展望の鉄塔巡視路を楽しむ「赤沢山(片品)」 登山日2006年11月3日
赤沢山と言う山名の山は群馬県内に三座ある。いずれも薮山で、あまり見向きもされない山ばかりだ。今回登ったのは尾瀬の玄関口である戸倉からアプローチする山だ。地形図を見ると、破線が途中まで延びているので、とりあえずこの道を辿ってみることにする事にした。 11月3日(祝) 三連休の初日と言うこともあり、道路の渋滞を考えて早めの出発を目指した。片品村役場のあたりには朝6時頃通過したが、渋滞はまったく無かった。それどころか通過する車も希で拍子抜けしてしまった。国道401号から鎌田の信号を左折して、尾瀬方面に向かう。笠科旅館を過ぎて橋を渡ると旧道と新道に分かれるので、ここは右の旧道に入る。さらに採石場の標識があらわれたら、それにしたがって右折する。道は未舗装で頭上は木々が生い茂り、朝の弱い光を遮っているので、一度は消灯したヘッドライトを再び点灯して走行することにした。道幅が少し広がったところはことごとく「待避場所 駐車禁止」の看板がおいてあった。おそらく採石を積んだ大型トラックでも通るのであろう。道なりに進んでいくと、採石場に到着。そこには発破に対する注意事項が看板として立ててあったが、実際には採石は行われているとは思えない状況だった。 さらに林道をつめると、「黒川第二ダム」に到着。しかし、堰堤があるだけで、実際の貯水は行われていなかった。実際は貯水が目的ではないのかもしれない。地形図にはこのダムは表現されていないので、現在地がどこなのかわかりにくい。カーナビにはもちろん記載されていないし、GPSで緯度経度から確認するのも面倒なので、このまま先に進んでみることにした。まして赤沢山の周辺には送電線の表記があるから、巡視路の標識くらいあるものだと思った。その標識を探しながら、林道を登っていくのだが、それらしき標識は全くなく、ついに林道の終点に着いてしまった。仕方なく、GPSで位置を測定すると、登山口からかなり離れていることがわかった。そこで登山口の位置を設定して林道を戻ることにした。 軽トラックなので難なく方向転換して、慎重に位置を見ながら進むと。途中の橋のカーブのところから、山に向かって行く道が見えた。登山口はこの道に違いなかった。しかし、薮に埋もれたその道にはなんの標識も無く、テープのたぐいも見られなかった。あとから測定してみると、東沢第二ダムの堰堤から400mの地点で右カーブとなり、橋が架かっているところだ。適当なところに駐車して支度を整えた。最近は熊の出没が頻繁なので、ピッケルを準備してきた。いざとなったら何も出来ないだろうが、なにも抵抗しないのでは悔いが残るからだ。 笹藪に覆われた道は、いざ踏み込んでみると意外としっかりしていた。かつてはかなり歩かれていたのだろう。沢に沿って登るのだが、水量は豊富で時折徒渉するのだが、油断をすると水の中にドボンと言うことになる。熊の痕跡がないかとびくびくしていたのだが、熊棚はなくどうやらこのあたりはその心配はなさそうだ。途中で沢が分岐するところがあるが、慎重に踏み跡を探せば積雪期でもなければ心配はいらないだろう。周囲はカラマツ林となっているので、この道は造林のための作業どうなのかも知れない。 沢を離れると道は大きく左に曲がり、笹の密度が濃くなってきたが、さほど心配はいらない。それは笹の下を見れば踏み跡がハッキリと残っているからだ。カラマツ林の中の笹薮分けて進むと、目の前に赤い荷造り紐が直線となって張り巡らされている場所に突き当たった。これは見たことがある、送電線の下の樹木を伐採するために境界線として設定するものだ。ここから道はほぼ直角に左に折れるのだが、これは地形図に表現された破線のとおりである。笹に覆われたその踏み跡を進むと30m程度で、突然広い道に飛び出した。この道は最近刈り払いもされたらしく、まだ青々とした葉を保っていた。頭上には送電線が一直線に架かっており、青空をバックにすると飛行機雲の様に見える。ともかくこの道は送電線巡視路であることは間違いなく、この道の起点と終点は地形図を追って行けば、調べることは容易であろう。 さて、肝心の赤沢山はどこであろうか?地形図を引っ張り出して確認すると、この地点から直接斜面を登り上げれば山頂に到達出来そうだ。目の前の斜面は笹もそれほど深くなさそうだ。登り口を探しながら巡視路を進むと、「電源開発」の文字のある小さな標識が草の中からわずかばかり顔を出していた。とりあえず、ここから一直線に上部に向かって登ることにした。雑木林の中の笹藪をひたすら登るのだが、展望が全くないのでちょっと味気ない。傾斜はそれほど強くなく、ジグザグに登ることもなく一直線に登れる程度だ。その登りもやがて傾斜が緩くなり、柔らかな秋の日射しが差し込む山頂に到着した。 山頂からの展望は、樹林に阻まれてすっきりとは見えない。樹林の隙間から「奥白根山」「錫ヶ岳」あたりが見える程度だ。山頂標識はGさんのものだけで、他には見あたらなかった。設置されている三等三角点はすぐに見つかった。山頂に到着した時間が早いこともあり、ゆっくりとしたかったが、展望がないこともありそんな気持ちにはなれなかった。どうしようか?戻って違う山に向かおうか?この近くにはまだ登りたい山が残っている。しかし、そんなにガツガツしても仕方ない。こうなったら、ゆっくりと送電線巡視路を少し歩いてみようと思った。 先ほどの送電線巡視路に戻って、上部に向かって歩いてみることにした。歩き始めるとすぐにbP59鉄塔に到着。そこからは展望が広がってきた。それは思わず息を呑むような大展望だった。武尊山から尾瀬を取り囲む至仏山や燧ヶ岳までは連なって、紺碧の空をバックに連なっていた。山々は紅葉に覆われているのだろうか、山肌が色づいているように感じる。ここで、ゆっくりと昼寝でもと思ったが、もう少し先に歩きたくなってきた。さらに巡視路を辿って見ると、道は紅葉に囲まれて快適な歩きとなった。 bP58鉄塔に着くと、その先は伐採地となっていた。それも最近カリ払われた形跡がある。次のbP57鉄塔から先はさらに延々と送電線と鉄塔が続いていた。その先を見るとなにやら見覚えがある場所だと気が付いた。遙か先の峠は、黒岩山に登ったときに通過した電発記念碑のある場所に違いなかった。そうするとこの快適な巡視路は懐かしい場所につながっているわけだ。そうなると目の前に広がっている展望が妙に親しみを持って見えていた。こうなると、さらなる展望を求めて高い場所に登ってみたくなる。そこで、このbP58鉄塔から尾根を辿って、無名峰の1555mのピークに登ってみることにした。不思議なことにこの尾根には踏み跡があり、上部に続いていた。 無名峰に到着したが展望は全くなく、むしろ赤沢山よりも悪いものだった。しばらくあたりをうろうろしたが、菓子パンをひとつ食べただけで、居場所もなく山頂を後にした。やはり、定番のラーメンとビールがないのは寂しいかぎりである。 再び巡視路に戻り、これより先に進むことを諦めて戻ることにした。赤沢山に登った地点に近いbP60鉄塔からbP60鉄塔に向けて辿ってみる事にする。bP60鉄塔からは道が分岐しているので、ひょっとしたらここに登る別のルートがあるのかも知れない。時間も早いのでさらに先のbP61鉄塔に行ってみた。ここの展望もすばらしく、奥白根山から錫ヶ岳、笠ヶ岳、三ヶ峰の稜線がくっきりと見えていた。これらの山々はいずれも思い出深い山である。それも苦しい思い出が残っているが、見ているとそれも懐かしい良い思い出だ。ここの鉄塔では、しばし腰を下ろして展望を眺めて過ごした。 「記録」 登山口07:07--(.52)--07:59巡視路08:10--(.18)--08:28赤沢山08:54--(.18)--09:12巡視路--(.08)--09:20bP59鉄塔--(.19)--09:39bP58鉄塔09:42--(.29)--10:11標高1555mピーク10:16--(.11)--10:27巡視路--(.30)--10:57bP61鉄塔--(.32)--11:29bP60鉄塔--(.22)--11:51登山口 群馬山岳移動通信/2006 |
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GPSトラックデータ この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像) 及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |