堅炭尾根の絶景に感動(一ノ倉岳・茂倉岳・武能岳)  
登山日2011年10月8日



堅炭尾根から見る幽ノ沢の紅葉


芝倉沢・堅炭尾根/一ノ倉岳(標高1974m)/茂倉岳(標高1978m)/武能岳(標高1760m)


10月8日(土)


今年の7月に中芝新道を登ったが、あまりの暑さと雪渓の状態の悪さに撤退してしまった。それではと尾てい骨の痛みも無くなってきたので、紅葉の適期であるこの時期に再挑戦することにした。この前の時は、前日車中泊にしたら寝過ごした苦い思い出があるので、自宅を午前3時に出て土合に向かった。
土合橋駐車場はすでに多くの車が駐車していた。その一角に車を止めて、まずはカップラーメンの朝食を済ませてから出発だ。ここまでは順調でなんとか5時ちょうどの出発となった。周囲は暗く、ヘッドランプの明かりを点して車道を上っていく。普段は閉鎖されている有料駐車場は、この3連休を当て込んで開いており、かなりの車が入っていた。さらに進むとなにやら車が渋滞している。不思議に思って近づいてみると、なんとロープウエイの駐車場が開くのを待っている列だった。今日はかなりの人出が予想される。あのロープウエイからの天神尾根の大渋滞を考えると恐ろしくなってくる。登山指導センターに立ち寄ってから、明るくなり始めた車道を歩き始める。この時期は車道は通行止めとなり、一般車両は入ることは出来ない。これはこれで良いと思うのだが、どこかが潤う仕組みはどうもしっくりこない。


それにしても静かな道で、誰にも会わない。会ったのは背中に小猿を背負った親猿だけだった。マチガ沢の出合は静かに通り過ぎて、一ノ倉沢の出合に到着すると、おりしも朝日が山頂に当たり真っ赤に染まっていく光景に出くわした。誰もいないこの場所で静かに光が上部から下方に降りてくる様子を眺めて過ごした。おなじみの風景であるが、静かな時間の中で過ごすことは至福の時間だ。


一ノ倉沢出合を過ぎて広い道をゆっくりと慌てないように進んでいく。幽ノ沢出合の水場で水1.5リットルを補給しておいた。やがて芝倉沢の出合に到着すると、前回とのあまりの違いに驚くことになった。あれほど悩まされた雪渓は無くなり、登山道の踏み跡がしっかりと見えているのだ。これなら迷うこともあるまい、


沢の左の踏み跡を暫く進み、それから対岸に渡り沢の右につけられた道を辿っていく。大きな石が敷き詰められた沢は大きく左に曲がり徒渉点に到着だ。徒渉点の黄色いマーキングは前回よりのハッキリしているので、書き直されたのだろう。さて、ここからはこのルートの核心部である急登が始まる場所でもある。道というか、岩場登りの連続というか、手足を使わなくてはとても登れない場所もある。しかし、登る分には天気に恵まれれば、ルートを外すことはまず無いと思われる。しかし、前回よりも岩が滑りやすいのは、岩が濡れているためなのかもしれない。今日はこの道を下るのは、どうしても避けたいと感じた。そんなときに一瞬、右ふくらはぎに激痛!!!!完全にふくらはぎが攣ってしまった。そのまま動くことが出来ない。水分補給して、しばし安静にしてから徐々にストレッチを繰り返すと痛みも和らぎ、ほっと一安心。やはり日頃の運動不足はこんなところで現れてくる。



一ノ倉沢

芝倉沢に到着

大きな岩の連続

徒渉点はわかりやすいマーキングがある


前回は疲れ果てて、おまけに尻餅をついたら尾てい骨が悪化すると思い慎重に下ったが、よくぞ無事に下ることが出来たものだと感心する。朝の光はまだこの斜面には届いてこないが谷を挟んだ対岸の武能岳や笹平は光が当たって輝いている。今日はどうしてもあの稜線を歩いてやるぞ。そんな気持を持ってひたすら登っていく。唯一トラバースするところにボルトが打ち込まれていた。ここに雪が乗っていたらそれこそ緊張する部分だ。傾斜が緩やかになってくると、眼前が開け目の前に朝の光が満ちた谷川岳東面の岩壁が眼下に飛び込んできた。湯桧曽川は白蛇のようにうねりながら土合方面に続いている。それを挟んだ対岸の白毛門、笠ヶ岳、朝日岳は逆行気味なので立体感に乏しく感じる。


そして上部にはこの尾根のシンボルである堅炭岩の鋭鋒が屹立して見えていた。



沢から離れて高度を上げていく

こんな棚のような道もある

ナナカマドの赤い実がアクセント

堅炭尾根の稜線に到着

ここから先は原色の紅葉の連続。笹原に点在するモミジやツツジの鮮やかさ、岩峰にへばりつく草モミジを堪能しながら登っていく。堅炭尾根に移ってからは危険なところはなく、ちょっと難易度の高い登山道だ。それに笹の刈り払いが行われたらしく、前回藪でルートミスをしたところも難なく通過できた。それにしても、堅炭岩は登山道のすぐ脇にあり、ロープなしでも行けそうな感じがする。しかし、それなりのリスクを考えると躊躇してしまうのが本音だ。


この前敗退した1740m地点に着いても疲れは全く違っていた。やはり暑さは体力をいかに消耗するかと言うことだ。



堅炭尾根西斜面

堅炭岩

幽ノ沢の見事なコントラスト
 
登山道は明瞭だ

振り返ると芝倉沢が眼下に見える

こんな岩峰も気持ちよく越えていく

笹の斜面にコントラスト

湯桧曽川を眼下に


一ノ倉岳に近づくと一面の笹原となった。見れば茂倉岳とつながる稜線には人の姿も見える。もう一息で山頂と思うと、長かった登りが懐かしく思えるのが不思議だ。刈り払いの道をどんどん進んでいくと前方の展望が一気に開け一ノ倉岳山頂にたどり着いた。、谷川岳オキノ耳から平標山まで連なる稜線と眼前の茂倉岳の草モミジの原が美しい。土合橋から約5時間半、芝倉沢出合から3時間を要している。メタボ体型の登山者のタイムだから、これはあまり早くないペースだろう。


山頂には一人の登山者が「登って来たルートは厳しいですか?」と聞いてきた。「下降はしたくないですね」と答えると納得した様子だった。山頂にあまり留まるつもりはなく、パノラマ写真を撮影してすぐに茂倉岳に向かう。



前回はこの付近で敗退

一ノ倉岳直下の笹原から登山道を振り返る
 
一ノ倉岳からのパノラマ)



茂倉岳までのわずかな距離の稜線歩きは実に快適だ。周囲の遮るもののない展望は表現できないほど充実感に満ちあふれている。静かなこともあり、谷川岳の中でも好きな場所の一つである。茂倉岳の山頂には食事中の3人パーティーと、一ノ倉岳で会った一人が休んでいた。そのなかでおにぎりを食べている人に声を掛けて記念撮影をしてもらった。(お食事中申し訳ありませんでした)


さて、この時点では蓬峠に向かうか否か決めかねていた。それは、茂倉岳から一気に下降して鞍部の「笹平」そして武能岳への登りがあるからだ。日帰り馬蹄形縦走の時にこの辛さが分かっているだけに決心がつかなかったのだ。さりとて、肩の小屋付近のの喧噪を考えると、答えは決まってしまっていたのかもしれない。問題は時間で、どうしても暗くならないうちに駐車場に戻りたかった。


もうすでに足は、蓬峠方面に向いていた。


笹平の鞍部を目指して一気に約380mを下降する。途中で腕組みをして微動だにしない登山者がいた。近づくとカメラマンらしく、大型ザックには三脚とテントらしきものが見えていた。おそらく光の陰影を見ながらチャンスを待っているのだろうが、こんな生き方もあるんだと思いながら追い越した。しかしメタボオヤジが風景の中にいるのは申し訳ないと思った。


それにしても眼前の景色は素晴らしい、武能岳の向こうには大源太山と七ツ小屋山、左は魚野川に沿った越後湯沢の町並とそこにそびえる飯士山。右はなだらかに朝日岳から派生する国境稜線が遠く北に向かって連なって霞んでいる。


笹平に到着したのは11時半、これから武能岳に登る体力をつけるために食事のために大休止とする。眼前には登って来た中芝新道がハッキリと見えている。堅炭尾根までの険しい道を見ると、よく登ったものだと自分自身で褒めてしまう。まったりとしていると、茂倉岳で食事中だった3人が追い越していった。その中でも女性はかなりの健脚で、男性二人を引き離して軽快に武能岳を登っていった。


エアリアマップを見ると、あまりゆっくりとしては居られないので、彼らのあとを追うようにして笹平を発った。


一ノ倉岳から茂倉岳

茂倉岳直下のルート

武能岳の向こうに大源太山の鋭峰

笹平から見る中芝新道(尾根までは崖のようだ)


標高差170mの登りは疲れていなければなんと言うことはないのだが、久しぶりの山行なので疲労もかなり出ている。なるべく立ち止まらないようにして歩調を整えてゆっくりと登っていくことにした。先行した3人が良きペースメーカーとなり、ひたすら登り続ける。このあたりは景色を見る余裕も振り返る余裕も無く、ひたすら登るだけだ。


途中で軽快に下降してくる登山者2人とすれ違った。彼らもまたあの茂倉岳の過酷な登りが待っているはずだ。亀のような歩みでも30分ほどで武能岳の山頂に到着した。先行した3人はすでにくつろいでいた。茂倉岳と同じように記念撮影のシャッターをお願いした。彼らも蓬峠経由で土合に戻るようだ。聞けばここから2時間半程度だと言うが、それは無理だろう。(実際に無理)


ともかく時間がないので、足早に武能岳をあとにした。




武能岳に向かって先行者3人

武能岳から笹平を振り返る


蓬峠に来れば小屋に立ち寄るのが定番なのだが、どうしてもそこに行く気になれない。分岐で眺めただけで、下ってしまうことにした。峠から10分ほどで水場があるからで、そこで休むことにした。ほどなく水場に到着し、ここまで温存してきた缶ビールの蓋を開けて一口呑んだ。旨い!実に旨い!登山道脇に腰を下ろしてゆっくりと休んだ。時刻は午後1時前、なんとか明るいうちに駐車場に行けるめどがついていた。


小さな白樺避難小屋を過ぎて、湯桧曽川を辿る新道経由で土合までひたすら約3時間を歩き続けた。





旨い!!

白樺避難小屋(あまりにも小さい)


土合橋駐車場05:00--(.20)--05:20指導センター--(.29)--05:48マチガ沢--(.22)--06:10一ノ倉沢--(.23)---06:33)幽ノ沢--(.29)--07:02芝倉沢07:12--(.40)--7:42徒渉点--(.46)--8:28堅炭尾根--(1.59)--10:27一ノ倉岳10:30--(.14)--10:44茂倉岳10:47--(.41)--11:28笹平(休憩)11:49--(.33)--12:22武能岳12:25--(.27)--12:52蓬峠--(.10)--13:02水場13:19--(.29)--13:48白樺避難小屋--(.04)--13:52旧道分岐--(.49)--14:37湯桧曽川(新道)--(.25)--15:02休憩15:07--(.11)--15:18JR巡視小屋--(.38)--15:56林道--(.23)--16:19駐車場


群馬山岳移動通信/2011



GPSトラックデータ
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)