悪天候で計画中断「太刀岡山」「鬼頬山」「黒富士」「枡形山」
登山日2019年1月20日
昨年、茅ヶ岳に登った時に隣に見えた太刀岡山が気になった。一年前に茅ヶ岳に登ったときは、あいにくの天候で富士山を見ることはできなかった。そんなこともあり、この付近から富士山を見てみたいと思っていた。群馬県からこの山域を日帰りするとなると、片道3時間以上の運転が必要になる。前期高齢者にとってはつらい行程となる。そこで前日に現地に入って早朝に出発することにした。 1月20日(日) 周回することを考えて平見城公民館で車中泊した。平見城公民館の建物はすでに使われなくなっているようで、ちょっと不気味だ。公民館前の駐車場は登山者専用駐車場と標識があり、甲斐市民バスの停留所ともなっている。また、この付近は養鶏場や肉牛の畜産団地となっており、特有の臭気が蔓延し、慣れるまで時間がかかった。昨夜は満月が出ていたので放射冷却でかなりの寒さを覚悟していたのだが、今朝の車内の温度は6℃なので、この時期としては暖かく感じる。それというのもいつの間にか空は雲で覆われてしまっていた。 出発の準備と朝食のために1時間もかかり歩き出すことが大幅に遅れてしまった。もっとも6時半というのはヘッドランプが必要ない明るさになるぎりぎりの時間だ。車道を辿って太刀岡山方面に向かっていく。道沿いの鶏舎や牛舎は完全に仕切られているのだろうか、鶏の声は聞こえてこない。また入口には消毒用の消石灰が撒かれて、その部分が白くなっているから雪と見間違う。周囲が次第に明るくなり様子がわかってくると、この畜産団地の規模の大きさがわかってくる。それに立派な民家が多いのに驚く。 軽トラックならなんとか通過できそうな道を登って行く。それにしても体力不足を思い知らされるほど息切れがひどい。それに一歩がなんと重く感じられることか。林道を30分ほど辿ると標識が表れる。ここが越道(こえど)峠で太刀岡山と黒富士の分岐点ともなっている。まずは太刀岡山をピストンすることにする。 闊葉樹林の道ははじめは直線的だが、傾斜が強まるに従い、ジグザグになって高度を上げて行く。傾斜が強まると体力不足はさらに辛くなってくる。息は荒くなり数歩進んでは休むという繰り返しだ。樹林の隙間から見える鋭鋒は茅ヶ岳と金山だが、ほとんど独立峰といってもいいような立派な山容で、この付近のシンボルと言ってもいいだろう。地形図で見ると太刀岡山は二つのピークからなっており、北峰は三角点のある南峰よりも26m高い。したがって北峰のほうが太刀岡山山頂としてもいいのだろうが、三角点が南峰にあることで山頂とはなっていない。標高よりも三角点重視という事で仕方ないか。(ちなみに日本山名事典では1322mの北峰を採用している)北峰からわずかばかり下降していくつかのコブを越えると10分ほどで南峰に到着する。この寒いのに汗で上半身に着ているものはずぶ濡れで、立ち止まると汗冷えで急速に身体が冷えていく。三等三角点の脇に山梨100名山の標柱が立っていた。今日の天候では展望は期待できず、見えていた茅ヶ岳も山頂部分が雲の中に消えかかっていた。菓子パンを半分と麦茶を飲んで早々に太刀岡山山頂を辞した。
越道峠に戻り次は黒富士方面に向かって歩き出す。黒い人工木で出来た階段を昇り痩せ尾根を歩いていく。痩せ尾根にはアカマツの木が並んでいるが、樹齢はそれほどでもないようだ。黒富士の前衛峰とも呼べるのが鬼頬(おにがわ)山で、本当にこの山を登れるのだろうかと不安になるほど屹立して大きく迫っている。登り始めるとその不安は的中することになる。その傾斜は休憩でゆっくりと立ち止まっているのも難しいほどで、気を許すと斜面を転がり落ちていくようだ。それというのも道はジグザグではなく、直線的に登っているからだ。設置されたトラロープを掴まりながら徐々に高度を上げて行く。道の脇は最近伐採されたらしいカラマツが無造作に倒されている。この急斜面の中で伐採をする作業者の体力と技術は凄いと思う。彼らから見れば体力の無い登山者など笑いものになるに違いない。急傾斜を登って主尾根に上がるまで伐採跡は続いていた。尾根を辿り10分ほどで鬼頬山に到着した。山頂には手製の標識があり裏面には落書きが施されていた。寒さに震えながら菓子パンを食べ麦茶を飲んだ。下方には畜産団地の鶏舎の白い屋根が見えているが、登ってきたばかりの太刀岡山の存在も分からないほどだ。雪粒が大きくなり、雪が本降りとなってきた。道もすっかりと雪に隠れてしまっている。 鬼頬山からはいったん急斜面を下降してから登り返す。雪の降り方からして帰りのことが不安になってくる。このままだと道路に雪が積もり、帰宅が難しくなるのではないかという事で、今日の計画を見直す必要が出てきたようだ。 あたり一面は雪に覆われて木々の枝は雪化粧して、これはこれで見とれるほどきれいだ。八丁峰と呼ばれるところは、道がちょっと不明瞭だ。登ってきた方向から、ピークを右に折れて進んでいく。すると10分ほどで明瞭な右からの道と合流する。ここには標識があり「黒富士方面 山頂まで20分」と書いてある。ここは八丁峰鞍部と呼ばれる場所で、ここを起点として黒富士を往復することにする。この時点で撮影は予備で持参している防水対応のカメラに取り換えた。
道はなだらかに斜面を下降し進んでいく。やがて登りになってくると岩が多くなり、積もった雪を避けながら歩く。そして岩場の登りになってくると、柔らかい新雪を考慮して足場を確保しなくてはならない。山頂にあと少しとなったところで、女性の声が聞こえた。「あれ、人が登ってくる、すごい」びっくりしたのはこちらも同じだ。こんな天候の時に登山者に会うとは思ってもいなかったからだ。山頂に着くと男性2人と女性2人の4人が立ったまま山頂で休んでいた。このパーティーもこの天候では座って休憩する気にならなかったのだろう。お互いに記念撮影をすると、そのパーティーは早々に鬼頬山に向かって山頂を発って行った。静かになった山頂でポットの白湯を飲んで、ミカンを食べてから彼らの後を追うように山頂を発った。
雪は相変わらず降り続き、先ほど下山して行ったパーティーの踏み跡も積雪で消えてしまっていた。八丁峰鞍部からほぼ水平に道を辿ると枡形山への分岐となる。周囲は草原となっているらしく、枯草のうす褐色がモノトーンの雪の世界では目立つ存在となっている。 分岐から枡形山に向かって登って行く。傾斜は次第に強くなり視界が悪くなることで時間の感覚がずれてしまい、10分ほどなのに長い時間を登っているような気になった。前方には降りしきる雪に霞みながら露岩の塊りが確認できるようになった。この露岩の上が枡形山山頂で、はたしてどこから取り付いたらいいのか悩むところだ。右から登ろうとしたがあえなく断念。今度は左側に回ってみると、上部に灌木が1本ある。これに掴まって上部によじ登る。雪が付いていなければなんということは無いのだが、慎重に岩の上を歩いてみる。露岩の端には雪を被った板切れがある。雪を取り除いてみると朽ち果てそうな山頂標識でだった。ここは展望どころか、降りしきる雪ですぐ近くの立木も見えないほどだ。こんなところには長居はしたくないので早々に下山することにする。
分岐まで戻り曲山に行こうか考える。時刻は正午前なので充分に時間はあるのだが、この降雪では展望は無いだろうし、帰路の交通にも不安がある。そこで予定を短縮して八丁峠から下山することにする。八丁峠から沢に沿って下降していくと杉の植林地にはいり林道に出た。林道を辿ると畜産団地の臭気を感じることになり、やがて駐車地点に戻った。その頃には雪は雨に変わっていた 晴れの天気予報を信じて行動した今回の山行は、なんとも消化不良のまま終わってしまった。
平見城公民館06:34--(.37)--07:11越道峠--(.31)--07:42太刀岡山07:49--(.24)--08:13越道峠--(1.15)--09:28鬼頬山09:35--(.37)--10:12八丁峰--(.11)--10:23八丁峰鞍部--(.19)--10:42黒富士10:56--(.20)--11:16枡形山分岐--(.10)--11:26升形山11:31--(.06)--11:37分岐--(.06)--11:43八丁峠--(.40)--12:23平見城公民館 群馬山岳移動通信/2019 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |