富士山を見るために大月市の山「滝子山」
登山日2020年2月23日
今年の冬は雪が少ない。 去年は恒例の富士山を見る山歩きができなかった。しかし、富士山を見ながら歩く山歩きは楽しい。そこで目を付けたのが大月市の滝子山だ。 2月23日(祝) 登山口である桜森林公園を目指してナビの案内通りに進もうとするが、あまりにも細い道なので通過しては戻るということを繰り返しながら進んでいく。それにしても狭い道で当然すれ違いは不可能だ。中央道に架かる橋を抜けるとすぐに桜森林公園となる。森林公園というと広い駐車場を想像するが、駐車余地は少ない。おまけに周辺で鳥獣害防止工事を行っているので一部が駐車禁止となっている。登る人も少ないだろうが、何度か切り返して狭いスペースに駐車した。 準備をしていると周囲が徐々に明るくなり周囲がわかるようになってきた。どうやら今日は雨の心配はなさそうだ。予報では冬型の気圧配置になるということなので、北風が強くなることが心配だ。コンクリート舗装された林道を歩いていくと左に脇道がある。そこには標柱があるが文字が読みとれなかった。さらに歩いていくと建物が見えてきた。「寂悄苑(じゃくしょうえん)」と表札があり、今では利用されていないようだ。かつては志あるものが頻繁に活動していたであろうことが推察できる。
ここからどうやって行けばよいのかわからぬが、とにかく直進していくことにする。傾斜は徐々にきつくなり踏み跡は全くなくなってしまった。地図を見ればこの先の鉄塔とその先の林道を目指していけばいいので不安はない。立ち木に掴まりながらアキレス腱を伸ばして斜面を登ると「笛駒線83」と書かれた鉄塔にたどり着いた。ここまでくると、どこから繋がっていたのか道が伸びてきていた。ここは風があり寒いので、そのまま先に進むことにする。数十メートル歩いてから振り返ると、単独行の登山者が追い付いてきて並ばれてしまった。軽く挨拶しただけでその登山者の後姿は見る間に視界から消えていった。 鉄塔から10分で林道にたどり着く。林道はさほど荒れてはおらず、ここまで車で来ることも可能だったに違いない。そうすれば約1時間短縮できるはずだったが惜しいことをしたものだ・道はミズナラを中心とした明るい雑木林で、明瞭な道が尾根上を続いている。この尾根は「寂悄尾根(じゃくしょうおね)」と呼ばれていたが、最近は「南尾根」と呼ぶことが多くなっているようだ。 標高1100m付近になると場所によっては北風をもろに受けることになる。風がなければ汗ばむくらいなのでその切り替えが難しい。しかたなくネックウオーマーとウインドヤッケをこまめに使い分けて登るしかない。振り返れば木々の間から真っ白な富士山が山頂部を見せている。標高を上げるにしたがって山頂部は徐々にせりあがってくる。 この南尾根は「山と高原地図」では破線となり危険と書いてある。しかし、それほど危険な感じはしないし、難しいとも思えない。しかし、大人数で利用した場合は落石などの危険があり事故となる可能性もあるだろう。いくつかの小ピークを越えながら高度を上げていく。
やがて傾斜もゆるくなり、浜立山への分岐点にたどり着いた。ここは屈曲点で大きく右に折れて山頂を目指す。しかし、ここは風の通り道で強風が思いっきり吹き付けてくる。ウインドヤッケは引きはがされそうになるのを必死でこらえる。頭上の木々の枝が風でものすごい唸りを上げている。それは飛行場の真下にいるような感じだ。 滝子山の山頂に到着すると、そこには360度の大展望が待っていた。しかし乏しい知識では山座同定は富士山とアンテナが林立する三ッ峠山くらいだ。それでも大展望は苦労したご褒美だ。やがて山頂には単独行の2名が到着した。ここでゆっくりしたい気持ちはあるが、風が強くとてもそんな気持ちにはなれない。それでも山頂で滞在は15分ほどになった。 山頂から道をたどるとすぐに分岐がある。道を確認していると立て続けに6人ほどの登山者が登ってきた。足元を見るとチェーンスパイクを装着している。聞けばこの分岐から下は凍結路になっており、アイゼンなしでは危険だということだ。南尾根を登ってきたときは雪もなかったから、このまま使わなくとも済むと思ったが、意外なところでチェーンスパイクの出番となった。 実はここでミスを犯すことになる。それは滝子山の三角点峰に行かなかったからだ。分岐からわずかな時間で行けたのに惜しいことをしたと、あとで確認して気が付いた。もっとも三角点峰は1590m、標識のある所は1620mだから問題ないだろう。
凍結路もチェーンスパイクで何の問題もなく通過することができた。下ったところには社がありその下には小さな流れのある水たまりがあった。標識から社は「白縫神社」池は「鎮西ヶ池」ということが分かった。ここは風もなく日差しが暖かいので大休憩をとることにした。お湯を沸かして「カップ飯」を作り、カップの焼酎で暖まった。まったりしていると山頂から引き上げてきた単独行の男性が「登山口でクマを見た」と言うことだ。それは面白い、鈴を持ってきたが鳴らさずに下山しようと決めた。 鎮西ヶ池から歩くとすぐに大谷ヶ丸への道を分ける。ここでどちらに進むか考えたが、大谷ヶ丸の大きな山容を見ると気力が萎えてしまった。分岐からは防火帯をたどって道を下降していく。防火帯は広く草木が伐採されて気持ちがいい。しかし、地面は凸凹が多く歩きにくいことこの上ない。なるべく日陰の霜柱が解けていない部分を歩くことにした。その防火帯も1446mの手前で登山道は巻くようにつけられている。登山道を少し進んだが、どうも気になるので1446mのピークに登ってみる。しかしそこは防火帯の刈り払いがされているだけの何でもないところだった。 再び登山道に戻りわずかに下ると「すみ沢」の源頭部に出る。その水の流れがあまりにもきれいだったので沢に降りてみる。崩落した斜面の土砂が青緑の砂礫のみを川底に堆積しているものだから神秘的でもある。
しばらくはこの沢に沿って歩いていく。ほどなく分岐となり「曲り沢峠」と「笹子駅」に道を分ける。このまま下るにしても時刻は正午なのでまだたっぷりと時間がある。地図を見ると「コンドウ丸」までそれほど時間はかからない。そこで「曲り沢峠」に向かうことにする。 さほどの高低差もなく峠に到達した。ここは風当たりが強く立ち止まっていると、どんどん体が冷えてくるのがわかる。ともかくコンドウ丸に向かって歩き始める。よく踏まれた道が雑木林の中に出来上がっている。頭上から聞こえてくる風の音は相変わらずヘリコプターが飛んでいるような音として聞こえる。 コンドウ丸山頂は立派な標識があるが、展望はなく登山道の途中のような場所だった。大谷ヶ丸分岐から曲り沢峠経由でコンドウ丸まで約2時間。真面目に大谷ヶ丸経由でコンドウ丸までは2時間半だ。そう考えれば初めから大谷ヶ丸経由で来たほうがよかったかもしれない。(ちなみにコンドウ丸は「金洞丸」と書くらしい) 再び曲り沢峠に戻り地図を見ると目の前に「オッ立」というピークがある。この際だから登っておくことにする。踏み跡はないから適当に斜面を登って行く。7分ほどで山頂に到着すると、こんな場所にも調子ぬけするような立派な山頂標識がある。山頂は南北に細長いので南端に行ってみるが、展望は得られなかった。
オッ立から下降して曲り沢峠経由で再び笹子駅への道と合流する。ここからは恐ろしいほどの急斜面にジグザグにつけられた道を下降することになる。沢水の流れが見えてからも長い道は延々と続いていく。左岸にわたり、沢から離れると今度は膝ほどまで積もった落ち葉の道となった。この道は踏み外せば谷まで滑落するのは間違いないだろう。今回は雪がなかったからよいものの、積雪があればこの道は通過したくない。
三丈の滝を過ぎると道は傾斜もゆるくなり気分的に楽になってくる。単管パイプに木板を取り付けた橋を渡り、わずかに上ると林道に飛び出した。ここには道証地蔵があるが、どんないわれがあるのか不明だ。しかし、この付近にクマがいた形跡がなくちょっとがっかりした。林道には乗用車が2台あり、ここまで車で入れるのだと分かった。道は荒れていないので全く問題なさそうなので、あの桜森林公園に無理して駐車しなくともよかったと思った。 あとは林道を30分ほど歩いて駐車場所に戻った。朝は誰もいなかったのに10台ほどの車が駐車してありかなり賑やかになっていた。 林道を桜森林公園06:30-(.08)--06:38分岐-(.03)--06:41廃屋-(.28)--07:09笛駒線83鉄塔-(.10)--07:19林道-(1.18)--09:37浜立山分岐-(.24)--10:01滝子山10:17-(.03)--10:20分岐10:28-(.07)--10:35鎮西ヶ池11:03-(.03)--11:06大谷ヶ丸分岐-(1.00)--12:06曲り沢峠分岐-(.12)--12:18曲り沢峠--(.30)--12:48コンドウ丸12:54-(.15)--13:09曲り沢峠-(.07)--13:16オッ立13:18-(.03)--13:21曲り沢峠-(.48)--13:09曲り沢峠分岐-(.56)--14:05三丈の滝-(.20)--14:25道証地蔵-(.28)--14:53桜森林公園 群馬山岳移動通信/2020 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |