大弛峠は気軽に2000m峰を楽しめるとあって、夏の季節は大変な賑わいとなる。そんな喧噪の山はとてもじゃないが性分に合わない。
それでは、冬のシーズンはどうだろうか?昨年の1月、小川山に登った時に、林道は閉ざされて車はもちろん登山者のトレースも無かった事を確認した。
そんなわけで厳冬期の大弛峠を目指して登ってみることにした。
なにしろ、登山道というかアプローチは林道を辿るだけなので何の心配もいらない。
1月29日(日)
自宅を午前4時に出発し、林道入り口に着いたのは6時半。林道入り口にある駐車場は除雪された雪が出入り口に積み上げられて入れない。こんな事もあろうかと準備してきたスコップで雪をかき分けた。もちろん駐車場は雪が積もっており、スタックするのか心配なので、慎重に入っていく。幸いに新雪と言うこともあり、車は問題なく動き回ることが出来る。
出発準備をしながら、ストーブでお湯を沸かしてカップ麺の朝食準備だ。外気温はマイナス15度なのでとっても寒い。これは困難が予想されるので防寒対策は充分に考えた。何しろ予備の手袋は4組、着替え、ツェルト、ストーブ、それにピッケル、アイゼン、カンジキと背負い込んだ。後から考えれば、スノーシューにするかカンジキにするか悩んだが、結果的にはスノーシューの方が正解だったかもしれない。
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07:16駐車場----12:01標高1930m12:38----15:46駐車場
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外気温マイナス15度
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林道入り口は全面通行禁止
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トレースもなくラッセルしながら歩くしかない
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林道入り口からちょっと歩くと、金峰川に架かる橋がある。ここにもゲートがあるが鍵は掛かっていない。まあ横には歩行者用の通路があるのでこのゲートは獣の進入防止の意味が強いのかもしれない。雪の林道にはトレースがあり先行者がいたことに感謝。これなら予定通り大弛峠に到着。小屋でゆっくりとしようと考えた。
ところが、トレースはすぐになくなってしまった。しかし積雪は30センチほどなのでそれほどの苦労もなく進むことが出来る。それでも標高が上がるにつれて積雪も増してきた。しかたなくカンジキを履いて歩くことになった。積雪はさらに増してとうとう膝上までくるようになったので1メートルほどになった。気温も低くマイナス20度近くなっている。足指の感覚と手指先の感覚が麻痺してくるのが分かる。これほどの寒さも久しぶりに体験するものだ。意識して足指を動かしてみるがあまり効果がない。この時点で大弛峠は無理と判断した。
それでもなんとか、正午まで歩いて見ることにする。目的を失って歩くのは辛いものがある。この林道歩きというのは決して甘くはなくむしろ積雪があるので歩きにくい。それに道の山側は間地ブロックとなっているので這い上がることは出来ないので蟻地獄のようなものである。それに地形図を見れば分かるが、蛇行しているので距離の割に標高が稼げないのだ。
正午まで歩いたが結局は大弛峠には遙かに届かなかった。ここまで5時間歩いたことは何だったのだろう。
そういえば、去年もこの地域で敗退した山があった。この地域はそんな場所なのか、いや体力不足が一番の原因であることは間違いなさそうだ
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カーブミラーに情けない姿が映る
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この先で断念
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もうすぐ断念
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断念した場所からも道は続く
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甘酒を呑むほど甘かった計画
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ビール
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単独行はリスクも多いが、決断も早い。早々に進むことを断念して帰ることにする。適当な日だまりにザックをおろして昼食の準備。お湯を沸かしてラーメンの準備をしている間に缶ビールを口に運ぶ。
ところがなんと、缶ビールが唇に張り付いて離れない。あまりの寒さにアルミが唇にくっついたのである。恐ろしい寒さであることをあらためて感じることになった。ともかく食事を早々に切り上げて一目散に下山に掛かることになった。
しかし、下山は思ったほど楽ではなく、登りに要した時間とほとんど変わらなかった。
それにふくらはぎが猛烈な筋肉痛となり、運動不足を露呈してしまった。這々の体で雪の舞う車にたどり着いたときはへとへとだった。おまけに足はシモヤケとなり、暖房をかけるとむず痒くなった。
意気消沈しての帰宅となった。そんな2012年(前厄)の初山行だった。
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ラッセルしてきた道を辿って下山
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堰堤の流れは凍り付いていた
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