野反湖を眼下に見る「八十三山」「大倉山」
登山日2021年5月4日


大倉山からの展望
八十三山(やそみやま)標高12101m長野県下水内郡/大倉山(だいくらやま)標高2054m長野県下水内郡
5月の大型連休はテントを担いでの山行が恒例だったが、去年は新型コロナの影響で断念した。今年も状況は改善されていない。それならと、直行直帰で人のいない山に出かけることにした。それも土地勘があり、何度も登っている山の近くの未登の山を選んだ。そこは野反湖から白砂山に向かう途中から分岐する八十三山とその先にある大倉山だ。日帰りと言っても長時間の歩行が予想されるので前夜に野反湖の駐車場に泊まって早朝に出発することにした。

5月3日(月)
農作業を片付けて野反湖に向かい、駐車場に到着したのは20時だった。疲れもあり、早速横になる。ところがものすごい風で、車が揺れて吹き飛ばされるのではないかと思うほどだ。これは山中に幕営でもしたらとんでもないことになるだろう。

5月4日(火)
朝4時に起床、サンドイッチと牛乳で朝食とする。風は吹いているが昨夜ほどの強風ではない。今日は一日中晴天の予報となっており、雨雲の様子は全くない。周囲を確認するが駐車場は10台ほどの車があるだけでひっそりとしている。駐車場に雪は全くなく、今年の雪解けが早く進んでいるということなのだろう。

支度を整えて登山口から歩き出すが、どうやら一番乗りのようだ。遊歩道のような広い道を登り上げると残雪の斜面が現れた。ここはアイゼンをつけないと突破は不可能だ。ザックからアイゼンを取り出して付けていると後続の登山者がやってきて、同じようにアイゼンを取り付けだした。その後、軽装の男女がやってきたが、雪の斜面を見てこれは無理だと引き返していった。アイゼンを取り付けて雪の斜面を下っていく。途中まで進んだところでアイゼンが外れてしまった。妙に思いながらもアイゼンの紐を今度はきつくして取り付けた。しかしハンノ木に着いたところで、今度はバラバラになって外れてしまった。どうやら新調した靴に合わせて調整しなかったことが原因と考えられる。応急的に調整してみたがどうもしっくりこない。そこで針金でアイゼンを固定して急場をしのぐことにする。こんなことをしていたら、単独行の人に追い越され、さらに二人組に追い越されてしまった。まあ、彼らのスピードについていくことは不可能なので、いずれは追い越されることになるだろう。ハンノ木沢を渡るとしばらくは雪がない道となる。しかしアイゼンは針金で固定してしまったので取り外すのが面倒で、そのまま取り付けていくことになった。


白砂山登山口

歩き始めは遊歩道

ほどなくアイゼンが必要になる

何度もアイゼンが外れる

ハンノ木沢

地蔵峠

地蔵

野反湖が見える場所


地蔵峠には「切明・和山」方面を指す標識があるが、残雪の上にはトレースが無くここを歩く人はほとんどいないということなのだろう。ここには朽ち果てそうなお堂の中にお地蔵さまが鎮座しており、今日の無事を祈って手を合わせた

地蔵峠からはさしたる展望もない樹林帯の中の道をたどることになる。歩き始めから妙に身体が不安定になるのが気になっていた。腰のあたりが落ち着かない感じがするので確認すると、ズボンのベルトが無いことに気が付いた。どうやら着替えた時にベルトを着けなかったらしい。ベルトだけでここまで腰が不安定になるとは思ってもいなかった。それにしても最近は山行のたびに必ず忘れ物をしているような気がする。まあ、困ったものだというしかない。

堂岩山の手前で富岡市から来たという単独行の登山者とすれ違った。一泊して八十三山・大倉山をピストンしての帰りだという。「それならトレースが残っているからよかった」と言うと、「昨日は吹雪で雪が積もったから消えているかも」という答えだった。「八十三山への道はわかりますか?」「それは堂岩山から稜線伝いに行く踏み跡がある」と言う。これは貴重な情報をもらったと感謝した。


残雪の斜面を登る

浅間山が見える

堂岩山手前の展望

堂岩山から八十三山

堂岩山の標柱


堂岩山に到着すると目の前に白砂山が立ちはだかるように大きい。目を転じればこれから向かう八十三山が間近に見えている。堂岩山の標柱はほとんどが雪の中に埋もれ、上部の一部分が見えているだけだ。そうしているうちに登山者が4人ほど到着した。皆さん白砂山に向かうものと思われる。

堂岩山山頂から少し戻って八十三山へのルートを探す。すると稜線に沿って一直線に向かう踏み跡が残雪の中に確認できた。かなり急傾斜だが不安は無く、むしろ帰りにここを登らなくてはならないのかと、それが気になる。一旦鞍部に降りて登り上げていくが、残雪が豊富なことからほとんど直登に近い。もっとも先行者のトレースがしっかりしていることもあり、何も考えずに歩けばよいことで気分が楽だ。途中で黄色いフライシートが目立つテントがあった。テントの持ち主は不在なのだろうファスナーがしっかりと閉じられていた。

八十三山への登りは気持ちのいい登りだ。残雪の山はこれが楽しくて登るようなものだ。雪が無くなれば笹薮が立ち上がり、とてもじゃないが歩けなくなるのだろう。途中で、途中で会った単独行の男性が幕営した場所を通過する。丁寧に雪のブロックが積みあげれられており、山のベテランという感じがする。またその場所は野反湖が一望でき、展望も抜群だった。

八十三山の山頂は平坦で展望に優れていた。白砂山から佐武流山に続く稜線が見事だ。その奥に白く見えているのは皇海山、白根山あたりだろうか。絶好の天候で風もなくこの山にいることがとてつもなく幸せを感じる。


八十三山への登路で見る白砂山

八十三山の登路

八十三山から野反湖

八十三山から白砂山

八十三山から烏帽子岳


さて、次に向かうのは大倉山だ。トレースはまだまだはっきりしているので気が楽だ。これまた急傾斜の斜面を下降する。樹林帯に入るが先行者のトレースがしっかりしているので問題ない。鞍部からの登りは太陽の高度が上がるとともに気温が上昇し、雪が緩んだ感じがする。また雪面からの照り返しが容赦なく身体に浴びせかかってくる。どうやら顔は真っ黒になりそうだ。登り上げたところから、わずかに山頂部分を辿ると最高地点に到着する。三角点があるはずだが雪に埋もれて確認することはできない。それにしても何という大展望なのだろう。野反湖を取り巻く山々は残雪が輝き、眩しい。白砂山から佐武流山に連なる稜線は大きく横たわっている。辿ってきたルートを振り返ると八十三山が意外に大きく立ちはだかっている。いつまでもここに留まりたい気持ちにかられる。しかし、帰りのことを考えるとそれほどゆっくりとはしていられない。地形図を見るとこのまま尾根を辿っても戻れそうな感じを受ける。若い時ならそうしていただろうが、今ではそんな冒険はできない。往路をひたすら辿って戻るのが得策だ。

帰路で私よりも高齢の男性とすれ違った。昨夜は白砂山直下に幕営したとのこと。八十三山にちなんで83歳に登ってみたいなどと夢を話した。

さらに八十三山の途中のテントは持ち主がくつろいでいた。それは女性の単独行で、志賀高原からここまで縦走してきたとのこと。今日は佐武流山に挑戦したが、藪が酷く敗退してきたという。世の中なんともすごい女性が出てきたものだと感心することしきりだった。

堂岩山からは、雪解けが進んでぐちゃぐちゃになった道を泥だらけになって下山した。


佐武流山

大倉山にもうすこし

大倉山から野反湖

大倉山の山頂


「記録」
05:10登山口--(.32)--05:42ハンノ木沢05:50--(.30)--06:20地蔵峠--(.27)--06:47地蔵山--(1.36)--08:23堂岩山08:40--(.55)--09:35八十三山09:40--(1.00)--10:40大倉山11:08--(1.03)--12:11八十三山12:30--(.37)--13:07堂岩山13:24--(.59)--14:23地蔵山--(.32)--15:02地蔵峠--(.24)--15:26ハンノ木沢--(.30)--15:56登山口

群馬山岳移動通信/2021


この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)