富士山が観られない地方に住む者にとって、富士を見ることは憧れに近い。まして余生を考えるとあと何回観ることができるのだろうと考えてしまう。そんなものにとって大月市が制定した「秀麗富嶽12景」というカテゴリーは目安として実にありがたい。ここに登れば必ずや富士の姿が見えるということだ。 3月14日(木) 自宅から高速を乗り継いで2時間半で上野原市浜沢に到着した。「SLOW MOUNTAIN AKIYAMA」の標識がある場所を左折する。ここはかつて「アオゲラの森キャンプ場」とされていたが、改名されたらしい。もっともこの秋山地区の名前を冠したほうがわかりやすいかもしれない。左折するとすぐに人気のない建物があり、消えかけた文字で「学校給食センター」と書いてあるのが読める。さらにその奥には広いグランドがあり、こちらは一定の利用者が有るように見える。ここに車を置いて上ることにする登ることにする。事前の情報では積雪が有るとのことなので、チェーンスパイクを持参することにした。(実際には使う場面はなかった)車道を渡り倉岳山に向かって歩いていく。 途中に「浜沢の大欅」と看板が出ている。その看板は金髪の女性が大欅の前でポーズをとっているというものである。ある意味不気味でもありシュールでもある。朱に塗られた立派な薬師堂の石段を上るとその大欅があった。見れば幹の中央は人が通り抜けることができるほどの穴が開いており、注連縄と幣束が掛けてあった。この地域の人達の思いが感じられる大欅だった。 薬師堂から廃校となった浜沢小学校の裏を抜けて登山道に入る。そこには獣除けの柵があり、開けてから中に入る。そういえば途中でシカに出くわしたが、どこに行ってもシカやイノシシの被害が深刻なのがわかる。道は沢沿いに進んでいくが、折れた杉の枝が散乱しており実に歩きにくい。おそらく降雪によって折れたものだろうが、その量は尋常ではない。はっきりとしていた道もいつしか不明となり、沢の左岸を歩いていたら行き詰ってしまった。あわてて右岸に渡り事なきを得たが、油断できないと感じた。ここで単独行の登山者とすれ違ったが、ずいぶんと早い出発だったのだろう。 杉林を抜けると明るい広葉樹林となった。道をなだらかに辿ると「立野峠」に到着だ。ここにはあらゆる方向にこれでもかと標識が取り付けられていた。ここから倉岳山までは樹林に囲まれて展望のない道をひたすら歩くだけだった。
倉岳山山頂は秀麗富嶽12景となっているが、樹林の間に富士山の山頂部分が僅かに見えるだけで、かなりがっかりとなる山頂だ。振り返っても大菩薩嶺から連なる小金沢連山が見えるだけだった。予想していた雪はまったく無く、霜柱が山頂を埋めているだけだった。ここに留まってもあまり意味がないので、先に進むことにする。 倉岳山からわすかに進むと、道は左に大きく曲がり急傾斜の道を転がるように下降することになる。この山域は冬枯れのこの季節であっても景色はさしたるものがなく変化がない。それ故に葉が覆い尽くす時期は全く面白くないのではないかと思われる。 下りきったところは穴路峠で十字路になっている。なんとここには達筆標識があった。それも2枚が打ち付けられていた。達筆標識の作者は今はどうしているのだろうか?ご健在であることを願うばかりだ。 穴路峠からひとしきり登ると天神山となる。標識がなければ、気が付かずに通り過ぎるだろう。そんな場所だった。ここからはJR中央本線の新桂川橋梁、そしてその奥には中央自動車道が見えている。鉄橋を渡る電車の音がここまで聞こえてくるような気がした。 岩場の多い場所を過ぎると高畑山の山頂に到着する。ここからの富士山もパットするような展望ではなく、山頂を通過して先に進んでみたが、展望は得られなかった。山頂に戻り、ここで菓子パンと白湯で大休止だ。今日は風もなく穏やかな山頂なのだが、富士山を目当てにやってきただけに残念で仕方ない。そのうちに二人の女性登山者が山頂に到着。少し言葉を交わして山頂を辞した。
穴路峠まで戻り、あとは一気に下降するだけだ。しかし、この道も集落に近くなると複雑になり、マーキングテープを当てにしていると、とんでもない場所に迷い込んでしまう。あとは自分の五感を頼りに下降してなんとか車道に到着した。車道沿いにはこの地区の伝承を書いたものが多数あり、楽しみながら駐車し地点まで戻った。
スポーツ広場駐車場07:30--(.11)--07:41薬師堂07:45--(.50)--08:55立野峠--(.40)--09:35倉岳山09:52--(.21)--10:13穴路峠--(.06)--10:19天神山--(.36)--10:55高畑山11:24--(.25)--11:49穴路峠--(.37)--12:26車道--(.22)--12:48駐車場 群馬山岳移動通信/2024 |
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