遠くを展望する「焼山(頸城)」   登山日2010年9月12日



焼山山頂から日本海を遠望する


焼山(やけやま)標高2400m 新潟県妙高市・糸魚川市


焼山は7月に行こうと思ったが、どうも体調に不安があり近くの妙高山に登った。しかしその妙高山から見た焼山は堂々としており、この妙高山よりも隣の火打山よりも魅力的であった。したがって焼山への登高欲は募る一方だった。しかし、ネットで検索すると焼山は容易には登れない山だと感じた。それはつい最近まで登山禁止であり、トレースが薄いとの事が不安だ。それに登ろうとする杉野沢橋からの道はエアリアマップでは破線のままになっている。それに何度も渡渉を繰り返すことから荒天の時は増水していて危険ということだ。


9月12日(土)


高速道路千円のために黒姫野尻湖PAで仮眠を取った。3時に出ようと思ったが、ぐずぐずしていたら4時出発となってしまい大誤算となってしまった。しかし、まだ時間はたっぷりとあるので、車内を整理してから車を走らせる事にした。信濃町ICで高速道を降りて、まだ暗い道を走行する。笹が峰の駐車場はシーズンオフと言うこともあり閑散としていた。さらに舗装路を辿ると、ダートの道となったが荒れた様子はなく問題なく走ることが出来た。杉野沢橋を渡るとそこには充分な駐車余地があり、心配していた混雑はまったく無かった。それどころか、車は私のものだけでむしろ心配になるほどだ。出発の準備をして、この駐車地点から杉野沢橋の下を流れる真川の上流に向かって続く林道に入る。林道入り口には、アンテナ施設があるが、どんな目的のものかは確認できなかった。この林道もすぐ終点となり、ここも10台ほど駐車できる余地があった。すでに、軽トラックが一台停まっていたが、渓流釣りの人のものらしかった。さらにライトを付けた車がやってきてこの場所に停車した。



杉野沢橋の駐車余地

金山沢の石畳


しばらくはこの真川の上流に向かって左側を歩いていく。堰堤の手前でさらに左の林の中に道は続いていた。巨大化したミズバショウの葉が道の両側にはびこって、お世辞にも可愛いとは思えなかった。平坦で湿った林の道を抜けると、道は真川に向かって崖のルートとなった。おそらく道が崩れてしまったのだろう。ロープが渡してあるのでそれに掴まって慎重に崖をトラバースする。しかし、増水したときはかなり厳しいと思う。


滝沢の小さな流れを渡ると道は急登になり高度を上げていく。真川からはどんどん離れていく感じである。それに伴って何カ所か崩落した場所があり緊張する。このルートは昔の道を整備したのだろうが、あらたなルートを整備する必要があるかも知れないと感じる。何カ所かのルートは雨天などでは危険だと感じた。


金山谷は美しい岩畳の上を水が流れ下っていた。水量が少ないので、さしたる苦労もなく対岸に渡り再び急登を続けると1454mの標高点だ。ここを過ぎると突然目の前に目指す焼山が見えた。しかし、遠いなあと思いながら、トラバース気味に真川に向かって下降していった。降りきったところは薮がひどく朝露で下半身がすっかり濡れてしまった。ストックで露を払いながら進んでいくと、裏金山谷が現れる。真川の本流と明確に分岐している。この辺りは岩に赤ペンキで矢印があり、それに沿って行けば迷うこともないだろう。裏金山谷の徒渉も水量が少なく全く問題なく渡ることが出来た。

本流に沿ってなだらかに登っていくが、テープやペンキが豊富にありルート取りはあまり考える必要がない。そして水量豊富な地獄谷の徒渉が一番緊張した。ストックを支点にして一気に岩を飛び移りながら対岸に到達し、まずは一安心だ。それにしてもこのルートは荒天時には歩きたくない。雪解けの季節もやはり同じであろう。


しばらくは水量豊富でゴウゴウと音を立てる地獄谷の支流に沿って歩くことになる。目の前には焼山がだんだん大きく見えるようになってきた。そんなとき調子よく歩いていたら、なんと左足を沢側に踏み抜くような形で落としてしまった。下草が生い茂りよく見えなかったこともある。ともかく妙な格好で、残った右足は普段は取らないような曲がりかたでひざまずいている。これは・・・・・恐る恐るストックを支点にして立ち上がってみる。何とか立ち上がれるぞ、痛みはあるものの捻挫は免れたようだ。しばらくは様子を見ながらゆっくりと歩くことにする。

焼山がやっと見えた

裏金山谷は明瞭に分岐している

地獄谷は水量豊富

焼山山頂が近づく

やがて、沢から離れ道は林の中をゆっくりと高度を上げていくことになる。2回ほど流れの無い小さな沢を越えて行くと、標高1640m付近で水量豊富な流れのある沢に辿り着いた。ここがこのルートの最後の水場である。この沢には上部から流れてきているのだが、すぐ傍らの斜面からも水が流れ落ちている。こちらの水は湧き水のようなので、ペットボトルに水を継ぎ足しておいた。今日は、2リットルのハイドレーションと保冷パックに7本の凍らせたパウチ容器入りの飲料を持ってきている。これだけあればそんなに焦ることもないだろう。


水場を過ぎると、今度は雑木林の道をジグザグに登りながら高度を上げていく。それと共に金山方面の展望が広がり気分が高揚してくるのがわかる。良く見ると地獄谷にはまだ雪が残っている。この猛暑でこれだけ残っているだから、おそらく一年を通じて残る雪なのだろう。谷の向こうには、高妻山と乙妻山、黒姫山が遠望でき、苦労して登った事がまだ記憶に残っている。高山草原の中の道は、季節にはお花畑が見られると思われる場所が随所に見られる。この山域は金山と含めて花の名所なのだが、金山は最近雑誌に紹介されて観光バスが押し寄せる事態になっているのは嘆かわしい。


最後の水場

富士見峠付近から地獄谷雪が残っている。黒姫山・高妻山も遠望する

トリカブト

山頂は険しい溶岩ドームだ

トラバース気味に斜面を登り上げると富士見峠に到着した。富士山が見えることを期待したが、その方向には雲がかかっており見ることは出来なかった。ここではじめて文字が消えかかって全てが読めない標識に出会った。この辺りまでは歩く人も多いのだろう。周囲は笹が苅り払われてテントが張れるほど平らな場所となっていた。ここでザックを下ろしてじっくりと休憩だ。約1ヶ月ぶりの山行なので心配したが、ペースは遅いもののなんとか登ることが出来ているようだ。

富士見峠からそのまま山頂を目指すのかと思ったら、道は水平になりやがて下降をはじめてしまった。思わず登り返して富士見峠まで戻り確認したが、道は間違いなさそうだ。不安を感じながら下降を続けると標識があり、ここが笹倉温泉への道を分けて右に辿れば焼山に通じることがわかる。とりあえず良く踏まれた道を登り始める程なく「泊岩」と呼ばれる場所にたどり着いた。岩屋を利用して天井や壁を波板で囲って小屋風に作ってある。もちろん扉も波板で岩屋の形に切り取って作ってあった。その扉は開けっ放しになっており、中を覗くと床面には分厚い硬質ウレタンマットが敷きつめてあった。またウエストポーチがつり下げられていた。山登りか山作業かわからぬが、いま姿は見えないが何処かに出かけているのだろう。


泊岩

内部はこんな感じ

泊岩からは凹んだ水路の跡のような道を登ることになる。標高は2000mを越えているが、太陽の高度が登ったために気温は上昇気味となっている。その日射しを遮る樹林帯も標高2150m付近で森林限界となり、周囲の景色が開けてきた。振り返ると雨飾山が眼下に見られるようになり、そのまわりは日本海が取り囲んでいる水平線と空の境は雲がなければ見分けが出来ない色をしている。目の前は砂礫の斜面と噴火によって押し出された頂上部分の大岩が門柱のように朝の逆光にシルエットとなっている。ともかくこの斜面を登っていくしかない。

森林限界付近から山頂部


ところが斜面を登り上げるとそこは山頂ではなく、道はさらに続いている。火口跡なのだろうか凹んだ部分を過ぎてその縁に登ると、目の前にはさらに火口跡があり、そこには白い水が溜まっている今後、火口湖が出来る可能性もあるだろう。踏み跡は右に向かっており、疲れた身体には辛い。やがて岩場で、古い鎖が残っておりそれに伝って登ることになるが、難度は高いとは言えない。岩場の上に到着すると、やっと山頂部分が見え、登山者が居るのが確認できた。一旦鞍部に下って、喘ぎながら登り上げるとそこが山頂だった。


山頂には、二人組の登山者がおり、高谷池に泊まって火打山経由でやってきたという。朝のうちは富士山が見えたと、黒姫山方面を指さした。山頂の大岩の上に立つとそれこそ360度の展望が広がった。雨飾山は眼下に小さく見える、金山への稜線は緑が眩しく、歩いてみたい欲求に駆られる。白馬三山、鹿島槍、槍ヶ岳までの北アルプスは感動的だ。振り返って火打山、妙高山はガスが掛かっていてちょっと残念だ。それにしてもなんという素晴らしい展望なのだろう。最近の萎える気持を吹き払うために、後押ししてくれた人に感謝した。


山頂での時間を充分に楽しみ下山となった。


雨飾山が意外に小さく見える

火口

焼山山頂

焼山山頂から北アルプス方面。金山までの稜線が魅力的だ。

ところが、富士見峠手前で足が攣って、激痛が襲った。スポーツ飲料を飲み水分を補給したらなんとか歩けるようになった。そして、裏金谷を徒渉した辺りから右膝が痛み出して、それこそストックに体重を乗せながらやっとの思いで歩いた。やはり運動不足がたたっているのだろう。


登りは約5時間、下りは4時間ちょっとで、とてつもない時間を掛かって駐車した地点に戻った。この付近、意外に温泉が少なく、結局は勤務している会社の保養所の風呂に立ち寄ってから帰った。



杉野沢橋05:28--(1.05)--06:33金山谷-(.22)--06:55裏金山谷--(.18)--07:13地獄谷--(.35)--07:48最後の水場08:03--(1.06)--09:09富士見峠09:15--(.15)--09:30笹倉温泉分岐--(.05)--09:35泊岩--(1.00)--10:35焼山11:00--(1.01)--12:01富士見峠12:14--(.45)--12:59水場13:09--(.32)--13:41裏金山谷--(1.33)--15:14杉野沢橋





この地図の作製に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図25000(地図画像)及び数値地図50メッシュ(標高)を使用したものである。(承認番号 平16総使、第652号)






群馬山岳移動通信/2010