葛尾城址から「五里ヶ峯」「鏡台山」
登山日2020年1月19日


鏡台山から北アルプス(爺ヶ岳・鹿島槍・五竜)

五里ヶ峯(ごりがみね) 標高1094m 長野県埴科郡坂城町・千曲市/鏡台山(きょうだいさん) 標高1269m 長野県上田市・千曲市・埴科郡坂城町

去年の9月15日に介護施設に入居している91歳の母親が急に体調を崩した。まったく食事を受け付けないとのこと。長い介護状態が続いており、今までも何度か体調不良にはなったが、今回は様子が違っていた。

結果的には11月3日の正午過ぎに老衰で亡くなった。その後は納骨と年末年始の慌ただしさが加わり慌ただしい日々が続いた。おまけにぎっくり腰に見舞われ散々な日々を過ごした。
それでもやっと山を歩ける環境になった。しかし、山に対する気力も体力も落ちてしまったような気がする。

体力的にも無理が利きそうもないので里山に登ることにする。
そこで目につけたのが長野県坂城町の五里ヶ峯だ。善光寺までの距離が五里ということで名付けられたらしい。しかし、これだけではもったいないのでもう少し足を延ばして鏡台山まで行くことにした。

1月19日(日)

五里ヶ峯の登山口である坂城神社に到着したのは午前6時半。神社には登山者駐車場の案内があるが、どうしてもわからない。神社裏と書いてあるのだが、それが混乱を招いている。実際には神社の裏ではなく、すれ違いが出来ない細い道を昇り、右側にある「葛尾城址登山者多目的広場利用者専用駐車場」となっている。ここを探し出すだけで30分も費やしてしまい、出発時間は大幅に遅れてしまった。

標識に従って細い作業林道を登って行く。ほどなく「←遊歩道 1.5km 遊歩道近道 1.2km→」の標識がある。どちらを選択するか悩むところだが、どうも遊歩道のほうが見晴らしがよく、楽なように見える。考えていると近道の上部から男性が降りてきた。ストックだけで荷物は持たず、いかにも地元の人間とわかる。こちらに近づいてきて、詳細な道案内をしてくれた。これから葛尾城址まで2回目のピストンを行うという。里山はこんな御仁が多いのだろう。とりあえず遊歩道のほうが展望もよく気持ちが良いという事なので、帰りには近道を選択することにした。

幅の広い遊歩道は分岐から10分ほどで行き止まりとなり、岩場を巻くように左側に道がつけられている。尾根に登りあげると展望の良い岩場に道がつけられている。わずかな距離なので、そちらに行ってみる。坂城町の中心部が眼下に広がり、蛇行して流れる千曲川の水面が朝日に色づいて見える。遠くには蓼科山が台形の右端にちょこんときれいな三角形をしたピークが見えている。坂城駅に電車が到着し、発車ベルの音が聞こえる。電車が動き出し、すぐに鉄橋があるのだろう。ものすごい轟音が周囲に響き渡った。ここに住んでいる人はこの日常の音として慣れ親しんでいるのだろうか?

岩場から戻り上部に向かって登って行く。アカマツ林を抜けて雑木林に入る。この辺りは冬になっても葉を落とさないカシワの木が多そうだ。ジグザグの急登を登って行くと、分岐のところで出会った地元の男性が降りてくるところだった。「標識がしっかりしている」と言ったのだが一部に不明瞭なところがあるので、心配になってこちらまで回ってきたとのことだ。地面に地図を書いて迷いそうなところをわかり易く説明してもらった。何とも親切な人がいるものだ。腰にはゴミ袋を提げて拾い集めているという事で、この登山道にはゴミが無いはずだという。この親切な方に礼を言って別れた。

主尾根に登りあげると姫城跡の分岐を分け、アカマツの林の中を歩くと目立たない標高805mの三角点があった。この三角点は葛尾城址の高いところではないから見向きもされないだろう。この三角点からわずかに登ると葛尾城址に到着だ。城址には東屋がありベンチが置かれ休憩できるようになっている。記帳簿、記念スタンプ、観光パンフレットが置かれており、天井にここからのアルプス展望写真、葛尾城の説明が掲げられていた。あいにくと今日は展望は期待できなかったが、鹿島槍、五竜あたりの特徴あるピークが確認できる。ここは桜の木が多いことから春には見事な景色になるのではないだろうか。

葛尾城址から五里ヶ峯に向かう事にする。岩場の要所には階段と手摺りがあり、まさに遊歩道となっている。小さなアップダウンはあるものの、ほぼ平坦で林道終点に突き当たる。この林道がどこから来ているのか地元の人でなければわからないだろう。ここから標識に従って山道に入って行く。送電鉄塔を過ぎると道は傾斜を強めて負荷が大きくなってくる。久しぶりの山歩きはやはり堪える。意識して呼吸をするようにして血中酸素を高めることに努めた。

傾斜が緩むと目の前にこんもりとした高みが現れた。そこを登ると一気に展望が広がった。ここが五里ヶ峯で眼下の千曲川に沿って続く市街地と道路が帯状になって北に延びている。その先には冠着山、聖山、そのはるか先には北アルプスの峰々が雲の間からわずかに見えている。そのうちに単独行の登山者が到着。埼玉から来ていると言うが、この周辺に詳しいらしく貴重な情報を頂くことが出来た。


この駐車場がわかりにくい

坂城神社裏の登山口

遊歩道・近道の分岐

快適な道

遊歩道から少し寄り道した岩峰

岩峰から坂城駅と千曲川

地図を書いて教えてもらった

葛尾城址手前の三角点

整備されている

枝に霧氷

五里ヶ峯

五里ヶ峯山頂から

???


五里ヶ峯山頂からいったん下って鏡台山の標識に従って道を歩いて行く。道は広くまるで林道のようだ。これは道ではなく防火帯として管理されているらしく、真新しい刈り払いの跡も見られた。恐ろしいほど下降すると送電鉄塔が表れ、ここから道は平坦になる。ここで何やら車の走行音がするので気になった。なんと舗装された林道が目の前に現れ、普通車が通過して行った。ここには登山者用の駐車場も用意してあるではないか。なんだ、ピークだけ狙うならここを起点にしたほうが効率的だったようだ。それにしても道は真っ白になっているので雪と見間違えたが、豚コレラ予防対策のための「消石灰」だと分かった。

この場所は笹平と呼ばれているが、笹ではなく雑木が多く地名とは違っていた。5分ほど歩くと「女坂・男坂」の分岐の標識が現れる。しかし、男坂は踏み跡もなく今では廃道となっているらしい。女坂を登り始めるが、名前とは裏腹でかなりの傾斜のきつい登りとなった。長いトラロープが設置されて、積雪時はかなり危険な場所になりそうだ。息を整えながらゆっくりと登って行くが、体力不足が堪えてなかなか足が前に進まない。止まって振り返る回数が多くなってくる。笹平から30分ほど歩いたところで富士見岩の標識を見る。富士見岩まで1分と書いてあるので寄り道をしてみることにする。富士見岩は露岩の場所で本来なら富士山が見えるのだろうが、今日はあいにくと見ることはできなかった。

富士見岩からは明るい尾根の道となり、傾斜も適度で快適な山歩きとなった。風はほとんどなく無く、陽射しは適度にある。展望が良ければ申し分ないのだが、なかなかすべてが整うと言う訳にはいかないだろう。今日はロングスパッツ、軽アイゼンを用意してきているが、全く無用のようだ。

笹平の標識には55分とあったが、ぎりぎりの53分で鏡台山山頂にたどり着いた。山頂は賑やかなもので三角点、山頂標識、山頂石碑、記名帳、鐘(カンボジア製?)、それに富士山が見える場所の案内板。北アルプス方面の雑木が伐採されて展望が得られるようになっている。時刻もちょうど良いのでお湯を沸かしてカップラーメンを作る。お湯が余ったのでココアを作ってくつろぐ。そこに賑やかな若い男女のパーティーがやってきた。ひっきりなしに喋りラジオをかけっぱなし、雲の間からせっかく見えてきた鹿島槍のピークを見ながら、ゆっくり寛ぐというのは打ち砕かれた。このパーティーは話の内容から山小屋関係者らしい。有名な小屋番の人の名前がすんなりと出てきているからだ。早く立ち去らないかとじっと我慢だ。10分ほどして彼らは去ったので、再び山頂には静寂が戻り、ゆっくりとカップラーメンを頂いた。

気が重くなるが往路を辿って戻ることにする。

再び葛尾城址に戻り、近道と称するルートを使って下山することにする。このルートは近道と称しているが、楽な道とは書いていない。道の周りはアカマツでマツタケの利権で仕切られているのだ。急斜面にジグザグにつけられた道は滑りやすく、つま先に力を入れるのがかなりの負担だ。下りなのに何度も休憩して駐車場に着いたときはホッとした。


笹平の林道 白いのは消石灰

熊もいるようだ

富士見台

富士見台から

岩の間に根を伸ばすクロマツ

鏡台山山頂

山頂の鐘


実際の歩行時間は7時間程度だったが、とても疲れた感じを受けた。長いブランクがあったからこれだけ歩ければ良しとするのか?年齢を考えると微妙である。


07:15駐車場--(.05)--07:20(遊歩道・近道)分岐07:34--(.30)--08:04岩峰08:08--(.29)--08:37葛尾城址08:57--(.06)--09:03林道--(.37)--09:40五里ヶ峯10:06--(.37)--10:43笹平(林道)--(.29)--11:12富士見岩--(.24)--11:36鏡台山12:17--(.24)--12:41笹平--(.52)--13:33五里ヶ峯13:38--(.30)--14:08林道終点--(.15)--14:23葛尾城址14:32--(.37)--15:09分岐--(.16)--15:15駐車場

群馬山岳移動通信/2020


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)