中倉山は約25年前に総勢15名で登ったことがある。記録を読み返してもどこを登ったのか全く分からない。まして、最近は中倉山の「孤高のブナ」が有名になっているが、その時は全く存在に気が付かなかった。そのブナを確認するのはもちろん、その先の山まで行ってみたいと思った。
3月27日(日) 銅親水公園の駐車場には車が一台あったが、すでに出発しているらしい。風景は25年前と変わらず荒涼としている。もっとも10年前に、ここから社山に登っているが、その記憶とも重なっている。季節は確実に暖かくなり、車外で着替えができるようになった。周囲の山を見ると稜線には雪が見えるので、一応アイゼンを持つことにしたが、さすがにピッケルは不要と判断した。関係車両以外通行止めのゲートを徒歩でくぐり先に進む。目の前の風景は相変わらずの風景で、緑は見当たらず崩落の跡が生々しい斜面が無数に見えている。しかしここまでたどり着くには膨大な時間と費用を使っていることは事実で、これからも延々に続くのだろう。
林道を仁田元川に沿って歩いていく。途中にはいくつもの堰堤があり、この工事のための道なのだろう舗装も行き届いており立派なものだ。注意深く登山口を探しながら進むと、標識が現れた。25年前とは明らかに違った場所であり、あの時は果たしてどこを登ったのだろう?あの当時、中倉山はマイナーな場所で、地形図を見て登れそうな尾根を選んで登っている。あの時のワクワク感がネットの情報があふれている現在は薄れてしまっている。登山口にはケルンと一緒に鹿の頭蓋骨が置かれていたが角は付いていなかった。ここに来るまでの林道沿いには鹿の亡骸が放置されており、鹿の密度の高さを思い知った。
登山口からはひたすら斜面を登るだけだ。道はジグザグに付けられているものの、傾斜はかなりのもので、老体ではとても連続して登っていくことはできない。何度も息継ぎをして登るしかない。この地域でも松木川と仁田元川では植生が異なり仁田本川は深い森となっている。かつては松木川もこんな様子だったのだろう。上部に行くにしたがって、風の音が激しくなるのが気になるところだ。
尾根にたどり着くまで、急斜面の登りは登山口から1時間以上を費やすことになってしまった。尾根につくと風が激しく、身体の冷えが感じられるようになった。ウインドヤッケを着込みネックウオーマーを巻いた。尾根上の道はわかりやすく、よく踏まれており、岩も少ないから歩きやすい。 標高1490m地点で右からの道と合流して、さらに上部に進んでいく。1499.6mの三角点を確認したかったのだが、この付近から雪が深くなり確認するのは不可能となった。ここからは樹木が無くなり草原状の場所となり、松木川の渓谷は荒涼とした斜面が広がっていた。かつてはこの渓谷に二酸化硫黄の煙が充満していたと考えると恐ろしい限りだ。稜線を辿っていくと、文字のかすれた標識が立っており、ここが中倉山山頂だった。360度の展望が広がっており、日光男体山が青色が目にも鮮やかだ。ここから見える山は懐かしい山ばかりだ。大平山の稜線は懐かしい仲間との思い出があり、赤倉山や皇海山、庚申山に登った時も仲間がいた。単独行が中心となっている今となっては本当に懐かしい。社山、夕日岳、男体山、備前楯山、も思い出がある。ゆっくりと風景を楽しみたいところだが、ものすごい強風でそれどころではない。この時点で沢入山は断念することにした。この強風の中で岩稜を越えるのは危険が多すぎるからだ。何しろ耐風姿勢をとっても身体が流されるほどなのだ。沢入山は無理としても、ブナの木は確認しておきたい。そこで風に流されるので何度も立ち止まり先に進んだ。 樹齢約120年ともいわれるブナの木は想像以上に大きかった。松木川方面は崩落が進みなんとも不安定だ。仁田元川方面も裸地がすぐそこに迫っている。有害ガスの煙害に耐え、山林火災にも耐えたこのブナもこの先どうなるかは不透明だ。負荷を減らすために剪定をするのも良いと思うが、それは許されないだろう。それにしても「孤高のブナ」とはなかなかのネーミングだと思う。 ブナと別れ、中倉山を過ぎて標高1490mのピークで大休憩をすることにした。ここで30分以上休んでいるうちに強風が収まりかけているように感じたが、再び沢入山に向かう気力は無くなっていた。 思わぬ強風で断念した山行は今までに経験がない。時間的にも余裕があり消化不良なので気になる石をザックに入れて、その負荷を楽しみながら下山した。石は測定したら4キロになり、それはルビーを含むコランダムであると思われた。
記録
06:37銅親水公園--(.49)--07:26登山口07:32--(1.11)--08:43稜線--(.54)--09:37中倉山--(.09)--09:48ブナ10:04--(.12)--10:16中倉山--(.13)--10:29休憩11:03--(1.00)--12:03登山口--(.54)--12:57銅親水公園 群馬山岳移動通信/2022 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |