草木湖周辺の薮山「石倉山」「大萱山」 登山日1998年12月12日
今年の猫吉さんとの忘年山行は、例年の西上州から群馬栃木県境の山に登ることになった。
12月12日(土)
草木湖を過ぎて、黒坂石方面に向かう。キャンプ場付近に9時頃の待ち合わせなので、それに合わせるように車を走行させる。すると、林道の脇の広場に見慣れた車が見える。そして、傍らには猫吉さんが朝の支度をしながら動き回っていた。
久しぶりの再会の挨拶も慌ただしく、登山口さがしに出発することにした。キャンプ場を過ぎて、舗装道路をそのまま走ると、舗装が途切れて橋が現れ、橋の手前には沢に沿って林道が北に延びている。橋の先には民家が見え、屋根には白く霜が降りて朝日に光っていた。車を降りて、ルートの検討をすることにした。結果、橋の手前の林道を沢に沿って登り、稜線まで行こうと言うことになった。
そんなわけで道路上で話し合っていると、橋の先の民家から猫が近寄ってきた。それも間をおいて三匹が飛び出してきた。無類の猫好きの猫吉さんは、もうたまらないらしく駆け寄って抱いて一緒に遊びだした。今日の目的を忘れているようにも見えるほどだった。なんとか、目的を思い出して車に戻って歩き出すと、その後を追って着いてくる。なんとも人なつっこい猫だった。
追いすがる猫を振り切って、林道を走行すると標高670メートル付近で、道は薮に阻まれて狭くなってしまった。ちょうどその手前は広場のようになっていて、駐車するのには最適な場所になっていた。頭上には、比較的新しい送電線が青空に白く光って伸びていた。
支度をして歩き出すと、薮は最初の部分だけであとは薮も少なくなった。しかし、路面が悪いので通常の車では走行するのは困難であろう。最初の橋を渡ってすぐに珍しいものが目に入った。枯れ草が水を毛細管現象で吸い上げて、それが凍って綿菓子のように白く固まった霜柱で、手で触るとパラパラと崩れ落ちた。珍しいのでカメラのシャッターを一枚切った。
林道は地形図の表現の通り分岐があり、作業小屋もその分岐毎に見られた。とにかく地形図の林道を詰めることで高度を稼ごうと、二人でとりとめのない話をして歩いた。
林道終点と思われる場所はちょっとした広場になっており、標高は約900メートル付近だ。林道終点付近と思われると書いたのは、この先も道は続いているように見えるのだが、どう見ても沢床のような石がゴロゴロしている荒れたものだった。仕方なく、この荒れた道を歩くことは諦めて、ここから尾根に登ることにした。
尾根は、急傾斜の檜の植林地でなかなか手強い。それは、檜の小枝が密生しており、それをかき分けないと前に進めないからだ。小枝の少ないところを探しながら歩こうとするのだが、何処を歩いても同じなので、諦めてそのまま直登することにした。今回の山行ではこの登りがいちばんきつい登りとなった。
やっと群馬・栃木県境の稜線に着くと、目の前には日光男体山が雪を被って大きく迫って見えた。しかし、この稜線上は薮がひどく展望はあまり良くない。少し遅れて、風邪気味の猫吉さんが少し離れた稜線上に姿を見せた。
いよいよ稜線上を、目的の石倉山に向かって歩くことになる。石倉山までの尾根は複雑に入り乱れており、迷いやすいような感じを受けるので、地形図を常に確認しながら歩くことにした。尾根を西に辿り、1106メートルの三角点のピーク手前を折れて、北に向かって行く事にした。すっかり落葉した雑木林の中を、積もった落ち葉を舞上げながら歩く。踏み跡は、ことごとく尾根の小ピークを巻くようにしているので、疲れが少しは違うように感じる。
石倉山までのちょうど中間地点のピーク手前の斜面は、今回最も展望に恵まれた場所となった。この場所だけは雑木がなくなり、笹原となって北西方面の山が見えているのだ。皇海山、庚申山、袈裟丸山、そしてこれから行こうとする大萱山が、沢を挟んだ尾根の突端に見えている。遠くにかすんでいるのは赤城山であろうか?いつもと違う山容なのでなかなか確認が出来なかった。
忠実に尾根を辿って、1109メートルの三角点ピークを外して、石倉山に向かう。この三角点ピークが山頂とも思われるが、地形図の表記は隣の細長い山頂部分を指している。そこで三角点ピークを外して、その山頂部分に向かう。
山頂は登山道の一部のようで、あまり感慨がない。それに展望が無いことが、一段とその印象が悪くなっている。これでは、わざわざこの山に登って来る物好きは、少ないことは確かだ。その山頂には達筆標識が一枚あるが、今後やってくる登山者がどのくらいなのかは想像に値する。山頂での無線運用は全くダメで、お互いに奥の手を使って交信して済ませてしまった。石倉山山頂では、展望も無線もうまくいかないので、早々に荷物をまとめて下山することにした。
帰りは、一応三角点ピークを確認して、登ってきた道を戻ることにした。その途中の笹原の斜面で、冬の日差しを受けながら、猫吉さんが持参した缶ビールを分けて飲み干した。とりとめのない話をしながら、20分ほど過ごして群馬・栃木県境の稜線に戻った。
稜線上では、1106メートルの三角点を確認してから、大萱山に向かって歩くことにした。何しろこの薮山で、三角点は貴重な位置確認の手段として確認しておく必要がある。そして次は、地形図に破線で記されている下山路で、この三角点の先にあるはずだ。これは檜の植林地の中に入る踏み跡が、それらしいと確認してから先に進んだ。
県境の稜線は、展望のない単調な道であり、群馬県側が植林地、栃木県側が自然林となっており好対照だ。地形図を何度も見ながら、次の破線で表される下山路を探しながら歩くことになる。その分岐路は意外と簡単に見つけることが出来た。左から延びてきた尾根に登り上げる地点に、赤テープが下に向かって取り付けられていたからだ。帰りはこのルートを辿ることになるので、慎重にマーキングを施して周りの景色を記憶した。
ここからは、いくつもの小ピークを越えて、同じ様な景色の場所を歩くのでなかなか位置が掴みにくい。道の左側に、顕著なドーム状のピークが見えて、さらに歩くと大きなアンテナが立つ場所に出た。「水資源開発公団草木ダム管理所・大萱山無線中継所」の標識があり、コンクリートの建物も設置されていた。
大萱山のピークはこの施設から数メートル登った高台にあり、そこには三等三角点とGさんの山頂標識があった。展望は薮に囲まれて良くないので、山頂に立ったという感慨が湧かなかった。達筆標識をバックにして記念撮影をして、早々に先ほどの無線中継所に戻った。ここは木が伐採されており、若干の展望が得られたからだ。遅い昼食となり、インスタントラーメンを作って、腹の中に入れると人心地がして落ち着くことが出来た。
この山頂でも、無線の運用状況はあまり良くなく諦めかけた。しかし、なんと猫吉さんの呼び出しにJL1FDI/村上さんが答えてくれて、なんとかQSLは確保出来た。まさに村上さんは今日の山行の救世主となった。
冬は日の暮れるのが早いので、早々に荷物をまとめて下山に取りかかった。
ここに来る途中に確認した、下山の分岐路に向かって戻った。高度計の数値を1070メートルに合わせてから、いよいよ下山の道に入る。下山時は迷う事が多いので、慎重に歩く事にする。ひとつの目標は1080メートルの標高点だ。この地点は松の木の伐採地となっていた。しかし、地形図のように沢に下りる道が見つからない。仕方なく、ここから尾根を下ることにした。
地形図で見るかぎり、尾根を下ってもさほど問題は起こりそうにない。しかし、いつかは等高線の細かくなった急斜面を、下らなければならないので一抹の不安がある。尾根はなるべく西に行かないように注意して、歩くことを心がける。猫吉さんはコンパスを手から離さないで、しきりに方向の確認をしている。
標高850メートル付近で、思い切って沢に向かって下降を始めた。恐ろしく急な斜面なので、暗くなった足下を慎重に確認しながら歩いた。すると、はっきりとした仕事道に突き当たり、そのまま歩くと車道に飛び出した。車を駐車した地点から300メートル程度離れた場所だった。
その後は、「国民宿舎サンレイク草木」で風呂に入った。料金400円は適当な値段で、なかなか良い雰囲気であった。再び黒坂石に戻って、猫吉さんが持参した「ヒグマの肉」の缶詰を肴に酒を酌み交わした。
「記録」
林道駐車地点(標高670m)09:23--(1.08)--10:31林道終点--(.22)--10:53稜線11:02--(.46)--11:48石倉山12:12--(.25)--12:37休憩12:57--(.14)--13:11三角点ピーク(1106m)--(.29)--13:40分岐点--(.44)--14:24大萱山15:11--(.28)--15:39分岐点--(.18)--15:57下降点(1108m)--(.27)--16:24林道--(.04)--16:28駐車地点
群馬山岳移動通信/1998/