山頂に遮るもの無し!!大展望の「上ノ間山」
登山日2010年5月18日
白砂山から三国峠に続く国境稜線は、いつかは歩いてみたい憧れのルートだ。実は今年のGWはここを予定していたのだが、諸々の都合で実現することができなかった。そんな折り、平日の5月18日が職場の計画停電日。同僚のTさんと雑談をしていたときに、白砂山周辺の話が出た。それじゃ、行ってみようかと言うことで、数日前に山行を決定した。 5月18日(火) 午前4時前に待ち合わせの野反湖の駐車場に着いた時には、既にTさんは準備を始めていた。平日と言うこともあり、駐車場には我々のほかに一台の乗用車が止まっているだけだった。Tさんはかなり気合いが入っているらしく、水を4リットルもザックに詰め込んでいる。夜明け前でまだ周囲が暗いと言うこともあり、しばらくはここで休むことにした。しかし、この時期の夜明けはたちまちやってくる。ボンヤリしていた周囲の山の稜線がくっきりとしてくる。どうやら今日は晴天の中での山登りが期待できそうだ。ところが数日前から、足首を捻挫したらしく、歩く度に痛みが走る。仕方なく今日は湿布をしたままその上にソックスをはいて 準備も出来上がって明るくなってきたので、いよいよ歩き出すことにした。駐車場の端にあった車の持ち主も起き出して出発準備をしているようだったが、まだすぐに出発するような雰囲気は無かった。大きな登山口の標柱の脇を抜けて山の斜面に取り付くがちょっと登ると、ほぼ水平に近い状態で山腹を巻くように道が続いている。やがて、ハンノ木沢の沢音が聞こえるようになると、道は下降して沢に向かうようになる。ところが、ここは残雪が多くルートがハッキリとしないばかりか、トレースもほとんど見あたらない。どうやら、この時期はあまり登山者が入っていないのかも知れない。時折あらわれる夏道を辿って、慎重にルートを探しながらハンノ木沢に下っていく。すると、沢に架かる板張りの橋が見えてきた。やれやれ道は間違っていないようだ。 ハンノ木沢を渉って対岸に付けられた道を登っていく。道の両側に咲くショウジョウバカマが春らしい雰囲気を出している。一部崩壊して赤土が登山道を塞いでいる部分を、ストックを突き刺して土にステップを付けて慎重に通過すると。今度は九十九折りの山道となるが、まがまだ歩き始めなので、さほど気にならないで登ることが出来る。やがて道は直線的に秋山郷へ続く道を分けて上部に続く道を辿る。すぐにお地蔵様に辿り着く。社の柱はケモノに囓られたのだろうか、傷が残されていた。まずはここでこれからの登山の無事をTさんと祈った。 標高が上がるにつれて残雪の量も多くなってきた。しかし、この残雪は斑に残っており、夏道との繋がりが分かり難い。夏道を辿って残雪のある場所に入り通過して、その残雪を離れると夏道を見失ってしまうのだ。Tさんと必死になってその夏道を探すのだがなかなか見つからない。仕方なくGPSを取り出して、登山道を確認するのだが、登山道は地形図の記載とは微妙に違っているので、あまりあてにならない。なんといっても目で見える情報が頼りだ。 太陽も次第に高度を上げるようになると、視界が広がってくる。開けた場所では野反湖、草津白根山そして草津温泉の建物を遠望することが出来る。やがて水場入り口の標識のところで一休み。この時点で予定よりも時間が大幅に長くなっていることを確認した。やはりルート探しで時間が掛かっていることが一番の要因と思われる。水場入り口を過ぎると、快適な残雪のルートを辿ることが出来た。ここは遅くまで残雪が残るところである。雪も締まっており、今回のルートの中でも一番歩きやすい場所だったかもしれない。振り返ると、出発の時に車で準備していた登山者がすぐ後ろまで来ていることに気がついた。
残雪の道を辿っていくと視界が開けて目の前に白砂山が眼前に飛び込んできた。太陽に照らされて眩しい残雪が、網膜が痛いほど眩しい。近くにある八十三山は白砂山よりも大きく立派に見える。いつかはあの頂にも立ちたいものだと思ったが、今の精神的な状況では叶わぬ夢になるかも知れないと思った。とりあえず大展望を楽しみながら時間をむさぼりつつ休憩しながら過ごしてしまった。出発からここまで4時間以上を費やしているから、一時間予定よりも遅れている。これでは目指す上ノ間山は断念かも知れないと思うようになった。「まあ、その時は白砂山で諦めて、八間山経由で下山しよう」とTさんと話ながら確認をしておいた。それにしても、先程まで後ろを付いてきた登山者が、いつになっても追いついてこないのが気に掛かる。 堂岩山を過ぎて一旦下降するとそこには八間山との分岐を示す道標が立っていた。目指す白砂山はなんて遠いのだろう。この計画が無理だったのかも知れないと思うようになった。小さなコブを一つずつ越えながら白砂山を目指して歩いていく。登山口からずっと先行するTさんは絶好調に見える。 ところがなんでもないところでTさんが稜線を歩いていると、なんと雪の斜面を一直線に滑落。 「止まれ、止まれ」と思わず叫んでしまった。 幸いにもTさんは反転して雪にしがみついて止まることが出来た。数メートルの滑落だったが、思わぬ展開に動揺してしまった。 滑落したTさんもかなり動揺したらしく、思いっきり無口になってしまった。無理もない止まったから良かったものの、下を見れば谷底まで一直線なのだから。 動揺するTさんに替わって、今度は私がトップで登ることにした。白砂山の登りは日当たりが良いためなのか、残雪がほとんど無く、薮が多く目立つようになっている。ともかく、登らなくては先に進まない。振り返れば堂岩山と八間山の稜線はかなり長いなあと思える。さらにその奥には草津白根山がお青空の中に霞んで見えていた。なんとか休まずに登り上げるとそこが白砂山の山頂だった。夏の風景とは違って平らで広く感じられる。展望はぐるりと一周するが、遮るものがない。まして、これから目指す上間ノ山は残雪が豊富ならよいが、見る限りでは薮も多いなあと感じた。予定では白砂山から2時間は掛かると見ているが、それもギリギリではないかと感じた。
現在、9時半になろうとしている。帰りの時間を考えると、12時までに上ノ間山を出発して帰路につく必要がある。ともかくグズグズしていられない。白砂山山頂は単なる通過点と考えて、Tさんとすぐにこの山頂を辞することにした。Tさんとはこんな時は実に良く意見が一致する。相変わらす滑落のショックがありそうなので、私が先行して行くことになった。地形図を見てもわかるのだが、徐々に高度を下げて行くのだが、実際にはそれ以上に高度を下げていることを実感する。こりゃ帰りの時の疲労はかなりのものになることが想像できた。 稜線を歩いていると、これは道形と思う部分もあるが、多くは腰あたりまで伸びた隈笹に覆われて確認することが難しい。Tさんは、かなり疲労がたまっているらしく、先行する私にどうしても遅れ気味になるようだ。一旦鞍部に降りて登り返すと、いよいよ最後の登りとなってくる。 遅れているTさんを待って、二人でバンザイとガッツポーズで喜びを表しながら上ノ間山山頂にたどり着くことになった。しかし、この山頂のすばらしさに二人とも感激しながら何度も何度も周囲を確認した。山頂標識はGWVのものが風格があって素晴らしい。最近取り付けられた焦げ茶色の標識は傾きながらも木の枝にぶら下がっている。もう一つの標識は針金が切られた状態で地面に転がっている。みれば表示は文字が確認できないほど消えていた。それにしても針金が切断されていることは、なにか問題でもあったのだろうかと考える。 この素晴らしい山頂もあまりゆっくりするわけに行かない。白砂山からここまで一時間ちょっと。帰りを考えると、11時半にはここを出発しなくてはならない。
上ノ間山を辞していよいよ下山に取りかかる。 それにしてもこの下山はとんでもないもので、体力の限界を試させるようなものだった。「もうダメだ、もう山登りをやめようか」と久しぶりに感じるほど辛い歩きが待っていた。 GPSの測定ではのり面距離18.35キロだったので、まだまだ体力が本調子ではなさそうだ。
04:39駐車場--(.19)--04:58ハンノ木沢--(.35)--05:33地蔵峠--(.28)--06:01地蔵山--(1.10)--07:11水場分岐07:15--(.43)--07:58堂岩山08:12--(1.15)--09:27白砂山09:41--(1.15)--10:56上ノ間山11:31--(1.20)--12:51白砂山13:25--(1.10)--14:35堂岩山14:50--(1.27)--16:17地蔵山--(.48)--17:05ハンノ木沢17:10--(.25)--17:35駐車場 群馬山岳移動通信/2009 |
GPSトラックデータ
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。 (承認番号 平16総使、第652号) |
|