最近の体力の衰えは顕著であり、あらゆる生活の場面で実感することが多くなってきた。ましてこの猛暑で気力も無くなりつつある。そこで近くて涼しくて、それなりにゆっくり出来る山を選ぶことにした。その中で目に入ったのが根名草山だ。かつて根名草山は登ったことがあるのだが、どうも山頂を踏んでいないという気がしてならなかった。それは他の人のHPを見ると、どうも自分の見覚えある場所と違うからだ。それを確かめるためにも丁度良い機会だと思った。
8月25日(土)
群馬県側から金精トンネルを抜けて」栃木県側にある駐車場に駐車する。今日はトライアスロン大会が開催されているので、混雑しているのかと思ったがすんなりと駐車することが出来た。菅沼登山口も考えられるが、今年から駐車料金1000円と言うのがどうも引っかかる。駐車場の気温は12℃で17日連続で猛暑日が続いている群馬の中央部から見ると信じられない気温だ。駐車場から見ると金精山の赤茶けた岩肌が青空の中に荒々しい姿でくっきりと見えている。これは下界は今日も暑いのだろうと容易に予想することが出来た。
私の車の両隣はそれぞれ年配のご夫婦と、単独行の男性だった。その男性が先行して登山道に入っていった。そんなに急ぐこともないので、その後に続いてゆっくりと登っていく。気温は20℃以下であることは間違いないのだが、歩き始めるとすぐに汗が噴き出した。何度かこのルートは歩いているのだが、この急坂は堪える。特に崩落地のガレ場の斜面は何度も雨で流されたのだろう、トラバースルートもわずかな距離だが緊張する。また、かつては素晴らしい登山道であったはずの名残の階段として設置された丸太は、今では障害物以外の何物でもない。これを跨ぐだけで大変な体力を消耗する原因となっている。高度が上がるにつれて、湯ノ湖の青い水面の先には秀麗な形の男体山がどっしりと鎮座して見えている。男体山はどこから見ても左右対称の美しい姿をしている。その存在感はこの日光地域の盟主にふさわしい。
やがて大汗をかいて金精峠に到着、朱塗りの金精神社が際だって映えている。この神社のご神体にお参りせずに通過することは出来ない。手を合わせてかつてここに集まった人たちの平安と猫爺の無事を静かに祈った。ここまで来るのに費やした水分を補給してから先に進むことにする。
道は樹林帯の中を進んでいく。日射しが差し込むところは暑いが、日陰はひんやりとした空気に取り囲まれ気分が落ち着く。北アルプスの喧噪に満ちた山歩きから見ると、こんな静かな山歩きはとても落ち着く。こんな山歩きが自分には身の丈に合っているように感じる。
やがて、駐車場からほとんど同時に歩き始めた先行者に追いついてしまった。その男性と菅沼を見下ろす展望の良い場所でしばらく雑談をして過ごす。私よりも7歳年下の彼はとても重い十字架を背負っている。山歩きは2年前から始めたらしい。ともかく限られた時間を山で過ごすのは大切なことなのだろう。
男性と別れて、今度は自分が先行することになった。登山道にはみ出したクマザサが朝露に濡れていて、足元を濡らすが気になるほどではない。それにしても登山道は深くえぐれており、この道が昔から人々に多く利用されていたことが想像できる。
温泉ヶ岳の分岐に着いたが、温泉ヶ岳のピークは何度も踏んでいるのでそのまま通過した。温泉ヶ岳の巻道はササの茎が敷き詰められたようになっており、ちょっと気を許すと斜面を滑り落ちるようで緊張する。慎重にストックで身体を支えて進んだ。朝陽も高度が上がるにつれて日射しが痛く感じるようになってきた。この斜面はリンドウが多く見られ、秋に向かって咲き始めようとしていた。やがてはリンドウの咲くきれいな道になるのだろう。
駐車場から金精山 |
緊張する 崩落地通過 |
かなり苦しい登り |
男体山 |
金精神社が見えてきた |
金精峠 |
かつて酸性雨が原因と言われて立ち枯れの目立った林は、幼木が育って緑を回復させていた。はたして立ち枯れの原因は酸性雨だったのか今となっては不明な点がある。流れのある沢を渡ると念仏平避難小屋跡がある。かつてのオンボロ小屋は跡形もなく、そこに標柱がなければわからないほどだ。小屋の中に遺体があったことなどは、今となっては知る人もいないだろう。現在の地形図に記された小屋の位置は昔のままであるからしばらくは注意が必要だろう。
さらにもう一本流れのある沢を渡ると道はなだらかにシラビソの幼木の林を登っていく。何とも気持ちの良い歩きである。その中に突然立派な建物が現れた。ここが新しくなった念仏平避難小屋である。内部は良く管理されており、清潔さに満ちていた。緊急時には寝具も炊事用具もあるので充分だ。いや長期滞在だって出来るだろう。小屋の脇には塩ビパイプから流れ落ちる水場があり、これ以上の環境はないだろう。
温泉ヶ岳を振り返る |
秋雲の雰囲気 |
念仏平避難小屋 |
水場 |
小屋からはぬかるんだ道をわずかに登り、その後は下りとなっていく。それもわずかでいよいよ根名草山への登りとなってくる。稜線を吹き渡る風を感じながら、進んでいくと根名草山の山頂に到達した。下部が剥き出しになった三等三角点と数枚の標識が立木に取り付けられていた。展望は遠く栃木の名峰高原山が霞んで見えていた。
時刻は10時前、エアリアマップを見ると近くに大嵐山がある。道は無いようだが、このピークまで足を延ばすことにする。
なんとなく鳥の頭部に見える |
根名草山山頂 |
奥白根山が遠くに見える |
奥白根山の人影をを望遠で確認する |
根名草山の山頂からわずかに下ると山頂では得られなかった大展望が見られた。大嵐山のピークは大きく立ちはだかり、その左には鬼怒沼湿原があり、すでに秋の気配を感じさせるように湿原が色づいていた。さたにその奥には双耳峰の燧ヶ岳が湿原の黄色とは対照的な青いシルエットで浮かんでいた。更に辿れば、群馬・栃木県境の山が連なっている。かつて苦労して歩いた山々をひとつひとつ手でなぞってみた。
鞍部に降りると、数人の登山者とすれ違った。ひとつのパーティーらしいが、バラバラになっているところを見ると体力に差があるパーティーなのだろう。登山道を進むと大嵐山の稜線から外れてしまう。そこで若干ルートを修正して稜線に取り付く。踏み跡は薄いものの物好きが歩いていることは間違いなさそうだ。所々に赤テープがあることがその証拠だ。一部にはシャクナゲの藪もあるが、藪漕ぎの難易度は低い。GPSを確認しながら、標高点を探す。その標高点の場所は展望もなく立木に覆われた場所だった。平らなところに水溜まりがあり、シカのヌタ場にでもなっているようだった。地形図を見ると大展望が広がっているように見えたが、期待はずれのピークであった。
大嵐山へはそれなりの道がある |
大嵐山山頂 |
大嵐山から根名草山を見る |
休憩はこれが定番 |
根名草山に戻り、ここでビール缶の蓋を開けて大休憩とした。至福の時間をゆっくりと過ごして往路を戻った。
駐車場につくと同時に大雨が降り始めた。久しぶりにゆっくりとした山行が出来たと充実した一日となった。
根名草山北斜面から見る大嵐山(左端に鬼怒沼湿原と燧ヶ岳)
06:35金精トンネル--(.29)--07:04金精峠07:09--(.33)--07:42休憩08:05--(.08)--08:13温泉ヶ岳分岐--(.26)--08:39念仏平避難小屋跡--(.10)--08:49念仏平避難小屋08:58--(.34)--09:32根名草山09:42--(.25)--10:07大嵐山10:11--(.30)--10:41根名草山11:18--(1.47)--13:05金精峠13:26--(.16)--13:42金精トンネル
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)
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