体調不良で、2カ月近く山から遠ざかってしまった。やはり、肘の腫れが完治しないのと、左足の踵骨棘、右足の足裏筋膜炎。四肢で痛みが無いのは左腕くらいなものだ。そんなものだから当然運動不足で体力は衰える一方。増えるのは血糖値と体重くらいのものだ。しかし、そうはいっても山歩きをしたいので、どこか適当な場所を物色する。やはり、去年の暮れに見たダイヤモンド富士が忘れられないので、富士山の近くの山に登ることにした。この付近の未登の山はいっぱいなので選定に困るほどだ。その中で、精進湖の北に位置する山は展望もよさそうだし、簡単に歩けそうな雰囲気がある。富士山を見るなら、天気の良い日に限るので、天気予報を見ながらそのチャンスをうかがっていた。 12月18日(金) 天気は快晴の予報なので、なんの心配もいらない。朝の3時半に自宅を出発、関越道→圏央道→中央道と乗り継いで6時15分頃、精進湖畔の駐車場に到着した。すでにカメラマン30人ほどが、今や遅しと日の出を待っている。気温は−4℃ほどなので、この季節としては暖かい。富士山の雪も少ないように感じる。精進湖から見ると、太陽は富士山の左の山並みの一角から登ってくるので、富士山は逆光になってしまうので、撮影してもシルエットとして写るだけだ。しかし、きれいな円錐形で見事な左右対称の富士山のシルエットが見えるのだ。カメラの放列に並び、コンパクトカメラを手持ちで構える。周りは三脚を設置した高級な一眼レフカメラなので、こちらはかなり気おくれしてしまう。7時3分、太陽が姿を見せると同時に今まで富士山を取り巻いていた黄金色の屏風が一気に崩れて消えてしまった。太陽の光は強烈で富士山の頂部を徐々に照らして、さらに精進湖畔は白色の光に満ち溢れた。そんな感動的な時間は一瞬で終わり、太陽は驚くほどの速さで高度を上げて行った。
さて、これから出発の準備を始める。カップラーメンを作って朝食にするのだが、お湯がなかなか沸かないので、出発時間が大幅に狂ってしまった。やはり、この時期のガスは寒冷地用が欲しいところだ。やっとのことでザックを背負い湖畔の駐車場から西に向かい、道路にでてからさらに西に進む。GPSを見るとなんと登山口から離れている。どうやらいきなり道を間違えたようだ。歩いてきた方向を再び辿って戻ると、「パノラマ台入口」の標識のある場所に到着した。15分ほどロスをしてしまったので、ちょっと意気消沈、出鼻をくじかれた格好だ。 登山道は落ち葉が敷き詰められた道で、左右に曲がりながら徐々に高度を上げて行く。この時期は落葉が終わって樹林帯でも周囲の景色が感じられるので清清しい。それに久しぶりの山歩きで気分が高揚しているのが自分でもわかる。 登山道を登りつめると、稜線に突き当たる。ここが根子峠で左に向かえば最初の目的地である「パノラマ台」である。峠には標識と山火事注意の「纏リス」の看板が打ち付けられていた。まずは「パノラマ台を目指すことにする。道は歩きやすく、かなりの人が歩いている感じを受ける。途中で本栖湖の「千円札の逆さ富士眺望地」の分岐を見る。しかし、往復1時間以上の行程では断念するしかないだろう。さらに歩くと道は下降するようになる。そして木々が刈りはらわれて、展望の良い場所に到着する。ここがパノラマ台の展望台で男性が一人で休んでいた。パノラマ台をピークとするならば、下降する前の地点がパノラマ台、でここは展望台という事になる。山頂方位盤と東屋があり、周囲の山々が一望できる。富士山は逆光気味なので山襞は確認が難しい。 写真を撮影して、目の前にある「烏帽子岳」に向かうことにする。道は相変わらずハッキリとした道で、下降気味にどんどんと進むことが出来た。10分ほどで、TV中継局のアンテナがある山頂に到着した。すでに4人の登山者がくつろいでいた。この時間帯は富士山が逆光気味になるので、あまりパッとしない。4人のパーティーが出発するのと同時に単独行の男性が到着した。ちょっとだけ言葉を交わして、烏帽子岳山頂を辞してパノラマ台に戻ることにした。 パノラマ台から根子峠に向かう途中でシモバシラを久しぶりに見つけた。何とか撮影しようと頑張ってみたが、思うようには撮れなかった。その脇を不思議そうに女性三人が怪訝そうな顔で覗き込んでいった。
根子峠からは急な斜面を喘ぎながら登ることになった。額の汗は帽子のつばに集まって凍ってツララになった。暖冬とはいえ、山はそれなりの寒さとなっているようだ。しばらくは細かなアップダウンを繰り返して稜線を辿っていく。南アルプス方面の山々は青空の中に白い稜線を広げて見えている。なんとも素晴らしい天気で。幸せな気持ちになる。しかし、両足はすでに悲鳴を上げており、歩くたびに痛みが走る。それをカバーしようとしても、ストックを握れば肘に負担がかかるのでそれもできない。まあ、こんな状況で山を歩くのは無謀なのかもしれない。 精進峠を過ぎて道は再び登りとなる。すると登山道から外れた場所にある露岩に登山者が一人いる。ここが富士山の展望場所かな。その登山者がいるところに近づいてみると、そこは大展望が広がっていた。眼下には精進湖が水を湛えその先には富士山が大迫力で見えているのだ。登山者は立派なカメラと三脚を設置してシャッターチャンスを狙っているようだ。聞けば、こことこの先に見える露岩の場所がお勧めの展望場所だという。確かに今までは樹林の中の道を歩いてきただけで、富士山をまともに見ていない、そうなるとこの場所は貴重な場所に違いない。しばらくは展望を楽しんでこの場所を辞して、その登山者が勧める露岩にも立ち寄ってみた。しかし、最初のほうが展望はよかったように思う。 展望場所からは急な斜面が、疲れを一気に引き出してくる。たかだか5時間程度の歩行でここまでバテテしまうのは情けない。しかし、これが現実なのだから仕方がない。やっとの思いでたどり着いた場所には三角点があった。ここが「精進山」で特徴は無く、樹林におおわれた登山道の通過点という雰囲気だ。 「精進山」からいったん下降して再び登りあげる。かなり疲れた格好の男性二人とすれ違った。「この道は本栖湖に行きますか?」と尋ねられたが、「行けないことはありませんが遠いですから頑張ってください」と答えておいた。急斜面を喘ぎながら登っていくと、目の前がなんとなく開けて平らになってきた。「そこが「三方分山」の山頂だった。カラマツの林となっており、南側は「富士山」が見える好展望地だ。ここで昼食をとり大休止をすることにする。それにしても疲れたのか、暖かい日差しの中で「富士山」を見ながらカップ入りの焼酎をチビチビと飲むと、何とも幸せな気分だ。予定ではこの後に「五湖山」に登る予定なのだが、そんなことはどうでもよくなってくる。このまま、ゆっくりとするのもひとつの選択肢かな?なんて思えてくる。
三方分山から女坂峠まで下降する。女坂峠は阿難坂と呼ばれ、甲斐と駿河を結ぶ道の一つ、中道往還であるため、道幅も広く整備されていたようだ。ここから五湖山に向かって登っていく。意外とよく歩かれているようで、道形ははっきりとしている。ほどなく展望の良い露岩の場所に出た。ここからの「富士山」の展望は素晴らしく、松が良いアクセントとなっている。陽が傾いてきたようで、精進湖の湖面は光を反射して眩しい。時刻にそれほど余裕が無いので、休憩は帰りにすることにして先に進むことにする。急傾斜の斜面を喘ぎながら登ると、展望の無い「五湖山」山頂に着いた。その展望の無さにがっかりして早々に下山することにした。先ほどの露岩の場所で大休憩をしてから女坂峠まで戻り、精進湖まで一気に下ることにした。
中道往還として整備された道は、いまでも石積みの跡が残り、当時の賑やかな様子がうかがえる。九十九折に作られた道は歩きやすく、堰堤を二つ越えると舗装路となり人家が見えてくる。道は整備され沢は改修されているが、かつての宿場の姿を彷彿とさせる佇まいがある。屋根は兜作りと言う傾斜が急なつくり、道に面した建物の一部は商いをするのに適したように張り出していた。 その中にひときわ大きな杉の木が目につく道を離れて近づくとそこは「精進湖諏訪神社」で大きな鳥居はしめ縄に真っ白な紙垂が下がっている。鳥居をくぐり大きな杉に近づくとその大きさに圧倒される。これが天然記念物「精進の大杉」と言われるものだ。境内はひっそりとして、陽が傾いて冷え込み始めた空気が周囲を覆っている。玉砂利の上を歩くと、その音は木々の間を抜けて山の中に消えて行った。 精進湖に着いたのが15時半、たった7時間(15km)の行動なのに、とてつもなく疲れた。やはり体力が落ちているのは確かだ。 精進湖湖畔に着くと、朝と同じようにカメラの放列が連なっている。夕方から村の用事があったのだが、こうなれば夕焼けの「富士山」を眺めてからじゃないと悔いが残る。村の行事は遅刻することにして、夕焼けを楽しんでから帰路についた。
「記録」 08:07精進湖駐車場--(.05)--08:12戻る--(.05)--08:17登山口--(.47)--09:04根子峠--(.15)--09:19パノラマ台09:30--(.10)--09:40烏帽子岳09:47--(.19)--10:06パノラマ台--(.11)--10:17根子峠--(.54)--11:11精進峠--(.10)--11:21展望地11:38--(.22)--12:00精進山12:02--(.10)--12:12三方分山12:36--(.24)--13:00女坂峠--(.09)--13:09展望地13:12--(.35)--13:47五湖山13:52--(.26)--14:18展望地14:35--(.12)--14:47女坂峠--(.24)--15:11精進の大杉15:14--(.02)--15:16車道--(.18)--15:34駐車場 群馬山岳移動通信/2015 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。 (承認番号 平16総使、第652号) |