喧噪を逃れて袈裟丸山から法師岳 登山日2008年5月17日
袈裟丸山は14年前に登った事がある。前袈裟丸山に登ったときに、袈裟丸山の山頂が気になった。このとき初めて袈裟丸山はひとつの山ではなく、いくつかのピークが集まった総称であるとわかった。そして袈裟丸山の山頂については、いくつもの説があることもわかった。いずれにしても、全てのピークを登っておけば間違いないだろうと思っていた。そんなときに「あさぎまだらさん」の記録が目に入った。なんと八重樺尾根経由で奥袈裟を通過して法師岳までピストンをしている。その記録を参考にして、折場登山口から登ってアカヤシオが満開の小丸山経由で行ってみようと計画した。小丸山は、小袈裟と呼ばれているから「小袈裟」「前袈裟丸」「後袈裟丸」「中袈裟」「奥袈裟」「袈裟丸最高点」と袈裟と名の付く6つのピークを踏むことが出来るわけだ。 5月17日(土) 自宅を2時過ぎに出発、小中の信号を左折して山道に入る。暗く狭い林道は長く感じる。途中で道を間違えてとんでもないところに迷い込んで時間をロスしたが、なんとか折場登山口に到着した。4時20分の時点では駐車場に車は9台程度なのでまだまだ余裕がある。今日は、これから、団体登山者がアカヤシオを求めての混雑が予想される。車の中で支度を整えて、4時43分に歩き出した。丸太の階段が設置された急登の道を登るが、なんとも歩きにくい。今では単なるバリケードにすぎないものである。ミツバツツジが満開に近い状態で目に眩しい。併せてシロヤシオが爽やかで清々しい姿を見せている。やがて、目の前がひらけ展望が広がった。草付きの斜面が広がり、その中を登山道が斜面を切り裂くように幾筋も見えている。 小丸山の山頂からは、袈裟丸山を形成する峰々が屏風のように見えている。これからあの稜線を歩くのだと思うとわくわくすると同時に、不安が頭の中を駆けめぐった。小丸山を辞してちょっとしたこぶを越えると、おなじみのカマボコ形の避難小屋だ。中をのぞいてみると、なにやら生活臭のあるものがあるので、中に入る気にはならなかった。この避難小屋からの登りは笹藪がうるさくなってきた。笹丈はそれほどでもないが、昨夜の雨で濡れていて足元がびしょぬれになってしまった。ストックでこまめに払っているのだが、あまり効果がないので、そのまま歩くことにした。 山頂には八反張が通行禁止との標識があるが、ここを通らなくては先に進むことが出来ない。良く踏まれた道を八反張まで下降する。八反張に着くと、確かに崩落が見られるが、さほど危険は感じない。山歩きを続けているものならば、もっと危険な場所を経験しているはずだ。何の困難もなく八反張を通過して、後袈裟丸の登行にとりかかる。この道は意外と笹が深く、踏み跡が見えなくなる場所もある。昨夜の雨に濡れた笹を煩わしく思いながら、山頂に到着した。山頂には立派な案内板が設置されて、なにか場違いな感じがした。標識も立派なものがあり、ここまでがハイキングルートであることを物語っていた。いつしか、太陽はすっかり高度を上げて、明るい日差しが降り注いでいた。さて、ここから自分としては未知の領域である、奥袈裟方面に向かって足を踏み出すことになる。はるか遠くに小法師岳とそれを延長した尾根が見えている。あの尾根がこの奥袈裟に向かう稜線と交わるところまで行かなくてはならない。ある意味で時間との競争とも言える。とりあえず、往路7時間と仮定するならば11時30分まで行動することが限界だ。 木製のプレートが枯れた立木にかけられており、中袈裟と文字が読み取れた。振り返れば後袈裟丸は意外に遠くに感じる。またこれから進む奥袈裟はさらに遠くに見える。まして、その間にはいくつものこぶが見え、これからのルートの困難さを象徴しているようだった。総じて栃木県側は岩場となって切れ落ちている。また主たるピークは屹立し、独立峰の様でもあった。ここで大福餅とスポーツドリンクでお腹を満たした。 とにかく前に進もうとがむしゃらに歩いていたら、いつの間にかピークを大きく下る場所に着いた。ふと見回すとシャクナゲの藪の中に道筋がある。そちらに進むと、栃木県側の展望が開けた場所に飛び出した。裸地となった山頂部分の隅っこには、二つに割れた標識があった。袈裟丸山 1961mとあるので、おかしいと思ってGPSと地形図を確認した。なんといつの間にか奥袈裟を通り過ぎてしまっていたのだ。GPSの軌跡を見ると確かに通過しているのだがそれらしきものは全くわからなかった。ともかく、この最高点のピークを踏んだことで、袈裟丸山のピークを全て踏んだことになるなるので、ひとまず目標は達成できた。時刻は10時10分なので、引き返さなければならない時刻まではまだ時間がある。あんパンを口に放り込んでザックを背負った。 最高点のピークからは雪が豊富に残っていた。雪はそれほど締まっていないので、時折踏み抜いてしまう。慎重に歩を進めるが、どうしても雪の中にはまってしまう。特徴のないシラビソの中を進んでいくと、どんどん稜線から離れていってしまう。どうやら左の群馬県側に寄りすぎてしまったようだ。ルートを右に修正して笹原の鞍部に到着した。ここには立木に打ち付けられた標識があり小法師尾根への方向を示していた。 帰路に奥袈裟の三角点を確認しようとしたが、ついに発見することが出来なかった。ともかくGPSの記録では通過しているのでよしとしよう。帰路はルートもわかりやすく、思ったよりも時間がかからなかった。時間に余裕が出来たこともあり、前袈裟丸山頂では温存していた缶ビールの口を開けて、静かな山頂で乾杯をした。 結局、後袈裟から法師岳の間では誰にも会うことはなかった。アカヤシオ見物の喧噪に巻き込まれることなく、静かな山行を味わえたことは幸せだった。それにしても14年前のコースタイムからは遅れている。まあ、仕方ないなあ。 折場登山口04:43--(.47)--05:30賽の河原--(.44)--06:14小丸山06:18--(.07)--06:25避難小屋--(.47)--07:12前袈裟丸07:22--(.14)--07:36八反張--(.16)--07:52後袈裟丸08:04--(.29)--08:33中袈裟08:48--(1.04)--09:52奥袈裟--(.16)--10:08最高点10:16--(.36)--10:52法師尾根分岐--(.12)--11:04法師岳11:09--(.44)--11:53最高点--(.14)--12:07奥袈裟--(1.04)--13:11中袈裟--(.37)--13:48後袈裟丸13:56--(.27)--14:23前袈裟丸15:08--(.48)--15:56賽の河原--(.28)--16:24折場登山口 群馬山岳移動通信/2008 |
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この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。 (承認番号 平16総使、第652号) |
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