地吹雪が荒れ狂う「鉢伏山」で食料が無い
登山日2018年2月17日
鉢伏山中腹からみる美ヶ原 鉢伏山は霧ヶ峰高原の一角で、夏であれば林道を利用して家族連れで楽しめるハイキングコースがあり楽しめる。冬季は林道が通行不可なので、麓から歩くしか方法が無い。標高は1929メートルなので厳冬期としては難易度が上がってしまう。しかし、静かな鉢伏山を楽しもうと思ったらこの時期しかない。 2月17日(土) 午前4時に自宅を出発、上信道経由で長野道に入る。ところがあまりの睡魔に耐えられず姥捨SAで仮眠をとる。目が覚めると20分ほど爆睡してしまったようだ。塩尻北ICで長野道を離れ、牛伏寺に向かって走行する。 牛伏寺の手前は広い駐車場があるが「ここは牛伏寺駐車場」の小さな標識がある。それに路面には数字が書いてあるのが気になる。ここに駐車するとトラブルになるのかもしれないと、付近を探すが適当な場所が無い。結局は牛伏寺付近の案内図がある場所に駐車することにする。準備をしてザックを背負ったところで軽トラックが通りかかった。どうやら牛伏寺の関係者らしい。聞けばここに停めても問題はなさそうだ。路面の数字の意味を聞いてみると、毎年1月15日の縁日に露店が並ぶので、その場所を指定したものだという事だった。 駐車地点から少し戻り、やはり広い駐車場の端から登山道がつけられている。標識はかなり古くなっており、今にも杭から外れそうだ。いきなりの急斜面を喘ぎながら登ると道はなだらかになり、頑丈な金網の防獣柵が道に沿って延びていた。ほどなく柵の扉に突き当たり、これを開けて柵の外に出る。頑丈な柵もイノシシが壊したのだろう、下の方がめくれあがって隙間が出来ていた。これならば力のある獣は通過してしまうだろう。それにしても先ほどから下界のほうでサイレンの音が賑やかだ。火事でもあるかと思い、木々の間から覗いてみたが、煙は見られなかった。周囲はアカマツが多く、どうやらこの付近は止山になっているらしい。立木にテープが巻かれ、赤テープが点々とつけられている。このテープに騙されると、思わぬところに迷い込んでしまうので注意が必要だ。ともかく道はしっかりしているので、よほどの積雪でもなければ問題ないだろう。 途中で番号が書かれた標識が目についた。その方向には立派な踏み跡がつけられている。立木には「入口」とも書いてあるので何のことかと少し戸惑った。頭上を見ると送電線が走っているので、この標識の意味が分かった。正解は送電線の巡視路なのだが、登山道でもないし紛らわしい。高度を上げて行くと雪も次第に増えてきたが、問題の無い程度だ。時折、猫の声のようなものが聞こえる。初めはギョッとしたが、それは風に揺れる立木同士が擦れあう音という事がわかってホッとした。風の吹きぬける場所では、ヤッケのフードをかぶりなおさなくてはならない。それでも汗っかきの私は首にかけたタオルが濡れてしまっている。 ふと、何かの気配を感じて後ろを振り返ると、単独行の男性がすぐ近くまで来ていた。ものすごいスピードで追いつかれてしまった。立ち止まって少し話をしたが、この辺の山に慣れている感じがした。その男性には見る間に引き離され視界からも消えてしまった。
「ぶなの木権現」は大きなぶなの木の根元に石碑があったが、その言われは不明だった。しかし「大山祇神」の札が下がっているところを見ると、信仰の対象ともなっているらしい。ぶなの木権現から10分ほど歩くと林道に到着した。標識には鉢伏山荘まで40分、さらに鉢伏山まで15分とある。このまま林道を進んでもよいのだが、時間短縮で標識に従って山道を行く事にする。まして、先行した単独行の男性のトレースもあるのが心強い。せっかく持ってきたスノーシューをここで装着することにする。それほど効果は期待できないが、沈み込みは多少軽減されているのだろう。しかし、スノーシューは沈み込んだ時に足を引き上げるのが大変で体力を消耗する。再び林道に出た時、このまま林道を歩くことにした。 それもだんだんと苦痛になり、スノーシューは途中で放棄してデポすることにした。ところがこのことは次第に後悔することになる。林道は進むにつれて鉢伏山の大きな山容が迫ってくる。山頂は荒れているらしく、時折ガスに隠れて見えなくなる。そのガスの塊も、とてつもない速度で流れていく。これは大変なところに来てしまったのかもしれない。やがて鉢伏山荘の建物が見えてきたが、雪が深くなり先行者の足跡も深くめり込んでいる。こうなると進行速度は極端に遅くなってくる。風が強いので被っているヤッケのフードを何度も剥がされそうになる。
せっかく持ってきたので「スーパーカンジキ」を使ってみることにする。いままで使っていたカンジキが販売をしなくなってしまったので、似たようなものを探して購入したものだ。練習してこなかったので装着はちょっと手こずった。さあ、歩いてみると数分で外れてしまった。装着方法はもう少し改良の余地がある。それに私の大きな靴では先端の部分が、スーパーカンジキの前の部分に当たってしまい、靴が傷んでしまうような気がする。浮力は小さいだけあってそれほどでもない。まあ、実用性に関しては今一つと言ったところだ。 風は高度を上げる毎に強まってくる。ネックウオーマーと目出し帽を使ってウインドーヤッケのフードを被っているのだが、強風に立ち向かうには不足しているように感じる。おまけに雪の沈み込みも膝あたりまで来るようになった。立ち止まると身体が風にあおられて倒れそうになる。舞い上がった雪は細かい粒となって顔面に当たってくる。先行者が歩いたはずなのに、トレースは全く見当たらず雪原に風紋が浮かび上がっていた。途中に「歌碑経由で山頂」とあったが、歌碑なんてどうでもいいと、直登することにした。 山頂には三角点と山頂標識があったが、記念撮影する余裕はない。ましてセルフタイマーでカメラを置いたとしても、強風でカメラは飛ばされてしまうだろう。標識はさらに先に展望台があることを示している。ここまで来たのだからその方向に向かってみる。展望台とは大したものではないと想像していたが、ガラスに覆われた円柱の建物でその屋根部分が展望台となっている。建物の中に入って休みたかったが、扉は閉ざされて入ることはできなかった。眼下には氷結した諏訪湖の湖面が白く見えていた。ここにも長居は無用なので早々に退散することにする。
鉢伏山荘を振り返る
苦労してぶなの木権現まで2時間以上かかったのに、帰りは1時間ちょっとで下ってしまった。駐車場に到着し荷物を片付けているときにカメラを落下してレンズカバーを破損してしまった、最後の最後までトラブル続きだ。こうなったら牛伏寺に参拝して厄除けをすることにした。おびんずる様の頭を撫でて呆け封じをしようとしたが、自分の頭をなでるのを忘れてしまった。これもボケの影響なのだろうか? 群馬山岳移動通信/2018 |
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号) |