静かなルートを辿って「池ノ峰(八海山)」
登山日2017年10月28日
大倉口コースの途中から越後駒ヶ岳を見る 今年の10月は台風に翻弄されっぱなしだ。月1回の山歩きの楽しみも今月は諦めかけていた。天気予報を見ていると下越地方がなんとなく台風の影響を受けにくいようだ。しかし、どうしても長距離運転をする気になれない。そこで南魚沼市の山ならばなんとかなるのではないかと考えた。地図を見てそれらしき山を物色する。すると越後駒ケ岳に至るルートにグシガハナと言う妙な名前の山を見つけた。 10月28日(土) 予想通り、南魚沼市は雨は降っていないが、空はどんよりとしている。越後三山森林公園を目指して水無川に沿った道を上流に向かっていく。ところが堰堤工事のために道が通行止めになっている。そこはフェンスで厳重に仕切られ歩いても入れないようなものだった。ここから歩くとなると時間的に余裕がなくなる。これでは諦めるしかないだろう。そうなると違う山を探さなくてはならない。地図を見ると八海山の登山道がこの近くの大倉地区から通じているのがわかった。八海山は登っているので、あまり気が進まないが、よく見ると登山道から外れたところに「池ノ峰」というピークがあるのを見つけた。よし、このピークを目標にして登ることにしよう。 「おおくらの森公園」の広い駐車場に車を停める。ここは毎年火渡り大祭が行われるとのことで、その場所は整備されていた。八海山大神の石碑が中央奥に建てられ、その前は広場になっている。準備を整えていったん車道の方向に戻り、遊歩道を歩いていく。ほどなく丸山屋食堂が杉木立の中にたたずんでいた。登山届もここに提出するらしい。軒先には暖簾が出しっぱなしになっているが人気は感じられない。店の前は坂本神社の参道で、八海山大神の文字が書かれた赤い幟が両脇に奉納され本殿に通じている。石段を登ってから鳥居をくぐり本殿の前に立つと、その建物は意外と質素だ。周囲には様々な大きさの石碑があり、掘られた文字も読めないほど古いものばかりだ。 登山道は意外としっかりとしており、杉木立が奥深さを感じさせる。それにしても石碑や石塔がやたらと多い。信仰の山という事もあるだろうが、今となっては忘れられた存在となっているのも多いだろう。杉林を抜けると広葉樹の林となる。それと共に明るさが増してきたような気がする。時折振り返ると眼下に水無川に沿って集落が点在しているのが、なんとなく山里らしい。その向こうには坊寺山が頭だけを霧の上に出している。
茶色の瓶が置かれて水がたまっている場所を通過する。どうやら水場のようだが滴り落ちる水の量も少なく、飲むのはちょっと遠慮したくなる。その先には色鮮やかな八海山大神の姿を彫った岩がある。彩色がいまひとつしっくりこないと思う。ニュースで修復に失敗した?絵画の話題があったが、そう簡単には修復なんてできるものではないだろう。さらにその上には何かの目的のために建てられた小屋があり、その先にはこれまた立派な石塔がある場所に出る。よくぞここまで持ち上げたものだと感心する。ここから振り返ると、枝がことごとく折られている木が見える。明らかにクマの仕業にちがいない。慌てて鈴を取り出してザックに取り付けた。 道は単調だが高度を上げるにしたがって黄葉の色が深まってくるのが楽しみだ。それと時折展望が開けて越後駒ケ岳が見えるのがうれしい。本当ならあの山に登っていたのにと思うとちょっと悔しい。風穴と言う標識がありその傍らには人がかろうじて入り込めそうな穴が開いていた。奥には石が投げ込まれたようにいくつも転がっていた。名前の通りかと思って手をかざしてみたが、風を感じることは無かった。 地形図で雨池とあった場所にはそれらしき池は無かった。ブナの巨木が根元から折れて斜面に転がっているのが印象的だ。この辺りから登山道の傾斜が強くなり、日頃の運動不足が堪えるようになってきた。上部のほうから鐘の音が聞こえるところを見ると、ロープウエイの山頂駅も近くなっているようだ。設置されている短い梯子を上ると、そこにはブナの巨木があり、小さな水たまりがあった。ひょっとするとここが雨池なのかもしれない。ブナの巨木の下には直方体の石が置かれていたので、なにかの目印である場所であるはずだ。
落ち葉に隠れた滑りやすい道を慎重に辿ると、道は平坦になってきた。その先には何やら賑やかな声も聞こえてくる。少し歩くとロープウエイからの道と合流した。するとなんという賑やかさなのだろうか。登山者が行列を作って前の人の足元を見ながら歩いている。しかたなく、その列に割り込んで歩くことになる。先行者のスピードが遅くなると、後ろの方は立ち止まることになる。こんな山歩きに慣れていないものだから、どうしてもストレスが溜まってしまう。場合によっては薬師岳あたりまで行ってもいいかなと思っていたのだが、どうでもよくなってしまった。 池ノ峰のピークに取り付きやすい場所を探しながら歩く。目を付けた場所で立ち止まって人が通過するのを待った。ともかくこの状況では藪の中に入るのも気が引ける。なにかキジ打ちのために登山道を離れるように見られそうだからだ。人が途切れたところで藪の中に突入する。初めは良かったのだが、そのうちに灌木の枝が絡み合った藪となり進退窮まってしまった。たまらず尾根上の高い処を避けて、その下を進んでいく。しかし、最後はどうしても藪を掻き分けて登るしかない。ストックを適当なところにデポしてから、灌木を掻き分けて一番高そうな場所に陣取った。なにか長いこと藪漕ぎをしたように感じたが、時間的には5分ほどだった。山頂には何の目印もなく殺風景だった。しかし落葉して枝だけになった灌木の間からは360度の展望を得ることが出来た。この角度から見る女人堂は、ここに登ったものしか見ることはできないだろう。その右横には、雪をまとった巻機山の稜線が見え、左横には越後駒ヶ岳がシャープな稜線を見せていた。晴れていれば素晴らしい展望なのだろう。
下山はスリップを警戒して慎重に下降した。 幸いにも雨に降られることは無かった。 「記録」 おおくらの森駐車場06:20--(.05)--06:25坂本神社(大倉口里宮)--(.58)--08:23風穴--(1.25)--09:48大倉分岐--(.24)--10:12薮に入る--(.06)--10:18池ノ峰10:31--(.05)--10:36登山道--(.11)--10:47分岐--(.49)--11:36風穴--(.43)--12:19休憩12:31--(.22)--12:53坂本神社--(.10)--13:03駐車場 群馬山岳移動通信/2017 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |