蓮華温泉から「朝日岳」「雪倉山」「小蓮華山」を周回
登山日2015年7月10日〜11日




朝日小屋前から中央に白馬岳 右の建物は「ビジターセンター)

朝日岳(あさひだけ)標高2418m 富山県下新川郡・新潟県糸魚川市/雪倉岳(ゆきくらだけ)標高2611m富山県下新川郡・新潟県糸魚川市/小蓮華山(これんげさん)標高2763m長野県北安曇郡・新潟県糸魚川市



新潟県の最高峰である「小蓮華山」はNHKのドラマのエンディングに使われたこともあり、興味を持っていた。蓮華温泉からの日帰りピストンを考えたが、その先にある「雪倉岳」「朝日岳」も登ってみたい。そうなるとどうしても一泊になってしまう。その一泊でも行程はかなりきつい。雪倉岳避難小屋は緊急時のみ使用可能でそれ以外の宿泊は自粛とのこと。そうなると、蓮華温泉を起点にして、朝日小屋で宿泊し反時計回りに行くしかない。

このルートは2004年5月24日に旅人さんが歩いている。このときは蓮華温泉でなくさらに下のヒワ平を起点として午前2時前に出発し、翌日の朝7時までの連続30時間を歩き通している。暴風の中で幻影に悩まされ、ルートを見失いながら歩く壮絶な記録は読むものを圧倒する。この旅人さんが7月11日に同じ山域の「栂海新道」を歩いていたのはする由もなかった。

朝日小屋は事前予約が必要であることから、電話をすると「雪が多いからアイゼンとピッケルは絶対に持ってきてください」「蓮華温泉出発は5時にしてください」と強い調子で言われてしまった。かなり恐ろしげな朝日小屋の女主人は、どんな人なのだろうと言う興味も持った。


7月9日(木)
会社を半日で切り上げて蓮華温泉に向かう。北陸道の糸魚川ICで降りてから南下し大糸線平岩駅の分岐に向かう。(結果的には高速料金を含め、距離的にも長野から白馬村を経由するほうがよかったので、帰路は長野経由とした)平岩駅を過ぎて山道に向かうと、いきなり携帯電話(docomo)が圏外になってしまったので、いったん戻って家人に連絡した。その後、蓮華温泉はもちろん、朝日小屋まで圏外だった。

工事用の車両と時折すれ違いながら長い林道を登っていく。白池森林公園を過ぎヒワ平まで来るとゲートがある。冬季はここで車両は通行止めとなるらしい。ほどなく硫黄の臭いを感じるようになると、蓮華温泉の駐車場だ。70台が駐車できるという広い駐車場は、10台ほどが駐車してあるのみだった。付近を偵察してから、カップ焼きそばをつまみにビールを飲んでから、早々に寝ることにした。


7月10日(金)
4時に起床して準備を始める。早朝のさわやかさは無く、なんとなく蒸し暑い感じがする。午前5時少し前に出発、蓮華温泉を過ぎて少し歩いたところで、忘れ物に気が付いて駐車場に戻る。再び蓮華温泉の前に差し掛かると単独行の男性に声をかけられた「もう、下山ですか?」「いや、ちょっと忘れ物」と答えた。車に戻って忘れ物を取り出してザックに入れて出発だ。


蓮華温泉駐車場(後方は雪倉岳)

蓮華温泉

蓮華温泉から見る朝焼けの山

アヤメ平

ツルツルと滑る木道

兵馬ノ平

瀬戸川

白高地沢

カモシカ坂の上部


蓮華温泉からの道は木道が延々と続いている。木道は老朽化していることもあり、朝露に濡れていることから滑るのなんのって、まして下り坂なので油断できない。案の定、気を緩めたすきに尻餅をついてしまった。朝靄は次第に上がり、「兵馬ノ平」まで来ると目指す朝日岳がどっしりと姿を現した。この「兵馬ノ平」は湿原で、ヒオウギアヤメ、ハクサンチドリなどが目立つ。

道はなおも下降し「瀬戸川」にかかる鉄の橋に差し掛かる。ここで蓮華温泉で声をかけられた単独行の男性に追いついた。男性は埼玉から来たYさんで、私よりも4歳年上だった。このYさんとは翌日まで行動を共にすることになった。蓮華温泉からこの沢まで標高差約260mを下降したことになる。瀬戸川からはちょっと登り気味になる。ここで虫除けネットを被った単独行の男性に抜かされた。この人は茨城のKさんで、翌日の白馬大池から蓮華温泉まで行動を共にすることになる。ヒョウタン池と呼ばれる池を過ぎるあたりで、さらに単独行の若い男性に追い抜かされた。見れば大型ザックを背負ってテント泊と思われる。どうやら、朝日岳に登っている人の中で最後尾になったようだ。

「白高地沢」は幅の広い流れで立派な橋が架かっている。ここで埼玉Yさんと再び合流し、話しながら休憩する。ここからはいよいよ急登の始まりで、朝日岳までは1100mの標高差を登らなくてはならない。樹林帯の中の道はとにかく苦しい。先ほどまで一緒に休んでいた埼玉Yさんは先行し、すでに見えなくなっている。ミズバショウが咲く道を過ぎると水場があり、ここで単独行の男性に追いついた。この方は栃木のKさんでかなりの強行軍でここに来ているらしい。栃木Kさんはかなり疲れているようだが、こちらも疲労困憊と言った感じだ。そのために疲れているはずの栃木Kさんにどんどん離されていく。


タチツボスミレ

ハクサンチドリ

アヤメ

ショウキラン

サンカヨウ

ショウジョウバカマ

シラネアオイ

オオサクラソウ

イカリソウ

マイヅルソウ

トキソウ

キンコウカ


樹林帯を抜けると、草原状の木道となる。草原にはコバイケイソウやキスゲが風に揺れている。高度もだいぶ上がったようで、下方には谷筋の雪渓が見え隠れしている。これ以上は歩けそうにないので、木道の上に腰を下ろしてぼんやりと花を眺めて過ごした。しかし、いつまでもこうしているわけにもいかないので、立ち上がって歩き始める。


花園三角点付近

花園三角点付近から蓮華温泉方面

五輪尾根から朝日岳

朝日岳方面


花園三角点と呼ばれる場所を過ぎると残雪が豊富な斜面に取りつくことになる。滑落してもたいしたことは無いので、どうでもいいのだが、軽アイゼンを装着することにした。この雪渓はわずかな距離で終了してしまった。ここはハクサンコザクラが咲き乱れる素晴らしい場所だ。花に慰められながら登っていくと、タカネバラが咲き乱れる展望に優れた場所にたどり着いた。栃木Kさんもここで休んでいたが先に出発して行った。



チングルマ

ユキワリソウ

アズマギク

タカネナデシコ

シロウマアサツキ

タカネバラ

アカモノ

キヌガアソウ

イワカガミ

ハクサンコザクラ

ムシトリスミレ


道は再び樹林帯となり、先行していた埼玉Yさんと、栃木Kさんに追いついた。これからこの三人は付かず離れず翌日まで行動を共にすることになる。とにかく花の数が多く、「なかなか足が進まない」とは言い訳で、疲れていたのが本音だ。水の消費も尋常ではなく、持参した2リットルの水は使い果たし、ザックにくくりつけたシェラカップで何度も雪渓の水を汲んでは口に入れた。今回はルート上の水場が豊富で助かったともいえる。


五輪尾根の雪渓を行く(栃木Kさん撮影)

雪の壁を登る埼玉Yさん

栃木Kさん、もう少しですよ


吹上のコルは栂海新道からの道と合流する展望の良い場所だ。イワギキョウが風に揺れ腰を下ろすと、長かったここまでの道を眺めることが出来る。しかし、感慨に浸っている暇はない。朝日岳までの登りが待っているのだ。十分な休憩を取ってからなるべく、立ち止まらないようにゆっくりと歩く。先行する埼玉Yさんの絶妙なペースに先導されながら歩く、栃木Kさんは初日はペースが上がらないと言い、遅れ気味だ。長かった登りのルートもなだらかになり、笹薮の中の木道を抜けると、やっとのことで朝日岳山頂にたどり着いた。

朝日岳山頂は広い場所で山頂指示盤と標識が設置されていた。やはり目立つのはこれから目指す白馬岳から小蓮華山への稜線で、雪渓のまだら模様が目を引く。今日のこのバテバテ状態で、明日あそこまで行けるだろうか?不安は増大していった。なにしろ予定時間を1時間以上も大幅にオーバーした状況でこの朝日岳に立っているのだ。埼玉Yさん、栃木Kさんと一緒にぐったりして座り込んで時間を過ごした。しかし、いつまでもこうしてはいられないので、立ち上がって朝日小屋に向かって進むことにした。


リュウキンカ

オオサクラソウ

ハクサンイチゲ

コバイケイソウ

イブキジャコウソウ

イワギキョウ

ミヤマムラサキ

ハクサンタイゲキ


朝日岳から朝日小屋までは標高差400mを下降しなくてはならない。木道が整備されており周囲に入り込まないように管理がされている。残雪がところどころにあるが、アイゼンを使うほどでもなくどんどん下っていく。しかし、天候が悪い場合は道迷いをしそうな雰囲気である。いったん鞍部に下ってからわずかに登り返すと朝日小屋に到着だ。

朝日小屋の前のテーブルでは先行した茨城Kさん、東京の若い男性がくつろいでいた。すでにテーブルの上にはビールがあり、なんとも羨ましい限りだ。東京若人はテントを設営してすでにまったりとしている。今日の朝日小屋宿泊は4人で、テント泊は1人と言うことで落ち着きそうだ。まずは受付を済ますことにする。受け付けは小屋のご主人の「清水ゆかり」さんが対応。かなりお元気な方で孫が5人もいるとはとても思えない若々しさだ。宿泊者カードに記入するのだが、明日の予定を考えていると「蓮華温泉まで行くのだったら、今日のような歩き方ではなく、花はあまり見ないで歩かないとだめです」と言われてしまった。そこで、とりあえず明日の目的地を「白馬大池」としておいた。ただし、16時までに白馬大池に到着すれば、そのまま蓮華温泉まで一気に下山する覚悟だ。

部屋は10畳に4人と言う贅沢な配置だ。体を拭いてから着替えて外に出て、景色と会話を楽しむ。なんという幸せな時間だろうか、ここまで苦労して登ってきた甲斐があったというものだ。時間はどんどん過ぎていき、午後5時の夕食の時間となった。赤ワインの食前酒付の夕食は豪華なものだった。ご主人の説明を聞きながら富山の名物の加わった料理を食べる。手作りの料理は疲れた体に元気をもらう。ビールは350CCだったが、500CCにしなかったことが後悔される。それにしても小屋のご主人はよく喋るし、元気いっぱいだ。酉年生まれと言うから、還暦前なのだろう。この方の熱意が無ければ、朝日岳周辺はどうなってしまうのだろうと考えてしまう。ともかく明るく、疲れ切った身体にパワーをいただける存在であることは確かだ。埼玉Yさんは私より4歳上、栃木Kさんは2歳上、茨城Kさんは18歳下が判明。テント泊の東京若人は20歳代らしい。小屋のスタッフも同じ場所で食事をする。今日のスタッフはご主人と、年配の男性、若い男性、若い女性の4人が対応しているようだ。

食事も終わり、落日の陽を眺め終わってから早くも寝る準備で、8時には全員が横になっていたようだ。


吹上のコル

朝日岳までもう少し

朝日岳山頂

前方に朝日小屋が見える

朝日岳山頂から見る白馬岳から劔岳

朝日小屋

受付

朝日小屋のご主人

朝日小屋のテント場

左から栃木Kさん、東京若人、茨城Kさん、埼玉Yさん

豪華な夕食(赤ワイン付き)

朝食


7月11日(土)

朝4時ごろから全員が動き出す。朝食は5時からなのでありがたい。その朝食も豪華なので残さずに、すべて腹に収めた。茨城Kさんは早めの出発で朝食には加わらず先行して出発していった。残された60才台の3人は揃って5時半に出発だ。これだけ早く出発できたので、ひょっとすると蓮華温泉まで行けるのではないかと言う希望が湧いてきた。とりあえず白馬大池に16時に到着しなければ下山は諦めることにする。ご主人の見送りを背中に受けて出発する。昨日400mの標高差を下降したのに、今度はそれを登り返すのはつらい。小屋から朝日岳に登らない「水平道」があるのだが、まだ積雪が多く通行不可とのこと。ご主人の話では水平道とは名ばかりで、出発点と終点が同じ標高であることから名付られたらしい。実際はアップダウンがあり、名前のように水平ではないということだ。歩き始めて1時間弱で朝日岳山頂に到着した。昨日はわずかに雲があったのだが、今日は雲もなく全周囲が見られる。小蓮華、雪倉、わずかに杓子、白馬、旭、鹿島槍、劔岳と立山は距離があるのか霞んでいるようだ。目を転じれば栂海新道の途中の平らな山頂部を持つ犬ヶ岳が印象的だ。さらに目を移動すると、懐かしい雨飾山、焼山、妙高、乙妻、高妻、戸隠を遠望できる。






翌日の朝日岳山頂、劔岳がハッキリと見える




水平道は閉鎖中


朝日岳からは笹薮の中の木道をどんどん下っていく。昨日の五輪尾根もそうだが、このルートも今まで経験したことの無いほど、高山植物にあふれていた。あまりゆっくりしていると、この長丁場を歩ききることはできないので、ゆっくりとした撮影は我慢するしかない。それでも風に揺れるシラネアオイ、シナノキンバイ、ハクサンイチゲを見ると我慢できない。まして、可憐なハクサンコザクラの群落を見れば立ち止まってしまう。

水平道の分岐はロープが張られ通行禁止の処置がされていた。この辺りから道はなだらかな下りとなり、小桜ヶ原の湿原となる。この付近は雪渓がなくなった部分ではハクサンコザクラが密生して咲いている。なんとも美しい光景だ。埼玉Yさん、栃木Kさんと花を愛でながら歩く。ここは木道も設置されて湿原に入り込まないようになっている。この木道は濡れていて、脇見をしながら乗ったとたんに、見事に滑って尻餅をついてしまった。背中はたいしたことは無かったのだが、右腕を木道に打ち付けて青あざを作ってしまった。




シラネアオイ

シナノキンバイ

ミズバショウ

ミネザクラ

ハクサンコザクラの群生


いまが盛りのチシマザクラの花の下をくぐると、道はガレ場となり左手に岩場が現れる。「これがユバメ岩ですよ」と栃木Kさんが教えてくれた。ここからは道は我慢の登りとなる。先行する埼玉Yさんはすでに見えなくなり、後ろにいる栃木Kさんも私の視界から消えてしまっている。振り返ると、通過してきた朝日岳が大きく見えている。前を見ると延々と続く道が青空の中に入り込んでいる。天気は最高で、強烈な日差しが肌を刺し、痛いくらいだ。


小桜ヶ原の雪渓を行く(栃木Kさん撮影)

目の前のピーク、いったいどこを登るんだろう?

ツバメ岩

心配していたピークは左を巻いていく

マツムシソウ

オヤマノエンドウ


標高2280mの岩場で先行していた埼玉Yさんが休んでいたので追いついた。二人で休みながら取り留めのない話をして過ごす。なんでも軽量化をするために食料はビスケットのみだという。それに比べると私は余りすぎるほどの食料を持っている。おそらく2日間くらいビバークしても全く問題ないだろう。いつも単独行なので心配が重なり装備は増えてしまっているので、今日も16キロくらいを担いでいる。休憩後、埼玉Yさんと再び歩き出す。すぐに単独行の若い男性とすれ違った。本日初めての逆コースからの登山者だ。トレランシューズで実に軽快に歩いて(走って)いる。この人はヤマレコを見ると私と同じルートを10時間で周回している。(信じられないスピードと言うしかない)

苦しい登りをゆっくりと登っていくと、上方で話し声が聞こえてきた。どうやら「雪倉岳」の山頂が近くなってきたようだ。山頂に着くと大勢の人が休んでいた。(夏山パトロール隊で、県山岳警備隊、朝日岳方面遭難対協救助隊、警備隊OBで組織されてこの日は総勢11名)山頂の一角に埼玉Yさんと座って360度の景色を楽しむ。しかし、まだまだ白馬岳直下の三国境まではなんと遠いことなのか。そこから稜線を辿り小蓮華山へそして尾根を辿って蓮華温泉までの道は気が遠くなりそうだ。ゆっくりとしたいところだが、あまり余裕はないので大展望を楽しむのもそこそこに立ち上がった。






雪倉岳から白馬岳を見る




雪倉岳からのパノラマ

ツクモグサ

ウルップソウ

雪倉岳山頂

雪倉岳から避難小屋に下降する


「雪倉岳」から一気にコルにある避難小屋に向かって下降する。ここも花が多く、ウルップソウが可憐に咲いている場所が目につく。避難小屋は立派な建物で、内部は清潔に保たれていた。ここで埼玉Yさんと別れて私は昼食をとることにした。ゼリー飲料2個、キュウリ1本、アンパン1個、それからナッツを一掴み口の中に放り込み、噛み砕いてスポーツドリンクで流し込んだ。

さあ、ここからは気合を入れて三国境までの登りだ。砂礫と雪渓と樹林が入れ替わる道をゆっくりと登っていく。雪渓のトラバースはスコップによるルートが作られ、要所にはベンガラが撒いてあるので道迷いの心配はない。おそらく「雪倉岳」で会った夏山パトロール隊が整備したものと思われる。雪面の反射が気になるので、サングラスをかけようとしたが、取り出すのが億劫でついそのままにしてしまった。暑いので水の消費は



避難小屋前から鉢ヶ岳(左の山腹を巻く)

コマクサ

雪倉岳避難小屋


増える一方で、雪渓の水を見つけるたびに、シェラカップですくって飲む状態だ。鉢ヶ岳の山腹をまくようにつけられた道は、確実に高度を上げて行くようになる。

ところで、先ほどからザックに違和感があるので点検してみた。するとトッププルストラップが切れているではないか。背負っているザックが傾いてしまうのはこれが原因だったのだ。おそらく、木道で尻餅をついたときに、痛んでいた部分が切れたのだろう。とりあえず紐で結んで応急処置をしておいた。

道は砂礫の部分が多くなり、目の前の白馬岳の稜線が近づいてくる。振り返れば「雪倉岳」は遠くなり、山腹を巻いた「鉢ヶ岳」は通過したようだ。さらに歩くと「鉱山道分岐」となるが、情報では通行は困難とのことらしい。標高2504mピークの手前に、コマクサが咲いていた。ここで避難小屋で別れた埼玉Yさんが休んでいたので再び合流した。同じく休んでからいよいよ最後の登りに差し掛かる。

ガレ場を過ぎて、砂礫の道を登りあげる。砂礫の道は上部に続くものと「小蓮華山」に向かいものが何本か延びている。その中の一番はっきりしたものを選んで左に折れた。トラバースしていくと「白馬岳」と「小蓮華山」をつなぐ稜線の道に到着した。ここで一休みすることにして、埼玉Yさんには持参したキュウリを渡し、自分はアンパンを口に運んだ。ここからは登山者が一気に増えてくる。疲れてしまった人がヨタヨタと歩いて来る様はなんだか可哀そうに見える。だろう。


三国境を巻くトラバース
(ほんとうは直登するべきだった)

三国境付近から小蓮華山

小蓮華山手前から白馬岳

小蓮華山まであと少し

小蓮華山山頂

小蓮華山山頂




小蓮華山から槍ヶ岳を見る







小蓮華山から歩いてきた道を見る





快適な稜線歩きは40分ほどで「小蓮華山」に到着だ。小蓮華山からの展望はやはり360度で素晴らしい。大きな剣が刺さったところに標識があり、新潟県最高峰にふさわしい風格がある。白馬岳の先には槍ヶ岳、鹿島槍ヶ岳が見えている。何よりも対峙する「雪倉岳」は歩いてきた道のりを思うと感慨深いものがある。休んでいると、声をかけられた。朝日岳で先に出発した茨城Kさんだ。なんでも「白馬岳」のピストンをやっていたので、この時間になったとのことだ。ここで朝日小屋で作ってもらった大きなおにぎりを取り出して食べ始めた。埼玉Yさんと私は先行して「小蓮華山」を下降し始めた。

「小蓮華山」からの尾根道は両側が切れ落ちて気持ちがいい。右側の下をのぞくと白馬尻が見える。今日は天気が良いから大混雑しているだろう。前方を見ると白馬大池が水をたたえて若い瞳のように輝いている。歩きやすい道をどんどん下降していく。



小蓮華山を振り返る

白馬大池が見えてきた

白馬大池のテント場



白馬大池に到着すると、多くの人でごった返しており、テントも10張はあるだろう。時刻は15時20分なので、このまま蓮華温泉に向かって下山することにした。埼玉Yさんはここに宿泊して、「栂池自然園」に向かうという。くつろいでいると、茨城Kさんも到着したが、さすがに疲れているようだ。名残惜しいが、二人と別れて先に蓮華温泉に向けて下山することにした。

蓮華温泉への道は石がごろごろして歩きにくい。しかし、あと2時間我慢すれば蓮華温泉と考えてひたすら歩く。しかし、「天狗の庭」と呼ばれるところで休憩することにした。すると、ここで茨城Kさんに追い越されてしまった。若い人はいいなあと思った。

休憩後、立ち上がって歩き出す。ヨタヨタと最後の力を振り絞って歩く。すると10分ほどで茨城Kさんが休んでおりかなり疲れている様子だ。しばらくとりとめのない話をしてから、残りの1時間を一緒に下山した。

蓮華温泉が見えたときの安堵感は半端じゃなかった。もう歩かなくても良いとなると元気が出てくる。洗面所で身体を拭き、荷物をまとめて帰路につく。途中の「サンテイン小谷」で入浴した途端に疲れが出てきて、自宅まで運転するのは危険と判断。長野自動車道の「千曲PA」で車中泊してから自宅に帰った。



天狗ノ庭

蓮華温泉に戻る



豊富な高山植物の道と残雪の美しさ。
いつの日にか再び泊まりたい山小屋があるとすれば「朝日小屋」が一番先に頭に思い浮かぶ事だろう。


【記録】

7月10日(金)
蓮華温泉04:55--(.43)--05:38兵馬ノ平--(.31)--6:09瀬戸川--(1.09)--07:18白高地沢07:30--(1.19)--08:49花園三角点09:09--(2.04)--11:13昼食11:30--(1.24)--12:54吹上のコル13:22--(.42)--14:04朝日岳14:27--(.37)--15:04朝日小屋

7月11日(土)
朝日小屋05:34--(.52)--6:26朝日岳06:40--(.42)--07:22水平道分岐--(.25)--07:47小桜ヶ原--(.26)--08:13ツバメ岩--(2.00)--10:13雪倉岳10:31--(.24)--10:55避難小屋11:12--(.58)--12:10鉱山道分岐--(.54)--13:04三国境13:16--(.36)--13:52小蓮華山14:08--(1.07)--15:15白馬大池15:37--(1.00)--16:37天狗ノ庭16:40--(1.15)--17:55蓮華温泉









群馬山岳移動通信/2015




この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)