慌てふためいた98年最後の山「板沢山」「大戸屋山」
登山日1998年12月30日
12月30日(水)
年末はなにかと慌ただしい。しかし、なんとか時間を見つけて、以前から目をつけて置いた月夜野町の山に出かけることにした。JR上牧駅の先を右に折れて、奈女沢鉱泉に向かう。夜明け前の杉の木立の中を切り開いた林道は薄暗く、不気味な感じがする。頼りのGPSは谷間と言うこともあり、衛星の補足数が少なく位置の表示がうまく出来ない。そのうちに何か車の挙動がおかしいことに気が付いた。みればヘッドライトに浮かぶ路面は異様に黒く光っている。どうやら、昨夜降った雨が凍結してツルツルになっているのだ。4WD+スタッドレスタイヤとは言え、一気に運転は慎重にならざるを得なくなった。
やがて、林道の右になにやら民家のような物が現れ、さらに進むと寺院のような建物が出現した。この山奥にはあまりふさわしくない異様な建築物なので、思わず緊張しながら先に進んだ。すると前方から2頭の犬がこちらに向かってやってくる。犬はこちらを無視するように、左右に分かれて車とすれ違った。
そして、先に向かうとちょっと広い場所に出た。そこで突然とんでもない物に遭遇することになった。
なんと、いきなりスポットライトで照らされて、そのあげくに警報のサイレンが静かな谷間に響きわたった。はじめは、なにがなんだかさっぱりわからず、呆気にとられて身動きが出来ない。ふと、我に返ってから、車のハンドルを何回も切り返し、Uターンして登ってきた道を引き返した。しばらく離れても警報音は後ろから聞こえて耳に入ってきた。焦りながらも凍結した道なので、ゆっくり慎重に運転をしてJR上牧駅付近にまで戻った。戻りながら、標識などを見たがこんなひどい目に遭うような看板等は見られない。いったいあれは何だったのだろうか?(その後、奈女沢温泉に電話をしてみたが、不在らしく真意はわからず仕舞いとなった)
はじめから出鼻をくじかれた格好になり、目的の山に行けそうになくなってしまった。それでは、どこか違うところから登ろうと地形図を眺める。すると、どうやら沼田市との境にある、石神峠から尾根伝いに板沢山に行けそうだ。早速、気を取り直して石神峠に向かうことにする。ところが石神峠に通じる道が最悪で、凍結した道を進まなくてはならない。試しに車を止めて外に出てみると、とても立っていられないほどで、車のタイヤの性能に感心するばかりだ。
***板沢山***
石神峠は道の脇がくなっており、車を駐車するには全く問題のない場所だった。位置的には上州三峰山の北に位置する場所で、三峰山に登るには石神峠からの方が近いかも知れない。頭上には送電線が走っており、峠から少し登ったところにも鉄塔がそびえていた。その鉄塔に向けて、石神峠から支度をして歩き出す。
少し登ると、目の前に谷川連峰が白く輝いており、トマノ耳あたりはちょっぴり雪雲に隠れている。最初の鉄塔に到着、「玉原線bP9」と書いてあり、玉原湖の発電所から延びて来ているものと推察できる。近くには、標高811mのピークの四等三角点が落ち葉の中から頭を出していた。
道はさらに素晴らしい道が続き、次のbP8鉄塔までつながっていた。ここから見るとこの鉄塔の送電線は、目指す板沢山の近くのピークまで行っている。つまり、このまま尾根を歩くよりも、鉄塔の巡視路を使えばかなり楽に登れそうである。よく見れば、巡視路どころか巡視のための林道が、山腹を貫いているのが見える。ここから谷に下りて、見えている林道に行くことも考えた。しかし、せっかく稼いだ高度を下げることには抵抗があるので、このまま尾根を忠実に辿ることにした。
bP8鉄塔からは、今までとは違って道は薄くなって、薮が増えてきた。しかし、尾根伝いと言うことで、ルートは間違うこともなく順調に歩くことが出来る。時折、赤テープが現れるところを見ると、物好きはいる物だと感心する。
標高1033メートルの標高点のピークで、北東から北西に向かう。このピークからの分岐はちょっと分かり難いが、送電線鉄塔が良い目印になった。一旦鞍部に下りてから再び登るが、ここでの薮こぎが本日の一番の苦しいところだ。また登山靴が埋まるほどの積雪になったので、ここでスパッツを装着することにした。
送電線鉄塔のある場所は周囲が切り開かれて、暖かい日差しがいっぱいに降り注いでいる。送電線鉄塔の番号はbP6で、ここからみると板沢山は指呼の距離に近づいて見える。ここで初めての休憩をして、大福餅を頬張った。
さていよいよbP6鉄塔から板沢山に向かって歩き出す。鉄塔から北西に向かって、はっきりした道がつけられていたので、そこに入ってみた。ところが目指す板沢山の方向から離れて、植林地を下ってしまう。そこで植林地に入る前に、道から外れて板沢山の尾根に向かうようにルートを修正した。おそらく、このはっきりした道は鉄塔巡視路で、登って来る時に眼下に見えていた林道に接続していると思われる。そこで帰りはこのルートで下山することにした。
植林地と自然林の境界を上部に向かって進むと、尾根に突き上げてそこをまた上部に向かって登る。薄い薮をかき分けて歩くと再び尾根に突き当たる。若干の雪庇を崩してそこに登ると、果たしてそこが板沢山の山頂だった。
山頂からの展望は灌木の隙間から景色を見るだけだ。朝は見えていた谷川岳は、雪雲に隠されて全く見えない。板沢山から続く稜線は、朝ひどい目にあった奈女沢鉱泉を取り囲むようになっている。そして対峙するように高檜山が目の前にあるが、雪の舞う天候の中では時折しか姿が見えなかった。標識はGさんのブリキ板の物が2枚、立木に取り付けられていた。
無線の方はあまり芳しくなく、かろうじて関越道の移動とQSOしたにとどまった。QSLはダイレクトと言うことなので、当てにならないビューローよりも確実であろう。
高檜山へ向かうことも考えたが、雪が強く舞っていることもあり、このまま下山することにした。
帰りは往路に見つけた、bP6鉄塔から植林地に入る鉄塔巡視路に入ってみることにした。急傾斜だが薮も少なく、あっという間に林道に飛び出してしまった。それに車の轍もあることから、こちらの道を選択していたならかなり早く登れたことは確実だ。林道をどんどん下り、途中からbP8鉄塔に行く道に入り、往路に歩いた道を辿って石神峠に帰ることが出来た。
***大戸屋山***
石神峠に着いたのがまだ正午前、時間も早いのでインスタントラーメンを食べながら次の山を検討した。すると、大戸屋山と言う山がすぐ近くにあることがわかった。標高は940メートルでこの辺としてはあまり目立たない。しかし、これから登る山としては時間的には最適だ。
石神峠から沼田市佐山地区に向かう。途中で「林道大戸屋線起点」と書かれた標識に従って左に折れる。(迦葉山入り口の文字も見られた)舗装路を走行すると「大戸屋トンネルを、抜けてすぐの所に適当な駐車余地があった。林道起点から約1.8キロの地点で、上発知町方面の展望が優れている。
地形図を見ると、ここから尾根に乗り842メートルの標高点を通り、山頂に行くのが最もわかりやすそうである。早速支度をして、目の前の斜面を立木に捕まりながらよじ登る。そして尾根に乗ると、何となく道らしき物が残されている。しかし、赤テープのたぐいは全く見られなかった。意外なほどの急登にあえぎながら進むと、ようやく842メートルの標高点で、ここからは傾斜も緩やかになり、歩きやすくなる。
板沢山と違って、雪はあまりなく、薮をかき分けてひたすら歩く。トゲのある木を掴んで慌てて手を引っ込めることも頻繁にある。それほどタラの木が多いような気がする薮だ。そして、さしたる展望もない尾根を辿ると、右からの尾根と合わさり、山頂部分に到達することが出来た。
三角点はさらに奥まったところにあり、3本の尾根の交わった場所にある。展望は迦葉山の方面と浅松山方面が開けているだけで、あまり快適とは言えない。早速、430Mhzのヘンテナを取り出してセット、幸いにも近くの戸神山の局とQSOできた。
帰りは灌木に捕まり急な坂道を下ったが、灌木の枝に指を挟まれて湿布をしての下山となった。
そんなわけで、98年最後の山行はさえない幕切れとなった。
**記録**
「板沢山」
石神峠07:34--(1.26)--09:00bP6鉄塔09:12--(.32)--09:44板沢山山頂10:48--(.13)--11:01bP6鉄塔北--(.08)--11:09林道--(.14)--11:23bP8鉄塔巡視路分岐--(.10)--11:33bP9鉄塔--(.04)--11:37石神峠
「大戸屋山」
大戸屋トンネル12:40--(.40)--13:24大戸屋山山頂13:39--(.29)--14:08大戸屋トンネル
群馬山岳移動通信/1998/