大展望をボッチで楽しむ「高ボッチ山」「横峰」
登山日2022年2月26日


「高ボッチ牧場からの大展望

高ボッチ山(たかぼっちやま)標高1665m長野県塩尻市・岡谷市/横峰(よこみね)標高1635m長野県塩尻市・岡谷市

「高ボッチ山」とは不思議な名前だ。群馬には「高ヂョッキ」というのがあり長野には「高デッキ」というのがある。いずれにしろ(高い=突起)が由来ではないかと想像できる。高ボッチ山は夏ならば車で簡単に登れてしまう。しかし冬となると道が通行止めとなり、静かな山になる。これこそ山歩きの適期といえるのかもしれない。

2月26日(土)
自宅を5時に出発、時間短縮のために上信道から長野道と乗り継いで塩尻ICで降りて登山口に向かう。心配していたが、道は除雪され全く問題なく駐車場に到着した。ここは「ブリーズベイリゾート塩尻かたおか」という宿泊施設なのだが、今は休館中で立派な建物はメンテナンスも行き届かない。庭木は伸び放題で、建物の一部は剥がれていた。送迎用に使われていたバスは錆が浮いたまま放置されていた。駐車場は5台ほど駐車していたが、おそらく日の出の写真を撮影に入ったものと思われる。
いきなりチェーンアイゼンを装着して駐車場から歩き出す。道は踏み固められており踏み抜きもない。ましてルートを外れることもなく、夏道よりも快適かもしれない。それに傾斜もなだらかで息切れすることもなく高度を上げていくことができる。こんな快適な道があってよいものだろうかと思う。生き物の鼓動もすべて無くなってしまったかのような空気の中にあるのは、踏みしめるチェーンスパイクの靴音のみだ。その靴音さえもすぐに山の中に飲み込まれて行くようだ。
標高1462mの地点まで来ると、目の前が開けて眩しい雪原が広がる。思わず目を細めるが、太陽の光は容赦なく目に入ってくる。ここでサングラスを車に置いてきたことを後悔した。ゴーグルも持ってきたのになんという失態だろうか。こうなれば目を細めて歩くしかないか・・・
気持ちの良い雪原は遮るものがない大展望の中を歩くルートだ。振り返ると北アルプスの山々が青空の中に稜線を際立たせて並んでいる。高度を上げるにしたがって、眼下にコンクリートブロックを並べたような街並みが見えてくる。道は踏み固められている場所の踏み込みはないが、少しでも外れると膝まで潜ってしまい脱出に苦労することになる。この雪原も頂上に近づくにつれてなだらかになり、それこそ運動場にようになり、思わず走り出したくなるほどだ。目の前にご夫婦の登山者がおり、何とか抜かしたかったのだが全く避けるつもりがない。咳払いをしても動じないので仕方なくその後ろをついて高ボッチ山の山頂に到着だ。


ブリーズベイリゾート塩尻かたおか(休館中)

唐松林の中の道

標高1462mで展望が開ける

山頂のアンテナ群

頂上への道から北アルプス


山頂からは、360度の展望が広がっていた。諏訪湖の向こうに富士山、右に南アルプス、中央アルプス、ポツンと孤高の御岳山、連なって乗鞍、穂高、槍、常念、燕、餓鬼、爺、鹿島槍、五龍、唐松、白馬、戸隠、妙高、そして間近に鉢伏山、そして八ヶ岳連峰と遮るものがない。これほどの大展望はいままで見たことがない。このままここに留まってこの風景の中に身を置いておきたいと思う。
ほとんどの人はこの山頂のピストンで帰っているようだ。しかし、


頂上直下のビュースポット

乗鞍岳

諏訪湖と富士山

空木 木曽駒

御嶽山

諏訪湖と富士山、南アルプス

穂高と槍

八ヶ岳


近くにある展望台に行ってみることにする。わずかに下って展望台に向かうが踏み跡は少なく潜ってしまうようなところもあった。展望台には標石があり見える山の名称が刻んである。これを見ながらゆっくりと菓子パンを食べて過ごす。風がほとんどないのでストーブを持ってくればよかったと後悔した。なんと高ボッチ山に到着してから1時間を過ごしてしまっている。時刻は正午前なので、このまま帰るのはもったいないので、横峰まで行ってみることにする。輪かんじきを装着して横峰に向けて出発する。


展望台 自然保護ボランティアセンター

鉢伏山へ

穂高 槍 常念

穂高 槍

鹿島槍 五龍 唐松 白馬


横峰までは夏であれば林道を車で数分というところだが、その林道は積雪で埋まっている。スノーシューのトレースがつけられているのがちょっとした救いだ。そのトレースも「崖の湯温泉」への分岐を分けると途切れてしまった。ここからはスキーのトレースがあったが、輪かんじきで踏み込むとズボッと踏み込んでしまう。まあ仕方ないだろうとこのまま進むことにする。
しかし、この単調な林道のなんと長く感じたことか。一歩一歩の繰り返しが嫌になった1時間半で、やっと横峰のピークが林道を離れた数十メートルのところにある。いざ、林道を外れてそこに向かって行こうとして、その雪の深さに愕然となった。輪かんじきを着けていても腰まで埋もれてしまうのだ。それでも20分ほど頑張ったがとても無理だと断念した。林道に戻り息を整えるながら考える。ここまで来て断念するのはあまりにも残念だ。帰りの時間を考えるともう少し頑張れるような気がする。そこで少し戻って違う場所から再び挑戦する。今度はザックを置いてGPSにサブカメラという軽装だ。相変わらず腰まで潜る深雪だがジリジリと前に進んでいく。格闘すること20分で今度は何とか山頂らしき場所に到達することができた。そのとたんに太腿が攣って痛みが走り動けなくなってしまった。少しばかり動きを止めて這う這うの体で林道に戻った。ポカリスエットとゼリー飲料を摂取すると何とか痛みが和らぎ動けるようになってきた。時刻は13時半、思わぬラッセルに時間を取られてしまったが、何とか横峰に到達することができたのはうれしかった。
高ボッチ山手前の休憩舎で輪かんじきを外し、再び高ボッチ山山頂に立つと、すでに太陽は高度を落としているのが山襞の印影でわかる。当然、誰もいない山頂を今度こそ独り占めだ。帰りはチェーンスパイクのみで快適に山道を下降した。途中で10分ほど千葉から松本に移住したという青年と話し込んでしまった。若い人はこれからいろんなことができる。ところが齢70歳の老人は残りをどう生きるか?ジタバタしても無駄なことはわかりきっているのだが。

大展望の高ボッチ山は機会があれば再び登ってみたい場所となった


輪かんじき

林道を辿る

崖の湯 分岐

スキーのトレースを追う

右が横峰山頂

腰までのラッセル

林道を離れてここまで1時間を要した

横峰から北アルプス

帰りも北アルプスを見ながら下降する


08:00ブリーズベイリゾート塩尻かたおか--(1.12)--09:12標高1462m--(.46)--09:58高ボッチ山10:20--(.13)--10:33展望台11:00--(1.28)--12:28横峰13:25--(1.25)--14:50高ボッチ山--(1.24)--16:14ブリーズベイリゾート塩尻かたおか



群馬山岳移動通信/2022


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)