会津朝日岳で再起不能? 登山日2015年9月5日




赤倉沢登山口に通じる林道は幅が狭く、草に覆われている

叶の高手(かのうのたかて)標高1430m 福島県南会津郡/会津朝日岳(あいづあさひだけ)標高1624m福島県南会津郡



例年のごとく、8月はついに山に行けなかった。
理由はいろいろあるのだが、旧盆のことがある。それに今年の8月前半は猛暑、後半は一転して20度を割り込む気温となり、天候も不順となった。なによりも、妻が一時停止を無視した車に突っ込まれ、体調を崩したことが大きい。

天気予報を見ていると週末はなんとか天気が回復するようだ。しかし、2ヶ月のブランクがあるので、8時間を超える山歩きは出来そうにない。そこで旅人さんのHPを見ると「会津朝日岳」が目についた。旅人さんが行程5時間なので1.5倍で8時間、なんとかなりそうだ。しかし、登山口までの林道は狭くすれ違いも出来ないし、草が生い茂り車に傷がつくのは覚悟した方が良いともある。それならと軽トラックで行こうと準備を始めたのだが、なにしろ自宅から登山口まで片道200キロもある。直前になりその距離に自信が無くなり、軽トラックは断念することにした。

9月4日(金)

会社から帰宅後、準備を整えて19時半に出発する。この時に右肘に激痛が走ったが、湿布を貼って痛みをなんとかごまかした。右肘は2ヶ月ほど前から違和感があり、タオルを絞れないとか、ちょっとしたものを持ち上げるときに違和感を覚えていた。しかし、せっかくの天気回復で時間をなんとか捻出したので、中止と言うことは全く考えられなかった。

関越道小出ICを降りると雨模様になった。新潟・福島県境の六十里トンネルあたりまで来ると、雨は土砂降りとなりワイパーは高速で動かすほどだった。雨は只見町に入っても変わらず、肘の痛みもあり気持ちが萎えてきた。とりあえず登山口まで行ってみることにするが、登山口に着いてみて唖然とした。狭い林道は雨に濡れた草が倒れて道を塞いでいるではないか。これで、完全に行く気が無くなってしまったのだが、ここまで来た疲れもあり適当なところで車中泊することにした。引き返して決めたところは「町民広場 町下野球場」の駐車場だった。広い駐車場に停めてビールを飲み早々に寝てしまった。

9月5日(金)

午前4時に目覚ましの音で目が覚め、車の中をまとめて登山口に向かう。どうやら雨は止んだようで、上空の雲には切れ間が出来ている。
林道入口は相変わらず草に覆われているが、もうここまで来たら突入しかあるまい。意を決して林道の中に入ると草がフェンダーにぶつかり音を立てている。まあ、購入後5年も経過したから仕方ないと諦めた。2011年の豪雨でこの林道は壊滅的な打撃を受けて、復旧工事を進めて今年開通したという。たしかに舗装の新しいところもあり、その片鱗を見ることが出来る。起点から3.6キロの所に「イワナの里」があり、情報ではここから悪路とのことだが、見事に整地されてなんの苦労も無く駐車場に到着した。駐車場は30台ほど停まれるだろうか?かなり広い。先行者は一台有り、まだ起き出してはいないようだ。

支度を整えてから、カップラーメンの朝食を食べる。先行した登山者も起き出してきて簡単に挨拶を交わす。そのうちに三河ナンバーの乗用車が到着し、雑談をする。なんでも300名山完登まであと14座と言うことらしい。その間にも2台の車が到着し、先行して出発していった。私の出発はこの時点では最後尾となってしまった。


林道入口

イワナの里の奥に駐車場

駐車場への道は整備されていた

駐車場はすでに一台が


駐車場からすぐに赤倉沢に架けられた新しい橋を渡る。道は林道がそのまま続いているようで、幅の広い道だ。それに最近刈り払いがされたのだろうか、刈られた草が青々としている。雨は上がったようだが雲が垂れ込めて再び天候が悪化するのではないかと心配になる。気温は高く蒸し暑いので汗が早くも噴き出してくる。只見町のさわやかな風を期待していたのだが、それは無理なようだ。

赤倉沢の沢音が次第に遠ざかるようになり、道は山道に入ったと感じる。刈り払いは相変わらずで丁寧な仕事だと感じる。先行したパーティーに追いつき、道を譲られる。こうなると先行しないわけにはいかないので、ありがたく先に行かせてもらう。登山道に水が流れるようになり、さらに進むと「三吉ミチギ」と呼ばれる水場に到着する。妙な名前なのでいわれがあるのだろうと考えるが、良い解釈は思い浮かばない。ひょっとするとシミズ→ミチギかなとも思うが、かなり無理がありそう。そうこうしているうちに追い抜いたパーティーが追いついてきたので、早々にこの場所を明け渡すことにした。

道は九十九折に高度を上げていく、時折トラロープあるが、登りの時は使う必要はない。上着が汗でびっしょりとなったところで、やっと急登から開放され、左斜面がひらけた場所にでる。この付近には標柱があり「人見の松」と書いてあるので、それらしきマツがあれかな?と思ってカメラを向けた。本来ならこのあたりは快適な道なのだろう。しかし今はガスが巻いていて展望は得られない。足元に咲くミヤマママコナを愛でながら歩く。ミヤマママコナは半寄生植物らしいが、その生態からは想像の出来ない美しさだ。それにしてもこの山はママコナが多いと感じる。本当ならヒメサユリが咲く時期に歩きたいのだが、きっと混むのだろうし、そんなときにすれ違い不可能な、あの林道を走行する気にはなれない。

道はちょっとだけ登り気味になり、妙な名前の「叶の高手」のピークに立ったが、周囲は樹林に囲まれて展望は無い。もっともこの天候では展望を得ることは出来ないだろう。

このピークを過ぎると道は下降することになり、すぐにオオクロベに到着。複数の木が集まっていたのだろうか、そのうちの一本は倒れて道を塞いでいる。倒れている木を跨いでさらに先に進むと、もう一本のオオクロベの木がある。こちらのほうが色が悪く元気がなさそうな感じだ。

下降が終了し、水平に近い道となり湿地のような場所にでる。ぬかるんだ場所を泥だらけになって進むと標識があり「熊ノ平」と書いてある。ここで休憩していると単独行の登山者に追い抜かれた。ここからちょっと登ると避難小屋があり、重い鉄の扉を開けようとすると、右肘が痛くて開けることが出来ないので、左手で開けた。中にはスコップが何本も置いてある。さらに奥には板の間と焚き火の出来る土間がある。ここで焚き火をしたら、小屋の中が煙で充満して身体が燻製になりそうだ。



駐車場から橋を渡り出発

三吉ミチギ(水場)

「人見の松」あたりで見晴らしが良くなるはずだが

山頂付近も見えない

叶の高手

オオクロベ1

オオクロベ2

避難小屋



避難小屋を過ぎて30分ほど歩くと、目の前に草付きの岩場が広がった。基部で休んでいると後続のパーティーに追い越されることとなった。右肘の痛みがだんだんと増しているようだ。腰のあたりまで伸びた草につかまって身体を支えながら登っていく。登山口で先行した300名山狙いの単独行者はこの岩場ですれ違った。「あと13座になりました」そう言って颯爽と下山して行った。岩場の基部で追い越されたパーティーに追いついて、このパーティーに続いて山頂を目指すことにした。草があるから良いようなもので、草がなかったらこの岩場の難易度はもっと上がるのだろう。

山頂部分は横長になっていて、一番高いと思われる場所はピークではないようだ。さらに進むと山頂方位盤と三等三角点のある場所にたどり着いた。ここが山頂だと言う感慨はなく、先行したパーティーからもそのような言葉は聞こえなかった。それは展望が悪く、蒸し暑く、何となく達成感を得られないからなのだろう。方位盤を見て、あの方向にあの山があると想像してもなかなか増幅しない。山頂で簡単に写真を撮り少し戻った岩場で休憩することにする。

さて下降だが、ストックを仕舞って両手を自由にした状態で岩場の下降をはじめる。切れそうなタイガーロープもこの時は頼るしかない。しかし右腕が思うように動かせない。何度も泣きっ面になりながら必死で下降した。



山頂直下の岩場(小幽沢カッチ)

草付き

結構険しい

山頂から見る毛猛山は雲の中

山頂方位盤

険しい山稜だ

雲の中

車は増えて10台程度


駐車場に着いたときは、今までにない安堵感を覚えた。たった7時間の行動だったが、なんと長い距離だったことか。2ヶ月のブランクと言うのは大きいと実感する。それにしても右腕の痛みはひどくなるばかりで、見れば右肘は赤く腫れ上がっている。シャツの着替えもままならず、車のドアの開閉も右腕では出来ない状態まで追い込まれた。

帰路、塩沢石打SAで蕎麦を注文したが、箸を使うことが出来ない。肘が曲がらないので口元まで運べない。左手で箸を操ってなんとか食べ終えることが出来た。

さすがに翌日は痛みがひどく腫れも出てきたので整形外科に向かう。診断は「腕骨内側上顆炎」つまり「テニス肘」テニスをしないのに!!!
要は使いすぎ。腫れのある場所に注射針を入れて、粘液嚢穿刺注入の処置と痛み止めを処方してもらった。
医者が言うには「治りません」と素っ気ない。
「私も発症して9ヶ月頑張っていますがダメです」
医者が自身のテニス肘を治せないとは。
「まあ、痛いと言うことを認識して生活してください」

しばらくは、山どころか、日常生活にも支障が出そうだ。


【山で見かけた花】

アキノキリンソウ

ノリウツギ

ナナカマド

赤くなったナナカマドの実

虫コブが実のように見える

そろそろ秋の気配

オヤマリンドウ

コキンレイカ(ハクサンオミナエシ)

ミヤマママコナ


【記録】
06:14登山口(赤倉沢)--(..52)--07:06三吉ミチギの水場--(1.21)--08:27叶の高手--(.29)--08:56避難小屋09:12--(1.09)--10:05会津朝日岳10:35--(1.10)--11:45叶の高手--(.44)--12:29三吉ミチギの水場12::39--(.38)--13:17登山口


群馬山岳移動通信/2015


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)