信州峠から甲信国境を辿る  登山日2013年2月23日



石ッコツからの展望

夕日アタリ(ゆうひあたり)標高1592m 長野県南佐久郡/石ッコツ(いしっこつ)標高1640m長野県南佐久郡・山梨県北杜市/フシノソリ(ふしのそり)1730m長野県南佐久郡・山梨県北杜市

 今年の冬は、大寒波の襲来で日本海側の雪は記録的なものとなっている。天気予報を見ても新潟県方面は雪の予報が連続している。こうなると、山歩きは雪の少ない地域に向かわざるを得ない。さりとて、全く雪がないのでは面白くないので、場所の選定は難しくなる。さらに困ったことに右足に痺れと痛みがあり、爆弾を抱えた格好の山行きとなった。

 

2月23日(土)

通い慣れた長野県川上村は一面の銀世界だった。しかし、見上げる空は青く場所の選定は間違っていなかったと思った。信州峠とはなんと良い響きを持った名前なのだろう。かつてはこの峠が重要な要所であったことが想像できる。信州峠にある駐車場は除雪されていたが、駐車できるのは5台程度だろうか。とりあえず現時点では駐車してある車は無く、一番良い場所に車を置いた。

 

ゆっくりと支度を整えて横尾山とは反対の東方面に足を踏み出した。雪の中を歩くが積雪はそれほどでもなく、笹の葉が雪面に顔を出し風に揺れていた。気温はマイナス10度くらいであろうか、頬が痛くなるし、つま先の血液が循環していないように冷たく感じる。笹原を抜けると、緩斜面に入る。信州側はカラマツと点在するアカマツの植林地、甲州側はナラを中心とした雑木林となっている。それだけに国境はハッキリと分かれており、雪が無くなれば登山道になっているのか、雪面が窪んで延びていた。

 信州側は雑木が切られて整理されずに散乱していた。間引きは最近行われたらしく、切りくずは雪面にまぶしたように乗っていた。それにしても林業をする人たちは凄いと思う。こちらが息を切らして歩いているのに、作業する人はチェーンソーを持ってこの斜面で作業するのだ。それにこれから切った雑木をまとめるのだ。気の遠くなるような作業がこれからも続いていくのだろう。

 国境を忠実に辿って登り上げると標高1580mで南北方向に延びた平坦地となる。北端の信州側になる三角点ピークが「夕日アタリ」というピークだ。切られた雑木が障害物となっていて歩きにくいがツボ足で何とかそのピークにたどり着く。展望は雑木によって遮られて見るべきものはない。この名前から推測すると、信州側のある地区から見える風景が、そのまま山名として付けられたと思うのが自然だろう。山頂の三角点は雪に埋もれて確認できなかったが、立木に巻かれた赤いテープが3本あった。それぞれ「SK」「MHC」それから5円玉をぶら下げたものだ。5円玉を付けたものはこの先のピークにもれなく付いていた。

 



甲信国境を辿る


伐採された木が散乱する

夕日アタリの山頂

5円玉が付けられている

なぜか熊手がある

キノコがいっぱい

伐採作業は8時から行われるのだろう。下方からチェーンソーのエンジン音が聞こえてきた。「夕日アタリ」から国境に戻り、東に向かって斜面を下る。ここには落ち葉掻きでもしたのだろうか、数本が欠損している熊手が、地面に差し込んであった。ここに来て積雪が多くなり、ツボ足ではちょっと辛くなってきたので、カンジキを装着することにした。今シーズン初めての装着なのでなかなか装着できない。悪戦苦闘して10分もかかってやっと装着完了し歩き出すことが出来た。カンジキはマイナーと言うこともあり、取り付け方法が今ひとつ確立されていないような感じがする。また補助バンドというものがオプションであるのだが、これを使わないと足底がずれて歩きにくいどころか事故に繋がる可能性もある。むしろヒモで縛り上げた方が確実とも考えられる。その不便さを差し引いてもカンジキの使い勝手は捨てがたい。スノーシューはかさばるし、下降になったら使い物にならない。また藪漕ぎなどでは取り回しが悪い。カンジキは浮力が劣るものの、何よりも機動性がよいこと、踏み込んでから足を上げても雪抜けが良い。つまり雪を持ち上げないから引き上げたときの負担が少ないのだ。

 

ルートに明瞭な踏み跡はないが、天候も良いので国境を外れることもなく進んでいくことが出来る。ダラダラと登っていくとちょっと開けた場所に出る。赤テープに「石ッコツ」と書いてあったがおそらく間違いであろう。この場所から尾根に沿ってほぼ水平に歩いていくと、平らな面を持った石があるピークに到着した。この石は人工的に設置されたような感じを受けるもので、まさに石碑そのものだった。このピークが「石ッコツ」で間違いないだろう。本日の最大の展望はこのピークからだった。眼下にはキャベツ畑とその向こうに天狗山、男山、西に目を転じてみれば手前にカヤトの原が真っ白な雪原となって見える横尾山、その向こうは白銀が眩しい八ヶ岳だ。横尾山の左には南アルプスのピークが、個性的な稜線を青空の中に白銀の線を引いていた。白湯を飲んでから先に進むことにする。

 


 
石ッコツ手前
 
石ッコツの山頂
 
天狗山と男山
 
人工的に見える
 
八ヶ岳
 
赤岳


この「石ッコツ」からは明瞭な尾根が北に延びているのだが、国境は南東方向に下降する。岩が藪に覆われた場所で崖と言っても良い場所だ。カンジキを履いているので足元が思うように安定しない。最後は思い切ってズルズルとお尻を付いて滑り降りた。ルートがちょっとわかりにくいが、地形図とコンパスを頼りに進んでいくと、目の前が大きく開けた場所についた。広大な植林地で、シカの食害を防ぐためにフェンスが張り巡らされている。その植林地の先の展望も素晴らしいもので、南アルプスから八ヶ岳まで一望だ。しばしその展望に見とれて立ちすくんでしまった。1605mの標高点は踏まずに、鞍部に向けて下降することにした。

 

植林地から横尾山と八ヶ岳

積雪はこんな感じ

トレースのない斜面を登る
県境一周記念

鞍部は開けた場所で、明瞭な道も確認できる。しかし、その道は辿らずにあくまでも国境をそのまま進むことにして、目の前のピークを直登することにした。ストックを支点にしてカンジキでステップを切りながらの登りは、息が上がってなかなか進めない。振り返ると自分が切り開いてきたトレースが雪の斜面に溝を作っている。時刻は11時半を回り、そろそろ帰りのことを考えなくてはならない。膝ほどまでの雪をラッセルしながら登っていくと、尾根にたどり着いた。立木には山梨登高会のプレートが取り付けられていた。ここから大木の横を抜けて小動物の足跡を辿ると「フシノソリ」の山頂はすぐだった。

 「フシノソリ」の山頂は索道場でもあったのだろうか、滑車とワイヤーが残置されており、樹丈3mほどのカラマツの植林地が広がっていた。ここからも南アルプスが見えていたが、八ヶ岳はカラマツ林に隠れて見ることは出来なかった。また「高登谷山」も間近で荒々しい岩壁を見せている。瑞牆山は樹林の向こうにシルエットで輪郭が見えていた。この先のピークも行ってみたかったが、足の不調もあり、無理はしないことにした。時刻は12時、昼食のために持ってきたラーメンを作ることにした。ところが、コンロがない!!ラーメンも水もあるのにコンロがない!!囓るわけにもいかないので諦める。抜けるような青空と、白銀の稜線と言う最高の景色とは裏腹に、すっかり気落ちしてパンと水でお腹を満たす。まあ、仕方ないかこんな事もあるさ。

 帰りは自ら付けたトレースを辿って信州峠に戻った。

 



フシノソリへの道に足跡が

フシノソリ手前の巨木


フシノソリから高登谷山
SKさんの書き込み
 
フシノソリから瑞牆山
 
フシノソリから南アルプス

「追記」

コンロはザックの底に入っていました(わからなかっただけ)。トホホ
右足は何とか持ちこたえました。

  

信州峠07:56—(.31)--08:27夕日アタリ08:35—(.10)--08:45カンジキを履く09:00—(.29)--09:29石ッコツ09:33—(1.16)--11:49フシノソリ12:41—(1.20)--14:01石ッコツ14:10—-(.50)--15:00信州峠

 

この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)