1月16日の地元の新聞に、「高崎市・八束山登山道/案内テープ連続被害/いたずらかはぎ取り/住民団体残念」の記事が載っていた。新聞によれば、地元有志が道に迷ったと言う声を聞き、案内テープ100本を取り付けた。しかし、何者かが2回に渡ってはぎ取ったらしい。そのため、再々度テープを取り付けたということだ。これらの山は旧吉井町のシンボル的存在で「牛伏山」「八束山」「朝日岳」は吉井三山と呼ばれている。 1月26日(日) 昨夜は村の仲間とちょっと呑みすぎた。それに今日は村の打ち合わせもあるということなので、その合間を縫って高崎市吉井町(旧甘楽郡吉井町)の山に出かけることにする。自宅からたいした距離ではないので、軽トラックに農作業スタイル、足元はゴム長靴で固めた。自宅からたいした距離ではないので、土地勘があると思ったら、なんと迷いに迷って登山口がわからない。途中でザックを背負った人が歩いていたので登山口を聞いてやっと駐車場にたどり着いた。これじゃ、登山道どころか登山道にたどり着くのに目印のテープが欲しい。 「城山(八束山)」 なんとか駐車場にたどり着くと数台の車が駐まっている。さて、ここからどう行けば良いんだろうか?虚空蔵堂の案内はあるが妙なところを指している。そこにちょうど民家から人が出てきたので聞くことにする。どうやら、駐車場からまっすぐ車道を進むらしい。早くも案内テープがここでも欲しいではないか?この山はとても迷いやすいのだろうか。車道を歩いて行くと、ほどなく右に登山口の標識が現れて、登山道が延びているではないか。 登山口からは明瞭な道が続いている。地元有志の整備が行き届いているのだろう、よく整備されている。登山口から5分も歩くと分岐となる。「虚空蔵さま」に向かうことにする。ジグザグに登っていくと、石灯籠や石祠がある「虚空蔵堂跡」に着く。最近までお堂があったらしいが、今では土台のみが残り、柱などの材木は積み上げられて朽ちはじめていた。
虚空蔵堂跡を過ぎると、先ほど分岐した道と合流する。ここからは快適な尾根を辿っていくと、すぐに浅間山に到着だ。山頂らしくなく、登山道のコブといった感じだが、木が切り倒されており、ここからは赤城山とその左に皇海山と袈裟丸山が見えていた。ここまでくると、八束山の山頂が見えるので、おおよその距離が把握できる。 道はハッキリしており、問題の案内テープは全く見られないので拍子抜けだ。隣の牛伏山のピークに立つアンテナがとてもよく目立っている。振り返ると赤城山がよく目立っているが、今日は吹雪いているのだろうか全体的に暗い感じがする。尾根沿いに登っていくと標識があり、「羊の足跡」と書いてある。みれば岩に穴が開いていて、偶蹄目のように先が二つに分かれた蹄が付いている。なかなかよいネーミングだが、山羊のほうがよかったかなとも思う。しかし、この山は羊太夫の居城伝説から来ているらしいから仕方ない。羊太夫とは多胡碑に書かれているこの地方の豪族らしい。多胡碑とは群馬県民がほとんど知っている上毛カルタのひとつ「昔を語る、多胡の古碑」にも紹介される日本三大古碑のひとつだそうである。その先にはタヌキの糞がごっそりと置いてあった。いわゆる「タヌキの溜めグソ」と言うやつだ。
すると、すぐにピンクのマーキングテープが見える。さらにその先にも、その先にもある。ものすごい数のマーキングテープが、間断なく取り付けられ、寒風になびいている。それこそ10歩も歩かないうちに次のテープがあると言った状態なのだ。これは圧巻と言うほかはない。傍にはラミネート加工されたマーキングテープに関する、地元有志の考え方が書いてある。
西コースは急傾斜で、所々ロープが設置され、安全には配慮されている。
炭焼窯跡を過ぎると、すぐに西コース登山口に到着し、やまぐちはしを渡って車道を辿って駐車場に戻った。
問題のマーキングテープだが、これほどのテープがある登山道は見たことがない。
個人的にはテープは全く無い方が良いと思う。 しかし、個人所有の山であり整備する人たちが満足しているのなら,それでよいだろう。しかし異常な状態と言ってもよいだろう。何者かがテープを無断で外したから、また100本のテープを付けると言うのは、登山者のためではないような気がする。西コース登山口から山頂まで沿面距離で1.06kmなので、単純計算で約10m毎にマーキングテープがあると言うことになる。外す方もきちんと理由を述べて、外したテープをゴミとして捨てておかない。設置した方も登山者がテープを望んでいるのか、適正なテープの配置はこれでよいのか、広く意見を求めて考える必要があるだろう。双方とも、力と力のぶつかり合いではなにも解決しない。 こんな騒動に巻き込まれて迷惑するのは誰だろうか?自然を楽しみにくる登山者ではないだろうか? ともかくこの状態は、ピンクのテープが枝にのれんの如くぶら下がり、ゴミの中を歩いているようだ。 私はゴミの中を歩かされるようなこの山は、もう登る事はないだろう。 しかし、地元有志の方々の努力には頭が下がる。そのおかげで安全な山歩きが出来たのだから。 駐車場10:37--(.03)--10:40登山口--(.07)--10:47虚空蔵堂跡--(.06)--10:53浅間山--(.31)--11:24八束山11:42--(.22)--12:04西コース登山口--(.21)--12:25駐車場 「朝日岳」 八束山から戻るときに、朝日岳の標識を見る。せっかくなので登って置くことにする。
軽トラックで朝日岳北登山口に移動する。ちょうどよいところに駐車余地がありここに駐車する。道路を挟んだ反対側にはゴルフ場があり、話し声が聞こえてくる。 ヒノキの植林地から登りはじめ、急傾斜の道を登っていく。正午を過ぎた頃から冷たい風が強くなり始め、頭上の梢はものすごい音で揺れている。今日は簡単な服装で来ているので、不安があるので出来るだけ短時間でピストンするのが良いだろう。 所々にマーキングテープがあるが、八束山ほどではない。ロープも適切に配置されており、登りやすい。途中からヒノキが直線的に植林されて、その先に3段ほど顕著な段差を越えていく。寒さに震えながらひとしきり登ると朝日岳(北峰)に到着。三等三角点があった。朝日岳は「多胡美人」とも呼ばれているらしい。特定の方向から見ると、女性の寝姿(寝顔)に見えるのだそうだ。山頂部分の突起二つはどの部分にあたるのか興味があるところだ。 そんなわけで、ここまで来れば南峰にも行ってみる。 一旦、鞍部に降りて約5分で到着だ。 南峰は切り立った岩の上にあり、眼下の貯水池を見ると、その高度に緊張する。ちょっとだけ岩を辿って東に行ってみると、穴の開いた岩がある。のぞき込むがその下は切り立った岩場の上なのでおそろしい。風はますます強くなり、白いものを運んでくるようになった。急ぎ下山することにした。
群馬山岳移動通信/2014 |