花に囲まれた「大津」の岩峰 登山日1997年4月21日
「大津」と聞いて山の名前と解る人は、よほどの山好きにちがいない。私も4年前にJA1KXW/渋沢さんが紹介するまで、全くその存在さえ知らなかった。
4月21日(月)
今日は会社が計画停電で休みとなった。平日と言うのは、なかなか無線の相手もいないので、「山ラン」に関係ない場所に行くことにした。アカヤシオの花咲く西上州、その中でも気になっていた「大津」を目的地と決めた。
下仁田町を抜けて南牧村にはいり、大仁田集落に向かう。そして集落を抜けると道はスーパー林道に突き当たり、左折して少し進むと里宮橋にたどり着く。ここは「三ツ岩山」の登山口ともなっている。かつて「三ツ岩山」に登ったときと、この里宮橋周辺は全く様子が一変してしまっていた。里宮橋の手前には立派な新しい橋が工事中、さらに大仁田川上流は杉の伐採が進み、山肌の土が露出していた。そして林道の上部では、ひっきりなしに重機の音が聞こえていた。
里宮橋の広場に車を止め、大仁田川の左岸の道に沿って歩き始めた。道は伐採された杉の小枝が放置されているので、歩きにくいことこの上ない。やがて伐採地が終わり、沢を渡ると、今度は右岸を歩くことになる。名前が知られていない割には、道は実にしっかりしている。しかし、道標らしき物はいっさい見あたらない。道の脇には「エイザンスミレ」「ヒトリシズカ」「エンレイソウ」「ハシリドコロ」が目を引く。
朽ち果てそうな小橋を渡り、今度は左岸に移る。沢の水音はうるさいほど耳に響いてくる。そんな道を小走りに登っていくと、前方の岩に赤ペンキで矢印が書いてある。さらにその上にはケルンが積んであるではないか。しかし、その矢印が示す方向はなにか藪のようで、あまり気持ちが良くない。それに比べると、沢の道はしっかりとして、さらに前方に続いていく。そこで矢印は無視して、沢の左岸につけられた道をさらに進むことにした。
時折、道の脇には「馬頭観音」が姿を見せる。かつてはここを馬が往来していたと思うと、信じがたい気持ちになる。そしてしっかりした道はやがて沢を離れて、山道にはいる。やっと登山道らしくなってきたと、妙に安心した。道はこれまたしっかりしており、先ほどの、矢印の道はやはり間違いだったのかと思った。
急傾斜の登山道は杉の植林の中に入り、何となく不気味になってきた。なんとか早くここを抜け出したいと思うから、自然とペースがあがった。その甲斐(?)あってか、かなりオーバーペースで稜線にたどり着いた。
稜線上は明るい雑木林の道で、時折現れるアカヤシオの花がとにかく美しい。尾根上のいくつかのピークを越えると1053mのピークに達する。ここからは「大津」の本峰が、やっと姿を見せてくれた。ここからはナイフリッジの岩を渡っていくのだが、なんと索道のワイヤーがうまい具合に渡されているので、それに捕まって渡ると簡単に歩くことが出来る。そして「大津」の取り付き点に到着した。ここのアカヤシオは、実に見事でしばしカメラのシャッターを押し続けてしまった。
「大津」の最後の登りは岩場であるが、さほどの危険はない。難なく快適な山頂に到達してしまった。山頂には様々な山頂標識があったが、おなじみGさんのプレートは無い代わりに、「SHC」のものが木の枝にぶら下がっていた。展望は曇りがちの天候であったが、晴れていれば360度のパノラマが開けるはずだ。近くの「三ツ岩山」の山頂はここから見てもアカヤシオの鮮やかな色が見て取れた。カシワ餅一個を、水で流し込むとどうやら落ち着くことが出来た。
展望を楽しむうちに、どうやら登ってきた道を戻るのはアホらしくなってきた。それは1053m付近のピークから派生する尾根が、実に気持ちよく下に向かって延びていたからだ。山頂はあまり長くいても仕方ないので、早々に腰を上げた。そして心を決めてその尾根に向かって下降点を探すことにした。
それらしき場所に着いて注意深く見ると、何となく赤テープが下に続いている場所があった。初めは踏み跡は明瞭でなかったが、次第にしっかりとしてきて、新しい靴跡も見られるようになった。それにしても、もの凄い急傾斜で気を緩めることが出来ないほどだ。ミツバツツジの群落を抜けると杉林に入り、やがて沢音が近づいてきた。沢に出てみると、なんと岩に赤いペンキの矢印がある場所だった。しかし、この急傾斜の道を登るのは大変だと思った。
「記録」
里宮橋09:02--(.18)--09:20赤ペンキ矢印--(.12)--09:32沢を離れる--(.19)--09:51稜線--(.25)--10:16大津10:40--(.07)--10:47下降点--(.17)--11:04沢に出る--(.17)--11:21里宮橋
群馬山岳移動通信 /1997/