砂漠化が進む「大峰山・吾妻耶山」
登山日1995年5月27日
5月27日(土)
上毛高原駅の駅前から「見晴荘→」の標識に従って、車で山道を登る。林の中に畑が点在する高原の道は、舗装されており走り易い。やがて右に「見晴荘」の分岐が現れ、道はダートにかわる。その道もわずかで終わり、大峰沼入り口の駐車場に着いた。駐車場はトイレと水飲み場が設置されていて、なかなか良く出来ている。ここの駐車場はすでに5台ほど車が置いてあり駐車出来ない。その奥を見るとさらに大きな駐車場があり、30台程度は車が置けそうだ。(ひょっとしたら観光バスも可能かも知れない)ここに車を置いて歩き出すことにする。
登山口からはコンクリート舗装の車道が続き歩き易い。ここは入り口に鎖と施錠がしてあるので残念ながら車は入る事は出来ない。ミニバイクならば簡単に入れそうな感じがする。今日は子供と一緒なので、並んでいろいろな事を話しながら登った。
新緑の木々の間を抜けてくる初夏の風は爽やかで心地良い。そんな道もいつしか舗装が途切れて土の上を歩く事になった。それもわずかで終わり、バンガローが見え大峰沼に着いた。大峰沼はまさに山の中の水たまりであった。これと言った特徴はないが、標高1000メートルに位置するこの沼は、日本最大の「浮島」がある事で知られている。子供は浮島に乗って見たいと言ったが、そこに到達する術もなく断念した。二人で並んで記念写真を撮り、再び歩き出す。
沼畔を半周していよいよ大峰山に向かう。道は良く整備されているのだが、なにぶんにも設置してある階段の間隔が広すぎて歩きにくい。特に子供にはちょっと無理な間隔だった。稜線に登りあげると、西側がひらけ赤谷湖が眼下に見えた。ここからは快適な稜線歩きで、所々に春のなごりのミツバツツジが残ってる。東側の眼下を振り返ると、先ほど歩いた大峰沼が新緑の林の中に水をたたえていた。
快適な稜線歩きを楽しんでいると突然、鎖場と金属製の階段が現れた。大人なら何という事もない鎖場も、子供にとってはかなりの負担だと思われた。子供の下にまわり落下しても受けとめられるように先行した。しかしそんな親の心配をよそに、簡単に鎖を伝わって鞍部に着いてしまった。ともあれ一安心だ、登りは金属製のしっかりした階段が設置してあるのでなんの問題もなかった。
周囲が開け明るくなると、そこにはTV中継所のアンテナ群がまるで場違いの場所にあるようにそびえていた。ただ今コールサイン申請中の息子が「こんなアンテナが欲しいなあ」などと生意気な事を言う。巨大なアンテナ群を見ながら、その施設のまわりをまわり込むと、なんと立派な林道がここまで延びて来ていた。これを見ると今までの苦労が何であったのか疑わしくなるようだった。さらに林道の広い道は先に続いており、それを辿ると鉄製の立派な展望台があった。その上に登ると三峰山が間近に見える。ここから更に進むと各種の無線中継施設が道の脇に設置されている。まさにこの山はレピーター山と言っても良い程だ。
さらに進むと道の脇に三角点が現れた。まさにここが大峰山山頂だった。なにか登山道(林道)の脇に置かれた杭の様な三角点だった。展望は潅木に阻まれて無いのでなにか感じが良くない、それに道は砂埃が舞っていた。そこで再び展望台に戻りここで無線の運用をする事にした。正式な山頂とは言えないが、広く山頂の一角と考えて見ればみれば問題ないであろう。
展望台で休憩を兼ねて、無線運用と簡単な食事を済ませて再び移動を開始した。ここを過ぎると下り道になった。ここには東京電力の立派なレピーターがあり、監視カメラも設置されていた。なにか嫌な気持ちになったので急ぎその場所を通過した。
道は快適に下るのだが、前方右側の吾妻耶山と思われるピークの山腹が、崖崩れの後のように赤土が見えているのが気になった。
道は鞍部にたどりつきそこが「赤谷越峠」で、道は十字路の様になっていた。そのまままっすぐ登り道に入ると、ここからは登山道らしくなった。道の左は桧の植林地、右は天然林でその中をジグザグにゆっくり登る。時折、水上営林署がつけた樹木の名前札を子供と読みながら登った。
傾斜が緩やかになり、前方に谷川岳が木々の間に見えるようになった。三角点を探してウロウロすると、踏み跡も微かな高台にそれはあった。この三等三角点はよっぽどのこだわりがなければ見つける事は出来ないであろう。ブリキの山頂標識が一本の木に打ち付けられており、ここが吾妻耶山山頂だった。この吾妻耶山は不思議な事に、この三角点の場所のほかに山頂がもうひとつあるので、今度はそちらに向かう。わずかな時間ですぐにそこに到着した。2メートル程の高さの石祠が3個あり、こちらには立派な山頂標識が立っていた。すでに15人ほどの元気な老人の一行が、宴会の最中だった。何やら「煮込みうどん」を作って食べており、なんとも大したものである。
子供と隅の方に陣取って食事をする事にした。こちらはインスタントのレトルト食品なので、老人の一行から見ればみすぼらしいことこのうえない。展望は座っていると何も見えないほど潅木がまわりをふさいでいる。無線運用はあまりたいした事はなく、数局とQSOするにとどまった。
帰りは山頂から少し戻って、大峰沼方面に山を下る事にした。下りるに従って信じられないものが現れてきた。それはスキー場のリフトだった。森を切り開き、木を根こそぎ引き抜いた後の荒れ地にその人工物は太陽の陽を受けて無機質の光を反射している。そばに行き看板を見ると「スキーリゾート水上norn]と書いてあった。子供が思わず「砂漠みたいだ!」と声を上げた。まさにここは草も生えていない荒れ地で、風が吹くと砂塵が舞っていた。これでまた水源地の貴重な緑のダムが消えたと、感じながらその土埃の舞うスキー場を下った。もちろん登山道は寸断されていた。
この「大峰山・吾妻耶山」は、近い将来に登山の対象から除外される山となってしまうのかも知れない。
「記録」
登山口10:03--(.22)--10:25大峰沼--(.18)--10:43稜線--(.29)--11:12TV中継塔--(.05)--11:17大峰山山頂11:54--(.24)--12:18赤谷越峠--(.18)--12:36西峰(三角点)--(.10)--12:46吾妻耶山山頂13:46--(.33)--14:09林道--(.17)--14:26林道を離れる--(.10)--14:36大峰沼--(.19)--14:55登山口
群馬山岳移動通信 /1995/