迷った果ての山頂「大山(下仁田町)」 
登山日1995年5月14日


大山(おおやま)標高857m 群馬県甘楽郡
大山山頂
 5月14日(日)

 今日は我が安中市の行事、侍マラソンの愛称で親しまれている「安政遠足」が行われる日である。山に出かける前に家族で見物に出かけた。ほとんどビョーキの人たちが、さまざまな仮装で走る姿はまことに愉快だ。「侍」はもちろん「ピーターパン」「カッパ」「孫悟空」「ウェディングドレス」「セーラームーン」「女学生」「看護婦」ここまで来ると不気味でさえある。また「フンドシ」がゆるんだ飛脚などは、盛んにオバサンの声援を受けていた。

 そんな地元を離れてミニバイクで下仁田町に向かうと、赤地さんのコンパスが眠る火葬場の裏山、「浅間山」が見えてきた。ふと先日亡くなった、テレサ・テンのことが思い出される。たしか赤地さんは旅行中にもテープを買い求めるほどのファンだっけ。知らぬ間に、ミニバイクを走らせながら「もしもあなたと逢えずにいたら〜〜〜」などと口ずさんでしまった。

 「大山」は下仁田町の「稲含山」の北に位置する、標高857メートルの山である。地形図を見ると「大山」の東に林道が延びているので、これを利用すれば簡単に登れそうだ。それらしき林道を見つけて、上部に登っていく。やがて「大山」らしきピークが見えた所で、山仕事をしている人に出会った。

「大山はどれですか? 」
「あれがそうだよ」
「どこから登ればいいのですか? 」
「ここからは止めた方がいい、高倉から登れば簡単だ」

 そう言って、その登り口を教えてもらったので、ひとまず戻って出直すことにした。下仁田の町に戻って、今度は稲含山に続く道に入った。高倉の集落をすぎると、道はダートになった。しばらく行くと左に新しい墓があり、シュロの木が植えられていて目立つ。ここを過ぎて、大きくカーブを右に曲がり、その先に庭石にする大きな石を積み上げた場所が現れる。ここには車も数台廃棄されていた。この場所から10メートルほど戻った、山側の杉林の中に道が付けられていた。ミニバイクを止めて、ここから歩き出すことにする。

 杉の植林地の中の道は歩き易く、ゆっくりと高度を上げていく。やがて尾根に突き上げ左に曲がって、道が分岐した。一本は上部に、一本は目の前のピークの東側をトラバースして行くようだ。地形図を見ると、目の前のふたつのピークを、トラバースして行ったほうが簡単そうだ。そこで上部には行かずに、ほぼ水平に続いている道に入った。斜面に付けられた道は、土が柔らかくもろいので、慎重に歩く。やがてピークを巻いた所で、尾根に着いたがここで困った。目の前に予定していた「大山」が見えない。(実際には見えていたのかもしれないが、見通しが悪く分からなかった)しかたなく、道を分岐まで戻ることにした。

 再び分岐にもどり、今度は上部に続く道に入った。登り上げると目の前に岩壁が現れた。これは登ることはとても出来そうにない。しばらく周辺をウロウロしてみるが、適当な道が見あたらない。半ば諦めて登ってきた道を戻ると、どうやらヒノキの植林地の中に道が続いている。薮をかき分けてその道に入ると、植林地のなかは意外に薮もなく歩き易い。

 そして再び尾根にたどりついた。ここは迷い易そうなので、ティッシュペーパーを数枚木の枝に結び付けておく。ここを右に折れてかなり明瞭な道を進むが、なにかおかしいのだ。木の葉がすっかり出揃って、見通しが利かない潅木の間から周辺を見る。すると地形図のふたつのピークの位置関係から考えて、全く別の場所にいるようである。しかたなく再び戻ることにする。

 ティシュペーパーを結び付けた場所にもどり、今度はそのまま直進する。(登って来た方向からすると左に曲がることになる)登り始めて3分程で難なくピークに到達した。そこにはTVの共聴アンテナが建っており、NHKの文字も書かれていた。ピークと言ってもあまり展望はない。それでもその中から「大山」と思われるピークを確認する事が出来た。やはり迷ったらどこかのピークに登るのが、いちばん良いのだとあらためて感じた。
 さてこれから尾根道歩きとなって、いままでとは段違いに分かりやすい道になった。所によっては、道の真ん中にチゴユリの群落があり、それを踏まぬようにルートを選んで歩く。一旦鞍部に下りて、そこから最後の「大山」への登りとなった。ヤマツツジの花が新緑の中に映えて、初夏の雰囲気さえ感じる。

 喘ぎながら、しっかりした分かりやすい尾根道にを登る。いくつかのコブを越えて行くと、迷った果てに「大山」山頂に達することが出来た。山頂は潅木に囲まれて全く展望がない。ピークには「林野庁」と刻まれた石柱が埋め込まれていて、お馴染みG氏の山頂標識が、西側の立木に打ち付けられていた。「KUMO」はないかと探したが、その痕跡も見つけることは出来なかった。

 山頂では430Mhzで運用したが、あまりさえなかった。2局とQSOしただけでQRTとなってしまった。そんなことをしていたら、なにやら首筋に妙な感触がある。手で払いのけたら、それは青虫だった。荷物をまとめて早々に退散した。これで西上州の季節は終わったと思った。

 慌てていたこともあり、帰り道で木につかまったら枯れ木で、そのまま後ろ向きに数メートル落下した。幸いにも、擦り傷のみで大したことがなくホッとした。


「記録」

 登山口10:04--(.16)--10:20戻る--(.09)--10:29分岐--(.12)--10:41尾根分岐右へ--(.07)--10:48戻る--(.03)--10:51尾根分岐左へ--(.03)--10:54TVアンテナのピーク--(.17)--11:11大山山頂12:00--(.11)--12:11TVアンテナのピーク--(.09)--12:20登山口


                     群馬山岳移動通信 /1995/