快晴の山でのんびりと過ごす「大林山」「摺鉢山」
登山日2019年3月9日


大林山(おおばやしやま・だいりんさん) 標高1333m 長野県上田市・千曲市・筑北市/摺鉢山(すりばちやま)881m 長野県筑北町

「群馬山岳移動通信」のタイトルとはかけ離れてしまって、無線の運用はもちろん皆無となってしまっている。また県外の山に出かけることが多くなり、群馬の文字もなんだかそぐわなくなってしまっている。そこで県内の未踏の山を計画したのだが、前日に降った雪が路肩に残り駐車スペースが確保できそうにない。そこで予定を変更して上田市付近の山に登ることとして
計画を練り直した。そこで候補になったのが上信道の坂城IC近くにある「大林山」だ。これだけではつまらないので付近の山もできれば登ってしまう計画だ。

3月9日(土)
上信越道坂城ICから室賀峠を目指して車を走らせる。集落を抜けると山道に入るが、通行量も少なくセンターラインもあるので快適な走りだ。室賀峠は上田市と坂城町の境界となっており、そこには路肩に1〜2台駐車できるスペースがある。付近を見ると雪は全く見られず拍子抜けするほどだ。持ってきたスノーシューとワカンは車内に置いて持たずに出発することにした。実は雪道を予想してスコップも持ってきたのだが、完全に不要だった。駐車場所から上田方面に進み右の山側にある送電鉄塔に向かう道に入る。入口にはコースタイムが書かれた標識があるが、周回コースなので参考にはならない。


室賀峠

登山口

アカマツ林の道

風越峠

黒姫山

反射板分岐


送電鉄塔をすぎると伐採されたアカマツが玉切りにされ、松くい虫防除のためにシートで覆われて何箇所も置いてある。このアカマツ林はそれだけ大切に管理されているという事だろう。道はしっかりしているが、とにかく急斜面に閉口だ。すぐにウインドブレーカーを脱ぎ毛糸の帽子を外した。それでも歩くと汗が噴き出るほどの急登だ。こんな急登のコブを二つばかり越えると林道を横切る。地図を見れば、この林道を辿ってきた方が良かったかと思えるほどだ。この林道を上部に辿ってもよいのだが、忠実に市町村界を辿ることにする。(帰路は途中から林道経由とした)斜面を登りたどり着いた967mピークは四等三角点があり、展望もないところだった。このピークを過ぎて鞍部に到着した。ここには標識があり九竜池へ分岐となっており、こからはひたすら斜面を登るという苦行の山行となった。

斜面には斑に積雪が出てきたが、さほどの量ではないので快適だ。途中で黒姫山、妙高山あたりの展望が一気に開けるところがあった。その急峻な山容はほれぼれするほど眼下には高速道路と国道18号に沿って街並みが続いている。時刻は8時40分、今日は絶好の行楽日和なので人々の移動が開始されたことだろう。それにしても静かな山だなあと喜びに浸る。


反射板への分岐標識を過ぎて3分ほど歩くと九龍山の山頂となった。しかしここはピークではなく、ただの斜面の途中なので山頂とはとても思えぬ場所だ。このあたりから、積雪が多くなりツボ足での歩行となってしまい、場所によっては膝くらいまで潜ってしまうほどだ。ストックもグリップのあたりまで潜ってしまうのだ。おまけに急登の斜面とあっては、かなりの負荷となってしまった。スノーシューはともかくワカンを持って来ればよかったと後悔した。いまさらそれを取りに戻ることなんてできない。ともかく我慢の登行に耐えるしかない。一歩が実に苦しいとはこのことだ。こうなってくると意地でも登ってやるという気持ちになってくる。それよりもこのトレースを辿って登山者が追いついて抜かされるのはいやだ。なんとしても一番乗りで山頂に立ちたいものだ。傾斜が緩くなり山頂が見えたときはホッとした。どうやら誰もいないようで青空のなかにトレースの無い白い山頂があったからだ。


九竜山

積雪が多くなる

つぼ足のトレース

大林山からのパノラマ

豪華な食事


大林山の山頂はすべて雪で覆われており、その中に踏み入るのは躊躇したくなる。標識には大林山(氷澤山)と書いてあり、二つの名称があるらしい。山頂の灌木は伐採され、北アルプスの展望が素晴らしい。穂高岳あたりの伐採が進めばさらに素晴らしいと思う。それでも白銀の峰々は飽きることなく眺めていられる。そのそれぞれの頂にそれぞれの思いがあり懐かしい。

さて、時間が早いので、ここから八頭山をピストンしようとルートを探した。地形図の破線の分岐を目安に踏みこもうとしたが、腰までもぐりこむ雪に行く手を阻まれて進むことが出来ない。それに赤テープの類も全く見つからない。それでも諦めきれずに何度か挑戦したが、ルートは発見できなかった。そんなにマイナーな山ではないから絶対に見つかると思っていたが、30分ほどもがき苦しんだが、これでは諦めざるを得なかった。(帰宅してから確認したら、地形図の破線ルートは使われておらず、山頂から南西方向に下降してから回り込むことがわかった)

こうなれば、この大展望を堪能しながらゆっくりと休憩するのが得策のようだ。ザックをおろしストーブでお湯を沸かし、日清の「カレーメシ」を作り、焼酎を取り出して大展望の広がる山頂に腰を下ろした。白銀の稜線を指でなぞりながら、山名を声に出してみた。声を聞いているものは誰もいないので恥ずかしいとは感じなかった。こんなことをしていたら、なんと2時間も山頂に留まっていたことになった。

結局誰にも会わない山頂を辞して自分のトレースを辿って下山することにした。ところが下山を始めて5分ほどのところで、二人の若い女性が登ってくるのに出会った。「このトレースが無かったら山頂を諦めてました」「私の体重で踏み固めておきましたからしっかりしてるでしょう」と言葉を交わして、下山を急いだ。


白銀の峰 空には飛行機雲



穂高連峰



槍ヶ岳が目立つ



鹿島槍は真っ白







五龍岳



妙高、黒姫


室賀峠に到着して車に余分な荷物を入れてザックを軽くして、今度は摺鉢山をピストンする。

車道から藪道の中を進んで行く。途中から立派な道に出会い快適な登山道が続く。ここは茸山という事で立ち入り禁止の張り紙だらけだ。秋のシーズンには立ち入らぬ方が無難かもしれない。立派な道は遊歩道のようでもある。十六夜観月殿への道を分けて、ひと登りすると摺鉢山の山頂だった。展望は木々の隙間から湯の丸、烏帽子、浅間山、蓼科山がわずかに見える程度だった。ちょっと傾きかけた太陽を感じながら、室賀峠へ戻った。

時間もたっぷりとあるので、室賀温泉ささらの湯で汗を流してから帰路についた。


室賀峠 

ロープを頼りに登る

はっきりした道

摺鉢山まで20分(実際はその半分)

摺鉢山

浅間山が見える


07:09室賀峠-(1.43)--08:52反射板分岐--(.03)--08:55九龍山--(.38)--09:33大林山11:26--(1.10)--12:36室賀峠 12:46--(.43)--13:29摺鉢山13:48--(.25)--14:13室賀峠


群馬山岳移動通信/2019


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)