正月の定点移動「浅間隠山」
登山日1994年1月2日


浅間隠山(あさまかくしやま)標高1757m 群馬県吾妻郡
山頂から浅間山を望む
 今年もQSOパーティーの為に浅間隠山に出かけた。QSOパーティーは今回で10回目の参加で、なぜかこれは毎年やらないといけないような気分となっている。別に12支が達成したところで結局自己満足でしかないであるが。

 浅間隠山へは今回で10回目の登山となる。QSOパーティーの為としては5回目の登山であり毎年の恒例となってしまい、正月の定点移動となっている。なぜこの浅間隠山がいいかと言うといろいろある。

 1)自宅から車で1時間弱と近くである。
 2)簡単に登れて正月の寝ぼけた身体にちょうど良い
 3)ロケーションが素晴らしく展望もいい。360度の展望が得られる
 4)静かである。山頂でテントを張っても、アンテナを建てても、大声を出しても気兼ねが要らない。
 5)雪があり、それなりの冬山の気分が得られる

こんな所が魅力となっている。

 二度上峠への道は例年に比べると雪の量が少なく、道は乾燥しているところもある。しかしながら日陰は雪が凍結しており数台の車は登れずに停車していた。私はスタッドレスタイヤ+4WDだけなのだが難なく登りきってしまった。登山口となる場所は道幅も広く車が停車できるスペースは十分なのだが、どうもカーブであるために車がスリップして突っ込んでくる可能性がある。そこでこの先の少し広くなった場所に駐車する事にした。

 登山口からいきなり雪である。道はかなりの人が入山しているらしく、雪がかなり踏まれて圧雪となり、スリップし易い状態だ。今回はアイゼンをもって来なかった事が悔やまれる。かつて山の先輩からアイゼンを着ければどんな所でも簡単に行けるので技術の向上にならないと教えられた。しかし今となっては年齢的にも技術の向上よりも体力と反射神経の不足をカバーする方が先決である。

 ザックの中はいつもより重い。テント、防寒具、アンテナのポール、バッテリーがいつもより余分だからだ。手には1200Mhz用の16エレ八木アンテナを持っている。長さがあるのでザックに付けると薮の中で動けなくなるためだ。それでも頂上に着く頃にはエレメントが2〜3本曲がっている事が常である。

 この山も1年ぶりにくると様子が変わっている事に気づく。いままで無かった標識が設置されていた。それに[植生保護のために迂回して下さい]の標識まである。なにか貴重な植物でもあるのだろうか。今では雪のためにそれらを見る事はできない。なにしろ10回目の登山であっても、積雪期以外のものは秋の1回があるのみでどんな植物があるのかまったくわからない。今度ぜひツツジの咲く時期にでも来てみたいと思っている。

 登山口から95分で山頂に着いた。山頂は雪がいつもより多い様に感じた。山頂は殆ど無風に近い。しばらく山頂からの360度の展望を楽しんだ。今日は白い富士山が鼻曲山の方角に浮かんでいる。八ガ岳の向こうには南アルプスの白銀に輝く稜線が眩しい、北は谷川連峰、巻機山、日光連山と一望の中にある。一番立派なのはすぐ近くにある浅間山である。なにか映画「カルメン故郷に帰る」の校長先生のようだが、いつ見ても立派な堂々とした勇姿は素晴らしいと思う。

 山頂に登山者は見あたらない。結局、帰るまでに後から来た一人に会ったのみだった。

 山頂から少し離れた所にテントを張りアンテナを設置して、まずはコーヒーの準備だ。コンロに火を着けるとテントの中は汗ばむほどに温まった。いままでの内で一番天候に恵まれた正月である。携帯用の使い捨て懐炉はバッテリーに巻き付けて寒さによる性能低下を防いだ。以前ここに自動車用のバッテリー(約10kg)をもって来た事があった。しかし内容物の電解液がこぼれて雨具とザックのナイロン部分に穴があいてしまって大損害を被った事がある。今では移動用の密閉型のものを使っているのでそんな事も無くなった。

 コーヒーを飲んで落ちついた所でQSOに移る。1200Mhzでのみの運用となる。430Mhzも持って来たのだが、混信で使いものにはなりそうもない。昔はここで混信も少ない時は、ハンディ機で新潟、富山あたりとも交信できたのだが、今ではこれは望めないだろう。ゆっくり話したつもりなのだが約1時間で予定の20局は終了してしまった。1200Mhzもそれだけ局数が増加した為なのだろう。

 20局終わると急にやる気が無くなってくる。それはQSLを書く事を考えるとが憂鬱になってくるからだ。QSOは早々に切りあげて、あとは持参した飲物を飲みながら山頂からの大展望を肴にしてのんびりと過ごした。


                          上州の重鎮 /1994/



1995年浅間隠山定点移動
登山日1995年1月2日

遠方には富士山を望む
 例年の如く1995年のニューイヤーパーティーに参加の為に、浅間隠山に出かけた。さて装備は何を持って行こうか、山頂で快適に過ごすためにいろいろ考えた。

1)長時間運用するからバッテリーは6.5AHのシールドバッテリー
2)アンテナは1200Mhzの16エレ八木アンテナ
3)正月だから、餅とミカンは持っていこう
4)350ccは必携
5)今年は雪が少ないようだから、水も持たなくては
6)寒そうだからガスカートリッジも一本余分に
7)テントはフライシートも無いと寒いな

そんな事を考えながらザックに詰め込んだら、かなりの重さになってしまった。しかし、正月の鈍った身体には丁度良い。それに1月いっぱいは雑用が山積しており、山歩きは無理と思われるので、その意味でも少々重くとも我慢する事にした。

 朝の山道は雪が締まって、アイゼンが気持ち良く効く、聞こえるのは風の音とアイゼンが雪を噛む音だけだ。まわりの木々は雪がへばりついていて、風が吹くとその雪が青空に舞い上がり、陽を受けてキラキラ光って消えていく。やはり冬はこれでなくてはいけない。

 1200Mhzも最近は局数が増えてきて、あっと言う間に予定の20局を達成してしまった。この調子で一日、本格的にやったらかなり出きるだろう。

 山頂からの360度の展望はいつものように素晴らしい。去年登った山、今年登りたい山を見ながら、のんびり過ごす。時間と共に気温も上昇して雪も溶け出してきた。それと共に山頂も賑やかになってきた。今までは1月2日なんて、人に会う事は無かったのに毎年ここも変化していく。それに今年はピンクの長靴を履いた、こどもの姿もある。私が準備をして計画を立てて、万全の装備を持って来ているのと対象的だ。

 そんな人たちがアンテナを見ては、挨拶をしていく。そして決まって「何処まで話しが出来るんですか?」と聞いてくる。しかし、この質問には毎度困ってしまう。適当に「東京くらいは大丈夫です」と答えると皆一様に驚いている。何を基準に驚くのかは解らぬが、しきりに関心をしている。そんなものだから山頂での暇潰しには困らない。

 例年の如く午後3時に山頂をあとに下山した。下山途中にもまだ雪道を登って来る人がいる。見れば私よりも20才位は年上と思われる、ご婦人の3人連れ。この時間に良く登る気になったと感心する。しかしベテランなのか、初心者なのか良く解らない。靴は軽登山靴でアイゼン無し、スパッツもつけていない、手にはどこかで拾った木の枝を杖にしている。最後尾の人などはザックも持っていない。ともかくあまりの軽装なので凄いの一言だ。

 今年も熟(老)年パワーは日本各地の山を席巻するに違いない。私も負けずに歩かなくてはと思った。


やっと去年で厄年が終わった!!
                      上州の重鎮 /1995/





1996年浅間隠山定点移動
登山日1996年1月2日


 例年の如く1996年のニューイヤーパーティーに参加の為に、浅間隠山に出かけた。
 今回で12支のステッカーが揃うので、NYPはおそらくこれが最後だと思う。思えばNYPの為にいろいろ苦心した事が思い浮かばれる。なにしろ一年さぼると12年後でないと、その干支のステッカーが手に入らないと言うのが恐ろしい。だから一回やってしまうとそこから抜け出すのはなかなか大変だ。QSOしていると「私はいま2巡目です」などと答える局がいるが、とてもそこまでやる気は無い。

 午前5時に自宅を出発、凍結した「二度上峠」の道を登るといつもの通り、チェーンを装着している車に出会う。今回のパターンもそうであるが、いままでの経験からして「4WD]+「スタッドレスタイヤ」で十分だ。

 登山口近くの駐車余地に車を置き、山登りの準備をはじめる。6時50分頃、目の前の「角落山」の稜線から太陽が浮かんできた。今年の太陽はことのほか大きく見える。あまりにも素晴らしいので、思わず手を合わせてしまった。

 ここの所の大雪でさぞかしこの上信国境の山も積雪が多いと思ったのだが、大した事はなく10センチ前後と言った所だろうか。アイゼンも無理に装着するほどの事も無い程度だ。今年は山頂まで1時間45分かかってしまった。年々遅くなっているようなので、これも年齢のせいなのであろうか ?

 山頂には既に登山者が一人いて、盛んにカメラのシャッターを押していた。山頂の石祠の神様にお参りしてから、いつものように、山頂から少し下った所にテントを張った。しかし今年はあまり風もなく暖かいので、テントの必要もないようだ。山頂からの展望は相変わらす素晴らしく、360度が見渡せる。白い富士山の姿もくっきりと見えており、絶好の登山日和である。

 1200MhzFMで1時間ほど運用しただけで、目標の20局は簡単に達成してしまった。特に20局以上局数を伸ばす必要もないので、打ち切ってあとは食事と山岳展望を楽しんだ。今年はあの山の山頂に登りたいと思いながら、360度の視界に入っている山を見ながら楽しんで、山頂をあとにした。


                  群馬山岳移動通信/1996/