無念の忠次郎山断念 登山日2006年4月22日
三国峠から、県境を辿り「忠次郎山」に登る事を以前から温めていた。かつて同僚が白砂山から縦走したときはハイマツの薮に悩まされたと聞いた。そこで登るのなら、残雪期の今しかないと実行に移した。 三国峠に近づくとフロントガラスに雪が舞い始めた。気温を示す道路上の表示板を見ると1℃を示していた。凍結はなさそうだが、この時期はまだまだ天候は不安定だ。三国隧道を抜けて新潟県に入っても雪が舞っていた。国道から苗場プリンススキー場に向かう道に入り、そのまま三国スキー場に向かう。ところが、道は「苗場スキー場焼却施設」で通行止めとなってしまった。看板には「ナダレの危険があるために立ち入り禁止」と書いてあり、除雪もされていない状態だった。しかたなくここでUターンして駐車余地を探すことにする。 駐車スペースは戻るとすぐに大きな広場が見つかった。おそらく除雪車の駐車場か、雪捨て場として使う場所なのであろう。支度を整えて雪の状態を見ると、傘が無くともなんとかなりそうな雰囲気になってきた。しかし、どうも出発するにしては気乗りがしない天候だ。明るくなるのも、なんとなく遅いような感じを受ける。それでも、夜明けのスピードは速くどんどん周囲が明るくなっていくのがわかる。あっという間に5時になってしまうので、慌てて車から飛び出した。 除雪がされていない道は、まだ雪が締まっていないこともあり、踏み込んで歩きにくい。しかし、ワカンを履くのも面倒なのでそのまま進む。一応、ここは国道353の表示があるが、林道と言った方が適切とも思われる。緩やかに昇るこの道は、意外と距離がある。目の前には巨大な送電鉄塔が見えているのだが、なかなかそこにたどり着かない。送電鉄塔に到着しても、先は長く今度は高層ビルのような岩が遠望できる。これはあとで知ったのだが、「ちょうちん岩」と呼ばれる、奇っ怪なかたちの岩らしい。 このちょうちん岩に近づくと、そこは三国スキー場のbP駐車場だった。看板のペンキも剥がれはじめている。「三国ヒュッテ」と書かれた建物は板が打ち付けられて、廃墟のようだった。地形図を見ると、この先にも駐車場があるので、そこに向かって休まずに歩いた。1駐車場は、手前に案内所があったが、閉鎖されてもう復旧は無理のような状態だった。さらにレストハウス「RUMI」があるが、これも板が打ち付けられてひっそりとしていた。ゲレンデリフトの乗り場は、雪で埋もれてしまい稼働は出来そうもない状態だった。雪が舞う状態は無くなったが、ガスがなかなか消えない天候は、標高が高いところにあるリフトの鉄柱は霞んでいた。 地形図は今回、カシミールからプリントアウトしたものを、ラミネート加工して持ってきている。天候の悪いときや、雪のある時などは威力を発揮する。今回の山行でも、このラミネート加工した地形図は大変役に立った。その地形図を見ると、このリフトの索道に沿って登るのが一番早そうだ。見るとそれほどの傾斜もなさそうで、効率的に一直線に登れるのが魅力だ。 ゲレンデをリフトの支柱に沿って登ると、踏み込むだけでステップが決められるので登りやすい。それなりのペースで登ることが出来る。天候は雪から雨となっていたが、それも上がりガスが目の前で流れる様になってきた。こうなれば、天候は回復状態となってきた証拠だ。見上げれば、空の一角は青空が窓のように雲に囲まれて流れていく。ゲレンデの一部はその空の窓から射し込んだ太陽の光が眩しく、雨氷が付着した木々が輝いて見えた。 第1リフトの終点は登り初めて1時間弱で到着した。リフトの台の下はちょっとした小屋のようになっていて、ここで休憩することにする。いなり寿司とお茶を口に入れるとホッとした。それにしても歩き始めて2時間を要しているのにまだたいしたことはないなあ。ちょっとがっかりするのと、体力不足が無性に情けなかった。 一息ついたところで、今度は第2リフトに沿ってのぼることにする。第2リフトはたいした距離ではなく、難なく終点にたどり着いた。ここまで来ると、天候が大きく変化して、空は青空が広がり、雪面が眩しく感じられるようになった。しかし、風が強く天候の変化が激しいことが感じられた。いよいよここから、ゲレンデはなく本格的な山歩きとなってきた。 雑木林の中の急登を快適に登っていくが、雪が無ければ笹に阻まれて登りにくいことは予想できる場所だ。1650mのピーク手前で、左にトラバースして、西沢ノ頭との鞍部に向かう。このあたりが森林限界のようで、展望が開けてくる。しかし、完全にガスが無くなっているわけではないので、遠くまで見渡すわけには行かなかった。しかし、快適な雪原で、気分的にも楽になり歩みが進んだ。 西沢ノの頭は雪が無くなり、シャクナゲの薮になっていた。三角点があるはずだが、薮の中に埋もれているのか、あるいは雪に隠れているのか見つけることは出来なかった。周囲のガスは途切れてきているのだが、展望はまだまだといった感じだ。西沢ノ頭からの下降はハイマツの薮に雪が乗った状態なので、体重をかけると踏み込んでしまい、歩きにくい。それもわずかな距離で、ふたたび快適な稜線歩きが待っていた。 標高1780mのピークは三つの尾根が合流している。ふと見ると北方面にアンテナの立つピークが、意外と間近に見える。地形図を見ると、それは苗場プリンススキー場の筍山であることがわかった。どこかで見た様な風景なのだが、どうしても思い出せない。「アンテナ」の見えるピーク?どこだろう。しばらく考えてみたが、ついにわからなかった。その筍山に続く稜線を分けて西に見えるピラミダルな山容の1852m峰への稜線を辿る。 一部雪庇が崩壊してクレパス状になっているところもあり緊張する。しかし、快適な稜線は距離がどんどん延びるのが心地よい。1852m峰のピークの基部から山頂を見ると、かなりの急傾斜なのでとても登る事が困難に思える。しかし、この立派なピークに名前が付いていないのは何とも寂しい。この山を源にする「湯ノ沢」を考えると「湯ノ沢ノ頭」と呼ぶのが適当なのかも知れない。このあたりから、天候が一気に回復して、雪面が眩しく感じられるようになってきた。そこで、前日にDIY店で仕入れたサングラスをかけた。度付きではないのだが、だいたいの様子がわかればいいだろう。 ここから、県境稜線へのルートは雪庇がかなり崩壊して条件が悪くなっていた。慎重に雪庇側をよけると、薮が深くなり、ちょっと歩くのが難儀だった。しかし、この時点で時間は10時半になっていた。こうなると忠次郎への日帰りは不可能になってきた。こうなると、適当なところで引き返さなければいけない。今日はツエルトをはじめとして幕営用具も用意しているのだが、宿泊は考えていないので引き返す時間が重要だ。 県境尾根手前の1840mのピークは印象的だ。ここから県境尾根までのコルを挟んだ雪原は実に素晴らしい。なだらかな雪原は光に満ちあふれて、その中にコメツガが点在して、なんとも言えない雰囲気だ。何よりもその中にいるのは自分だけで、足跡さえも残っていない。開放感に包まれて県境尾根に向かった。
県境尾根からは進行方向を転換して北西に向かう。これまたなだらかな尾根をゆっくりと登っていく。そしてコメツガの林にはいると、そこがどうやらセバトノ頭らしい。GPSで慎重にポイントを探すと、どうやらこんもりと盛り上がった場所が山頂らしい。しかし、ここでは展望が良くない。少し戻って、平標山の見える場所で今日のルートを振り返ってくつろいだ。このまま進むことも可能だが、時間的に見て、このあたりが引き際だろう。久しぶりの山行なので、無理はしたくない。それに持ってきたビールを早く呑みたいと言う気持ちが強かったのかも知れない。 忠治郎山は宿題の山となってしまったが、今回の山行は展望を楽しむことが出来た。それだけで満足だった。 「記録」 苗場スキー場外れ05:02----05.57三国スキー場「bPP」----06:11「bQP」06:21----07:09第1リフト終点07:26----07:56第2リフト終点----08:45西沢ノ頭----09:441852m峰----10:32県境稜線----11:06セバトノ頭11:33----12:331852m峰13:25----14:25西沢ノ頭----14:58第2リフト終点----15:10休憩15:30----16:43苗場スキー場外れ |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |