早春の「西上州・三ツ岩岳」    登山日1994年4月18日


三ツ岩岳(みついわだけ)標高1032m 群馬県甘楽郡
山頂からの展望
4月18日(月)

 天気も上々、いざミニバイクに跨り出発する。大屋山(4/09)の時に見た下仁田町の桜は、三分咲きだったが、今日見る桜は満開で一部は散りはじめている。それと同時に周りの山々が、木々の芽吹きで淡い色になりつつある。南牧村役場の前で、標識に従い大仁田へ左折する。沢沿いの道を道なりに走ると、民家が途切れて大きく右に曲がる所がある。更に少し行くと、スーパー林道との三叉路に出る。ここは左折して進むのだが、一般車両は進入禁止の看板が、道の中央に設置してある。しかし、ゲートがあるわけでもなく、看板の脇は乗用車が通過できる程度の、空間があるからこの看板は有名無実となっている。さらに進むと里宮橋の手前に、朽ち果てたプレハブの小屋があり、ここの反対蔵の地点に、三岩岳の登山口の標識がある。

 登山口には竜王大権現の里宮の祠があり、登山道は沢沿いの道を歩く事になる。標識はあまり無いが、赤テープ、赤布、黄色テープ、と実に賑やかである。これならば道に迷う事もあるまい。道は沢の右岸を沢に沿って、忠実に辿っていく。春と言う事もあり、草花も賑やかになっている。ハシリドコロは暗紅紫色の釣り鐘型の花が、既に咲いている。ヤブレガサはその特徴のある、葉を整えていた。またエンレイソウはまだ時期が早いのか、蕾の状態だがその姿は優雅である。道は杉林の中をただひたすら登る。ときどき酒の一升瓶ころがっているが、中には沢の中の土に埋もれているものもある。それに猟も行われるのだろうか、散弾の薬きょうの残骸も見られた。

 稜線に着くと、口の中に含んだ飴が丁度溶けて無くなった。道は右に続いている。所々大きな岩が現れるが、赤テープの通りに歩くと、難なくその岩場を通過する事ができた。やがて小さなピークに出ると、目指す山頂のピークはアカヤシオの花が咲いているのが見える。いやがうえにも、早くそのピークに立ちたいとの願望が、強くなるものだからペースも早めになってしまう。ふと足元を見ると、カタクリの花の群落が見られた。あまり株の数は多くないが、それでもその花の姿は美しい、早春の妖精と言った所だろうか。カメラを取り出して、一枚写真を撮っておいた。

 更に岩場を卷きながら歩くが、全く危険な場所は無く難なく山頂の稜線に着く事ができた。ここはT字路になっていて、左は山頂へ、右は下山道に続く道と分岐している。左の道を進む事になるが、ここからは両側がアカヤシオのピンクの花のトンネルの中を歩く事になる。ここから数十mで目指す三ツ岩岳山頂に着く事ができた。

 山頂は360度の展望がひらけていた。そして山頂はアカヤシオの花が取り巻いている。一部シャクナゲも蕾も膨らんでいる。その花の向こうにはこの山村の民家が、点在している。そしてその向こうには、春の陽射しの中で西上州の山並が続いている。今までは気にも止めていなかったピークが、最近になって登った山が増えたためか、親しみを持って感じられる。この山からの展望は、まさに西上州そのものを見ている実感がある。大展望を楽しんでいると、何か烏帽子岳に向かうのが惜しくなって来る。430Mhzで1局QSOして山頂を後にした。

 山頂から登ってきた道を少し戻り、右下に道を分けて真っ直ぐ進む。相変わらず赤テープが道を案内している。踏み跡もしっかりしており、岩場が現れてもそれを巻くように続いている。大きな岩峰の手前で左に卷きながら降りると、竜王大権現を祭る祠があった。その手前には洞窟があり、ガイドブックによれば10人ほどビバークできる広さがあると書いてあったが、怖がり屋の私は横目で見ただけで、足早に通り過ぎた。

 ここからの降り道は、土が柔らかく、まるで雪の中を歩くようであった。何しろ踵で踏み込みながら降りられるのだ。若干、右に左にと踏み跡は曲がっている。渋沢さんだったらショートカットで降りるところだろうか。下に降りるに従って薮が多くなり、やがて赤テープも無くなり、踏み跡も途切れてしまった。とにかく下へ降りればいいだろうと、適当に進んだら、杉の植林の明瞭な道にでた。

 そして、その道は往路に辿った道に、合流したので一安心した。そこから10mほど下った所には、四角のブリキの錆びた標識が落ちていてかすかに、「大津1041」と読む事ができる。登山口までは更に3分程歩くだけだった。


次は烏帽子岳に向かう事にする。



「記録」

登山口8:58--(.26)--9:24稜線--(.09)--9:33小ピーク--(.20)--9:53三ツ岩岳山頂10:42--(.21)--11:03往路登山道合流--(.03)--11:06登山口


                         群馬山岳移動通信 /1994/