ぎっくり腰で登る八ヶ岳「ノロシバ・ギボシ・権現岳」
登山日2020年11月17日
八ヶ岳南部の権現岳は何度か登っているが、ノロシバとギボシに登っていない。何度か計画したが、どうも気が進まず延び延びになっていた。

11月17日(火)
好天が確信できる日を選んで会社を休んだ。新型コロナウイルス対策で、帰路も往路も立ち寄ることなく直行直帰とした。平日の道路は渋滞もなく予定通りの時間で行動できるのがいい。観音平への道路は11月24日から翌年の3月4日まで全線通行止めとなっている。このタイミングはぎりぎりということになる。駐車場は4台がすでに駐車しておりそれぞれが準備を始めていた。今日の長丁場を乗り切るためには、あまりゆっくりとはしていられない。準備と撤収に時間がかかるのは私の悪い癖だとは思いながら、いつになっても改善されない。準備してきたはずなのに車内をひっかきまわして装備をそろえる。周囲の状況からしてアイゼンは必要なさそうだが念のためにチェーンスパイクを持つことにした。ゲイターはぬかるみを予想して装着することにする。腰をかがめてゴムを靴底にまわして付けようとしたときに、ギクッ!!と腰に痛みが走った。わああ〜〜やってしまった。こんなところでぎっくり腰になるとはなんという不運。幸いに軽傷らしく無理すれば何とか歩けそうだ。会社を休んで早起きして2時間も運転してきただけに諦めて引き返すことはできなかった。

ヨロヨロとザックを背負い歩き出すと何とかなりそうな気がしてきた。とりあえず屏風山というのが気になるのでそちらに向かって歩いていく。笹原の斜面を20分ほど歩くと富士見峠からの道と合流する。この辺りに1649mの屏風山があるはずなのだがさっぱりわからない。執念深く探せばよかったのだが、気力が続かず諦めてしまった。これが今回の心残りとなってしまった。

観音平

富士見峠からの合流(屏風山みえず)

富士見峠からの合流

雲海からの富士山

押手川

押手川からの富士山

青年小屋

青年小屋からの富士山


青年小屋と編笠山


朝日が昇り始めると周囲の笹原の景色がオレンジ色に染まってくる。木々の隙間から見える南アルプスの山陵が朝日に照らされて燃えるように美しい。雲海と呼ばれる場所は観音平から直接登ってくる道と合流する場所だ。ここからは、木々の間から富士山を見ることが出来た。ザックを下ろすと再び背負うのは腰に負担がかかることもあり、休まずに登山道を辿っていく。道はさほどの傾斜は無いが、大きな石で埋め尽くされて歩きにくい。

押手川に到着すると男女5人のパーティーが休んでいた。近づくと不釣り合いな香水の匂いが鼻を突く。このパーティーは編笠山を目指すらしいが、この集団の後塵を拝するのはごめんだ。編笠山は何度か登っているので、パスして青年小屋に直接登る道を選択した。編笠山の山腹を歩く道は楽かと思ったが、なかなか手ごわい道で編笠山を登ったほうが楽だったかなと思った。

青年小屋に到着したが、今期の営業は早々と終了しており窓はすべて波板が打ち付けられていた。小屋の裏にあるテント場に移動して休憩することにする。広いテント場は閑散として恐ろしいくらい静かだ。編笠山のその均整の取れた姿は青空をバックに映える。このままここでゆっくりしてもいいかなとも思ってしまう。菓子パンを食べてエネルギー補給してからいよいよ権現岳に登山開始だ。

樹林の中をゆっくりと登って行く。このルートは初めてなので期待と不安が入り混じった複雑な気分だ。かつては道のない山を好んで歩いたが、その時のワクワク感と通じるものがある。ちょっとした岩場を過ぎてわずかに進むといきなり大展望が目の前に広がった。おお!このノロシバという場所はなんという風景なのだ。目の前の西ギボシの大岩壁の迫力に圧倒される。妙高、北アルプス、中央アルプス、南アルプス、鳳凰三山、富士山、眼下には編笠山と一望だ。これほどの好天は今年初めての遭遇で充実感がいっぱいだ。



富士山から鳳凰三山・南アルプス・中央アルプス

鳳凰三山と南アルプス

穂高・槍


ノロシバから西ギボシ


ここから西ギボシの岸壁を登らなくてはならない。いったん鞍部に降りてから登り返すのだが、岩につけられたマークが消えかかってわかりづらい。知らぬ間にルートを外れて登っていると、追いついてきた女性が正規のルートをたどって追い抜いて行った。そこで正規のルートに戻ろうとしたときに足が攣ってしまった。何ということだ、腰の痛みに加えて足が攣ってしまうとはなんという悲劇。ザックを下ろし、ポカリスエットを飲んでストレッチを繰り返すと何とか足の痛みは和らいだ。無理をしながら西ギボシを通過し、今度は東ギボシに向かう。東ギボシは鎖場が多く見られるので、ストックをザックに収納した。鎖はところどころ支点が外れているので危なっかしいところもあるが、慎重に進めば何とかなる。しかし対向してくる登山者がいた場合すれ違いはかなり困難となるだろう。鎖場を過ぎてやれやれと言ったところで、登山道は東ギボシを通過していないことに気が付いた。そこでちょっとだけ戻って東ギボシの山頂を踏んでおいた。山頂には不動明王像となぜか切り株が置いてあった。ここもノロシバと同様に360度の展望で遮るものが無い。今回の山行の目的地であるこの山頂に立つことが出来て達成感は半端じゃなかった。


西ギボシに登る

石がいっぱい

もう少しで西ギボシ

富士山が見えるのは励ましになる


編笠山・ノロシバを振り返る

権現岳が見えてきた

東ギボシはどこから登るのか不安になる

東ギボシに登る

支点が外れている鎖場は緊張する


権現小屋を過ぎてちょっとした登りで再び太ももが攣ってしまった。もうどうしようもないので登り上げたところでザックを下ろし、ポカリスエットと麦茶を飲んで休憩。しかし、ここが展望とすれば適地だった。権現岳山頂の岩塊と富士山が見事に並んで見えるからだ。いままで権現岳に登っていて初めて見る景色だ。景色を眺めていると男性2人組が到着し、山座同定しながらしばらくここで話してから、一緒に権現岳山頂に向かった。権現岳の岩場では西ギボシで私を追い越した若い女性が休憩していた。ここでもしばらく山談義をしてから時間を過ごした。若い女性は先に発ち、男性二人はここで昼食にするという。私は賑やかになるので、三ツ頭で休むことにすると言って山頂を辞した。


東ギボシ

東ギボシ山頂の不動明王

東ギボシから阿弥陀岳と赤岳

東ギボシから権現岳

権現岳の岩峰と富士山

権現岳山頂

権現岳の頂上岩峰


しかし、時刻は正午になろうとしている。すぐに三ツ頭まで行こうという元気はなくなり、登山道から少し離れた2590mのコブで昼食休憩とした。ガスストーブでお湯を沸かしカップラーメンを食べると、やっと落ち着いた気分になった。ここから見る風景で気に入ったのは三ツ頭の三角形の上に富士山が乗っている姿だ。おにぎりの二段重ねにも見える景色はなかなかいいものだ。30分の休憩はあっという間に過ぎて、帰りの時間が気になりだした。


三ツ頭の上に富士山

南八ヶ岳のピーク

下山途中で歩いてきたピークを振り返る

快適なところもある尾根道

ヘリポート跡

八ヶ岳横断歩道


三ツ頭からは一気に下降となる。
トロトロと樹林帯、草原、笹原を辿っていく。
木戸口は何の意味なのか分からぬが標識があるからわかるようなものだ。
ヘリポート跡は裸地の場所でかつて何か施設があったのだろうか。プラスチックのベンチが違和感とともに置かれていた。いやあ、休みたいのはやまやまだがここで休んだら日暮れまでに戻れなくなる。我慢して歩くことにするが、道がどこなのかわかりにくい場所で、標識もなくちょっとやばい感じだ。

もう限界と思ったところで「八ヶ岳横断歩道」に突き当たる。観音平の示す方向に曲がって歩いていく。かつては整備された遊歩道であったのだろうが、今では廃道化がかなり進んでいるような感じだ。微妙にきつい遊歩道を辿って観音平に到着したのは15時半。ザックを下ろすと一気に腰の痛みが気になり、腰をかがめたままで荷物を整理し帰路についた。


記録
観音平06:36--(.53)--07:29雲海--(.38)--8:07押手川--(1.21)--09:28青年小屋09:41--(.34)--10:15ノロシ場--(.26)--10:41西ギボシ--(.17)--10:58-11:03東ギボシ--(.14)--11:17権現岳11:39--(.12)--11:512590m12:24--(.18)--12:42三ツ頭--(.51)--13:33木戸口--(.12)--13:45ヘリポート--(1.08)--14:53八ヶ岳横断歩道--(.33)--15:27観音平


群馬山岳移動通信/2020


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)