カンマンボロンから新雪を踏んで「瑞牆山」  登山日2013年12月22日



これが弘法大師が彫ったと言われる梵字、「カンマンボロン」と読むそうだ


瑞牆山(みずがきやま)標高2230m 山梨県北杜市


瑞牆山の山中にあるカンマンボロンとは面白い名前だ。

それは花崗岩に梵字が刻み込まれており、大日如来・不動明王を意味しており、これを「カンマンボロン」と読むのだそうだ。これについては「北杜市立増富小学校」のホームページに詳しい。そこで行こうとするのだが、記録を見るとカンマンボロンに行くにはほとんどの人が迷っている。瑞牆山は2006年6月に金峰山を登るついでに立ち寄ったが、天候が悪く展望は得られなかった。今度は展望を期待してそのカンマンボロン経由で登ることにした。

12月22日(日)

今日は久しぶりに同僚のTさんと一緒に登ることになった。待ち合わせた時刻は7時半だったが、道路状況が良く一時間も早く到着した。Tさんはすでに到着しており、出発準備を始めるところだった。それにしてもこの駐車場所は「みずがき山自然公園」の入り口で、まだまだ先がある。しかし、この時期はゲートが閉じられ車で公園内に入ることは出来ない。折しも3日前の12月18日から19日に掛けて天候が悪く、このあたりは雪が積もったので、周囲は雪で真っ白。気温はマイナス11℃程度で痛みを感じる寒さになっていた。

カップラーメンを食べて朝食として、ザックを背負って歩き出した。しかし、このゲートはなかなか手強く乗り越えるのにかなりの時間を要してしまった。横から通過することもできそうにないから乗り越えるしかないのだ。無事に乗り越えてから、みずがき山自然公園までの車道をTさんと横一列になって歩いていく。すると前方をシカの群れが10頭ほど隊列を作って斜面を登っていく。このあたり、恩賜公園なので、自然保護に関しては厳しく規制されているのだろう。しかし、シカがどんどん増えていくのも問題であることは間違いないだろう車道を進み右手に周辺を現した看板があり、ここが登山口となっている。

期待していたトレースはなく、新雪を踏みしめてTさんを先頭にして歩き始める。Tさんは約1ヶ月前にカンマンボロンに挑戦したが、惜しくも道がわからず敗退している。しかし、途中までとはいえ歩いているので地形は詳しいはずだ。予想通り、標識のたぐいは見られない。赤テープはあるが、これを信用していたら、間違えたという記録があり、結局はこのことが頭から離れずに今回のルートミスの原因ともなった。結果的には赤テープを信用して歩くべきだった。

ネットの記録によると、五叉路があり迷うとあったが、それも気が付かないうちに通過している。天鳥川に沿って進んでいた道は、いつしか左にカーブして、岩峰群に向かっていく。トレースは無いので窪んだ部分が道であると判断して辿っていく。時折、赤テープが見つかるとルートが間違っていなかったと安心するのである。


みずがき山自然公園入り口のゲート

瑞牆山の上部に朝日が当たりはじめた

瑞牆の森は恩賜公園だったのだ

林の中を進む


前方には木々の隙間を通して大きな岩壁が見えているので、あのあたりがカンマンボロンかと予想しながら登っていく。途中で谷をトラバースするように赤テープがあったが、どうも上部に行くのが正しいと確信して赤テープを無視して登り続けた。傾斜もきつくなり、疲れも出てきたことで休憩することにした。あらかじめネットからダウンロードしたGPXデータをGPSに入力してあるので確認すると、大きく外れている。どうやらあの赤テープが正解だったらしい。せっかく登り上げた斜面だったが、ふたたび戻って赤テープに従って溝のような枝沢を渡って左岸に移った。

この枝沢に沿って上部を目指すが、ここでアイゼンを装着することにした。久しぶりのアイゼン装着でちょっと手こずったが無事に装着出来た。Tさんは自身で考案したアイゼン装着方法でワンタッチ装着した。アイゼンを装着すると格段に歩きやすくなり、スリップによる疲労も軽減出来るようになった。

真っ直ぐ上部を目指していたのだが、それでもルートはわかりにくい。金属製のプレートがある岩を過ぎるとすぐに「カ↑」の文字が岩に赤ペンキで書いてある。これも無視して下り気味にトラバースする。しかし、どうも様子がおかしいと感じる。上部には何度か見たことのあるネット上の記録にあった岩だ。ここを過ぎると行き過ぎてしまうので、上部に向かって登ることにした。Tさんは左側を私は右側を適当に登っていくと大きな倒木があった。これもネットで見た記憶があると考えていると、Tさんから呼ぶ声が。どうやらルートが見つかったらしいので、上部に行くのを止めて、岩壁を左側に向かって進んだ。左に回り込むと先ほどの「カ↑」のマークから真っ直ぐ登った場所に着く。さらに回り込むと南アルプスの白根三山が望めるテラスに着いたが、GPSを見るとカンマンボロンから離れてしまっている。またもやルートミスをしてしまったようだ。それではと、先ほどTさんに呼ばれて上部に登るのを止めた場所まで引き返した。

今度はその場所から真っ直ぐ上部に登ると、ネットで見た岩の隙間が現れた。間違いないここがカンマンボロンの入り口だ。たしかに隙間は狭く、ザックはここに残していく方がよさそうだ。メタボ老人が通過できるか心配だったが、なんとか岩に身体をねじ込んで隙間の向こう側に出た。すると、岩壁にカンマンボロンがあった。Tさんとここに到達した感激を分かち合った。カンマンボロンは花崗岩が風雨によって削られたにしては、奇妙で文字のように見える。ここを発見して梵字と表現した先人の想像力に驚くばかりだ。見上げると上部の岩は迫り出していて、圧迫感を感じる。そして融けた雪がツララになってぶら下がっている。そのツララが見ている前で落下してきた。我々が立っている場所からわずかに離れた場所に落下して砕けた。もうすこしずれていたら、痛かっただろうと、ちょっとだけ緊張した瞬間だった。カンマンボロンをじっくり観察して、次の瑞牆山を目指すことにした。


このマークの通り上部に行けば良かった

目の前にカンマンボロンが・・・しかし解らず左に進んだ。

左に回り込んだが途中で引き返す

ここがカンマンボロンの入り口

カンマンボロン

カンマンボロンに触れてみる

カンマンボロン上部の岩。つららが落ちてくる。

その上部にも梵字のような文様が見える



瑞牆山への道は「パノラマコース」と呼ばれている。しかし、極端に歩く人が少ないのだろう。標識も少なく、時折現れる赤テープがコースを示す手がかりだ。しかし、その赤テープもなかなか見つからない。こんな時は二人いると、どちらかが発見することが出来るので、今回は大いに助かった。

ルートは徐々に険しくなり、ピッケルを突き刺して支えるようになってきた。よく見ると、フィックスロープが設置されており、それを雪の中から掘り出して掴まって登ることにした。周囲は雪が積もってよくわからないのだが、おそらく岩がゴロゴロしているのではないかと思われる。やがて窪んだ溝のような場所に出た。良く解らぬが、ロープが通せんぼするように横に張られていた。そこに入ってみると雪が深くなり、膝のあたりまで隠れるほどだ。ピッケルを支点にして、膝で雪を押してから一歩を踏み出す。ラッセルの基本に沿った歩き方だ。やっとの思いでその溝を登り切ると、思いがけない展望が広がった。それは上部に雪の衣をまとった富士山で、想像していたよりもずっと大きく見えている。後続のTさんも到着し、二人でこの展望を褒め称えた。

ここから一旦、沢に下ってからふたたび登り始める。頭上には青空に突き上げるような形の花崗岩の岩峰が白く映えている。ルートはだんだんと怪しくなり、どこに道があるのか解らない状態が続いた。こうなれば勘を頼りにいくしかない。それにいざとなればGPSがあるから問題は無いだろう。寒さで枯れたようになっているシャクナゲの葉を縫うようにして先に進む。ふと、時間を確認すると13時になろうとしており、大幅に予定が遅れてしまっている。夢中でルートを探しながら歩いていたので時間の感覚が無くなったのに違いない。やがて大ヤスリ岩の基部に到着した。ところがここに来て前に進むことが出来なくなってしまった。それは立木に雪が積もって前方を塞いでいるからだ。GPSを見るとすぐそこに富士見平からの登山道があるのだが、どうしても進むことが出来ないのだ。どこかに突破する場所はないかと、わずかに下降したが見つからない。ふたたび大ヤスリ岩の基部に戻り、雪の積もった薮に突入した。入ってみれば何とかなるもので、わずかな距離で富士見平からの登山道に合流することが出来た。



道形を探しながら歩く

なにかに似ているような?

なにかわからないがロープがある

膝までの新雪をラッセルする

おお!!絶景だ!!

急斜面にロープがある

標識がたまに見つかる

大ヤスリ岩にボルトを打ってはいけません

この先に行けないので迷った

大ヤスリ岩

富士見平からの登山道に出る


富士見平からの登山道はトレースがしっかりしていて、なんの問題もなかった。大ヤスリ岩を回り込むようにして上部に向かって大きな石の間を縫うように登っていく。ここに来てTさんの様子がおかしくなってきた。足取りがぎこちなくなり、あきらかにシャリバテの様子が見られた。休んでなにか食べようかと声を掛けたが、あとわずかなので、このまま山頂まで歩くという。3人ほど単独行の登山者とすれ違いながらペースを保ちながら歩いた。

急斜面の登山道を詰めると、不動沢に行く道を分け、山頂には右に折れて徐々に高度を稼いでいく。ロープのある場所を過ぎて、梯子を昇ると目の前が開けて瑞牆山山頂に飛び出すことが出来た。山頂は学生の団体が占拠していたが、入れ違いに下って行ったので、Tさんと山頂を独占して展望を楽しむことが出来た。小川山は近傍にあり金峰山の五丈岩がハッキリ見え、その隣には富士山が浮かんでいた。残念ながら、八ヶ岳は上部が雲に隠れて全体を見ることは出来なかった。カンマンボロンで見えていた白根三山はすでに雲に覆われて確認できなかった。眼下の大ヤスリ岩の頂部を眺めながら、一合の日本酒をTさんと分け合って乾杯した。


瑞牆山山頂から「小川山」「金峰山」「富士山」

金峰山の五丈岩

富士山

山頂の賑わい

定番の風景

山頂標識

八ヶ岳方面


帰りはダラダラとトレースを辿りながら天鳥川に向かって下降。途中で単独行の男性とすれ違う。聞けば金峰山の帰りだという。金峰山は雪が深く、ラッセルに苦労したと話した。ところで、Tさんの調子は今ひとつで、2度ほど足が攣ってしまいペースダウン。天鳥川の桃太郎岩で休憩して、ミネラル分と水分を補給すると、なんとか歩けるようになり、富士見平小屋に向かった。

富士見平小屋は中から話し声が聞こえたが、入ることはせずに夕暮れが迫っているので、わずかな休憩ですぐに出発した。すぐに単独行の男性に追いついた。登山者は、足を引きずっているので、聞けば金峰山手前で雪を踏み抜いて岩の間に足を取られて痛めたとのこと。それにしても痛ましい歩き方で、よくもここまで歩いてきたと思った。

林道経由で最後の瑞牆山の勇姿を見ながら、冬至の日の短い明るさに追われながら駐車地点まで戻った。


下山開始

桃太郎岩

富士見平小屋

林道から夕日に染まる瑞牆山



駐車地点(ゲート)07:15--(.14)--07:49登山道起点--(.51)--08:40ルートミス起点--(.18)--08:58戻る--(..08)--9:06ミス起点--(.35)--09:41基部左へ--(.13)--09:54戻る--(.08)--10:02カンマンボロン10:23--(1.56)--12:19富士山展望地--(.52)--13:11登山道--(.27)--13:38瑞牆山14:09--(1.07)--15:16天鳥川15:23--(.30)--15:53富士見平小屋15:56--(.47)--16:43瑞牆山荘--(.15)--16:58駐車地点

群馬山岳移動通信/2013


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)