気になるプレート「四ッ又山」    1994年1月12日


四ツ又山(よつまたやま)標高900m 群馬県甘楽郡
四ツ又山の山頂標識
 今日は自動車運転免許証を受け取るためと、知人を病院へ見舞うために会社を休んだ。せっかく休んだからには有効に使わなくてはいけない。時間的に余裕があるので近くの山に出かける事にした。

 目的地は下仁田町と南牧村にまたがる「四ッ又山」と決めた。四ッ又山については怪人とモンキーライダーの書き込みがある。出かける前は読まなかったのだが、帰って読んでみると一つの低山でも登り方も様々であると思った。どちらかと言えば私のものが一番軟弱であるような感じである。軟弱の方が巻き巻きになり易いのかも知れない。


 1月12日(水)

 下仁田町の市街地を抜けて南牧村に向かう。黒滝山の標識のあるところを右に曲がり小沢橋を渡りすぐに左に折れる。道なりに走り黒滝山への道を左に分けると道はかなり狭くなり大久保集落に着く。四ッ又山方面の標識があるので、それに従って右に折れる。100m程、車を乗り入れた所に沢口橋と言う小さな橋がありここで進退きわまってしまった。

 橋の手前は若干広くなっているのだが、車の転回は出来そうにない。しかたないのでバックして100m戻り、再びバックで橋の所まで戻り駐車をした。こうしておけば帰りは楽だし、私は原則として車は下り坂に前を向けて駐車しておく事にしている。それは手動変速機の車はバッテリーがあがっても「押しがけ」が出来るからだ。実際、何度かこの方法で助かったことがある。特に冬季は有効だと思っている。

 車を降りると老夫婦が道端で話しをしている。時折こちらを見ている。老夫は腰にナタを提げていかにも山作業をしている人のように見える。地元の人に挨拶をしないで山に入るのも気がひけたので、近づいて行って話しかけた。とりあえず登山道の確認と駐車した車が邪魔にならないかの確認をしておいた。話しによると四ッ又山は同じ道を往復しなくとも、途中から道が分かれるのでそれを辿れば、周回コースで廻れるとの情報をもらった。

 いよいよ歩き始める。

 いつものコンビニで500ccのミネラルウォターを買おうとしたらあいにく品切れ、しかたなく1500ccの物を買ったのでいつもよりザックが重いような気がする。道は段々畑の中を登り大きな堰堤に向かう。堰堤までは無理をすれば車でも来られそうだがあまり勧められない。杉林の中を少し歩くと突然目の前がひらけた。明るい日差しの中に段々畑が山に向かって続いている。何となく懐かしい風景を見ているようだ。

 ここに大きな標識がある「←四ッ又山・鹿岳方面−天狗を経て四ッ又山→」と書いてある。ここが老夫が話していた分岐だなと思った。エアリアマップを取り出して確認したがこの道は記入されていない。しかし段々畑の中に続く道はしっかりしており大丈夫そうだ。そこでこの地図に無い左のルートを登る事にした。

 道はかなり明瞭だ。3分程登ると再び標識、これはなんと簡単な図解入りである。目の前のピークが四ッ又山で、左にある按部が天狗であるとある。しかしこの図解入りは天候が良い場合は良いが、それ以外はあまり役立ちそうもない。標識に従い左の杉の植林された林の中に入る。枝打ちされた杉の切り口がまだ新しいので、最近人手が入った事をうががわせる。暫くは杉林の中を歩く事になる。杉が植えられている土地は石積みがされているので、おそらく昔は段々畑だったのだろう。こんな山奥まで開墾したのだろうか。歩きながらそんな事に想いを馳せてしまった。道は一旦左に曲がり杉の植林の端を歩き、その後雑木の中の山道を歩く。地図に記載が無いのに道はかなり明瞭である。しかしあまり歩かれていない事は確かだ。

 尾根に着くとここが大天狗と言われる場所だった。大きな立派な標識が立てられており、ここが登山道の「小沢・下郷・大久保・山頂」と分かれる十字路である事が分かる。山頂の方向に少し登ったところに30cm程の天狗の石像があった。そばの石碑には「大天狗」の文字が刻まれていた。

 ここからの道はたいへん良く歩かれているらしく、木の根などは皮が剥がれていた。急登の道は忠実に尾根をトレースして続いている。道には時折、石灰岩のかけらや石英のかけらが落ちているので、靴で蹴って遊びながら心地よい山道を歩く。

 突然、剣を持った石像が現れた。ここがマメガタ峠と山頂の分岐点である。山頂へはここから数分で到達する事が出来た。

 山頂からは特に鹿岳の眺めが素晴らしい。映画「未知と遭遇」のデビルスタワーを彷彿とさせる姿である。昔体重が、今より15kg程少なかったとき登った岩が妙に眩しい。この山の標高には、その執拗なまでのこだわりで一時期楽しませてもらった。山頂の日陰の部分の木の枝は雨氷がきれいに付着しており、時折風でその氷が舞い落ちる。その度に日の光りを受けて氷は輝く、又カラカラと乾燥した音を立てている。暫しその情景に見とれてしまった。

 山頂には石像が建っており、その顔つきには近寄りがたい物がある。何となくその正面ではゆっくり休む事が出来ない。裏にまわってフト松の木を見ると山頂プレートが打ち付けてある。白色のプラスチックに緑で「四ッ又山」その下に赤色で「899.5m」とある。裏にまわって見ると「’93.5.1、KA」と読める。かなり達筆だ。

 山頂を後にして四つのピークを通り縦走を始めた。このピークにはそれぞれT、U、V峰には石像が、W峰には石祠があり、特にU峰の所にある烏天狗は表情がいい。W峰を過ぎると道は急な下り坂となる。うっすらと雪があるので美庭骨を打たないように慎重にならざるを得ない。

 マメガタ峠は明るい峠で木が伐採されているので、広場のようだ。今日は暖かいので15分程ここでひと休みをしてしまった。帰りはこのまま大久保集落を目指して、一気にかけ降りた。


「記録」


登山口(大久保集落)10:20--(.09)--10:29分岐--(.25)--10:54大天狗--(.26)--11:20四ッ又山山頂(T峰)12:02--(.04)--U峰--(.04)--V峰--(.03)--W峰--(.16)--12:29マメガタ峠(12:43--(.22)--13:05大久保集落

                          群馬山岳移動通信 /1994/

下山の時にトクサの群落を見つけた。この時期に緑色の植物を見るとホッとする。