硫黄岳(八ヶ岳)の周辺を歩く 登山日2005年9月10日


硫黄岳からの展望
硫黄岳からの展望



硫黄岳(いおうだけ)標高2760m 長野県茅野市・南佐久郡/大同心(だいどうしん)標高2720m 長野県茅野市/横岳(よこだけ)標高2829m 長野県茅野市・南佐久郡/三叉峰(さんじゃほう)標高2825m 長野県茅野市・南佐久郡/赤岩ノ頭(あかいわのあたま)標高2656m 長野県茅野市/峰の松目(みねのまつめ)標高2568m 長野県茅野市



本沢温泉経由で登ろうと考えて、エアリアマップを見るとアプローチとなる林道がどうも荒れている様子だ。それに狭いことも予想されるので、軽トラックでの出動となった。松原湖から通い慣れた稲子湯への道に入る。午前5時というのに、道の脇のキャベツ畑はライトで照らされて、収穫の真っ最中だ。こんな狭い道は軽トラックがよく似合う。


駐車場(ここから歩いた)

 途中から大きな本沢温泉の看板に従って左の林道に入る。林道と言うものの舗装されており何の問題もなく走行できる。しばらく走ると再び本沢温泉の大きな看板があり、矢印は右に折れて未舗装の林道を示している。この入り口には駐車余地があり、数台の車が駐車してあった。

 ここは軽トラックの出番だと思い、この未舗装の林道に入った。なるほど林道は狭く、すれ違いはほとんど不可能と言っても良いだろう。路面は荒れており、乗用車ではかなりきついものがあるように感じた。未舗装の薄暗い林道を1.2キロたどると広い駐車場に出た。看板があり、「天狗岳展望台 4WD車以外の車はここへ」それに「ここからゲートまで約10分」と書いてある。先を覗いてみると確かに路面が悪そうだ。歩いて10分ならたいしたことはない。そこで、ここに車を置いて行くことにする。

 支度をして歩き出そうとすると、下の方から男性が登ってきた。「さあ!行きませんか」「一緒に行きませんか?」と話しかけてきた。いかにも山慣れた感じで軽装である。この人と一緒に歩いたら完璧にペースを乱される。そこで曖昧な返事をして、その男性をやり過ごした。案の定、男性は軽快な足取りで林道を登って行った。

 林道は今まで登ってきた道よりも荒れていなかった。おそらくあの看板のおかげで立ち入る車のないことが功を奏しているのだろう。4WD以外の車でも充分に対応できるだろう。ところで10分歩いてもゲートに着かない。これこそ看板に偽りありである。16分掛かってゲートに到着した。なんとここには5台ほどの車がすでに駐車してあった。駐車スペースは20台程度はあるように思える。

 ゲートからは快適な林道歩きだ。ゲートには1時間10分程度掛かると書いてあった。快適な林道ではあるが、単調すぎて次第に飽きが出てくる様になる。やがて硫黄の匂いを感じるようになると本沢温泉だ。ゲートからちょうど1時間なので、今度は看板に偽り無しである。

本沢温泉野天風呂
本沢温泉野天風呂

夏沢峠の発電用プロペラ
夏沢峠の発電用プロペラ


 本沢温泉前のベンチに座りちょっぴり休憩。ジュースを冷やす引き水をちょっぴり貰って飲み干した。目指す硫黄岳山頂はガスが掛かっており、展望はあまり得られそうになかった。5分ほど休憩して出発することにする。途中にある名物の露天風呂を覗いてみる。早朝なのでひっそりしている。硫黄の匂いが何とも温泉気分を盛り上げてくれる。手を入れてみるとかなり温度は低いようだ。夏沢峠に続く道は樹林の中にあり、展望は望めないひたすら歩くのみである。本沢温泉からの標高差は300m程なのでゆっくりと歩けば問題はない。

 夏沢峠にある山小屋はこの季節は営業してはいないらしく、固く閉ざされていた。風力発電の目立つベンチには、2パーティーの10人ほどが賑やかに振る舞っていた。こちらは単独行の悲しさで、その隅に自分の場所を確保して腰を下ろした。スポーツドリンクと、大福餅で息を整えた。ここでの休憩も10分そこそこで、硫黄岳に向かうことにした。

 ここからは本格的な登山道らしくなった。標高2500m付近までは樹林帯が続くが、それを過ぎると露岩が多くなり、砂礫と岩の混在した風景が目の前に広がった。振り返ると夏沢峠が小さくなり、その奥には根石岳が屏風のように広がり、その上には天狗岳が頭を出している。砂礫の道は良く踏まれており歩きやすい。それよりも道がある山はなんと素晴らしいのだろう。それに夏の暑さから少し開放されただけで疲労は極端に少なくなる。

大火口壁
大火口壁
硫黄岳山頂の石祠
硫黄岳山頂の石祠


 硫黄岳の爆裂火口壁が見えるようになると、その迫力に圧倒される。今でも火口壁の崩落は進んでいるのだろう、垂直の岩壁の下には崩落した岩が累々として積み上げられていた。その下方には本沢温泉が小さく見えていた。山頂が間近になると、大きなケルンが目立つようになる。それと共になにやら話し声が大きくなってきたように感じる。かまわずそのまま前に進むと驚くほど景色が一変した。

 硫黄岳の平坦な南斜面の向こうには、大きく赤岳、阿弥陀岳が目の前に迫っていた。空は青く流れる雲は白かった。硫黄岳の山頂は団体も含めて、かなりの人数が休んでいた。心地よい風も吹き抜けるこの山頂で大休止をすることにする。そうは言ってもまだ9時なのでビールを呑むわけにもいかない。相変わらずスポーツドリンクで我慢する。目の前には御料局三角点があるが、本当の三角点を確認することにする。山頂部分を東に移動して三角点探しだ。火口壁の突端部分はすでに穴が開いており緊張する。一番高いと思われる場所には石祠があった。さらに火口壁を東に向かったがついに三角点は見ることが出来なかった。あとで地形図を見ると、三角点はさらに東にあるようだ。

 硫黄岳から一旦鞍部に降りて、硫黄岳山荘を通過して横岳に向かうことにする。砂礫の道は音を立てて踏みしめるとなかなか快適だ。目の前に目立つのは稜線から角のように突き出た大同心だ。最近「徒然あきこさん」のホームページで、大同心に簡単に登頂したと紹介されている。時間があれば登りたいものだと思いながら登った。台座の頭と呼ばれるピークに着いてみると、横岳の手前がかなり渋滞している。聞けば25人の団体があそこで通過に手間取って居るという。そこでこの際なので大同心に先に行くことにする。

大同心
大同心
大同心から見る赤岳と阿弥陀岳
大同心から見る赤岳と阿弥陀岳


 大同心に向かうには稜線からガレ場を下降しなくてはいけない。大同心を見ればクライマーが岩に取り付いている。よくもあんなところにへばり付いて居られるものだと感心した。それと同時にもの凄いプレッシャーを感じてしまった。自分が歩いているところは、浮き石がたっぷりのガレ場なのだ。これは困った事になった。いっさい石を落とすことは出来ないのだ。慎重に慎重に足元を確かめながら下降した。何かここまで歩いて来た中で一番疲れた様な気がした。なんとか時間を掛けて鞍部に下降すると、あとは楽なもので鼻歌交じりにハッキリとした踏み跡を辿って山頂にたどり着いた。山頂は意外に広く不安感はない。クライマーを見てやろうと縁に近づいたが、落石の不安もあり断念した。横岳の鎖場を見ると、団体はまだ難渋しているようだった。

 大同心から稜線に再び戻ると団体はすでに通過していた。鎖場は高度感があり、これならば時間が掛かるのも無理はないと感じた。現に鎖場の手前で悩んでいる人も見受けられた。鎖場を通過してハシゴを登るとそこが横岳山頂だった。山頂は若者のグループが占拠しており、腰を下ろすことも出来ない状態だった。標識の前に陣取っている若者に、シャッターを頼んで記念撮影を行った。ここからの赤岳は本当に大きく見える。そしてその向こうには秀麗な形の富士山が雲の上に浮かんでいた。ここにいても仕方ないので、この先の三叉峰に向かうことにする。
三叉峰から見る富士山
三叉峰から見る富士山


 三叉峰は下から杣添尾根が延びてきたピークにある。遠くから見ると尖った部分が見えていたが、それは積まれたケルンであることが分かった。しばらくはここで展望を楽しんで時間を過ごした。これより先に行くことは時間的にも体力的にも無理なので、ここで引き返すことにする。再び横岳に立つとすでに若者グループは去っていた。ここで一人の登山者と情報交換して横岳を辞した。鎖場を抜けて大同心に向かう稜線上のポイントで昼食にすることにする。今日は新調したストーブを使い久しぶりに即席ラーメンを作った。さすがに1980円のものとは違い、軽量で点火も一発でOKなので感激だ。ビールを開けて喉に流し込むと最高だ。いつの間にか景色は深いガスに包まれて、展望は全く無くなっていた。もちろんあの大同心も見えなくなっていた。リグのスイッチを入れて、声を出すと、懐かしいFDIからの応答があった。ビールを呑みながらしばらく話し込んだ。
峰の松目山頂

 昼食後、硫黄岳に戻った。このまま帰るのはもったいないので、峰の松目に立ち寄ることにする。硫黄岳から鞍部に下り、オーレン小屋への道を分けて少し登ったピークが赤岩ノ頭だ。何の標識もなく、通過してしまいかねない目立たないピークだ。ここを過ぎると道はほぼ下りながら樹林帯の道を抜けていく。時折あらわれる標識がなければ、この道が正しいのかさえも不安になる。それでも快適に道は延びていく。そしてふたたびオーレン小屋への道を分けて、今度は急な登りとなる。今までの快適な道とは違って、木の根が張りだし、下草も増えてきたように感じる。何度も立ち止まって息を整えてゆっくりと登った。ふと後ろを振り返ると男性が一人付いてくるが、こちらの存在には気づかないようだ。近づいてくるのを待って声を掛けるとビックリした様子で顔を上げた。見れば横岳で少し話した人だった。ともかくこの寂しい道で出会うのは心強い、前後になり山頂を目指した。峰の松目山頂は展望もなくひっそりとしていた。その東京から来たという男性と話しながら山頂の時間を過ごした。先に男性は山頂を発ち、私は少しばかり無線を行ってから山頂を後にした。

 オーレン小屋は本当に静かな佇まいの中にあった。名水と呼ばれる清水をペットボトルに詰め込んで、夏沢峠に登り上げてから本沢温泉経由で帰路についた。


(夏沢峠の下りで大型の動物に遭遇、ビックリしたが正体はカモシカ。逃げようともせず道を開けようとしない。仕方なくストックで突いて追い払った)




オーレン小屋の情報 夏沢峠から下山中に遭遇したカモシカ
下山中に遭遇したカモシカ


「記録」

林道駐車余地05:41--(.16)--05:57ゲート--(1.00)--06:57本沢温泉07:03--(.04)--07:07雲上の湯--(.53)--08:00夏沢峠08:08--(.50)--08:58硫黄岳09:30--(.10)--09:40硫黄岳山荘--(.14)--10:12尾根を離れる--(.23)--10:25大同心10:33--(.21)--10:54尾根に戻る--(.04)--10:58横岳--(.11)--11:09三叉峰11:25--(.20)--11:45(休憩)12:15--(.45)--13:03硫黄岳--(.12)--13:15赤岩ノ頭--(.11)--13:36オーレン小屋分岐--(.16)--13:52峰の松目14:06--(.07)--14:13オーレン小屋分岐--(.16)--14:29オーレン小屋14:38--(.22)--15:00夏沢峠15:13--(.33)--15:46本沢温泉--(.50)--16:36ゲート--(.10)--16:46駐車余地


群馬山岳移動通信/2005



 
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)

ルートのラインはGPSの軌跡保存を失敗したために、後から記入したものです。