今年のGWは上手く時間が取れない。一年前から計画していた山域はあるのだが、今年は断念するしかなさそうだ。なんとか一日だけ暇を見つけ出して計画を立てた。しばらく山にも行っていないし体力的にもきついので、簡単な山を物色する。すると、GWに通い詰めている尾瀬の山が目に入った。それは八海山とカッパ山だ。八海山は背中アブリ山という面白い名前が付いているし、カッパ山は旧図の山頂は踏んでいるが、新しく表記された山頂は踏んでいない。この二山は尾瀬の山を抜けて県境を目指すための単なる通過点かもしれないが、今の自分には精一杯と感じる。 5月1日(土) 鳩待峠に到着したのは午前4時であるが、駐車場はほとんど満車状態で、狭い区画線の中にやっとの思いで駐車することが出来た。まだ暗いこともあって車内の人たちは動き出す様子がない。なるべく早く出発したいと、車内でゴソゴソと支度を調える。4時半頃になると徐々に人が動き始めた。こちらも外に出て出発準備を始める。とりあえずカンジキと不要かもしれないがピッケルをザックにくくりつけた。12本爪アイゼンは大げさなので軽アイゼンをザックにしまい込んだ。 さあ、いよいよ雪の道を歩き出す。道はルートがハッキリと付いており、しかも早朝と言うこともあり適度に締まっていて歩きやすい。ザックは幕営道具が無いからそれほどの重さはない。快適に飛ばして山の鼻に40分ちょっとで到着だ。小屋の寒暖計を見ると0℃ちょうどなので、この時期としては暖かいのだろう。予報では天候は晴れだったが、雲が多く至仏山や燧ヶ岳n山頂部分は雲に覆われており、ちょっと期待はずれであった。ともかく、ここでちょっと一休みすることにする。 さて、いよいよ出発だ。広い雪原を北に向かって歩いていく。ここでの難所は猫又川の徒渉である事は間違いない。雪が多ければ何のことはないのだが、この時期は川の下流では中々そうは行かない。川の浅い部分を探して遡上していく。すると、なんと倒木が川に掛かっている部分を発見した。しかもそこはケモノが歩いているらしく、道が出来上がっていた。恐る恐る雪の壁を降りて倒木に乗ったのだがその倒木は対岸まで通じてはいないのだ。その先は直径20センチ程度の頼りない木が延びていた。その下はストックを突き立てると水没してしまうから、深さは150センチ以上はあるのだろう。しかし、これを利用して対岸に渡るしか方法はない。意を決してその細い木に乗って対岸の雪の壁にしがみついた。さあここからが問題で、しがみついた対岸の雪に指をさし込んで身体を支えてから横に移動した。ここからステップを切ってこの雪の壁を越えて、何とか対岸に渡ることが出来た。まずは一安心、安堵の気持で再び歩き始めた。 しかし、ここに来て降雪がひどくなってきた。これじゃ天気予報の快晴は無理じゃないか。それにこの猫又川を遡上するのはあとで無駄に標高差を広げるようなので、この場所から尾根に直登することにした。
尾根に上がる斜面は簡単そうに思えたが意外と、その急斜面はきついものがあった。わずかに登ると、なんと熊の足跡を発見。見ればミズナラの上部は無数の熊棚があるではないか。そうしてみるとここは熊の縄張りであることは明白だった。ともかく急いで尾根に上ることだけを考えていた。 尾根に登ると、そこには尾瀬ヶ原の風景が待っていてくれた。しかし残念ながら燧ケ岳は雲に隠れて全体を見ることは出来なかった。1735mのピークに続く尾根は尾瀬ヶ原方面が開けていて気持ちが良い。どんどん高度を上げていくと、はっきりとしたトレースが尾根を横切るようにつけられている。この連休は大人数が入っているから、この山域まで入っている人がいても不思議ではない。ところが近づいてみると、なんとそれは熊の足跡そのものだった。ちょっとだけ気持が落ち込んだが、ここで諦めるわけにはいかないのでこのまま先に進むことにした。 1735mn地点からはほぼ直角に折れて八海山に向かうことになる。一旦鞍部に降りて、樹林帯をひたすら登っていくとやがて八海山の山頂に到着した。尾瀬ヶ原方面の展望が開けていたが、相変わらず雲が多く燧ヶ岳方面はどんよりとしたままだった。山頂には標識のたぐいが無くさっぱりとして気持ちが良い。こんな山を目指して登る物好きは中々いないのだろう。それにしても静かなもので、尾瀬ヶ原の人影が黒い点となって、わずかづつ動いているのがわかる。降雪がおさまった八海山山頂では、数人にメールを送って時間を過ごした。この付近の山は数センチ携帯を移動するだけで、つながったり、圏外になったりするので、その場所探しが大変だ。
さて、八海山からカッパ山に向かうことにする。地形図を確認しながら尾根を外さないように歩くことにする。鞍部に着く頃から、天候は次第に回復して頭上には青空が広がってきた。こうなると日射しが気になってくる。そこでタオルで顔を覆って日焼けを防ぐことにした。カッパ山の登りはそれほど急傾斜ではなく、快適に登っていることが出来る。途中、大きな窪みを発見した。まるで大型の動物が寝そべっていたような場所だった。気になってまわりの足跡を探したが、それらしきものは見あたらなかった。 やがて急傾斜も無くなり広い雪原に出た。ここがカッパ山に間違いなかった。そこは樹木が無くカッパの頭の皿のようになっていた。その雪原からは景鶴山、大白沢山、そして旧図のカッパ山が見えている。なんと素晴らしい景色なのだろう。この景色を独占できるkとは本当に幸せと感じた。さらに歩を進めると、いままで雲がかかっていた全体が見えなかった至仏山がハッキリと見えていた。 ところで、ここから大白沢山、いや景鶴山までは指呼の距離にある。目測で2時間もあれば何とかなりそうだ。時刻はまだ9時なので、あそこまで歩いてみたいと言う衝動に駆られた。思い立って一度はそちらに歩き始めたが、どうもその気力が失せていくのがわかった。最近衰えた体力を考えると無理することは禁物だと思った。せっかくの好天なので、ゆっくりと散策気分で歩いてみるのも良いものだ。 そこで、往路をたどり今まで曇っていて見えなかった景色を眺めながら帰ることにした。
その決断は正しかったようで、いままで見えなかった景色が眼前に広がっていた。こうなると歩くのゆっくりとなるのは仕方ない。八海山山頂では時間経過とともに流れる雲と燧ヶ岳を肴に、ビールを開けて味わいながら過ごした。雲は尾瀬ヶ原に影を映して雪原を移動して行き、雪原の中を流れる川は複雑に曲線を描いている。その川に沿った拠水林の芽吹きはまだまだであろう。 さらに、1735m峰でもさらにゆっくりと休憩して、山の景色を惜しむように下山した。 猫又川を徒渉すると、一人の登山者が大きな荷物を持って休んでいた。聞けば剣が倉山まで行くのだそうだ。私よりもかなり高齢と感じたが、こんな元気が私にも欲しいと思った。さらに山の鼻に向かう途中で3人のパーティーとすれ違った。なんでも巻機山まで行くというが、ちょっと冗談のように聞こえた。ともかく皆さん元気な人たちばかりだった。 しかし、私のこのていたらくは銅賞もないかも。なんと山の鼻ではビールとおつまみを購入して、ベンチに腰掛けてゆっくりとしてしまった。なんという軟弱な山歩きなのだろう。まあ、こんな山登りは最近はしていないので丁度良いかも。 その甲斐あってか?、鳩待峠までの登り所要時間はペースが上がり、1時間を切っていた。
鳩待峠04:45--(.42)--05:27山の鼻05:31--(.24)--05:55徒渉--(.41)--06:36尾根--(.38)--07:14 1735m--(.29)--07:43八海山08:05--(.58)--08:41カッパ山09:29--(1.41)--10:10八海山11:32--(2.21休憩たっぷり)--13:53山の鼻14:32--(.55)--15:27鳩待峠 群馬山岳移動通信/2010 |