正月は雪の降りしきる「保戸野山」
登山日1997年1月3日


保戸野山(ほどのさん)標高1090m(三角点1074m) 群馬県利根郡
保戸野山山頂
 今年からJARLのニューイヤーパーティーに参加しなくなったので、正月にわざわざロケーションの良い山に出かけることもなくなった。それだけ自由度が増したわけだが、反対にものぐさになってしまって山に行く気力がなくなってしまった。これではいけないとアルコール漬けの重い体を動かすことにした。

 1月3日(金)

 今年は群馬県北部の山に挑戦したいと思っている。その手始めに猿ヶ京周辺の山に登って置くことにした。天候はあいにく冬型で、群馬県北部は雪模様とニュースで伝えている。月夜野町あたりまで行くと雪がちらついてきて、三国峠をおりてくる対向車は雪を被っている。

 赤谷湖を過ぎてから地図を見ながら慎重に国道からの分岐を探す。歩道橋の手前の分岐を左に入り狭い道を進むと左手に共同浴場「いこい乃湯」がある。看板には大人300円(午前10時〜午後10時)とあり、なかなか安いと思った。この浴場のすぐ先に左に分岐する道があり、坂道になっている。坂道を下りきったところに「西川」が流れており、橋が架かっていた。そして橋の傍らには立派なログハウスが建っている。橋を渡ると、道はT字路になるので右折して上流を目指す。このあたりから道は圧雪状態で、久しぶりの雪道走行に緊張しながら先に進む。「合瀬(かっせ)」の集落が始まるところで、右に「合瀬不動の滝」入り口の標識がある。興味があったが、雪の状況もあるので先に進むことにする。集落の中程で右折して、山の中に入って300メートル程で道は再び分岐する。先に進もうと思ったが、伐採した杉の木が放置されているので進めず車はここに駐車することにした。

 約1時間近くかかってようやく支度を整えた。なにしろ車の中を引っかき回して、必要なものをその場でまとめるのだから効率が悪い。車を止めたところは道が左に分岐しているが、それを無視してまっすぐに進む。そして100メートルほど杉林の中を行くと、分岐があり標柱が建っている。それには「送電線巡視路矢木沢線bR」と書かれており、それに従って巡視路に入る。さらにその先に分岐があり、今度は「湯宿線86← →87」の標柱が建っている。コンパスで確認して、「86←」の方向に向かうことにする。

 道は杉林の中を下って、沢に出会うことになる。ここには巡視路用の立派な橋が架かっていた。橋を渡り、今度は急斜面を登ることになった。この急斜面は、まことに条件が悪く、岩の上に落ち葉が積もりその上に雪があるものだから滑りやすい。慎重にピッケルで確保して、足下の沢の流れに緊張しながら登った。斜面を登りきると木が伐採されて、送電鉄塔が現れた。鉄塔に近づいて番号を確認すると、「湯宿線bW6」と書いてあった。ここは送電線が交差しており、この鉄塔のすぐ上にも鉄塔がそびえていた。地形図で確認するとルートはこれで間違いなさそうだ。確認のためにコンパスを取り出してみると、グルグル回ってばかりで全く役に立たない。送電線の影響はすごいものだとあらためて感心した。

 ともかく上部の鉄塔に向かうことにする。その鉄塔の番号は分かり難いのだが「甲109」「bR」と書いてあるようだ。鉄塔上部は雪が激しくて霞んでいる程なので、当然まわりの景色は見ることは出来ない。この鉄塔からは明瞭な尾根が上部に向かって伸びており、これを辿れば山頂に行くことが出来そうだ。

 尾根は踏み跡らしきものがあるが、あまり歩かれていないようだ。(この付近で、標高1074メートルの藪山なんて、登る人がいないのが当たり前なのだが)藪は若干うるさいと感じる程度で、あまり気にならない程度だ。標高800メートル付近で目の前に突然カモシカが姿を現した。いつもの通りカモシカは、振り返ってこちらを見ている。ある説によるとカモシカは近眼なので、ジッと見ないと相手の姿がわからないのだと言うが、定かなところではない。距離にして10メートルもない間隔で、向き合っているのだから妙な構図である。ザックをおろして、カメラと取りだそうとした時に、カモシカは思い出したように動き出して藪の中に消えてしまった。

 道は時々急斜面になるところもあるが、総じて尾根がしっかりしているので迷うことはなさそうだ。特に今日のように雪が強く降っているときは、見通しが利かないのでありがたい。標高1000メートル付近で別の尾根と交わり、さしたる登りもなく歩くと藪からひょっこりと飛び出した。目の前には送電鉄塔が雪の中にそびえていた。ここは藪がなくなった代わりに、吹きっさらしになっていて、目を開けていられないほどだ。送電線に沿って刈り払いがされ、道があるところを見ると「赤沢スキー場」から登ったほうが楽かも知れない。

 鉄塔を過ぎると再び登りとなった。かなりの急斜面でピッケルを使っての登りだ。そして登りあげたところに、おなじみGさんの山頂標識があった。そしてその前には三等三角点が埋め込まれていた。しかし、なんとなく山頂らしくなく、稜線の途中に居るようだ。それは目の前にさらに顕著なピークがあるからで、そちらの方が山頂のような感じがするのだ。地形図を見ると、三角点よりも20メートル程高いところにピークがある。とりあえずそのピークも踏んで置くことにして登ってみた。しかしここも何となくピークらしくなく、雑木があるだけだった。再び戻り、三角点のところにザックを下ろした。

 記念撮影をした時間だけで、ザックの上には雪が降り積もり、すっかり白くなってしまう程だ。無線機を取り出して、430Mhzをワッチしてみたがあまり聞こえてこない。レピーターでFDIを呼び出して、シンプレックスで交信してQSLを確保した。その間にメモをとっても、手帳の上が雪で被われて判読不能な状況だ。それに足下も冷えてきて、足踏みをしながら過ごした。

 今年最初の山歩きは、展望のない藪の雪山からのスタートとなった。


「記録」

 09:35林道--(.03)--09:38巡視路分岐--(.11)--09:4986鉄塔--(.09)--09:589鉄塔--(.52)--10:50108鉄塔--(.18)--11:08保戸野山山頂12:20--(59)--13:19林道


                   群馬山岳移動通信/1997/