憧れの花「ミョウギイワザクラ」に逢う

ミョウギイワザクラ
4月23日(土)

 今日は午後から雨模様との、気象情報が流れている。この前の山行で、足が痛い事もあり簡単な山歩きを考えた。そこで兼ねてより「ミョウギイワザクラ」と言う花が気になっていたので、何とか見られないかと計画を立てた。

 毎年この季節になると、自宅から見える妙義山を見てはため息をついていた。それはどうも妙義山には、良い思い出がないからだ。1981年の遭難騒動以来、足が遠のいてしまっている。それまでは月に4回(つまり毎週)妙義山に出かけては、山歩きを楽しんでいた。それでもこの「ミョウギイワザクラ」に出会う事はなかった。

 サクラソウ科の花は美しい、山で見られるものとしては「ハクサンコザクラ」「オオサクラソウ」が有名で、どちらもまことに美しい。喘ぎながら登った稜線でこれらの花に逢うと、疲れているのも忘れて駆け寄ってしまう。個人的な意見であるが、山の花の中ではこのサクラソウ科の花の美しさは格別だと思う。

 今回は「ミョウギイワザクラ」の情報が手に入った事もあり、それを頼りに出かける事にした。久しぶりに交通手段は乗用車となる。裏道を抜けて渋滞もなく妙義山に着く。道の脇には「ヤマブキ」の花の黄色い色が、新緑に混じって鮮やかだ。歩き始めからいきなり薮漕ぎである。これではもう少し葉が茂ってきたら、歩く事は困難ではないだろうか。道はしっかりしており、登山が盛んな頃の面影を伺わせる。

 登山道からは「アカヤシオ」「ヤマザクラ」の花が、山の斜面にアクセントをつけている。また登山道脇の「ヤマツツジ」は蕾が固く、咲くまではまだ時間がかかりそうだ。薮道はなおも上に続き、袖口から出た皮膚は傷だらけになってしまった。情報が間違いだったのだろうか?と心配になってしまうほど、尾根道が続いている。花は名前から察するに、おそらく岩場にあるものと思われる。

 道はやがて涸れた沢に入った。それでも踏み跡は残っており、明らかに誰かが通った事が分かる。沢を登りつめて登山口から40分歩いた所で、岩場が立ちふさがった。何となく花がありそうな感じがする。岩の左にまわってみたが「イワヒバ」以外何もない、右にまわってみたが何もない。しかたなく上に登る事にする。慎重に3m程登ると、手元に一株のピンクの花がある。見つけた!これが「ミョウギイワザクラ」だ。そして岩場の上部を見ると、さらに数株の花が見える。

 さらに岩場を登ってその花に近づいた。そして20数年探していた花を間近に見る事ができた。花は10円玉をひとまわり大きくした程度で、一株に3個程のピンクの花を咲かせている。花弁は5枚で、先は二つに割れており、中心は黄色くなっている。妙義山の特産の岩場に咲くこの花が、風になびく様は実にいい。眺めていると時間を忘れてしまう。

 今日はカメラはNikonF3+マクロレンズ+スピードライトを持ってきている。岩場の不安定な場所で準備をして、カメラを構えた。そしてシャッターを切ろうとしたら、なんとシャッターが切れない。原因は電池切れだ。いつもはこれを使うときは、モータードライブをつけているので、電源はそこから供給されていたので気にならなかった。今回は重量の点で、外してきたのが敗因だ。しかたなく緊急作動シャッターと勘による絞りでシャッターを切った。スピードライトを併用したから、かなりブレは防げたと思うが出来上がりが不安だ。

 ともかく、憧れの花に出会った事は、感激であった。今度は、ザイルと三脚、そして電池の入ったカメラを準備してもう一度挑戦したいと思った。



                         群馬山岳移動通信/1994/

追記
今回は貴重な植物である事でもあり、あえて場所等は特定できぬ様に文章を書いた。