師走に佐久の山を楽しむ「峰雄山」「男山」   
                   登山日2009年12月13日





男山山頂から見る八ヶ岳

峰雄山(みねおさん) 標高1631m 長野県南佐久郡/垣越山 標高1797m 長野県南佐久郡/男山(おとこやま)標高1851m 長野県南佐久郡




佐久の山は範囲が広く私にとって未登の山がたくさんある。また、途中で断念してしまった山もある。今年はかなり頑張って山を歩いた事もあり、たまには佐久の山をノンビリと歩いてみることにした。

12月13日(日)

**峰雄山**
自宅を4時に出発、何度も通っている南相木村に向かう。6時過ぎに三川地区から栗生地区に通じる栗生峠に車を止めるが、周囲は日の出前と言うこともありまだ暗い。峠は路肩に車が数台止められる。そばには立派な石碑が二本あり、国体の時の採火地点を記念するものと、この林道を建設した自衛隊の栄誉を讃えるものが建っている。その石碑に挟まれた隙間には、置かれた石で埋められてしまった小さなお地蔵さんが上半身だけを見せていた。これから向かう峰雄山は「旅人」さん「あさぎまだら」さんの記録があるがあまりパッとしない。いずれも松茸山で立ち入り禁止の記述が気になる。たしかにこの栗生峠付近は周囲にテープが張り巡らされ、「松茸山」「立入禁止」の看板が並んでいる。前述の2件もそうだが、今の時期は松茸があるとは思われない。まして松茸なんかには興味はなく、登山が目的なのだから、もしも咎められたら、潔く御用になろうと覚悟を決めた。

松茸山の名の通り、いきなり赤松の林の中を登ることになる。赤松林はよく手入れされており、間伐や下草刈りされている。そんなわけで登りはじめたものの、いささか気が引ける。なるべく端を歩き、急登を我慢して喘ぎながら登っていく。やがて尾根に到着、ここからはこの尾根に沿って山頂を目指していけばいい。

小さなアップダウンを何度か繰り返してひたすら登っていく。日の出の時間は過ぎているが、あまり明るくなったような感じにならない。それはガスが周囲を取り囲んでいる影響が大きいに違いない。乳白色の背景の中に赤松と雑木の林が広がっている風景が続いているだけだ。腰に付けたクマよけの鈴が静かな山に響き渡っている。しかし、この山はこの大型動物の気配は感じられない。

赤テープや標識は無いが、尾根は明瞭で迷うこともなく歩き始めて50分弱で山頂に到達した。山頂には三角点があり、その周りは木々が切り取られていた。しかし、展望は無く、御座山方面の一部が樹間から見えるだけだった。山頂からさらに進めば展望も良くなるかもしれないと、期待を持って進んでみたが展望は得られなかった。静かな山頂でどら焼きとお茶を飲んで早々に山頂を辞した。




松茸山につき入山禁止

栗生峠の石碑

赤松の林

峰雄山三角点

三角点測量の残骸

御座山を見る



**男山**
峰雄山から車で15分ほど移動すれば立原高原自然公園の登山口に付くことが出来る。コテージの中の道を進んでいくと登山口には「天狗山→」の標識があり、一台程度のちょっとした駐車スペースがある。男山は馬越峠から天狗山を経由して登るのが順当なのだろう。しかし、2年前に冬期林道通行止めでやむなくここから天狗山に登る事になった。その時は、静かで短時間で登れるルートとの印象が強く残った。しかし、その時は雪が深く、男山まで行くことは断念した経緯があるから、今回は再挑戦の意味合いもある。


登山口から沢沿いに延びる林道を直線的に登り、100m程で左に折れて山腹を巻くように付けられた道を登っていくことになる。道は良く整備されて分かりやすい。まして初めのうちは階段も設置されて、開設時はしっかりした道であったことが想像できる。やがて道は雪が目立つようになり、今シーズン初めての雪道歩きを体験することになった。新雪に踏み跡はなく獣の足跡さえもない静寂の道となっていた。目の前には天狗山の屹立した鋭峰が逆光の中にシルエットとして見えている。その稜線は木々の枝に雨氷が付いて、花が咲いたように白く見えていた。この山腹を巻いて進む道はなだらかで、歩きやすく実に快適だ。歩き始めてから40分ほどで天狗山と男山を繋ぐ稜線に到達した。稜線は風が強く耳が切りつけられたように痛い。そこでフリース地の帽子を被ると、たちどころに耳の痛みは無くなった。前回来たときはこのあたりは雪が深くツボ足の歩行となったが、今日はそんな苦労はいらない。踏み跡もしっかりした道を男山に向かって稜線の斜面を登りはじめた。


立原高原登山口

稜線に到着(天狗山が近い)

垣越山山頂

岩峰からゴルフ場を俯瞰、遠く瑞薔山を見る



1797mのピークは地形図には山名の記載が無いが、垣越山と呼ばれているようだ。ここから道は左に90度曲がるようになっている。登山口から歩き始めてから約1時間経過したが、疲れはそれほど感じないので、このまま男山まで行ってしまうことにした。目指す男山はお椀を二つ逆さにして連ねたような双耳峰だ。樹林の中から見透かせば意外と近くに見えることから距離的にはたいしたことはなさそうだ。ここからの稜線は所々に岩峰があり、その岩峰の上に立つとそれぞれに大展望が広がって見えた。振り返れば天狗山のピークがあり、眼下にはゴルフ場の芝生の斜面が広がっている。あいにくと遠方は雲がかかり見えにくいが、それでもこの景色は見とれるばかりだ。


標高1800mのピーク手前は岩稜にそのまま登る道と左側に回り込んで巻くような道とに分岐する。左に向かう明瞭な道なのだがこの道は何となく下降してしまうようだ。そんなものだから少しだけ歩いてみたところで、不安に駆られて引き返してみた。しかし、この巻いていく道がどうやら正しいようなので、そのまま進んでみる。ところが明瞭だった道は踏み跡もちょっと途切れ気味となって来るので、再び不安になってきた。右の斜面の上の稜線はすぐ近くに見えるので、思い切ってその稜線に登ってみることにした。するとそこには明瞭な踏み跡があり、今までの巻道とどちらが正解だったのか区別が付かない。おそらくこの付近は迷いながらルートを探す人が多いと思われる。さらに稜線をわずかに辿ると、今度は目の前の1810mの等高線のピークを右に巻くような形となる。この巻道は日陰になっているために、雪が残り一部は凍結している。簡易アイゼンを用意してきているが、使うかどうか微妙なところだ。しかし、装着するのも面倒なので、ストックを支点にしてなんとか前に進んだ。ここを通過すると見えていた男山の双耳峰の手前の基部になった。ここには標識があり「さわらくぼ」の地名が記されていた。




天狗山を振り返る

男山の双耳峰

男山の双耳峰が近い

巻き道は雪がいっぱい



双耳峰の手前のピークは、天狗山方面の展望が開けて、歩いてきたピークを辿って見ることが出来る。さらに今まで気が付かなかったが、南相木ダムを遠望することが出来た。するとあの辺が上信国境の山々なのかとピークをひとつひとつを目で辿って確認した。さて、いよいよ男山の本峰へ向かうことにする。遠くから見ていた双耳峰のギャップはたいした事はなく鞍部にたどり着く事が出来た。標識があり、「御所平→ 1時間30分」と書いてあるどうやらここは別ルートからの合流点でもあるようだ。この鞍部を見送ってわずかに登ると、三等三角点が設置された男山山頂にたどり着いた。



山頂に立った途端にその場の360度の大展望に思わず息を呑んだ。まず目にはいるのは雪を被った八ヶ岳だった。山腹に雲が一筋たなびき、山頂部は天空に浮かぶ島のように見える。眼下の農地は整然と区画され、その様は人間が営んできた開拓の歴史を辿るようであった。目を左に転じれば、甲斐駒ヶ岳、瑞牆山は山頂の一部が雲に被われているもののギザギザの特徴ある山容で確認できる。さらに目を移せば間近に見える御座山がど〜〜〜ん構えている真っ白な浅間山は雲と色彩が同化して見えていた。飽きることのない展望を楽しんでから、山頂部分を外れてザックを降ろした。今日はゆっくりとしよう。鍋焼きうどんとビールを取り出して、今年最後になると思われる山行を締めくくることにした。大展望と静かな山頂はなんという幸せなのだろう。30分ほど経過したところで、単独行の男性2人、夫婦連れ一組が相次いで山頂に到着した。一気に賑やかとなったお互いに山談義を語りながらそれぞれの山頂を楽しむこととなった。こんなゆっくりと落ち着いた山行は久しぶりだ。山頂滞在1時間半近くはあっという間に過ぎてしまった。

下山後は大好きな「滝見の湯」に浸かり満足した山行と暖まった身体で締めくくった。



男山の前衛峰からルートを振り返る

男山山頂八ヶ岳を遠望する

豪華な?昼食

八ヶ岳遠望


栗生峠06:45--(.48)--07:33峰雄山07:48--(.33)--08:21栗生峠

立原高原登山口08:53--(.40)--09:33稜線--(.11)--09:44垣越山--(.48)--10:32さわらくぼ--(.17)--10:49男山12:07--(1.15)--13:22登山口



群馬山岳移動通信/2009

この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)
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