御荷鉾スーパー林道の薮山
登山日1995年12月3日
「日影山」「日向山」「南小太郎山」
ここのところ野暮用が多く、また先週は風邪に取り付かれてダウンしてしまった。今も咳と鼻水が止まらないので、完全に回復とはなっていない。そんな訳で簡単な山を目指して御荷鉾スーパー林道の周辺の薮山に登って見る事に決めた。
12月3日(日)
下仁田町の市街地(?)を抜けて南牧村に向かう。「跡倉」の信号を左折して御荷鉾スーパー林道を目指す。安中市からこのスーパー林道に入るのは、今の所このルートが一番距離が短い。下仁田−上野線で塩の沢峠から入るのは道が狭く、また通行量が多いので大変だ。それにひきかえこのルートは最後の5キロ程がダートなのだが、それまでは快適な舗装路である。まして対向車は少なく展望もとびきりいいときているのだ。しかし12月1日から翌年の3月31日までは全面通行止めとなっている。理由は「積雪の為」となっているので、雪が無ければ通行可能とも言える。
「日影山へ」
スーパー林道に乗り入れてから、左折して1キロほど西に向かうと道が分岐する。左折して南に降りる林道には「七久保橋倉線」の標識がある。傍らには道祖神が冬の光の中で西向きに置かれていた。ここは中里村と下仁田町の境でもあり、八倉峠と言われるところである。ここに駐車して、薮の中に踏み込み稜線伝いに登り上げる。下の林道がやけに騒がしいと思ったら、ハンターが数人で犬を連れて歩いていた。薮山に登るには適した季節なのだが、この季節は余分な心配をしなくてはならないのが悲しい。ここに出かけてくる前に読んだKQAのファイルにも、この「日影山」でハンターにあったとの記述があった。KQAは実際に薮の中でハンターに遭遇してびっくりしたらしいが、今日はそんな事にはならないように願うだけだ。
稜線には道はなく、微かな踏み跡とも獣道とも言えるようなものが時々現れた。今日は天気もいいし、この稜線から外れなければ、間違いなく目指す「日影山」に到達出来るはずだ。潅木の間からは雪化粧をした、浅間山が青空の中にその勇姿を見せていた。落ち葉の道を辿ると歩き始めてから30分足らずで「日影山」山頂に到着する事が出来た。
山頂は展望はなく、二等三角点と明大の山頂標識、そして達筆標識が二年の歳月をものともせず立木に打ちつけられていた。記念撮影を行い、家にいる7N3VZTと交信をしてから山頂を後にした。帰りながら何気なく西側の斜面を見るとなんと林道がそこまで来ているではないか。この山域の山はその内に何処でも車で登る事が出来てしまうのではないかと思う程だ。
「日向山へ」
車に戻り今度は東に向かって林道を走行する。二万五千分の一の地形図を片手に持ちながら、慎重に運転する。それは日向山への登山口を見つけなくてはならないからだ。何しろこの辺の山は登山の対象から外されてしまったのか、登山口の標識などはいっさい無いからだ。唯一目標となるのは林道上の町村界の標識である。
「日向山」の登山口と思われる場所は、車が三台ほど駐車出来るスペースがあり踏み跡がハッキリした道が上部に伸びていた。ともかくこれに間違いないとの確信を持って歩きだした。道は立派なもので特大の霜柱が出来上がっており、それを踏みしめながら歩いた。やがて道は小笹に覆われた快適な道となった。そして稜線から一気に登り上げると、小笹が敷き詰められた明るい山頂に到着した。
しかしながら展望は相変わらず潅木に阻まれて望む事は出来ない。達筆標識をバックに記念撮影をして、二局と交信をして山頂を後にした。
「南小太郎山へ」
怪人はこの山の名前に惹かれて登っている。しかし山頂の様子はその期待を満たすものでは無かったらしい。だが登っていないものにとっては、やはりその名前の魅力は人を引きつける。
林道を更に東に車で走行して杖植峠を越えると「これより御荷鉾森林公園」の小さな標識と遊歩道の大きな標識がある。この場所の上に見えるピークが「南小太郎山」に続く1521メートル峰である。どこか車を駐車する場所は無いものかと見たがそれらしい場所は無い。しかたなくそのまま走行すると林道の南側に広い駐車スペースがあった。しかしそこはなんと同業者が移動運用の真っ最中、HF用のV型DP、V・UHF用の八木アンテナを設置して占拠している。そしてその入り口は車がバリケードの様に置いてあり入り込むすき間はない。趣味を同じくしているものとしてはちょっぴり恥ずかしい様な、うしろめたい様な気持ちになった。ともかくこれではしかたないので林道上の比較的広いところに駐車した。
林道のすぐ南を稜線が走っており、その稜線に沿って西側に見えるピークに向かった。かつてはここも遊歩道があったのだろう、時折立派な階段が現れるが下草に覆われて、今ではむしろ邪魔としか思えないような状態だ。10分程で1521メートルのピークに着いた。このピークは認知された名前は無いのだが、「白髪山」の名前が一部の地図には記されている。ここからは踏み跡も無い薮と笹との格闘になるので、準備をしてきたトイレットペーパーを所々に結び付けて先に進んだ。
南小太郎山は先ほどのピークよりも100メートル程、標高が低いので山登りと言うよりも山くだりと言った方がいいのかも知れない。しかしそこに行くには三つの顕著なピークを越えなくてはならないのでなかなか楽とは言えぬ。まして笹薮は踏み跡も消えてしまって、なかなか簡単には先に進ませてはくれない。
三つ目の1478メートルのピークを過ぎて、少し下った所に標識が現れた。立木に打ち付けられた青いブリキの標識には「杖植峠」から「万場→」更にもう一方は「萱の平→」とある。ザックを降ろし地形図で確認する事にした。しかし地図がない!!そういえば出発前に地図を出して確認して、そのまま車に置き忘れた様な気がする。しかたないここは勘に頼るしかない。そこで「萱の平」の方向に進む事にした。
するとどうだろうか、どこからとも現れた明らかに道だったと思われる跡が現れた。しかしこれが南小太郎山に行く道と言う保証はない。ともかく稜線伝いに進むと、道は鞍部に降りてから緩やかに登り始めた。そしてわずかな時間で南小太郎山に着いた。
山頂はブリキの標識が立木に取り付けられていた。展望は全く無く、植林された針葉樹がわずらわしくあるだけだ。怪人がこのピークに立ってガッカリしたのもうなずける光景だった。更に山頂はおびただしい程のイノシシの土耕の跡が残っていた。まあクマでなければ問題ないので少しは安心した。
山頂で数局と交信して帰路に着いた。山頂から再び少し下った所で足が止まった。なんとこの薮山に登山者が三人もいるではないか。近づくと登山者とはちょっと様子が違うようだ。見ればなんとマウンテンバイクを持っている。この薮山にマウンテンバイクを担ぎ上げるなんて信じられない。ともかく向こうも私を見て驚いていたようだった。興味があるのでどこから来たのかと尋ねると「平原の藤岡高校の演習林から来た」「道はそれほど悪くは無かった」と言う。すると怪人が登った場所から来たのだろう。それにしても「信じられない」を連発する私に彼らはただ照れているようだった。
ともかくトイレットペーパーの目印を頼りに林道にたどり着くと、駐車して置いた車は土埃で真っ白になっていた。
「記録」
「日影山」
八倉峠09:11--(.27)--09:38日影山山頂10:07--(.13)--10:20八倉峠
「日向山」
スーパー林道10:36--(.06)--10:42日向山山頂11:12--(.05)--11:17スーパー林道
「南小太郎山」
杖植峠(林道)12:12--(.28)--12:40万場町分岐12:46--(.09)--12:55南小太郎山山頂13:58--(.42)--14:40杖植峠
群馬山岳移動通信 /1995/