快晴無風の好日に五郎山(敗退)   
                                        登山日2011年2月19日





マキヨセの頭(まきよせのかしら)標高2100m 長野県南佐久郡







最近は長野県川上村の山を登ることか多くなっている。何しろ綺羅星のごとく山があり、展望は雄大で、何しろ人に会わないのが嬉しい。そんなわけで、前日までの仕事の疲れもあり、最近は5時に起き出して出発するのがやっとだ。

 

2月19日(土)

通い慣れた川上村までの道は、何となくふるさとに帰るような気持ちにさせられる。町田市自然休養村を過ぎると、道は除雪がさほどされておらず、進退窮まってしまった。仕方なくバックで自然休暇村に戻って、その管理棟の駐車場に駐車させてもらうことにした。無断で駐車するのはトラブルの元なので管理棟に出向いて断りを入れることにした。インターホン越しに声を掛けると男性の声で「自動ドアが凍り付いて動かないので出られませんが、駐車場の隅に止めてください」「ところでどこに登りますか?」「五郎山です」「そうですか」特段の注意をされることもなく、気持ちよく出発ができることになった。しかし、時刻はすでに8時30分、私としては異例の遅い出発となった。

 

どうも雪の様子から、カンジキとアイゼンは必携のようだ。それに万一のことを考えてDIYで購入した荷造り用の平ロープをザックの中に入れた。駐車場から林道に入り歩き始めるといきなりの凍結路となった。アイゼンを取り付けることもないので、ストックで身体を支えて慎重にすり足で進んでいく。耳覆いのない帽子をかぶっていたら耳が千切れるように痛くなり、すぐに毛糸の帽子に被りなおした。天体観測棟の脇を抜けて、キャンピンサイトを過ぎると林道は静寂の道となった。山に囲まれたシボコリ窪に沿った道はなかなか陽が差し込まない。そんな道にも物好きが入るのか足跡が残っている。その足跡はよく見ると妙な動きをしている。近づいてみればそれはなんと熊の足跡そのものではないか。この時期でも活発に活動しているのだ。歩き始めて20分で車の轍もなくなり、簡易水道の施設にたどり着いた。これまでの凍結路とは違ってここからは膝が潜る程度の積雪路となった。これはもう仕方なくカンジキを装着することにした。このカンジキは結構気に入っていて、今回は新調したもので初めての使用である。私の山行パターンにはこの一番適しているようだ。

 


町田市自然休養村


天体観測棟


左の道を進む


キャビンサイト


轍もここまで

雪に埋もれて分岐がわからない





地形図を見ると1580m付近から東に向かう破線がある。これを使えば早く林道歩きをわずかに短縮できる。その破線の道を探しながら歩いていくがどうしてもその道が分からない。GPSを取り出してその場所を特定しようとするが、それらしき場所は雪に隠れて見あたらない。行ったり来たり、ウロウロしてなんと30分もそこで時間を無駄に過ごしてしまった。諦めて林道を進んでいくと橋を渡った先に左に林道が分岐している。地形図の位置とは違うが、まあここを辿って登っても間違いはないだろう。
 
うるさい薮もあるがそれなりの道形があり、安心感がある。その道を10分も歩くと再び林道にたどり着いた。おそらく先ほどの林道の延長線上にある道なのであろう。この林道を左に折れて道なりに歩いて行く。いつしか周囲はカラマツに雨氷が白く貼り付いて、青空の下でキラキラと光を放っている。寒さは厳冬期だが何となく春の息吹を感じさせる。それにしても意味不明なのだが、ピンクのテープが無数に見られる。これは登山者が取り付けたものではないことは明らかだった。その林道脇には有害鳥獣捕獲のためのワナが取り付けられている。「シカ」と書いてあるが、この付近はカモシカの特別保護地区であると書いてあったのに、なにか違和感がある。
 
林道を詰めていくと標高1700m付近で林道が分岐、ここで初めて「五郎山」の標識を見る。これで五郎山への道を歩いていることが間違いないとわかった。ちょっとだけ休憩して水分補給とチョコレートを数片口に含んだ。さて、このまま標識に沿って林道をなだらかに登っていくと雪がこびりついた五郎山への標識がある。雪がなければここまで車で来ることも可能なのだろう。それにしてもここまで歩き始めてから100分ほど掛かっているのでとんでもなく遅いペースだ。
 

 



ピンクテープは意味不明

唐松と雨氷

有害鳥獣駆除

登山口の標識


急登の斜面を登って行くのだが、道形はまったくわからない。ひたすら上部に向かって雪の斜面を登っていくだけだ。その上部には岩壁がありどうやって登っていくのか不安が増してくる。この斜面は南向きであることと、斜面が急なので雪が少なくなっている。そこでカンジキを外して登ることにした。それにしても道形やテープの存在がないということは、かなりの不安感がある。まして、岩場での地形図は当てにならないことは充分に承知しているからだ。とりあえず窪んだ場所から尾根状場所に移動して上部を目指す。そうすればいつかは、頂点で合流するからだ。
 
何度も息を整えながら、ストックを頼りにして登っていくと、なんと赤テープが目に入った。もっと早くに見つけていれば、不安感もなく登れていたのにと思った。しかし、赤テープがあったとしても斜面は相変わらず急斜面で灌木に掴まることもしばしばだった。マキヨセの頭の直下は、一旦北側に回り込んで登ることになる。今度は一転して雪が深くなり膝上までの雪と格闘することになった。その雪の上にトラロープの一部が見えていた。引っ張ってみると、トラバース気味に斜面に延びている。ともかくこれに掴まりながら歩いていくと今度は直登することになる。雪をかき分けて灌木に掴まりながら登のだが、頭がなにかくらくらする。体調に明らかな貧血のような違和感を感じる。考えるとどうも最近の運動不足が効いているのではないかと思われる。一日1000歩程度しか歩かないのだから当然とも言える。



道が不明瞭な急斜面を登る

マキヨセの頭、北斜面は雪が深い

標柱のあるピークに飛び出す

さらにやせ尾根のルートを辿る





貧血気味になりながら、斜面を登ると目の前の展望がひらけて明るい日射しが目の前に一気に飛び込んできた。そこには標柱があり「二」の文字が刻んである。ルートはまだまだ先に続いている。ともかく先に進まなくてはと岩稜帯を進んでいくとちょっとした薮があり、その先に目指す五郎山の岩峰が目の前に聳えていた。その五郎山の手前には小ピークがある。エアリアマップではここから1時間弱と記載してある。時刻はすでに正午になっていることもあり、体調を考えると断念せざるを得ないと考えるしかない。しかし、どうしようかと岩峰の上で考えたが、時間を無駄に過ごすばかり。

 

「決めた!!断念しよう」

何度も振り返りながらその場所を去ることにした。

 

帰路は気落ちしたのか途中で何度もスリップして、なんとストックを折ってしまった。たしか一年前に新調したばかりなのになんという事なのだ。気落ちしながら林道の五郎山登山口にたどり着いたが、なんと水を忘れて入るではないか。なんという失態だったのだろう。結局は断念して良かったと思った。ヤキソバパンを食べて林道を戻った。



マキヨセの頭からの展望

八ヶ岳方面

五郎山の岩峰はまだまだ先にある

敗退して登山口に戻り焼きそばパン



途中「幻の滝」に立ち寄ったが、名前のとおり幻と言うものだった。

駐車場に戻り、車の下を見ると、なんとペットボトルが転がっている。ザックに入れようとして落ちたに違いない。これに気がつかなかったことが情けない。ともかく休暇村の風呂(温泉ではない)に入り、蕎麦焼酎を求めてから帰路についた。(お世話になったからには、なにかお礼をと思った)

 


反省材料の多い、思わぬ出費を生んだ山となった。



幻の滝はわざわざ行くところではない(失望)

折れたアルミカーボンのストック



「記録」

町田市自然休暇村08:19--(.20)--08:38簡易水道施設--(.24)--09:02林道分岐(迷う)09:26--(.10)--09:36林道--(.32)--10:08登山口--(1.36)--11:44マキヨセノ頭12:11--(.49)--13:00登山口13:16--(.25)--13:41幻の滝13:57--(.51)--14:48自然休暇村
この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。
(承認番号 平16総使、第652号)
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