立派な登山道になっていた「皇海山」 登山日1994年6月4日
皇海山(すかいさん)は日本100名山のひとつと言うだけでなく、その名前の響きも良く、何となく憧れを持ってしまう山だ。3年程前に一度計画した事があったが、都合で断念した経緯がある。今回は栗原川林道経由で登ると言う事で、JDS・MLQ・FFY・HIG/各局のファイルを何度も読ませて貰った。その結果ポイントは栗原川林道の入り口と、皇海橋からの登山道入り口のところだと、言う事らしいので、その部分は特に念入りに読んだ。
ところで、今回は奥深い山でもあり、一人では不安がある。そこで職場山岳部の後輩に応援を頼む事にしたところ、快く2名の部員が同行してくれる事になった。それに車も提供してくれるとの事である。これは有り難い!早速話しは、決まった。
6月4日(土)
朝5時10分に迎えの車が来たので、そのまま乗り込む。車の中ではこれから登る「皇海山」や、今後の山行の予定で話が盛り上がってしまった。ここのところ単独行で、それも人に会わない山が多かったので、会話をしながら行くのは楽しい。関越自動車道沼田ICでおりると、尾瀬に向かう車が多い為か、時間が早い割には車の台数が多い。椎坂峠を越えて追貝に入ると緊張する。みんなが苦労した第一関門の”林道入り口”探しがあるからだ。1/2.5万の地図と、MLQのファイルを取り出して読み上げながら走る事になった。
吹き割れの滝の手前の信号で、右に曲がって橋を渡り旧道に入る。道なりに進むと右に「NHK利根中継所」の看板がある訳だと、探しながら行く。するとありました!道は狭いが舗装されている道が杉林の中を登っている。あとは「NHK利根中継所」の看板の示す通りに走り、あまり高さの無い送電線の下をくぐり100m位で、「栗原川林道」「皇海山」「NHK利根中継所」の看板があった。それに従って右に入ると道はダートに変わった。
やれやれ、一安心この林道を行けば間違いなく登山口まで行ける。それに林道のゲートも開いていた。しかし、それにしても路面状態はは悪い、ときどき車の底が擦ったり、石が当たる音がする。車の持ち主は、さぞかし気がもめたに違いない。途中、右に舗装された明瞭な道が、川に降りていたところがあり、こちらに入ってしまったが、行き止まりになっていたので戻った。林道で迷ったのはこの一箇所だけだった。しかし長い林道である、あまり車に強くない私はちょっと気分が悪くなったが、なんとか持ちこたえた。しかし皇海橋に着いた時は足が少々ふらついていた。
皇海橋はこの林道には似合わないような立派な橋であった。車は橋の前後の空き地にかなりの車の駐車が可能である。そして、ここからは目指す皇海山の山頂が見えていた。服装を整えて、荷物をまとめて早速出発する。登山口の手前には、大きなイラスト感覚の登山案内板が設置されていた。左岸の林道をほんの少し登ると、道は一段目の堰堤の上に出るものと、右に大きく曲がる道に分かれる。何か半信半疑であるが、沢から離れたように続く、林道を辿る事にする。(各局がそうしているので、間違いないだろう)林道は植林されたカラマツの芽吹きが美しい。それにハルゼミとウグイスの声の大合唱が、山に響いて、うるさいくらいだ。目立つ花は特に見られなかった。林道の途中、右カーブがあり、ここには赤ペンキの矢印と赤テープが見られたが、ともかく林道終点を目指して歩く事にした。
林道終点には「←皇海山」の立派な標識があり、沢に向かって降りている。ここで皇海山をバックに記念撮影、一人だと面倒なので全くしないのに、パーティーで来るとこんな事をしてしまう。
年長者で体力の弱い私がトップで、歩く事になった。道はいきなり標識に従って沢に降りる。、道は急傾斜だがかなり踏まれているらしく、しっかりしていた。沢に降りるとしっかりした標識が現れ、沢を少し下る。しかしこの標識は最近設置されたのだろうか、ボルトがまだ光っている。沢を少し下ってから右岸に渡る。ここからも標識がしっかりしている、赤テープに至っては数mおきにあり、これでは道に迷ってしまう事は、むしろ不可能で、それに踏み跡もしっかりしている。沢から離れ沢の右岸の笹薮の中を歩く、途中で標識が沢に降りるように出ている。右の斜面を降りると水量豊かな沢に着いた。ここが二股なのだろうか、しかし良く分からない。(コースタイムの時間はこの沢に降りた時間を記録した)
ここからは、この沢を忠実に歩く事になる。このルートは増水した場合はかなりきつそうだ。(危険で使えないかもしれない)しかし今日の沢歩きは天候にも恵まれ快適だ。何よりも景色に変化があり、そして沢音が心地良い。そして綺麗な水がある事は、飲料水確保の面からも、精神的に安心感がある。目の前にある赤テープと、後ろからの同行者の足音を聞きながら、快適に登っていく。「群馬の山歩き130選」のガイドにあるCの沢の分岐で、初めて休憩を取る事にする。ここにはブリキの標識と、新しいプラスチックの立派な標識が右の沢に向かって登山道を示していた。ここの沢の水は冷たく気持ちが良い。同行者はここで水筒に水を補給した。
右の沢に入ると沢の状況は悪くなって来た。傾斜は強まるし、幅も大幅に狭くなった。しかし高度がどんどん上がっていくので、気持ち良い。やがて道は沢から離れて、右の潅木の中の道に変わる。ここの登りは今回初めてきついと感じた。潅木につかまりながらゆっくり歩くと、前方の上部が明るくなっているのが見える。目指す不動沢のコルが近い事が感じられる。目標が見えている事は強い、乱れる息を整えながら、登った。
不動沢のコルには、これ又立派な標識があり、中部電力山岳部が設置した/1994・5・28/の真新しい標識もあった。ここからは鋸山の姿が美しい、沢沿いにはまだ雪が残っているのが見える。ここで同行者とはひとまず別れである。同行者は鋸山に登ってから、皇海山に登る。体力の無い私は皇海山に直接登り、無線の運用をしながら待つと言うものである。
コルからはシラビソの原生林の中を歩く事になる。傾斜はさほど強くなく適当なのだが、倒木が若干邪魔だ。このルートに入ってから、降りてくる登山者に会うようになった。団体は決まって中高年の集団で、単独行は比較的若い方が多いようだ。都合10人程度の人と挨拶を交わした。傾斜が強くなると大きな岩が現れた、いままで大きな岩を見る事がなかったので、印象に残る。この岩を越すと、コバイケイソウの芽が林の中にあるのが、目につく。湿地に育つ草だと思っていたのだが、案外こんな高山の乾燥したところにも育つのかとあらためて感じた。そして、傾斜が緩くなり、道が左に大きく曲がるようになって暫く行くと、有名な青銅の剣がある場所についた。かなり大きなものでどうやって運び上げたのか分からない。ここでは感動したので、記念に写真を撮っておいた。山頂まではここからわずかだった。
登山開始から休憩時間を含めて2時間12分、歩行時間は1時間53分だった。案外簡単に山頂(2143.6m)に到達する事が出来た。これも各局の書き込みによる案内と、標識の整備がされていたために、迷う事も無く歩けたからだ。山頂では登山者が既に2人いて、いずれも能弁で山頂展望を楽しむ間もなく、話し込んでしまった。何でも庚申山から5時間かけて来たそうで、苦しかった話しを聞かせて貰った。
登山者が去ったので山頂を散策する。展望はやはり、間近に見える鋸山、そしてその奥にある袈裟丸山、シラネアオイがそろそろ咲き出す奥白根山、が木々の間から見えた。けっして見晴らしは良いとは言えない。周りの木は数本が枯れているが、原因については分からない。さらに春の名残のサクラの花がまだ残っていた。二等三角点は縁が少し欠けている。そして朽ち果てそうな木製の山頂標識が立てかけてあった。その奥には金属製の山頂標識があり、その基部には花と果物が供えてある。さらに良くみると線香まである。裏に回ってみると標識の裏に「○○出てこい」と書いてある。誰か遭難してまだ見つからないのであろうか。しかし、山頂標識で皆が記念撮影する場所に、線香とはいただけない。供えた人の気持ちは分からぬ訳では無いのだが・・・・・・。KUMOと、それに下がっているものがある筈なので探してみたが、見つからなかった。
いよいよ無線機を出してスイッチを入れてみた。430Mhzを聞いてみたが、空き周波数が全く無い。それに呼出し周波数も無変調が出ている。これでは話しにならないので、1200Mhzに切り替えて、久しぶりにCQを出してみた。この周波数の方は話し好きで、30分で4局がやっとだった。QSOしていると、後方がやけに賑やかだ。振り返ると10人ほどが山頂でくつろいでいる。これでは落ち着いて無線の運用も出来ない。それに鋸山に行っていた同行者も山頂に着いたので、無線の運用は中止した。
12時を過ぎると登山者は我々だけになった。ほとんどが庚申山からの縦走をしている人ばかりなので、帰りの事を考えれば無理もあるまい。全員が揃って山頂が静かになったところで、線香が入らぬように記念撮影をした。それからはゆっくり明るい陽射しの中で昼食にした。
下山は登りよりも、むしろ道に迷い易い。まず山頂から下ってコルに近いところ、いつの間にか左の道に入ってしまった。この時はすぐに右の標識が見えたので、数mの誤差で戻った。それから二股では沢から離れる場所が分からず、やはり数m沢づたいに降りてしまった。極めつけはどんどん沢を下ってしまったら、なんと皇海橋の上の堰堤まで来てしまった。しかたなく左岸に渡ったら赤テープがありそれを辿ったら、林道の途中にあった赤テープの目印のところに出た。後で各局の書き込みを見たら、最後はみなこのルートを歩いていたので、もっと良く見てくれば良かったと思った。しかしこの道の方が歩き易かった。
皇海橋で帰りの準備をしていると、ツーリングの若者に会った。根利の方面から来たので林道の状況を聞くと、4輪ではとても通行出来ない、崖崩れがありやめた方が良いと言う。予定では根利に抜けて帰る予定だったが、変更して追貝経由で帰る事にした。危うく栗原川林道を一往復するところだった。
「記録」
皇海橋08:03---(.17)---08:20林道終点08:23---(.13)---08:36二股---(.26)---09:02沢分岐09:12---(.18)---09:30不動沢コル09:36---(.39)---10:15皇海山山頂12:58---(.37)---13:35沢分岐13:46---(.48)---14:34皇海橋
「参考:同行者の記録」
不動沢コル09:36---(.33)--10:10鋸山山頂10:20---(.32)---10:52不動沢コル
群馬山岳移動通信 /1994/