奥利根への入門の山「日崎山」  
                                                                     登山日2007年4月21日



日崎山山頂



日崎山(ひさきさん) 標高1397m 群馬県利根郡




日崎山と言う山名の山は奥利根に2座あり、ひとつは尾瀬の至仏山の北方にあり、岳ヶ倉山とも呼ばれている。あとの1座は奥利根湖を堰き止める矢木沢ダムの近くにある。今回計画したのは矢木沢ダムから登る日崎山である。ところが、この矢木沢ダムに通じる道は冬季は通行止めとなりアプローチが難しくなる。4月21日午前6時に通行止めが解除されるとの情報を沼田のGさんからいただいた。


4月21日(土)

午前6時過ぎに矢木沢ダムに通じる道の起点である須田貝ダムに到着した。すでにゲートは開かれているが、ボートを牽引した車は数珠繋ぎとなっている。前方を見るとなにやら赤色灯が物々しい。どうやら、警察の検問が行われているようだ。その前に群馬県の腕章を巻いた二人がやってきて、パンフレットを手渡した。ブラックバス、ブルーギルなどの外来種の持ち込み禁止というものである。そのうちに警官が私の車にやってきた。

「すみません、運転免許証を見せてください」
確認が終わると「○○さん、クーラーボックスを見せてください」と言う。
「山登りに来たので持ってません」
「山登りですか?」怪訝な顔で車内を覗き込んだ。
「矢木沢ダムから西の山に登ります」
「そうですか、お気をつけて」
「ところで、山登りなので先に行っていいかね」
「すみません、順番に進んでください」

検問が終了してようやく車が動き出した。検問はどうやら外来魚の持ち込みをチェックしていたようだ。道は雪がすっかり消えて、冬の名残は感じられない。埃の立つ道を進んでいくと、矢木沢ダムの提体が間近に迫ってくる。駐車場の近くまで来ると、車列が止まってしまった。どうやら駐車場が満車となってしまったらしい。そこで、手前のキャンプサイトの駐車場に入った。


矢木沢ダム上部から見おろす奥利根湖は水量が少ない
ダムの対岸適当なところから登り始める



車を適当なところに駐車して準備をする。これならスノーシューもワカンも必要なさそうだ。ダムの上を通り抜けて対岸に渡る。ダムの上部から見ると湖面はかなり下にあり、ダム湖の縁に沿って刷毛でなぞったように赤茶けたのり面が見えていた。当初のGさんの情報ではダムの対岸に渡ったら、右下に降りて地形図の破線の道を辿り、ビンズル沢を徒渉してから尾根を歩くと言われてる。しかし、右下に降りるには鍵のかかった腰ほどの高さのフェンスを乗り越えなくてはいけない。この行為はダム管理所から丸見えである。そればかりか、このキャットウォークは土砂で一部がふさがれている。もし、足を踏み外したらそれこそダムののり面を一気に落下することになる。なにしろこのダムの高さは131mなので見下ろすだけで目眩がする。この場所からのキャットウォーク通行は諦め、上部に登ってから右下に降りることにした。


上部に登るために左(上流)に向かってから適当な薮の斜面を登ることにした。薮の急斜面を登ると、斜面を横切るように道形があったので、それを辿って右に進んでみる。しかし、その先は崩壊が進んだ斜面で、とても歩けるようなものではない。そこで、さらに上部を目指すことにして、薮の急斜面を登ることにした。急斜面を登ると981mの標高点ピーク手前に索道の櫓にでも使ったのだろうか、コンクリートの礎が苔に覆われて放置してあった。とりあえずここで立ち止まって地形図を見ると、この地点からビンズル沢に向かうにはもったいないと言うことが分かった。こおうなったら、この尾根を登るのが最良の選択だろう。眼下に見える湖では早くも船外機のエンジン音が響き渡っていた。


ひと株だけ咲いていたイワウチワ笹藪があらわれた
待望の雪が出てきた
1300m標高点から日崎山を見る



標高981mの標高点はアスナロの木で展望が塞がれた小さなピークだった。ピークのはずれはイワウチワの群落となっていたが、花が咲いているものは一株だけだった。このピークから一旦鞍部に降りて再び登りとなる。右下のビンズル沢は雪解けによる水量が多いのだろうか、沢音が大きく聞こえていた。地形図で見ると歩いているこの尾根は両側が切れて崩壊しているようであるが、実際には崩壊地もなく恐怖心も無く歩くことが出来る。しかし、その代わりにシャクナゲの薮が現れるのが煩わしい。本来ならば雪があることを予想していたが、今のところ全く雪は乗っていない。それにしても展望のない登りで、アスナロの樹林帯が延々と続いていく。


右の尾根を見ると、Gさんが登った尾根が上部に向かって続いている。その尾根は雪が乗っていて、いかにも歩きやすそうな感じを受ける。しかし、見るのと実際に歩くのでは大きな隔たりがあるのだろうと思う。それにしてもこの尾根には、マーキングのたぐいがみられないので歩くのが実に楽しい。山は本来こうあるべきなのだろうと思う。標高1050m付近になると、シャクナゲに変わって笹藪が現れてきた。奥利根の笹藪は越後沢山の苦い思い出があるから、ちょっとしたトラウマになっている。しかし、このあたりから残雪が多くなり快適に歩ける場所が多くなってきた。それと同時にアスナロの樹林は終わり、雑木に変わった。やっと暗い樹林帯から解放されて、世界が一気に明るくなった。


あこがれの刃物ヶ崎山(手前は家の串、奥は白い檜倉山至仏山から笠ヶ岳
山頂 反射板は6m×8m山頂部分は細長い

標高1240mで、尾根は右に大きく曲がり1300mのピークまで一気に登ることになる。標高1300mのピークに立つと展望が一気に開けた。それは巻機山から谷川岳に連なる上越国境の山々が眼前に広がったからだ。とりわけ朝日岳の山容は大きく見えていた。また巻機山から大水上山に至る峰々は白く輝いていた。ここに来てやっと日崎山のピークがどれなのか確認することが出来た。ここから見ると日崎山山頂は黒い木々に覆われて帽子を被ったように見える。

標高1300mのピークからは一旦30mほど鞍部に下り再び90mほど登ることになる。当初、雪が乗っていて歩きやすそうな感じを受けたが、実際は鞍部に雪はなく薮漕ぎを強いられることになった。しかし、鞍部から高度を上げると再び雪が多くなり一気に1360mのピークに到着した。ここで新たな展望が広がった。尾瀬の山々で至仏山から尾瀬笠ヶ岳の稜線がなだらかで美しい。また、眼下には奥利根湖の水面が穏やかに佇んでいた。ここからはツボ足ながら雪があるので快適な稜線歩きとなった。天候は曇りながら、明るいので何となく気分が高揚する。雪があると言っても例年から較べれば少ないのだろう。急な斜面はすでに雪が崩れて無くなっている。

快適に稜線を辿ると、急に道は水平になった。ここが日崎山山頂で山頂部分は細長くなっており、その先には大きな電波反射板が設置されていた。なにやら興ざめのする構築物であるが、なにか風景に溶け込んでいるような気もする。山頂からの展望は矢木沢ダム方面が開けており、朝日岳が大きい。そして、対岸の家の串から刃物ヶ崎山に至る山はあこがれの山として見えていた。いつか、挑戦したいあこがれの山だ。また、上州武尊山が意外と近くに見えるのが新鮮だった。これが快晴の山だったらどんなに素晴らしいのだろう。

奥利根への入門の山は素晴らしい展望の山だった。




「記録」
矢木沢ダム06:51--(.51)--7:42981m標高点--(1.46)--09:281300mピーク09:36--(.32)--10:081360mピーク--(.21)--10:29日崎山山頂11:13--(2.03)--13:16矢木沢ダム


群馬山岳移動通信/2007



GPSトラックデータ
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)