腰の痛みに耐えて登る「飯縄山」 登山日2007年10月7日



霊仙寺山から見る黒姫山、妙高山


瑪瑙山(めのうやま)標高1748m 長野県長野市/飯縄山(いいづなやま)標高1917m長野県長野市/霊仙寺山(れいせんじやま)標高1875m長野県長野市/怪無山(けなしやま)標高1549m 長野県長野市




一週間前にギックリ腰になり、痛みがなかなか取れない。安静にしているのが一番の治療なのだが、いろいろなことが気になって動いてしまう。まして、ここのところ山にも行かずに過ごしているだけに、気分が滅入ってしまった。そこで、どうしても山の空気を吸いたいと思った。そこで、腰痛でも登れる山はないかと、前日の21頃まで物色した。すると、スキー場のゲレンデから登り上げる北信五岳のひとつである飯縄山が目に入った。長野市出身の同僚に聞くと、いづれも子供の頃に登ったと言う。いわば長野市民の里山となっている場所である。


10月7日(日)

朝3時に起床したが、なかなか起きられない。気合いで起き出して着替えるが、腰をかがめる動作を伴うズボンがなかなか穿けない。やっとのことで着替えてクルマに乗り込んだが、身体を前にかがめでエンジンキーを回す動作が出来ない。身体を反転するような格好でやっとエンジンをスタートした。

これからどうなるんだろうと不安になる。

途中で、睡魔と腰痛に耐えきれず、千曲川PAで仮眠してから再び出発。長野ICで降りてから戸隠を目指す。安物のカーナビの案内で妙な道を通り抜けて、なんとか中社に到着。ちびっ子忍者村方面に入り、西登山口を目指す。林道を数キロ走るとその登山口が見つかった。しかし、駐車余地がない。仕方なくその先に行ってみるとゲートで閉じられた「東谷林道」の入口が広くなっていたので、駐車して支度を整えた。しかし、この西登山口はピークを越えることなく飯縄山に向かっている。これでは面白くないばかりか、スキー場のゲレンデを登るものではない。当初の計画とは違った登山口にいることに気がついた。あたためて地図を見ると、登ろうとしていたのは、戸隠スキー場コースだったことに気がついた。もっともこの西登山口も戸隠スキー場の外れなのだが。ともかく、戸隠スキー場に向かうことにする。

戸隠スキー場の広い駐車場は閑散としていた。さてどこから登ればいいのだろう。すると、地元の人らしい二人が立ち話をしている。
「スミマセン、飯縄山登山口はどこですか?」
「そうだよ、ここから入っていけばいい」
中年の女性が答えた。
なんと、それから世間話の相手にされてしまった。
話をまとめてなんとか逃げ出すと、その女性は自分の車から大音量で「夜明けのトランペット」の曲を流しながら去っていった。私は呆気にとられてその車を見送ってしまった。


ゲレンデの中を登るbUクワッドリフト終点を目指す


今日は腰が痛いこともあって、荷物は軽量化しようと考えた。それでもいつも通り重いザックとなってしまった。恐る恐るそのザックを背負うと、違和感なく立ち上がることが出来た。ストックで身体を支えるとそれなりに歩くことが出来る。
「よし!行こう」
対向する朝陽に向かってゲレンデの中を登りだした。
広いゲレンデの中はひっそりとしており、その中を黙々と歩いた。ゲレンデの一部は重機が入っているが、先ほどの女性の弁によれば、7月16日の中越沖地震で亀裂が入ったため、修復しているとのことだ。震度6強という地震はとてつもないものだと思った。ゲレンデの中を管理用の道に沿って登って行く。振り返ると雲がかかった戸隠山と三角形の高妻山が大きく見えていた。このコースは終始この二つの山が見えていて、気持ちのよいルートだった。

何も考えずにひたすら登るとbUクワッドリフトの起点についた。ここにはいくつかの建物が点在していた。もちろんシーズンオフの今は各入り口ともに堅く閉ざされていた。さて、ここで管理用の道路は二分した。地形図を見るといずれも上部の瑪瑙山に到達するようだ。そこで往路は左の道をたどり、復路は右の道を下降することにした。道は荒れていたが、4WDの乗用車なら登れそうな感じである大きく左にカーブして尾根に登りあげるとこの道は終了していた。ここからは、この尾根を上部にあるクワッドリフト終点を目指して登っていく。尾根を登ると言っても相変わらずスキー場のゲレンデが延びているのでその中を登るだけだ。ゲレンデの中はキャタピラーの轍が残っていたので、それをたどって登った。振り返ると、戸隠山と高妻山が初々しい朝の光に映えている。その中を一人の登山者が登ってきた。あっという間に近づいて、挨拶を交わして追い越して、その若い登山者は軽快に去って行った。


bSクワッドリフト終点から見る戸隠連山

bUクワッドリフトの終点に着くと、心地よい風が吹き渡っていた。展望はすばらしく、遠く北アルプスまで見渡すことが出来た。展望もよくここで休憩することにした。座ると立ち上がれなくなりそうなので、ザックをおろして、中からゼリー飲料を取りだして飲んだ。久しぶりの山の雰囲気はいいもので、出かけてきてよかったと思った。5分ほど休憩してザックをゆっくりと背負って歩き出す。ここからがいよいよ登山道だと思って上部に登るとなんとそこには標柱があり「瑪瑙山」と書いてあった。この山頂から先は切れ落ちており、その先には飯縄山の姿を望むことが出来るはずだ。しかし、この時間は朝日が逆光となり、そのうえ靄ががかかっているためにわずかな輪郭だけでその姿を想像するしかない。それにしても瑪瑙(めのう)とは意味深な名前である。その辺を探してみたが、それらしき瑪瑙の痕跡を見つけることは出来なかった。


瑪瑙山山頂(帰りに撮影)飯縄山中腹から瑪瑙山、その奥に戸隠連山


瑪瑙山からは気持ちいいほど笹原の中を下降することになった。標高差100mを下ることはもったいないが仕方ない。わずかな時間で鞍部に着いてしまった。ここからは飯縄山山頂まで一気に登りあげることになる。その途中にはちょっとした岩峰があり、ここからは先ほど下降したばかりの瑪瑙山が大きく見えており、その横には雨飾山、火打岳、妙高山、そしてずっしりとした黒姫山が手前に横たわっていた。また、眼下には戸隠の町並みであろうか、屋根が陽に照らされて光っていた。この岩峰から先は樹林帯となり、ナナカマドとガマズミの実の赤が目立つようになってきた。また道に沿ってリンドウがかなりの頻度で見られた。そのリンドウはいずれも花を閉じて、霜のためか先が茶色く変色しているものがほとんどだった。樹林の中をひたすら登ると、単独行の登山者が下ってきた。軽く挨拶をかわしてさらに歩を進めると樹林帯を抜けて分岐に到着した。標柱には「←霊仙寺山・飯縄山→」と書いてあった。とりあえず飯縄山に向かって歩くと、ほんのわずかな距離で、だだっ広い飯縄山山頂に到着した。山頂には場違いとも思えるような大きな標柱が立っており、飯縄山と大書してあった。展望は360度なのだが、あいにくと周囲の山は山頂部分しか見えなかった。紅葉はまだまだといったところだが、飯縄神社のピークや霊仙寺山の山肌に点々と紅葉した木が見えるだけだった。すでに休んでいた二人の登山者のうちの一人に記念撮影を頼んだ。ここでも座ると立ち上がるのが大変なので、立ったままで休むことにした。時刻はまだ9時半であり、腰の具合もまだまだ行けそうな感触だ。そこで、霊仙寺山に足を延ばしてみることにした。エアリアマップのコースタイムによれば片道40分なのでそれほどきつくはないだろう。そこで、がんばって霊仙寺山に向かって歩き出した。


霊仙寺山への分岐飯縄山山頂

白馬岳から唐松岳へ続く稜線

飯縄山山頂から霊仙寺山への道は、いきなりの急降下となった。一気に100m余りを下ってしまうのだ。これは帰りが大変だろうと想像できた。それにこの道はあまり歩かれていないのだろう。赤や青のテープを頻繁に見ることになった。しかし、この道は最近刈り払いがされたようで、変色したクマザサがルートに刈り取った状態で残っていた。それだけ歩く人が少ないのだろう。急降下を終わって、道はわずかながら下降しながら延々と樹林の中を続いていた。時折あらわれる倒木に難儀しながら歩く。やはりこの倒木を越えるのと、岩から飛び降りるのがかなり負担となった。ただ耐えて歩くしかない。樹林の隙間から、目指す霊仙寺山が見えてくると、気分的に楽になった。

リンドウ

霊仙寺山の基部につくと、そこは道が分岐していた。「←霊仙寺山・飯縄山→」で、ここから先は樹林帯から解放された道が、秋の陽に照らされて山頂に続いていた。途中には真っ赤に紅葉したドウダンツツジが点在し、目にまぶしい。そして野を受け持つ女神「茅野姫命」を祀る石碑を見た。そうするとどこかに、山を受け持つ男神「大山祇命」もどこかにあるのだろうか。その石碑をすぎると数歩で霊仙寺山山頂に到着した。山頂には石祠と道路標識のような山名板が設置してあった。ここからの展望は実にすばらしい。飯縄山のそれよりも数段すばらしいと思われる。展望は飯縄山に遮られて、その方面は見えないが、そのほかは全て見える。高妻山はもちろん妙高山、黒姫山、野尻湖は水面が光っている。山頂のアンテナ群に特徴ある横手山を遠望、目を転じて高妻山の隣には唐松岳から白馬岳へ連なる北アルプスの峰々が新雪をまとっていた。目を周囲に移せば、始まったばかりの紅葉がまぶしく輝いていた。腰が痛いのを我慢して、石の上に腰掛けて展望を楽しんだ。霊仙寺山でいつまでも休んでいるわけにはいかない。身体が動くうちに帰りの目処が付くところまで移動してしまわなければ不安でなので、帰路につくことにした。


霊仙寺山への道

茅野姫命(かやのひめのみこと)の石碑霊仙寺山山頂

怪無山から信濃町を俯瞰霊仙寺山から飯縄山を見る


こんどは飯縄山に向かってほとんど登りとなっている道を引き返すことになった。ちょっと腰も痛んできたので、ゆっくりと歩いた。途中で、単独行の登山者に会ったが、霊仙寺山のすばらしさを知っているようだった。なんとか瑪瑙山の分岐にたどり着き、先が見えてきたがここではまだ安心できない。この先に向かってさらに歩くことにした。瑪瑙山の鞍部に着くと、あと一息という感じがしてほっとした。そこで歩き始めると、右の太ももが攣ってしまった。これは庚申山の再現かと思った、何しろ痛みが増幅してくるのである。そこで今回はテーピングをしてみることにした。とにかく太ももをテープでぐるぐる巻きにしてしまうのだ。太ももはまるでボンレスハム状態となった。おそるおそる歩いてみると、痛みもなく快適である。このまま、瑪瑙山までの15分ほどを過ごした。山頂でテープを外して歩いてみたが、攣っていた太ももは全く問題なく動くようになっていた。

クワッドリフトの終点で休もうとしたが、犬を連れた先客がいたので、やり過ごして往路に登ってきた道とは反対の方角に進んだ。5分ほど下るとゲレンデが大きく右に曲がって下降する場所があった。ここは戸隠連峰を眺めるのに最高の場所だ。ここで昼食を摂ることにした。ゲレンデの草の上に腰を下ろして、ラーメンを作ってビールを味わった。何とも幸せな時間となった。このままここに留まって時間を過ごしたいと感じた。

休憩を取った後、今度は帰路の途中にある怪無山に立ち寄ることにする。ゲレンデを一気に下降して、管理用の道を左に進んだ。すると、a@クワッドリフトの終点にたどり着いた。周囲を見ると、何となく山頂のようだが、何の表示もない。さらに目を転じてみると、どうやら樹林の中が一番高そうに見える。樹林は笹薮でガードされて入り込む隙間がなさそうだ。しかし、ここまで来て確認しないのは癪である。入り込めそうなところを探していると、なんと熊棚が見える。それも新しいもので、葉っぱの緑が残っている。そこで、鈴を取り出してひとしきり鳴らしてから、笹藪の中に突入した。最高点と思われる部分を冷や冷やしながら探すと、一本の立木にガムテープが貼られて、そこにフェルトペンで「怪無山」と書いてあるのを見つけた。どこにもこだわりを持っている人がいるものだと、思わずニヤッとしてしまった。

メノウコースゲレンデ上部からの展望(左横が怪無山)怪無山の文字発見


その後はゲレンデをたどって、駐車場までゆっくりと歩いた。駐車場では岐阜から来た山好きのご夫婦としばらく話してから、中社の近くにある「神告げ温泉」で腰の痛みが取れるようにと願いながら湯に浸った。

神告げ温泉


「記録」
06:57戸隠スキー場駐車場--(.28)--07:25bUクワッドリフト乗り場--(.23)--07:48尾根--(.21)--08:09bUクワッドリフト降り場08:15--(.01)--08:16瑪瑙山山頂08:21--(.52)--09:13分岐--(.03)--09:16飯縄山山頂09:27--(.40)--10:07霊仙寺山山頂10:30--(.34)--11:04分岐--(.48)--11:52瑪瑙山山頂--(.05)--11:57休憩12:40--(.18)--12:58鞍部--(.16)--13:14怪無山山頂13:24--(.08)--13:32bUクワッドリフト乗り場--(.21)--13:53駐車場



群馬山岳移動通信/2007



この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)