分の身体が埋没してしまい前が見えないのだ。時折GPSで確認すると、右寄りに進んでいることに気が付くが、どうしても左に修正できない。直線的に下降するのがやっとの状況だからだ。これだったら、登ってきた雪の斜面が距離は長いがずっと楽だった。途中で足元を取られて真っ逆さまに倒れ込んでしまった。起き上がる気力もなく、しばらくそのままの状態で大きく息をつきながら休むのがやっとだった。この藪を通過するのになんと1時間を費やしてしまった。時間が無いところにきて、これで30分はロスをしたことになる。

ここからはしばらく、雪原が続くので思い切ってアイゼンを外して、スピードアップを図ることにした。シリセードを含めてかなり早くなると思ったが、実際はスリップの連続であまり効果は無かった。標高1370mの地点でひとまず休憩する。時刻は15時を回っているので、日没が近くなってきている。まして、谷間の林道は日暮れが早いことは間違いない。

標高1370m地点を15時半に出発して、雪の無い藪の中に入る。やがて、旧(廃)道に到着、ここからはブナ林の中の残雪斜面の下降だ。ここを下降すれば、あとは林道歩きだけとなる。やはりスピードアップを考えてアイゼン無しで下降を開始する。傾斜が急なところはステップを切りながらバランスを取って下降する。ところがちょっと油断したときに、バランスを崩して横倒しになった。そのまま斜面を数メートル滑落。ブナの大木に右太腿から激突、一回転して頭から深さ2mほどの根開きの穴に落ちてしまった。突然のことでしばらくは起こったことが理解できない。ただ、滑ってからブナの大木と根開きの穴が迫ってきたので、停止する努力をしたことが頭の中に残っていた。ひょっとして最悪の事態を考える。太腿を摩ってみると、痛みはあるがそれほど強烈ではない。それではと立ち上がってみると、立つことが出来る。なんとか骨折は免れたようなので安心する。ザックを背負って歩いてみると何とかいけそうだ。こうなれば、痛みが増す可能性もあるから、歩けるうちにどうしても今日中に清水集落に行かなくてはならない。



帰りに笹薮をやっと脱出

駆け下りる

ブナ林の下降

根開きの穴に落下

落ちた根開きの穴

清水集落に到着



16時15分だが、鉄塔のところでしばし休憩して体制を立て直す。ゼリー飲料とパンを水で流し込んでせわしなく出発する。この時点で16時半だ。もう、時間との勝負だ、どうしても暗くなるまでに通過したい場所がある。それは、去年のこと献花台に缶ビールが置いてあった場所だ、思わず缶のプルタブに手をかけた苦い思い出がある。
昨日に比べて、雪解けは進んでいるようで、様子が変わっていることがわかる。なんとか明るいうちに献花台を過ぎて一安心。清水集落に向かって雪の林道を急いだ。
なんとか18時半に清水集落の車に到着したときは「刃物が崎山」を登った充実感よりも、もうあの山に登らなくともよいという安堵の気持ちで満ちていた。




5/2(土)
06:44清水集落--(1.26)--08:10東屋沢--(1.08)--09:18ベンチ休憩09:27--(.08)--09:35柄沢川--(.10)--09:45鉄塔10:09--(1.02)--11:11旧(廃)道11:36--(1.05)--12:41(標高1370m)12:51--(2.19)--15:10檜倉山(幕営)

5/3(日)
檜倉山05:02--(.19)--05:21国境稜線刃物ヶ崎山分岐--(.30)--05:51(1575m峰)--(.49)--06:40(1530m峰)--(1.11)--07:51(1512m峰)--(.39)--08:30刃物ヶ崎山08:55--(.43)--10:38ストックとアイゼンを探す11:29--(.50)--12:19国境稜線分岐--(.40)--12:54檜倉山(テント撤収)13:51--(.57)--14:48薮を抜ける--(.23)--15:11(標高1370m)15:27--(.48)--16:15鉄塔16:27--(.50)--17:17東屋沢--(1.13)--18:30清水集落


群馬山岳移動通信/2015


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)

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