表妙義はやっぱりきつかった「金鶏山」
登山日1996年9月23日
妙義山は高崎あたりからみると、右(北)から「白雲山」「金洞山」「金鶏山」と呼ばれおおよそ三つに分かれている。そのなかで唯一「金鶏山」だけはなかなか登る機会がなかった。それは登山禁止の処置と、ルートの未整備による荒廃ぶりが予想されたからである。登山禁止については、金鶏山を取り巻くように車道がつけられているので、落石を心配したための処置である。しかし、近年県民登山が行われたりしているので、問題無いだろうと言う結論に達した。
9月23日(秋分の日)
妙義町にある妻の実家にお墓参りに行く事になり、それを利用して金鶏山に登る計画を立てた。妻に車で「一本杉」と呼ばれる場所まで送り届けてもらった。かつてはこの一本杉は登山の休憩地として賑わっていたのだが、いまはその面影さえもない。これは妙義紅葉ラインと言われる有料道路が出来た時から立ち寄る人もなくなったようである。さらにこの道路のために妙義山は登山の対象からも外されたような気がする。さらに観光客が猿に餌を与えたために、猿が麓まで降りてきて農家に甚大な被害をもたらしている。現在はこの道路が無料化されたために、今度は2輪の爆音が終日響く騒音の山となってしまった。
一本杉から標識にしたがって金鶏山に向かう。(これ以降、標識と思われるものはいっさい無かった)人がずいぶん歩いていないのだろう、薮の中をかき分けて先に進む。登山道のすぐ下は車道で、運転手の顔まで見える。それに浮き石が多いので、注意深く歩くのだが、それでも落ちてしまうものがある。そんなものは慌てて手で抑えて、落下を防いだ。何かこれだけで疲れてしまう。
踏み跡程度の道は時折消えたり、再び現れて先に進んで行く。雑木林の中をトラバース気味に歩くと、筆頭岩の基部に到着した。ところがここで行き詰まってしまった。岩壁の基部にはフィックスロープがあるので、それを頼りに一旦岩に登ってみた。しかしここから更に登ると、筆頭岩にそのまま登ってしまいそうである。今日は筆頭岩に登る時間も技量もないので、すぐに岩場から降りた。しかし、ここをどうやったら越す事が出来るのだろうか。しばらく周辺をうろついて見たが、岩場ばかりでどうにも先に進めない。しかたなく雑木につかまりながら下に降りる事にした。
下に降りるにしたがって車道が近くなり、車のナンバーが見える程度まで下降してしまった。今度は再び登り上げなくてはならない。しかしこうしなければ筆頭岩の基部の岩場は通過出来ないのだからしかたない。
そして稜線に登り上げると、そこにはなんと立派な道がつけられており、赤テープもあるではないか。その道をたどり植林地帯を抜けると、一旦ピークを巻いて先に進んでしまう。そこで再び巻いたピークに登り上げてみた。そこは実に気持ちの良い場所だった。筆頭岩を眼下に望み、その向こうに白雲山と金洞山の岩の壁が吃立して見えていた。足元はスパッと切れ落ちていて、何となく足元が落ちつかない感覚がある。しかし今回の縦走途中でここが最高の展望であった。
道はここから再び怪しくなってきた。小さなピークを通過する度に、その基部の右を巻くか、左を巻くか迷ってしまうのだ。これをまちがえるととんでもない事になってしまう。微かな踏み跡を慎重に選びながら歩くのだが、肝心なところであの赤テープがなくなってしまうのが情けない。どうせ取り付けるなら、もっと分かりやすいように付けて貰いたいと思ってしまう。
時折岩壁がむき出しになってなっているところがあり、緊張しながら先に進む。それにしても標識は皆無である所を見ると、この山はその内に全く登る事が出来なくなってしまうのではないかと心配になってしまう。やがて道はタイガーロープが固定された場所に出た。それをたどり上部につくと道は更に上に登っていく。ところがとんでもない薮の中の岩登りとなった。そして最後の2メートル程の登りが、全く手がかりがなく断念してしまった。もし無理をして登ったとしても進退きわまってしまいそうである。それでもと思いまわりを探ってみたが無難に登れるルートはなさそうだ。金鶏山はこれで断念かと思った。
岩壁を降りて再びタイガーロープの所に戻った。ここで再びルートを探してみると、なんとタイガーロープはまだ先に続いているではないか。その先は一旦下降してトラバースしているのだ。なんだこんな事だったのかと、なんだかあっけにとられてしまった。タイガーロープにつかまりながら先に進んだ。
そして道はやがてコルにたどり着いた。そこから再び登るのだが、そこには初めて鎖が現れた。なんとも古い鎖で設置された時の年代が分かるようだ。そこの岩場を登り詰めると、気持ち良く開けたナイフリッジの岩峰にでた。ここからはほぼ水平な道を辿り、快適に歩くと数分で三等三角点があり、その先に金鶏山山頂があった。そこは大きな岩が割れたようになっていて、それぞれに「御嶽神社」「山大神」と読める石碑が立っていた。展望はあまり望めず、雑木に覆われた山頂はちょっと期待外れだった。かつて怪人がここに立って思った事と、現状のRBBSを思うと感慨深いものがある。
山頂では430Mhzで秩父二子山移動の7M1HIG/林さんとQSOする事が出来た。
さて下山だが、山頂からはさらに道が付けられている。一本杉まで戻るのも情けないので、この道を辿って見る事にした。この道は傾斜は急だが歩き易く分かりやすい。あっと言う間に車道に到着してしまった。なんだこんな事なら、はじめからこの道を登れば良かったと、後悔したがそれは既に遅かった。着いた車道の地点は「見晴駐車場」の先で「曲線R=40.0M」の標識がある所だった。
「記録」
一本杉12:10--(.15)--12:28筆頭岩基部--(.30)--12:58稜線--(.11)--13:09825mピーク13:17--(.39)--13:56迷いのピーク--(.16)--14:12金鶏山山頂14:48--(.17)--15:05車道
群馬山岳移動通信/1996/