林道歩きも素晴らしい思い出となる「鳥甲山」  登山日2005年10月27日


下山途中に白ーを振り返る



鳥甲山(とりかぶとやま)標高2038m 長野県下水内郡

鳥甲山はその名前が素晴らしい。まして秘境である秋山郷の奥に位置すると言うだけで気になって仕方のなかった山である。

林道の脇に駐車する
 10月27日(木)

 津南町から秋山郷への道はかなり狭い部分もあり緊張する。ましてちょうど1年前の中越地震の影響で、道路工事が盛んに行われている。それでも秋山郷に入ると道幅も広くなり緊張感から開放される。さて登山口を探さなくてはならない。国道405号から屋敷の集落に向かい、中津川に架かる橋を渡る。再び広い道に突き当たり、左に折れてそのまま道なりに進む。すると登山カードを記入するポストが現れ、そばには大きな鳥甲山の案内板が設置されている。道の先にはトンネルがあり、「屋敷トンネル」書かれていた。しかし、おかしいぞ!地形図ではこのトンネルを抜けた先にある訳なのだが、しかし、このポストのある場所からは、立派な登山道が上部に向かって延びていた。地形図の表記と実際の道が違うことは珍しいことではない。それにしても、この登山口には駐車余地が見あたらない。仕方がないので30m程離れたところが道幅が広くなっていたので、そこに路上駐車となった。登山口を見ると、どうやら道はかなりのぬかるみのようだ。そこでロングスパッツを取り付けて出発となった。登山カードに記入して歩き出すと、とんでもない急登に驚いた。それにぬかっているので、何とも歩きにくい。たちまちロングスパッツは泥だらけになってしまった。この急登は、今まで経験した中でもトップクラスの傾斜で、たちまち汗が噴き出してきた。カッターシャツを脱いで、半袖シャツになるとなんとか涼しくなった。雪崩防止の擁壁が二つほど現れることが、この地域の積雪の多さがうかがえる。

 歩き始めて1時間でようやく標高1200mになり、深い樹林がいくらか疎林へと変化した。登山口から標高差350mを稼いだことになるが、山頂まではあと800mもあるのでまだまだ楽しめそうだ。急登はあいかわらずで少しも和らぐ気配はない。振り返ると苗場山の方角がガスに囲まれて、輪郭だけがかろうじてわかる。どうやら今日は青空は望めそうになかった。

 標高1460mの屋敷山への分岐に辿り着くと、道はようやくなだらかになった。ひとまずここで休憩とした。このあたりはすでに紅葉は終わり、落葉が進み冬枯れの雰囲気さえも示していた。ここで屋敷山への道があるのか偵察してみたくなった。しかし、道どころか灌木に押し戻され、登山道脇の高みに到達しただけで、あえなく敗退となってしまった。



屋敷山分岐から赤ーを見る

今シーズンはじめて見る雪だ

赤ーから鳥甲山方面はガスに覆われていた

赤ーを振り返る

山頂が近くなると笹原となった

鳥甲山山頂は展望が無かった


 目の前に赤ー肩のピークがガスで霞んでいる。そこに向かって歩くのだが、今までの急登と較べたら、全く問題になるレベルではなかった。あっけなく赤ー肩に到着してしまった。道の左はスパッと切れ落ちており、覗くのさえも恐怖心を伴うものだ。今日は幸いなことに(?)ガスっているので高度感が今ひとつわからない。切れ落ちた岩壁の様子とは異なって、道は全く危なげもなく付けられている。それは右側が灌木帯となっており、そこに付けられた道は安心感を伴っていた。いくつかのアップダウンを繰り返し、距離を稼いでいるのはわかるのだが、高度がいつになっても上がらないのが気になる。

 ガスに覆われて、かわり映えのしない道を歩くと、道ばたに雪があるのに気が付いた。おそらく5日前に寒冷前線が通過したときに降ったものだと思われる。今シーズン初めて見る雪を手にとって、その冷たい感触を確かめた。なにも考えずに歩いていくと、突然足元から山鳥が飛び立った「アッ!」と声を上げてしまった。それと同時に反対方向から人が下ってきた。それは私よりも一回り程度年配の女性だったので、さらに驚いてしまった。しばらく立ち止まって情報交換をした。和山登山口を朝の7時に出発したとのことで、ここまで3時間掛かっているのだが、かなりのハイペースであることは間違いない。いや、とんでもないハイペースと言った方が良いのかも知れない。私が、和山登山口に降りてから、屋敷まで歩いて戻ると言うと、このコースは和山登山口から登るのが一般的と教えてくれた。この女性はおそらくお昼前には下山してしまうのだろうと推測した。

 周囲の風景が笹原に変わって来ると同時に、山頂と思われる最後の登りにさしかかった。ここからは下山路の途中にあるカミソリ岩の威容が目に入ってくる。ともかく山頂に立つことが先決と、その斜面を一気に登り切った。すると、山頂に向かう道と、和山登山口に向かう道に分岐した。山頂に向かう道を辿ると5分で鳥甲山山頂に到着した。

 山頂は樹木に覆われて展望はない。二等三角点と文字が消えかかった標識があり、笹が刈り払われて裸地となった場所もあまり広いものではなかった。時刻はまだ10時40分なので、昼食とビールの誘惑があったが、岩場の通過の事もありもう少し歩くことにした。



カミソリの刃が一瞬見えた

こんな痩せたところもあるが全く問題なし


 分岐まで戻り、コルに向かって下降する。道はしっかりしており、不安は感じられない。途中に数メートルほど両側が崩壊した狭い尾根を通過することになるが、鎖が取り付けられており、問題全くなかった。さらにカミソリ岩の基部から上部に向かってハシゴが設置されていたが、巻き道が用意されておりここも問題はなかった。

 いつしか道は笹原の中に切り開かれたものとなった。さらに道は登りの一本調子となった。これを考えると逆コースのほうが正解だったかなと思える。ぬかるんだ道を喘ぎながら登ると、白ーに到着した。ここは笹藪に囲まれて展望は全くきかない。ただの通過点であり、全く腰を下ろすような場所もなかった。ここで昼食も何となく気分が悪いので、さらに先に進むことにした。

 標高1780mまで下るとガスも晴れて樹林も薄くなり気分の良い場所に飛び出した。時間もちょうど正午になったのでここで昼食にする事にした。インスタントラーメンとビールの組み合わせは、山登りの定番メニューだ。腰を下ろしてビールを飲むと何とも言えない充実感が味わえる。これで展望が良ければ最高なのだが、ガスは薄くはなっているものの遠望を楽しむまではいかなかった。それでも下方を見ると、道路を走る車の姿を確認することが出来た。お昼のラジオの定番番組「ひるのいこい」のテーマ音楽を聴きながら時間を過ごした。

 再び歩き出して、高度をどんどん下げると、ガスが徐々に薄れ周囲の紅葉が目に入るようになった。どうやら標高1700m付近が紅葉の盛りのようだ。しばらくはカメラのシャッターを押す時間が増えて、歩くスピードが極端に遅くなった。



下降するに従って紅葉が鮮やかになった

これが万仏岩のハシゴで固定していない



 白ー三峰の小さなピークを過ぎると道はどんどん下降して行く。やがて岩場にさしかかると、そこには鎖とはしごが設置されていた。これが山頂の手前ですれ違ったときに女性が話していた万仏岩に違いない。はしごは固定してあるののではなくちょっと不安定だ。むしろ鎖を頼りに岩場を下降する方が楽なようなので、はしごは使わなかった。この程度ならもう一本ビールを飲んでも問題ないと思った。

 さらに下降するに従って道はなだらかになり、木々の紅葉も緑が混じるようになった。和山登山口まであとわずかなところに水場があり、ここで水分補給の休憩を行った。水場から10分あまりで和山登山口に到着した。ここには広い駐車場があり、水場も備わっていた。さすがは平日で、駐車してある車は全くなかった。

 ここから屋敷登山口までの車道歩きだ。しかし、その車道歩きの1時間は、周りの風景のすばらしさも手伝って、それほど苦にならなかった。時間が許せばもう少し歩きたいと感じるほどの散歩コースだ。




林道から見る苗場山方面は晴れていた

林道は完全舗装で車の通行量もきわめて少ない



屋敷登山口06:46--(1.17)--08:03屋敷山分岐08:22--(.33)--08:55赤ー肩--(1.27)--10:22分岐--(.05)--10:27鳥甲山山頂10:42--(.31)--11:13カミソリの刃--(.33)--11:46白ー--(.20)--12:06休憩(標高1780m)12:37--(.21)--12:58白ー三峰--(.26)--13:24万仏岩--(.28)--13:52水場14:03--(.08)--14:11和山(狢平)登山口--(1.06)--15:17屋敷登山口

群馬山岳移動通信2005 

 

この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)

GPSトラックデータ 登りは意外とデータが取れなかった。これは斜面が急だったことによるのかも知れない