紅葉と初雪の道を歩く「稲包山」
登山日2021年10月18日



稲包山山頂から谷川連峰を望む

西稲包山(にしいなつつみやま)標高1500m 群馬県吾妻郡・新潟県南魚沼郡/小稲包山(こいなつつみやま)標高1570m 群馬県吾妻郡・新潟県南魚沼郡/稲包山(いなつつみやま)標高1598m   群馬県吾妻郡・利根郡

体力の衰えはいかんともしがたく、体調がどうもすぐれない。気温の変化についていくことが出来ず、妙に大汗をかいたり、ひどい疲れで寝込んだりすることもある。やはりフルタイムでの会社勤めと農作業その他の野暮用をこなすのが精いっぱい。山歩きも簡単なところを選ぶようになってしまった。こうなると群馬県内の山を再訪することが、これからは精いっぱいかもしれない。

10月18日(月)
会社を休んで山に出かける。
群馬県と新潟県の境にある「三国トンネル」を抜けて、苗場スキー場から旧三国スキー場に向かう。前日は雪が降ったらしく苗場スキー場の上部は初雪で白くなっている。何度も通ったことのある三国スキー場への道は国道353号線で、未完成のまま途切れている。この道を車で走行するのは初めてかもしれない。それは冬季通行止めで3キロの道を歩いているからだ。

三国スキー場の駐車場であった場所は今では想像もつかないほど激変している。わずかに残った道の脇が駐車余地として残っているだけだ。見上げればスキー場の上部は雪に覆われ朝日が当たり赤く染まっている。どうやら今日は天気の崩れは無いようだが、事前の情報では道は泥沼状態で悲惨な状況であるという。そこで今回はスパイク長靴を持ってきている。結果的にはスパイク長靴は最適な選択で泥濘、沢の徒渉、雪道に対して万能だ。それに足の筋力が衰えているのだろう、登山靴と違って軽いものだから登るときの足の引き上げがとても楽なのだ。こうなると軽登山靴が欲しくなってくるというものだ。

通行禁止の標識から登山道を100mほどのところに軽自動車が放置されていた。左前輪が脱輪し全く動ける状態にない。轍の様子から昨日あたりの事故のようで、ナンバーもそのままになっている。それにしてもこんなところまで乗り入れることは信じられない。


通行止

あれ!登山道に車が!

朽ち果てそうな木橋

今日はスパイク長靴が大正解

湯之沢

クマササに雪が


湯之沢に沿って歩く道はアップダウンも少なく疲労は少ないが、泥沼のような状態だ。これが長靴でなかったらとんでもないことになっていただろう。忠次郎山に登った時、苦労した木橋は難なく通過できたので積雪期とは様子が違う。しかしながら、昨夜の雪が道の脇のクマザサに積もり、それがズボンの太ももあたりを濡らすので気を使ってしまう。登山道は「三坂峠→」の標柱を過ぎて下降する。その先は湯之沢の徒渉となるが水量も少なく長靴で難なく通過することが出来た。忠次郎山に登るときは、この徒渉地点が分からず、さらに上流に進み、危なっかしいスノーブリッジを渡った思い出がよみがえる。

この先はいよいよ登山道らしくなり、小さな沢をふたつ越えてから高度を上げていくことになる。傾斜が急なところにはロープが設置されており整備されていることが感じられる。まだ紅葉していない緑の葉に雪が積もっており、何か痛々しい感じがする。それでも高度を上げていくと、紅葉に雪がふんわりと振り掛かっている様はきれいだ。しかしながら陽が差し込んでくるとその雪は梢から落ちてくる。思わず雨具をつけようかとも思うほどだ。しかし、こんな光景は滅多に遭遇できるものではないので、これは仕方のないことだ。


紅葉と初雪の道を歩く


三坂峠分岐

三坂峠分岐から稲包山方面


樹林帯の道を登り続け、景色が突然に拓けた。そこには標識があり県境稜線トレイル「三坂峠分岐」とある。右に行けば白砂山、左に行けば稲包山だ。白砂山方面はクマザサが刈り払いされており、そのクマザサが登山道に敷き詰められてフカフカの道となっていた。ちょっとだけその方面に進んで、これから登る稲包山方面を眺めることにする。眩い朝陽のなかに三角形の稲包山が雪で白く霞んでいるように見えた。ここからの気持ちの良い稜線を歩くことが出来ると思うとワクワク感がたまらない。

分岐に戻り稲包山に向かうが、すぐに倒木で道を塞がれてしまった。青い葉が残っている状態で雪が積もり、その重みで倒れたものだろう。さらに進むと「三坂峠」の標識が現れる。しかし峠らしくなく、道が下方から延びてきているわけでもない。ここからの道、新潟県側は高い灌木で展望は阻まれ、群馬県側は灌木の高さが低いのでそれなりの展望を得られる。榛名山塊、遠く西上州のひとつひとつのピークも確認できるほどだ。

西稲包山はやはり登山道の通過地点のようだが、小稲包山が大きく見え、その山頂付近にわずかに稲包山の山頂部分が見えている。ここからの展望は素晴らしく、色づいた灌木と緑のクマザサ、雪のコントラストが絶妙な配色で見えていた。西稲包山を辞して鞍部に下降してから再び登り始める。陽の当っている部分は早くも雪が無くなり道は乾燥している部分もあるほどだ。しかし陽の届いていない斜面は雪がクマザサの上に残っており、ストックでそれを払いのけながら登るという作業の繰り返しとなった。

小稲包山山頂は展望に優れ、冠雪した谷川連峰の峰々が青空にその姿を浮かび上がらせている。ここまでくれば稲包山はすぐそこにある。鞍部に下り、気持ちの良い斜面を登り上げると左からの登山道に合流する。この道は三国峠から続いてくるものだ。その道を目で辿ると、笹原の中にくっきりと刻まれた登山道が延びていた。さてここから稲包山山頂はあとわずかだ。


遠く榛名山塊



西稲包山から小稲包山

西稲包山を振り返る

小稲包山から稲包山


稲包山山頂は360度の展望と誰もいない静かな山頂だった。視界を遮るものは無く懐かしい山のピークが次々に飛び込んでくる。平標山がすぐそこにあり、連なって仙ノ倉山、万太郎山そして谷川岳の双耳峰と連なっている。赤城山塊、榛名山塊、近くには栂ノ頭、コシキノ頭、木戸山、白砂山まで続く稜線も美しい。いつまでもここに立ち止まっていたいが、何となくじっとしていられない妙な気分だ。地図アプリGeographicaを見ると気になることがある。「西稲包山」がふたつ存在するのだ。それは「三坂峠分岐」からさらに西にある1502mの標高点だ。ここは忠次郎山に登った時に通過しているのだが、ピークとして意識していなかったので確かめてみることにする。

「三坂峠分岐」に着くまでに2組のパーティーと単独行者とすれ違った。平日とはいえ山は賑やかなものである。分岐からは稜線トレイルが整備されていて実に歩きやすい。ひょっとして今年刈り払いがされたのかもしれない。小さなアップダウンを繰り返し分岐から20分ほどで1502mnピークに到着した。しかし展望は無く、ただの通過点に過ぎなかった。どうやらGeographicaの表記は間違っていると思われる。さらに「三坂峠」の位置が小稲包山の先にあることから、これも違っているように思われる。いずれにしろ地図を見るときは、国土地理院地図を中心に複数の地図を確認することが自分の身を守ることとして必要と感じる。


三国山からの道と合流

稲包山最後の登り

稲包山山頂

山頂から奥四万湖

山頂から赤谷湖


Geographicaに記載された西稲包山山頂

帰りは雪が無くなっていた


三坂峠分岐からの下降は雪がほとんどなくなり、朝の様子とは一変していた。

最後に登山道に放置されていた軽自動車はすでに移動されていた。たまたま作業に当たった人が駐車場所にいた。聞けば「ジムニー」で引っ張り出したとのこと。恐るべき「ジムニー」と言ったところだ。

06:33車道終点--(.47)--07:20湯之沢徒渉--(.43)--08:03三坂峠分岐08:14--(.09)--08:23三坂峠--(.19)--08:42西稲包山--(.25)--09:07小稲包山--(.26)--09:33稲包山山頂10:08--(.21)--10:29小稲包山10:40--(.20)--11:00三坂峠分岐--(.21)--11:21西稲包山?--(.22)--11:43三坂峠分岐--(.19)--12:02湯之沢徒渉--(.23)--12:25林道終点


群馬山岳移動通信/2021


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)