残雪を踏みしめて「鹿俣山」から「獅子ヶ鼻山」 登山日2005年4月14日
今までに登れなかった山というのはいくつかある。その中でも獅子ヶ鼻山は特別だった。この山に登ろうと鹿俣山から先に進もうとしたことがあった。しかし、ひどい笹藪で全く進めない状況だった。次に狙ったときは、急に体調不良となり、その時はイレウスで手術。そんなわけで、どうしても気になる存在となった山となっていた。この山は薮が深いだけに、どうしても残雪期でのアタックが条件となってくる。そうなると天気の良い時期を狙って行くしかない。 4月14日(木) 朝6時の玉原高原は天気情報どおり快晴となっていた。それに風もなく絶好の条件が揃った。やはり平日に休みをとっただけのことはある。たんばらスキー場の駐車場は、まだ10台ほどの車があるのみで、賑やかさは見られない。駐車場の開門は5時30分、リフトの運転は8時30分からなので、まだ待ち時間はかなりありそうだ。 駐車場で支度をするが、スノーシューにするか、ワカンを持つかで悩んでしまった。結局はスノーシューを持つことにした。それは装備には万全を期したかったからだ。したがってロープとツェルト、コンロまで持つことにした。もしもの時のビバークを考えてのことである。装備を詰め込んで駐車場から歩き出そうとして、案内板を見たがどうにも様子が飲み込めない。仕方なく近くにいたスキー場の関係者に尋ねた。すると「ゲレンデの中を歩いていくのがわかり易く一番早い」「ゲレンデの中に入っても良いんですか?」「別にかまわないよ」そんなわけでありがたくゲレンデの中を歩くことになった。おそらくリフトの運転までは時間がたっぷりとあるし、平日だから問題ないとのことだろうと思った。 ゲレンデ内は圧雪車の跡が残っているだけで、スキーやスノーボードの滑走の痕跡は見られなかった。これは前日まで雨が降っていたことが影響しているのだろう。いくら歩いて良いと言われても、ゲレンデの真ん中を歩くわけにも行かないので、出来るだけ端を歩くことにした。ゲレンデ内は傾斜もそれほどでもなく歩きやすい。振り返るとスキー場のリゾートセンターがどんどん遠ざかって行くのがわかる。やがてレストハウスに到着し、再び振り返ると玉原湖が望めるようになっていた。だらだら歩いているようでも確実に高度は稼いでいるようだった。ここで、案内板をのぞき込むが、どこを登ったら良いのか悩んでしまう。どうも上級コースは傾斜がきつそう、初級コースは距離が長そうなので中級のDコースを登ることにした。 人影の無いゲレンデを登るのは、意外と気持ちの良いもので、新雪の中に踏み込むような心地よさがある。それにも増して、今日は天候が良いことが幸いしているのかも知れない。先ほどの玉原湖はもとより周りの白い山々が、だんだんと見えてきた。まずは特徴ある双耳峰の谷川岳がハッキリわかると、あとはそこからの稜線の延長で山名が次々に分かって来る。本当にすばらしい山々の集まりは、見ているだけで愛おしい。 快適な登りもゲレンデの最上部に到着すると、その先は人工的なものはなく、自然そのままの世界が広がった。その中に足を踏み入れると、意外なほど雪がしまっており、持ってきたスノーシューは使うことが無いと分かった。(まさか残置しておく事も出来ないので、結局はそのまま使わずに、ザックにくくりつけたままになった)稜線は踏み跡があるのか期待したが、それらしきものは全く見られなかった。ちょっとした急斜面を登ると、そこは平地のようになって拓けていた。おそらくここが鹿俣山山頂だろうと、GPSで確認する。その予想通りここが鹿俣山山頂で、山頂標識があるだろうと見渡したが見つからない。たぶんこの雪の下に埋もれていると考えられた。 装備を点検後、獅子ヶ鼻山に向かって歩き出す。じつに快適な稜線で、展望は申し分なく、雪もしまっておりアイゼンが小気味よくきいた。ただし、雪庇には近寄らないようになるべく左側を歩いた。その雪庇は部分的に亀裂が入り、不気味なクレパスが口を開けていた。この中に落ちたら、外界との連絡は不可能に違いない。そうしたらどうしようなどと考えながら、割れ目を覗き込むのは危険だ。しかし、なぜか覗き込んでしまうのが好奇心というものだ。 1685mのピークまで来ると、獅子ヶ鼻山はさらに大きくなり、その奥の武尊山、剣ヶ峰山の荒々しい岩肌がその凹凸が見て取れるようになった。それらを両脇に従えて、真ん中に位置する獅子ヶ鼻山は、あたかもこの付近の盟主であるがごとく振る舞っていた。ともかく憧れていた山がそこにあるので、休むこともなく再び歩き出した。 そんな稜線も一カ所だけ岩場がある。まともに登るのはちょっと大変だが、左側の雑木林に入れば何のことはない。ちょっとだけ薮を漕げば、その岩場は楽にエスケープが出来るのだ。そのまま雪庇を避けながら急登を登ると、一気に前方の視界がひらけた。ついに念願の獅子ヶ鼻山に到達したのだ。確認のためにGPSを取り出してみるが間違いは無さそうだ。 「記録」 駐車場06:29--(.52)--07:21第3リフト終点--(.14)--07:35鹿俣山08:00--(.23)--08:231685m08:26--(.47)--09:13獅子ヶ鼻山09:29--(.48)--10:171685m10:56--(.29)--11:25鹿俣山--(.52)--12:17駐車場 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |