足尾から日光中禅寺湖の山へ「社山」「半月山」   登山日2012年5月26日


半月山展望台から中禅寺湖と男体山


社山(しゃざん)標高1827m 栃木県日光市/半月山(はんげつやま)標高1753m 栃木県日光市

最近、右足裏の痺れが増している。病院で診ても原因は不明。寝るときも湿布をしないと痛みがひどく眠れない。まして歩くことさえもままならならず、地に足がついていないような感覚だ。こんな状況なので山も簡単な場所を選んで行くことにしたが、少しは手応えがある山でなければいけない。迷ったあげくに決めたのは「社山」である、日光中禅寺湖から行くのでは面白くないので、足尾から登ってみることにした。

5月26日(土)
銅親水公園に車を停めて、朝食のカップラーメンを食べる。支度を整えていると、一台のワンボックス車が入ってきた。男が1人降りてきて、登山靴を履き始めた。そしてこちらに向かって「どちらに?」と声を掛けてきた。「社山」ですと応えると「それじゃ、一緒だ」と返事が返ってきた。なんとこんな薮山に、二人も登山者が入るとは珍しいこともあるものだ。

ともかくストレッチを念入りにしてから出発した。銅親水公園の先の道はすぐにゲートに阻まれ、一般車は入ることが出来ない。ゲートのバーは中途半端な高さで、潜るわけにもいかず、つま先立ちで伸び上がって跨いで通過した。松木川の広大な河原は工事車両が置かれ、おそらく100年単位でこれからも税金で工事が続くのだろう。振り返ると先ほどの男性が追いついてきて、少し話をすると、追い越していった。この辺の山が好きで、この前は赤倉山に登ったと言う。なかなかの健脚で、メタボで足裏に障害がある身ではとても付いてはいけない。

暫く進むと道は分岐して九蔵川に下降するものと、九蔵川に沿って進むものとなる。追い越した男性は迷うことなく、九蔵川に下降していく林道に進んでいく。よっぽどこの付近に詳しいのだろうと思い、そのあとに続いた。しかし、どうも様子がおかしい。地形図を何度も見るが、九蔵川を渡ったのではかなりの困難が予想されるので、九蔵川を渡らずに先ほどの分岐に引き返した。


今度は九蔵川に沿った林道を辿ることにする。林道の左には貯木場と建物があったが人の気配は感じられない。前方のこれたら登ろうとする尾根を見ると、上部に白い花が見えている。いったいどんな花なのだろうか気になる。道は一旦下ってから枝沢にかかった橋を渡る。それから少し登ったところに「九蔵雨量局巡路」の標識がある。ここが尾根への登り口なのだろう。ここで先ほど私を追い越して九蔵川を渡った男性が追いついてきた。どうやら間違いに気がついて戻ってきたらしい。男性は今度も追い越して林の中を横切っていく。どう見ても間違いであることは明白なので「そのルートは間違っていますよ。標識は上部に登るようになっています」そういって先ほどの標識を指さした。男性も気がついたらしくルートを修正した。結局はこの男性と社山まで一緒の登ることになってしまった。

ルートは鹿の通る道が良く踏まれており迷うことはない。新緑の淡いみどりの光がさし込む、樹林の中を登っていく。空気が乾燥しているのか、汗はさほどかかずに登ることができる。なりゆきで先ほどの男性と話しながら登ることになった。男性は都内からやってきたOさんで、年齢は私と同じだが、体重は私よりも10キロ近く少なく羨ましい。ともかく久しぶりにしゃべりながら登るのは楽しい。

尾根に到着すると、下の林道から見えていた白い花の正体がわかった。それはズミで、ナシやリンゴのように5枚の花びらに20本の雄しべがついている。このズミの花は盛りを過ぎたとはいえ、枝いっぱいに咲き誇っている様は圧巻である。眼下には松木川の河原が見え、その先には備前楯山が大きい。また、松木川に沿って屏風のように連なる中倉山は草木が無く、岩肌が剥き出しになり、朝の高度の低い光によって山襞の陰影が立体的に見えた。



上部を索道が走っているのでゲートがある

尾根の上部に白い花

雨量観測局の標識

ズミの花

備前楯山

ズミの群生



社山から降りてくるこの南尾根のルートは松の木に覆われているが、下草が少なくルートは比較的わかりやすい。この尾根を忠実に辿っていけば社山にたどり着けることで、安心感が心の中からわき上がっていた。途中でOさんに夏みかんを分けて頂いた。そういえばこれからの季節は、リンゴやミカンのような果物を持ってくるべきだと感じた。それにしても素晴らしい尾根道でシカに食べ尽くされた下草が短くなっており、展望も良く歩きやすくすこぶる快適だ。その中に点在する木々絶妙な配置にあり、どこかの公園を散策しているようだ。1180mの三角点峰は気づかずに通り過ぎてしまったようだ。アップダウンも少なく展望もすぐれている道は時間が気にならないうちに過ぎていく。大きく見えていた備前楯山が高度を上げるに従って小さくなっていく。そうしてその代わりに袈裟丸山、中倉山の後ろには庚申山が青く山並みを連ねていた。尾根を1時間ほど歩くと目の前が広々とした草原状の場所に着いた。この付近はまだ完全に冬から目覚めておらず、枯れ草の原となっていた。Oさんとここで腰を下ろして休むことにした。Oさんはゆで小豆の缶詰を開けて、半分分けてくれた。賞味期限を過ぎていたがそれほど気にする物ではなかった。Oさんはよく見かける山での自慢話をするタイプでなく、話をしていても気が休まった。

15分ほど休んでからザックを背負って歩き出した。しばらく歩くとOさんが「ナイフを落としたので戻る」と言ってザックを降ろした。おそらく先ほど休んだ場所で紛失したと思われる。缶詰を分けてもらった以上、一緒に探しに行かなくてはならないような気がして、一緒に戻ることにした。先ほど休んだ場所で探してみたが、なかなか見つからない。二人で5分ほど粘ったが見つからない。Oさんは諦めたと言って帰り始めた。しかし、どうしても探してやりたいので再度付近を注意深く探してみると、笹の中に刺さったように五徳ナイフがあるのを発見した。スプーンが開いたままになっているところを見ると、小豆を食べたときに落としたことは間違いなかったようだ。

ザックを背負い、ピークを巻くように踏み跡は続いており、ピークを踏むことなくコルに出ることが出来た。このコルからは今までとは別の風景が広がっていた。大平山の枯れ草の斜面が、日本の風景を越えているようにも見える。荒々しい荒涼とした山肌が沢から一気に天に届いている。また足元からの崩落している斜面は一気に沢まで累々と岩石を敷き詰めたように落ち込んでいる。この斜面は足を踏み外して落ちたらひとたまりもないだろう。社山までの道はカヤトの斜面を登ることになるが、一本のアカヤシオが良いアクセントとなり、殺風景な斜面にピンクの色彩を放っていた。この苦しい斜面を登ると大平山の左に青紫の斜面の山襞に白い残雪の筋が細くなり始めた、白根山から錫ヶ岳までの2000m級の山稜が青空に映えている。目を西から東に転じると半月山はなんと遠く感じるのだろう。足裏の痺れは相変わらずで、地面に立っている感覚がない。斜面の傾斜が緩やかになり、黒木に覆われた山頂が見えてきた。

社山山頂は三等三角点があり、その周りが裸地になっていた。展望は木々に阻まれて登ってきた足尾方面が見えるだけだった。時刻は10時半で早い。半月山まで行きたい欲望が立ち上がってきた。こうなればこの場所に留まる時間が惜しい。Oさんは疲れもあり、半月山までは行かないという。それではと、ザックを持ち上げて歩き出そうとしたら「コーヒーを飲んでいきませんか?」という。時間は惜しいがせっかくの好意なので有り難くいただいてから、山頂を発った



崩落地

崩落地から皇海山

アカヤシオ

社山への道

皇海山が大平山の左に見える

社山山頂

社山から阿世潟峠に下降する


社山から阿世潟峠への道は素晴らしい展望に恵まれた道であった。前方に見える半月山の横は斜面と水平に切り取った駐車場が見えるのですぐにわかる。それにしても半月山までは小さなコブのようなピークが多く感じる。久しぶりに闘志が湧いてくるのがわかる。中禅寺湖とコニーデ型の男体山はよく似合っている。その脇を固める女峰山が従者のように寄り添っている。戦場ヶ原の始まっていないのだろう。芽吹きを告げる色彩は感じられない。しかしながらこの登山道は広葉樹の芽吹きの始まったみどりの木々が目にやさしい。足尾からの道は人に会わなかったが、この阿世潟峠への道はかなりの人とすれ違った。それもカラフルな服装が目につき驚くばかりで、ヨレヨレの私は汗にまみれて黒色中心の服装は浮いているように感じる。

それも阿世潟峠を過ぎるとすれ違う人は極端に少なくなった。疲れがたまってきたが、我慢できないことはないので休まずに通過して先に進んだ。小さなピークを越えて、崩落地を過ぎてたどり着いたピークは、大きな木が立っていた。標識には「中禅山」と書いてあった。これが正式名称では無いだろうが、今後は一般的に呼ばれていくのかもしれない。ピークでひと休みしてから下降していくとすぐに半月峠にたどり着いた。ここも留まる必要はないので、休まずに最後の登りに取りかかった。途中には数本のアカヤシオがあり、一本一本を目標にして登っていく。

やがて道はなだらかになり、黒木の林の中を縫うように歩いていく。意外にもこの歩きがかなりきつかった。ここは観光地なのだろう。就学前の子供を連れた親子とすれ違った。汗くさいオヤジはなんと肩身が狭いのであろう。半月山山頂には三角点があり、三人の男女が座り込んでいた。旨そうなバナナを食べている。「お腹いっぱいだけれどももったいないから食べよう」などと話している。バナナ欲しいなあ!!と思いながらもザックを背負ったまま山頂でウロウロしてから下山することにした。

ともかく、安心できる場所まで行ってから昼食にしようと考えていた。中禅寺山を過ぎて次のピークでやっと腰を下ろすことが出来た。先に休んでいたシマヘビがソロソロと逃げ出して場所を空けてくれた。ザックを置いて、まずはビール!!一気に飲むと喉がゴクッと鳴った。静かな山頂でゆっくりと落ち着いて休むことが出来た。




中禅寺山

社山を振り返る

半月山への登り中禅寺山が大きい

半月山への登りから男体山

半月山のアカヤシオ

半月山山頂

半月山展望台から

やっとビール


さあ、休んだあとは下るだけだ。阿世潟峠から足尾への標識はないが、道形はしっかりしている。沢に沿って下り何度か渡渉を繰り返して、林道に出てから単調な歩きを継続して銅親水公園に戻った。



倒木の道

落石で埋められた林道

新緑の道

増水時には渡れない


「記録」

銅親水公園6::45--(.13)--06:58分岐--(.08)--06:06林道分岐--(.10)--07:16雨量観測所順路標識--(.42)--07:58稜線08:05--(.06)--08:111180m--(.54)--0905休憩09:15--(.06)--09:21捜し物戻る09:30--(.53)--10:23社山10:42--(.30)--11:12阿世潟峠--(.(.39)--11:51中禅寺山11:57--(.05)--12:02半月峠--(.27)--12:29半月山12:40--(.49)--13:29休憩12:44--(.09)--13:53阿世潟峠--(1.29)--15:22休憩15:33--(.28)--16:01銅親水公園

沿面距離19.9km


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)