梅雨に入ってから、休日は天候が思わしくない。月に一度くらいは山に行きたいと思っていたのだが、6月最後の土曜日も天気が悪いとの予報が出ている。さて、どうするか?傘をさしても登れるような山を物色すると、長野県上田市には市民に愛される山として太郎山があるという。ここなら何とかなりそうだし、ついでに近くの大峰山まで足を延ばしてみることにした。(地形図では大峯山と標記されているが、地元での大峰山の標記に従うことにする) 6月26日(土) 農作業も気になるが、月に一度くらいは山に行かなくてはとの、義務感(?)に駆られて山に出かけることにした。上信越自動車道の更埴上田インターで降りて、上田市街地を抜け道の狭い住宅地を抜ける。程なく林道に入るとすぐに太郎山「表登山口・裏登山口」の分岐にさしかかる。標識に従って裏登山口をめざしてそのまま進んでいく。林道は舗装されているものの、幅員が狭くすれ違いは困難ではないかと感じるほどイヤらしい。おまけに夏草が茂っているから、さらに幅員を狭くしているのだ。対向車が来ないことを祈りながら進んでいくと、やがて沢に左岸にある駐車スペースにたどり着いた。到着したのは午前5時半頃だったが、すでに4台ほどが駐車している。あと2台ほどでスペースは無くなってしまうが、この先の林道脇にも何台か駐車できるようだ。車のエンジンを止めて外に出ると、なんと下山してくる人を見かけた。その人は私の前をなんのリアクションもしないで普通に通り過ぎていってしまった。しかし、これだけ早朝から人の動きがある里山は初めてなので驚くばかりだ。支度をして出発するが、天候がやはり気になる。念のために傘をザックにくくりつけて、持って行くことにする。登山口の道を挟んだ反対側には、「不動の滝」と呼ばれる数メートルほどの一筋の流れがあり、良い水場ともなっているようだ。黄金沢と呼ばれる沢にかかる橋を通り対岸に渡ると、そこには「クマ注意」「太郎山民族遊歩」「生息するカモシカ」などの説明板が賑やかだ。登山道入り口には鎖が張られているが、この登山道は林道ではないかと思われるほど広い。いや、林道として使われているに違いないと思われる痕跡も見られる。 緑に覆われた道は展望がないが、気持ちよく高度を上げていく。「太郎山民族遊歩」の説明板は歩いていくときの楽しみにもなった。そのうちに下山してくる登山者とすれ違うようになって来た。数人とすれ違ったが、なにか違和感を覚えた。それは、こちらが挨拶しても返事が返ってこないのだ。それではと会釈をしても、やはり同じ状態だった。歩いている人はみな軽装で、ウエストバックにストック程度。私は40リットルザックを背負い、ダブルストック、登山靴にスパッツを付けている。これだけで明らかによそ者との雰囲気が見て取れる。そんな風体だから警戒されるのも当然かもしれない。途中に2か所の水場があり、何も持たなくとも登れる山であることは間違いない。やがて前方の風景が明るくなり大峰山との分岐に到着した。ここはちょっとした広場になっており、 方面の展望が開けていた。雨が降る出しそうな天候だったが、かすかに北アルプスの残雪のl稜線がシルエットとなって見えている。これが晴れていれば、どんなに素晴らしい景色が見えるのだろうか。雨を覚悟してやってきたのだが、展望が得られないというのはやはり寂しい。
山頂には石祠と山頂標識、角が削れてしまった三角点がちょっと離れたところにあった。伐採がされたのだろうか展望は南方面が開けていた。しかし今にも雨が降りそうな状態ということもあり、一時間ほど前は僅かに見えていた北アルプス方面はそのシルエットも見ることは出来なくなっていた。眼下に見える上田市街とその中を貫く上信越道の曲線が美しいと感じた。標高差はそれほど無いはずなのだが、太郎山はずいぶん低く見ることが出来る。この大峰山からはさらに道が続き縦走が出来るらしい。ここで、GPSを取り出して位置を確認すると、なんと表示が変だ、等高線が表示されないのである。ひょっとして、この地域は地形図を転送していなかったのかもしれない。これは困ったことになった、これから登ろうとした山はかなりたいへんなことになることが予想されたからだ。とりあえず静かな大峰山山頂を辞して太郎山に向かうことにする。
やがて、傾斜もなだらかになり、広場のようになっている山頂に飛び出すことが出来た。山頂は広く、100人が休んだところで問題はなさそうだ。広場の隅には、毛糸の帽子を被ったお地蔵様が愛くるしい姿で周囲を眺めていた。また山頂方位盤が設置されて、富士山、八ヶ岳、北アルプスと、晴れていれば広大なパノラマが広がるに違いないことが想像できた。小降りだった雨もここで本降りになってきた。山頂広場の隅にある桜の木の下に避難して、サンドイッチを食べた。この雨はこのまま降り続けるのだろう。それにしても、登山口の車の台数からして、太郎山山頂に人がまったくいないのは妙な感じがする。まあ、このまま雨の中にいても仕方ないので、ザックを背負って山頂を辞することにした。ところがザックに手を掛けてギョッとした。ここは犬をブラッシングしたらしく、おびただしいほどの毛の塊が散乱している。なんというふとどきな奴がいるのだろうか。市民に愛される太郎山もこれでは・・・・・。すれ違う人の態度とこの状態がオーバーラップして頭に中に浮かんだ。ともかく不快な気分でザックを背負って今度は広い道を辿って帰ることにする。するとすぐに建物が見えてきた。そうか、これが太郎神社なのだと理解するのには地形図をよく見ていなかったので、時間がかかった。本殿の裏から表に回っていくのはちょっと気が引けるが、ともかく本殿前で帽子を取って参拝した。そこにはプラスチックの箱置いてあり、中には参拝記帳簿が入っている。その記帳簿を開いてみて驚いた。なんと昨夜の最後の参拝者は午後8時であり、今日の最初の参拝者は午前2時なのである。その時点から今(10時)までの記帳者は26人もいるのだ。聞けば年間400回を越えて参拝する人もいると言うから驚きである。これほど市民に愛されている山は群馬では桐生の「吾妻山」新潟では魚沼市の「坂戸山」が記憶にある。これだけ愛される割には残念な点も見られる。さて、本殿からとっても小さな鳥居の横を通り(ホントは潜り抜けるらしい)下に行くと、賑やかな子供の集団に遭遇した。雨が降っているので軒下に並んで腰掛けて食事の真最中だった。会釈したが反応はあまりなかった。上田市街地を見下ろしてから鳥居を抜けて下山に取りかかる。
そこで、近くの山に登ろうと欲張って雨の中を歩いたのだが、とんでもない場所をとんでもないルートで2時間も彷徨しただけで敗退となった。まあ、こんな事もあるさ・・・・・ 裏登山口05:47--(.37)--06:24大峰山分岐--(.25)--06:49鉄塔--(.27)--07:16鳥居--(.16)--07:32大峰山山頂07:49--(.44)--08:33分岐--(.11)--08:44太郎山山頂08:54--(.05)--08:59太郎神社09:10--(.27)--09:37登山口 群馬山岳移動通信/2010
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